電撃オンライン

“くず”しか登場しないアドベンチャーゲーム『ぎるぐる』中島愛が歌う主題歌が初お披露目。生と死をテーマに描く異色の物語とは【電撃インディー#1006】

文:紅葉つかさ

公開日時:

最終更新:

 Production Exabilitiesが開発するドラマツルギーリアルタイムタクティカルアドベンチャー『ぎるぐる』のプレス向け発表会“間世(はざまよ)巡りの会”が5月21日に開催されました。

[IMAGE]

 『ぎるぐる』は6月19日にリリース予定のSteam向けドラマツルギーリアルタイムタクティカルアドベンチャーです。生と死のあいだに存在する“間世(はざまよ)”に迷い込んだ少女・三津真央が死を望む者たちとの出会いや別れを経て、生きる世界を目指す姿が描かれます。

 本記事では、『ぎるぐる』のゲーム情報や主題歌に関する内容が発表された“間世(はざまよ)巡りの会”の模様をレポートしていきます。

 なお、電撃オンラインでは尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!


“くず”しか登場しないストーリーは現代社会に対するアンチテーゼ


 発表会が行われたのは渋谷サクラステージの“404 Not Found”。東急不動産とSkeleton Crew Studioが協業し、インディーゲームクリエイターを支援するGAME CREATOR FINDING(GCF)プロジェクトの拠点となっています。発表会ではSkeleton Crew Studioの村上雅彦氏と東急不動産の花野修平氏が登壇しました。

[IMAGE]
▲左からSkeleton Crew Studio・村上雅彦氏、東急不動産・花野修平氏。

 新しい体験や事業を生み出し、“404 Not Found”を通じて企業やクリエイターが集まるサイクルを作り、価値を高めて世界に誇れる渋谷をつくることが、東急不動産の目的です。その一環として、ゲーム関連の企業やショップが多く集まる中で、ゲームによる価値創造を目指しているとのことです。

[IMAGE][IMAGE][IMAGE]

 そんなプロジェクト第1弾タイトルが『ぎるぐる』です。ここからは、企画・シナリオを担当したディレクターの奈良輪由和氏、ゲストとして間世の案内人ビッケを演じる伊藤ゆいなさん、そしてゲームの開発とパブリッシングを手がけるAnnulusの細越啓寛氏が登壇し、ゲームを紹介しました。

[IMAGE][IMAGE]
▲左からビッケ役・伊藤ゆいなさん、ディレクターの奈良輪輪和史氏、Annulus・細越啓寛氏。

 ストーリーが魅力の本作。いまっぽい作品を作りたいと考えたときに、現代社会へのアンチテーゼを盛り込んだと、奈良輪氏は語ります。「なぜ生きているのか」と考えながら生きている人は少ないとしたうえで、その問いを投げかけるようなストーリーになっているようです。

 ちなみに、そんな作品だからこそと言うべきか、登場人物は一言で言えば“くず”ばかり。伊藤さんもそれに同意しており、どうやら事実のようです。

 また、ビッケを除くキャラクターには、“生”や“老”といったテーマが与えられていますが、これは仏教の四苦八苦の考え方を反映させた結果だそうです。ストーリーの根幹には、死生観が据えられているようです。

 ちなみに、四苦八苦なのにキャラクターが6人しかいない点についても言及。構想段階では8人いたそうですが、要素は各所にちりばめられているとのことです。

[IMAGE]

 伊藤さんは、ビッケを演じる中で“くず”なキャラクターたちと出会い、感情がぐるぐると揺さぶられたと語ります。ただし、会話自体は重くなく、本質だけが重い内容になっているとのこと。会話は軽やかな雰囲気で進んでおり、奈良輪氏はその点を意識して、伊藤さんをはじめとするキャスティングを行ったそうです。

