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『ガンダム ジークアクス』5話感想:黒い三連星、まさかの登場。イメージを一変させるニャアンの活躍に驚かされつつ、マチュにより感情移入できるように(ネタバレあり)【Gundam GQuuuuuuX】

文:電撃オンライン

公開日時:

 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第5話“ニャアンはキラキラを知らない”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』5話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

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 シイコの死の衝撃があまりにも大きすぎ、SNSでは常にシイコの話題が絶えなかった印象のあるこの1週間。

 5話では、予告にもちらりと映っていましたが、やはり予想通り初代『ガンダム』の“黒い三連星”のガイア、オルテガの2人が登場を果たしました。

 予告ではマッシュの姿が見えなかったので、史実通りにマッシュは死んでいるのかと思いきや……1人だけ軍を先に辞め、政治家に転身していたというあまりにも予想外すぎるオチ。ガイアとオルテガはマ・クベに追い出される形で軍を辞め、現在はジャンク屋家業やクランバトルで生計を立てているようです。


 仮にもジオンのトップエースの一角だった2人の現状を見ると悲しくなりますが、同じキシリアの派閥とはいえ、明らかにマ・クベとは馬が合わなさそうだったので納得感はあります。戦い以外は向いてなさそうなタイプというか、後方で教官をやっていたりする姿も想像しにくいですしね。

 また、エグザべの意外な顔が見れたのも第5話の特徴。

 とくに驚いたのが、ジークアクスを探ために単独行動しつつ、その途中にサイド6内に潜入しているキシリア派のスパイらしき人物と接触し、シャリア・ブルについて報告していたこと。

 フラナガン機関の出身なので、エグザべがキシリア派であることに驚きはないのですが、任務の最中に偶然接触したのではなく、予定された行動のように見えたので、元々エグザべ自身が、シャリアの行動を監視するためにキシリア派が差し向けたスパイである可能性が高くなってきました。

 ただ、それにシャリアが気づいていないとは考えづらく、今回もそこまで見抜いた上で泳がせているように見えます。


 そうなると、シャリア軍警に捕まったエグザべを無茶な行動をしてまで助けたのは、単にいい上司だったいから……というわけではなく、キリシア派に恩を売るとか、エグザべの警戒を解くといったの狙いがあったのではないかと、これまでと見方が変わってきます。

 予告でも描かれていた、マチュをロッカーに連れ込むシーンは、警官から追われていたマチュを匿うというシーンでした。

 ただし善意でマチュを助けたわけではなく、クランバトルの開始時間まで時間稼ぎをすることで、マチュがジークアクスのパイロットかどうかを確かめるという作戦でした。

 マチュを見つけたのも警官に追われていたのも偶然なので、あの場で咄嗟に思いついた案だと思いますが、かなり上手い作戦だったと思います。

 エグザべがジオンの軍人であることにマチュも感づいていたこともあって、一応助けてもらったにも関わらず「キモイ」「くっつくなよ」とめちゃくちゃ辛辣な言葉を向けられてはいましたが、お互いがニュータイプであることには気づいてなさそうな様子。

 マチュとシュウジ、シイコの3人は口にせずとも、互いがニュータイプであることに気づいていそうだったので、エグザべとのニュータイプ能力の差ということなのか、もしくは同じニュータイプと区分されてはいても、オメガ・サイコミュを動かせるマチュと動かせないエグザべは、カテゴリーが違う存在である可能性もありそうだと感じました。

常識人だと思っていたニャアンが、実は一番の狂犬だった【ガンダム ジークアクス感想】

 一方、驚きのシーンが満載だったのが、マチュ、シュウジ、ニャアンの3人に関するエピソード。

 マチュとシュウジ、マチュとニャアンの関係はこれまでも描かれていたわけですが、その反面ニャアンとシュウジの関係はあまり描かれていませんでした。

 なのでイメージとしては、いわゆる“友だちの友だち”みたいな感覚で一緒にいるのかなと思っていたので、ニャアンがシュウジのことを「シュウちゃん」と呼んでいたのはかなりの衝撃。しかもそのこと自体にはマチュはとくにリアクションしていなかったので、おそらくある程度前からその呼び方をしていたのだと思われます。


 その後は、クランバトルに間に合わないマチュに代わって、ジークアクスに乗ることになったニャアン。一応設定では、プチモビの操縦経験はあることが明かされてはいたものの、まさかジークアクスを動かせるとは想像していなかったです。

 当初は数合わせで、シュウジにすべてを任せようと考えていたようですが、そううまくはいかず……。シュウジが頬を染めていて何か様子がおかしかった理由がわかりました。

 『機動戦士ガンダム』では地球で戦死していた黒い三連星が、リック・ドムに搭乗している姿にロマンを感じましたし、初代『ガンダム』にはなかったグフのヒートロッドか、ハンブラビの海ヘビを連想する武装が詰まれていたのも驚きでした。


 これはシュウジが頑張らないことには勝ち目がなさそうだ……と思った矢先でのニャアンの覚醒。

 ハロを「うるさい!」と蹴り飛ばしながらオメガサイコミュを起動、シュウジの赤いガンダムを盾や踏み台に使う、超至近距離のバズーカを超反応で回避するなど、普段のニャアンからは想像できない、荒々しい戦い方をしたのには度肝を抜かれました。

 今まで溜まりに溜まっていた鬱憤を晴らすかのような、石川由依さんの演技も鬼気迫るものがありました。しかもヤバいのが、ニャアンは徹底して頭部ではなくコクピットを狙っていること。

 オルテガは相手が頭ではなくコクピットを狙っていると気付き、咄嗟にジャイアント・バズで防御しようとしたものの、ビーム・サーベルでジャイアント・バズごとコクピットを焼かれる描写が実に生々しいです。

 オルテガが不運だったのが、直前にジークアクスのヒートホークをふっとばして、ニャアンが赤いガンダムのビーム・サーベルを使う流れを作ってしまったことで、これがもしヒートホークだったらコクピットは無事だったかもしれません。

 一応4話では、シュウジもゲルググのコクピットを狙いはしましたが、あれは頭部を破壊してもシイコが止まるつもりがないのを理解していたからこそやむを得ずにやった感がありました。

 オルテガの後に、ガイア機もシュウジに撃破されていますが、シュウジは頭部だけを狙って破壊したものの、結果的に機体が誘爆してしまったような描写になっています。シイコの時とは異なり、一度もコクピットを狙ったような攻撃はしていません。

 思い返せば、今までシュウジはクランバトルではほぼ常にハンマーを使っていて(前回シイコに破壊されてしまいました)、極力ビーム・サーベルを使わないようにしていたのは、殺すことに躊躇いはなくても、必要以上に人を死なせるのは避けたい……くらいの考えはあったのかなと。

 これは黒い三連星も同じで、ニャアンがコクピットを狙ってくることに驚愕していましたし、最後のジャイアント・バズによる攻撃も、当てやすい腹部ではなく、的の小さい頭部を狙っています。

 一年戦争時に多くの兵士の命を奪ってきた黒い三連星ですら避けるコクピット狙いを、初陣で何の躊躇いもなくやっているニャアンは、かなり異質な存在と言えます。


 どちらかというと、今まではマチュやシュウジのほうがぶっ飛んだキャラクターで、ニャアンは遠くに行こうとするマチュやシュウジを日常に留めるような役割かなと予想したりもしていたのですが……完全に的外れでした。

 実は3人の中で一番ぶっ飛んでいるのがニャアンだったことが、今回明らかになったのかもしれないなと思います。

マチュへの感情移入度がグッと増した回【ガンダム ジークアクス感想】


 また今回の話がすごいのが、マチュが無意識の内に抱いていた、ニャアンに対する優越感のような意識をあぶり出すような話にもなっていたこと。

 4話でも、地球に行くにあたっての必要なお金をニャアンの分も出そうとするマチュと、自分の分は自分で稼ごうとするニャアンのすれ違いが描かれていましたが、おそらくマチュの中には「自分はニャアンよりもすごいから、ニャアンを助けてあげないといけない」」といった意識があったのではないかと思います。

 それが今回、ニャアンが自分と同じ、もしくはそれ以上にジークアクスを動かせることが明らかになり、“自分とシュウジだけが特別かもしれない”という幻想も崩れ去りました。

 前回、マチュはシイコを躊躇いなく殺したシュウジに対し、自身が今いる場所との距離を感じていましたが、実はニャアンのほうがよりシュウジと近い場所に行けると判明したことになります。お嬢様であるマチュよりもニャアンは遥かに厳しい世界で生きてきたわけで、ある意味当然ではあります。


 ただし、ニャアンのほうはというとマチュのことが純粋に友だちとして好きで、今回ジークアクスで戦ったのも、マチュに手を引かれるのではなく、対等な存在として並んで歩きたいと思っているみたいなんですよね。マチュはその側面に気づけていなかった感じがあります。

 今回ニャアンだけじゃなく、マチュに対する見方もガラリと変わって、"自分だけができると思ったことが他の人にもできた"ことにショックを受けるという人間臭さで、マチュに対する感情移入度がグンと上がりました。このストーリー構成は本当にすごいと思います。

 こういった立場の逆転は、『トップをねらえ2!』のノノとラルクの関係性にも通じるところがあったり、鶴巻監督らしいテイストもかなり感じた回でした。

 次回の6話ではキシリア・ザビまで登場することが判明し、さらに度肝を抜かれることに。

 今回のガイアとオルテガの会話の中で、まもなく戦争が始まりそうなことが示唆されていたり、シャリアが自分の愛機であるキケロガの準備を進めていたり、物語が急加速していくのをヒシヒシと感じています。来週の放送が待ち遠しいです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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