 シナリオは文庫本約2.5冊分に相当する約27万文字という大ボリューム。そのため、昼に収録を行ったあと、奈良輪氏が急ピッチでシナリオ執筆に取り組むこともあったそうです。ボリュームはもちろん、どのような物語が展開されるのかにも注目が集まります。

 また、奈良輪氏はシナリオだけでなく、主題歌『ぎるぐる Reincarnation』の歌詞も手がけるなど、マルチに活動しています。発表会では、歌唱を担当した中島愛さんを壇上に招き、ミュージックビデオの先行公開も行われました。


 ちなみに、発表会で公開されたミュージックビデオは未完成のものでしたが、当時まだ映像を見たことがなかった中島さんは、その出来栄えに驚愕していました。なお、上記のミュージックビデオは完成版です。

[IMAGE]

 暗い部分と明るい部分が交錯する歌詞に苦戦したと語る中島さんに対し、奈良輪氏もその点を意識していたと話します。暗さと明るさの移り変わりによって“ぐるぐる”と揺れ動く感情は、本作のテーマとも一致しており、重要なポイントだと紹介されました。

 また、オノマトペが多く使われているのも特徴のひとつ。中島さんの歌声によって、当初のイメージを超える楽曲に仕上がったとのことなので、ぜひミュージックビデオでチェックしてみてください。

 中島さんに依頼した理由として、もともと彼女の大ファンだったことが挙げられます。歌ってもらえるならクリエイターを辞めてもいいというくらいの思いでオファーした結果、中島さんが主題歌を担当することが決定しました。

[IMAGE]

 中島さんは、自身の声質が本作の世界観に合うのかという不安も抱えつつ、矛盾をはらんだこの作品の世界観を表現する力になりたいという思いから、オファーを受けたとのことです。

 楽曲を通して、自身の暗い部分を隠さずに表現したからこそ、明るい部分とのギャップがより際立っているとのことです。ぜひ歌詞だけでなく、メロディや歌声のニュアンスの違いにも注目して聴いてみると、おもしろい発見があるかもしれません。

 中島さんは、楽曲をイメージした際に「自分の手で掴めるもの」と「零れ落ちていくもの」を端的に表現していると感じており、見る楽しさと歌う楽しさを両立した「砂上の城 目を伏せた希望が見る儚さか」という歌詞がお気に入りだそうです。

 本楽曲はサブスクリプションサービスでの配信が予定されており、歌詞を見ながら中島さんの歌声を聴くことで、ただ聴くだけでは得られない印象を受けるかもしれません。

実機プレイでゲームパートをお披露目。好感度で“くず”の運命が変わる


 実機プレイでは、奈良輪氏が解説を交えながらプレイを進行し、伊藤さんらが気になる点を質問する形で展開されました。まずは、本作の中心となるアドベンチャーパートから紹介が始まります。

[IMAGE][IMAGE]
▲ゲームの進行上、両手でコントローラーを持って操作するため、マイクは細越氏が担当する形に。

 ストーリーは、地図上のチャートから選択して再生する形式となっています。地図を舞台にしているのは、“間世”を旅しているようなイメージを表現するためです。チャート上ではデフォルメされた主人公・三津真央がアイコンとして登場し、伊藤さんや中島さんからは「かわいい」との声も上がっていました。

[IMAGE]
▲ロード画面には1枚絵が表示。こちらにもかわいいという声が上がります。
[IMAGE]

 アドベンチャーパートは、2Dで表示されるオーソドックスなスタイルで、ボイスはフルボイス仕様となっています。セリフに応じてキャラクターの表情が変わるだけでなく、瞬きなどの細かな動きもあり、印象に残ります。

[IMAGE]

 寡黙でセリフが短めな真央とは対照的に、ビッケは難解な言い回しで長めのセリフが多いキャラクターです。主人公と補佐役としてはっきりと対比されており、奈良輪氏によれば、やりたいことを書いていくうちに自然と、ビッケはこのようなキャラクターになったとのことです。

[IMAGE]

 本作には、“間世”や四苦八苦といった固い言葉や難解な表現も登場しますが、そうした要素に精通していなくても大丈夫。キャラクター同士の掛け合いの中で自然と説明されるため、安心して楽しめます。この世界のことを何も知らない真央の視点を通して、物語にスムーズに入り込める構成になっています。

 アドベンチャーゲームでは、オート機能やバックログといった基本機能の有無も重要なポイントです。細越氏の質問により、それらの機能が実装されていることが明らかになり、バックログでは特定のセリフを再生することもできるとのことです。

[IMAGE]
▲細越氏からは、内容だけでなくゲームプレイに関する質問も投げかけられ、奈良輪氏の実機プレイをサポートしていました。ちなみに、いつの間にかマイクスタンドも用意されていました。

 本作の中心となるアドベンチャーパートについては、ネタバレを避けるため、基本的な機能の紹介にとどめられました。その後、バトルパートのプレイへと移ります。

 バトルパートは、拠点を奪い合うタクティカル要素を備えた内容になっています。ただし、ターン制ではなくリアルタイム操作によるアクション要素が取り入れられており、スキルポイントを自由に割り振って、能力を強化したり、スキルを習得したりしたキャラクターを最大4人まで編成し、目標の達成を目指す形式です。

[IMAGE]
▲キャラクターごとに、攻撃型や補助型などタイプが分かれています。主人公の真央は攻撃型に分類されます。
[IMAGE]

 奈良輪氏のプレイを見る限り、スキルポイントの割り振りや操作は、あまり難しくない印象を受けます。あくまでアドベンチャーパートが作品の中核であるため、そのあたりの難易度は抑えられているのかもしれません。

[IMAGE][IMAGE]

 操作キャラクターは任意のタイミングで切り替え可能で、操作していないキャラクターはオートで戦う仕様になっています。序盤は敵の数も少なく、苦戦することはほとんどありませんが、ストーリーが進むにつれて敵の数が増え、難易度も上がっていきます。中にはボスが登場するステージも存在するようです。

[IMAGE][IMAGE][IMAGE][IMAGE]
▲登場する敵の見た目はストーリーにあわせたものに。

 倒した敵は味方として召喚できるほか、拠点を制圧した後には、さまざまな効果を選んで発動することも可能で、バトル部分も丁寧に作り込まれています。戦闘中にはキャラクターたちが頻繁に会話するため、その反応を見るためにいろいろな行動を試してみるのも楽しみのひとつと言えそうです。

[IMAGE][IMAGE][IMAGE][IMAGE][IMAGE]
▲アクションが苦手な方向けの救済措置として、ショップでキャラクターのレベルを上げるための経験値を購入できるシステムが用意されています。

 最後に、真央とビッケ以外のキャラクターが登場するアドベンチャーパートも少しだけお披露目されました。ちなみに、選択肢によってキャラクターの好感度が変化し、ストーリーが分岐するだけでなく、仲間にならないキャラクターも出てくるそうです。仲間の組み合わせによってエンディングも変化するとのことです。
[IMAGE][IMAGE]

 発表会を通して、“生”や“死”が『ぎるぐる』のテーマになっていることがわかりました。ただ、ストーリー自体が重いわけではなく、根幹にテーマがあるだけで、会話には軽妙なやり取りもあり、そのギャップが矛盾しているようでおもしろいところです。

 ロード中の1枚絵や、チャート選択時に登場するデフォルメされたキャラクターなど、随所にかわいらしい演出も仕込まれています。バトル部分も妥協することなく、さまざまな要素が盛り込まれつつ、メインになりすぎない絶妙なバランスに仕上がっていると感じました。

 発売は6月19日とまもなく。中島さんが歌う主題歌『ぎるぐる Reincarnation』の配信も控えており、『ぎるぐる』への期待がどんどん高まっていきます!



    本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります