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かつて電撃文庫にあった匂いをまとったジュヴナイル作品『明けの空のカフカ』。水品知弦先生が子どもにも大人にも読んでほしい作品に込めた想いとは?

文:電撃オンライン

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 KADOKAWAが実施した日本最大級の公募新人賞“第31回電撃小説大賞”にて、水品知弦(みずしな ちづる)先生の『明けの空のカフカ』が電撃の新文芸賞を受賞しました。

 そんな本作を執筆した水品先生と、電撃文庫・電撃の新文芸編集部の田端さん、井澤さんの3名にインタビューを実施。『明けの空のカフカ』が生まれた理由や、水品先生がどういった想いを込めたのか聞きました。

※インタビュー記事の性質上、物語の展開に言及するくだりもあります。ネタバレが気になる人はご注意ください。でもある程度展開を知っていてもおもしろい作品です。[IMAGE]

 『明けの空のカフカ』は、浮遊洞窟内の老人ばかりの村で暮らす少女・カフカの成長を描いた物語です。地上からやってきた犬の特徴を持つ獣人の来訪者・ハヤテとの出会いをきっかけに、カフカは祖父が残した飛行機で冒険に出発します。少女の成長を描いた、子どもから大人まで楽しめる“ジュヴナイルアドベンチャー”です。

幼いころから物語を思い描き続けてきた水品先生【明けの空のカフカ インタビュー】

――最初に水品先生のプロフィールを教えてください。

水品先生
青森県出身で、趣味は散歩とゲームです。小説との出会いは小学生のころで、勉強もせずに本ばかり読んでいるような子どもでした。そのころに出会った児童書『ライギョのきゅうしょく』に影響を受けました。

――どういうお話だったのでしょうか。

水品先生
捕食者のライギョくんと被捕食者のタナゴくんが友だちになるお話です。食べる側と食べられる側である2人はずっと友だちでいられるのか? ――その終わり方が衝撃的で「この後の2人はどうなるのだろう……」と先の展開を考え始めたことが物語を作る第一歩でした。

――当時の水品先生は、その後の展開をどう想像をしていたのですか。

水品先生
当時はバッドエンドが好きだったので、ライギョくんが本能に負けてタナゴくんを食べてしまい、我に返って泣きながら後悔するという展開を思い描いていました。

――それから物語を作る作業を日常的に行っていたのでしょうか。

水品先生
物語を作るといった明確な形ではありませんが、空想することが好きで、よく頭の中でお話を組み立てていました。初めて小説を形にしたのは中学2年生のころです。

 書き始めたきっかけは「社会人になりたくないから小説でお金を稼ごう」という不純な考えからでした。でも物語を書いているうちに書く楽しさに目覚め、毎日学校から帰って即ノートを開き、小説とも呼べないような文章を夢中で書き殴るようになっていきました。

 でも当時は作品を完成させることができず、高校生になってからは心の余裕がなくなりほとんど書けなくなってしまいました。その後社会人になり、小説を書くどころか読むことすらできなくなり……そのままずるずると月日が経ちましたが、つい2年ほど前に執筆を再開し、そこで生まれて初めて1本の小説を完成させることができました。最後の文章を打ち終わった瞬間、脳を作り替えられるような興奮があったのを覚えています。

 余談ですが、『自分が書いた小説を自分で読む』という荒療治により、読書ができる体質に戻ることができました。それもたまらなく嬉しかったです。

――当時はどんなジャンルの話を執筆されていたのか教えていただけますか?

水品先生
当時は流行していた現代バトルものや、自身が好きだったラブコメをよく書いていました。書くと言っても人に見せられるようなものではなく、好きなシーンだけを切り取って書くことが多かったです。

――普段からゲームをされているとのことですが、主にどういったタイトルをプレイされているのでしょうか。

水品先生
主に『ポケットモンスター』シリーズや『アトリエ』シリーズが多いですね。『アトリエ』シリーズは小学生からプレイしていて、中でも初めてプレイした『マナケミア』が今でも好きです。その他には『アルトネリコ』『魔女と百騎兵』『スペックオプス ザ・ライン』『アンダーテール』も大好きです。今は『マウスウォッシング』が気になっています。

――おひとりで遊ぶゲームが多いのでしょうか。

水品先生
友人と『スプラトゥーン3』や『モンスターハンターワイルズ』『オーバークック2』で遊ぶこともあります。インディーゲームにも興味があり、『アルティメットチキンホース』『スタデューバレー』がおもしろかったです。

――作品作りのために普段からしていることはありますか。

水品先生
今は頻度が減ってしまいましたが、独身のときは飲食店に1人で行って知らない人と話すのが好きでした。なかなか知り合えないような様々な境遇の人の話を聞いたことが今でもキャラクター作りに生かされています。今作で登場するチルさんはまさに以前居酒屋で出会った豪快なお姉さんそのままの性格です。

――受賞された時のお気持ちをお聞かせください。まずどういった形で告知がされたのでしょう?

水品先生
受賞を知る少し前から振り返りますが、まずカクヨムからのメールで最終選考に選ばれたことを知りました。これが第三次選考通過者を発表して間もない頃だったため、噂に聞いていた“電話待ち”という期間がほとんどなく、そこでまず驚いた記憶があります。

 その後、担当の田端さんから「電撃の新文芸賞を受賞しました」と知らされまして、そこで「やっぱり受賞できたんだ!」と安堵と納得する気持ちと「大丈夫かな……?」と不安な気持ちがありました。

――安堵はわかりますが、納得されたのはなぜでしょう。

水品先生
今年から電撃小説大賞に新文芸賞という部門が設立されたので、「初回だからカクヨム応募からなにかしらが電撃の新文芸賞に選ばれるのでは?」と思っていまして。でもカクヨム応募から最終選考に残ったもう1つの作品である『妖精の物理学』は絶対に電撃文庫から出る内容だと思ったので、じゃあ私は電撃の新文芸賞になるかな? と勝手に予想していました。

――意外にも冷静な反応だったんですね。連絡をした田端さんはどうでしたか。

田端さん
実は受賞の連絡に対して冷静に反応される方は多いんですよ。お話を聞くと、そういう方々は驚くよりも現実感が湧かないのか、逆に落ち着いてしまうようです。昔はこちらから連絡する際もサプライズ感を出そうとしていたこともあるのですが、どうも皆さん反応が微妙でして。最近は淡々と伝えるようにしています。

――受賞した実感はどのあたりで感じられましたか。

水品先生
受賞後の作業をしていくうえで少しずつ実感できました。それでもまだ本当か信じられない気持ちが残っています。

――応募した当時は賞を受賞できそうなど手応えのようなものは感じていましたか。

水品先生
自信と不安が半々でした。先ほども言った通り2年前に執筆を再開し、それから初めて完成させた自信作をWeb小説系の新人賞に応募したのですが、全然ダメで……。そこで自信を失いかけていました。

 その後、ライトノベルとWeb小説の作り方の違いを学んで、ライトノベルとして『明けの空のカフカ』を書いてダメなら執筆自体をやめようと思っていました。書き終えた時に自分としては「書きたかったものをすごくいい形にできた」という満足感がありましたが、果たしてその感覚が世間と合っているのか、ライトノベルとして受け入れてもらえるのかがとにかく不安でした。

田端さん
電撃小説大賞はこれまで原稿をwebから応募していただく形だったのですが、第30回からはカクヨムの応募が追加されました。カクヨムでは一般の方が読める環境なので、そこでPV数や評価が伸び悩んで不安を感じる人は多いです。

 二次、三次と選考を突破しているのに、数字が増えずに心配になるという話はよく聞きますが、電撃小説大賞はPV数などにこだわらず評価しています。もちろんPV数やフォロワー数も参考にはしていますが、少ないからといって評価の対象外にすることはありません。

『明けの空のカフカ』はこうして生まれた【明けの空のカフカ インタビュー】

――『明けの空のカフカ』のプロットをどう固めていったのかお伺いしたいです。

水品先生
“女の子がモコモコした人類と出会う”というアイデアは中学生のころからあって、今回応募するにあたり、1冊にまとまりそうな内容としてこの話を選びました。元々構想にあったものから規定文字数に収めるためにイベントを厳選し、誰に何を伝えたいかを一番に考えました。

 主な読者層は小中学生とその親御さんに設定して、「知ることや他人と関わること、価値観の変化を恐れないでほしい」というメッセージをテーマとして込める形にしました。

 加えて、少女が冒険を通して精神的に成長する姿を書きたいと思っており、“冒険”もテーマの1つとしました。

――作品の世界観についてお伺いしたいです。動物と動物をモチーフにした人類(ヒト類)が共存しているのは独特な世界観だと感じました。

水品先生
純粋に私が動物好きであることが大きな理由です。構成上の真面目な理由を話すと、他の動物がいないと食料問題が発生してしまうだろうと。オリジナルの動物を作ったとしてもその説明を入れる手間で作品のテンポが崩れてしまうので、その要素は本作には不要かと思い、今の設定になりました。

――作品を作り始めたころと最終的にできあがったもので大きな違いはあるのでしょうか?

水品先生
カフカというキャラクターが中心にいたことは本作を作り始めたころから変わりませんが、そのころは「機械生命体が地球にはびこり、人間が避難している」というまったく違う話でした。カフカが外に出ると、外の世界では人間がかつて残してきたペットや家畜などが進化して人型になり、機械生命体を狩って生活していることが明らかになって……のような具合です。

――かなりテイストが違いますね。どうして今の形になったのでしょう?

水品先生
それだとテキスト量が1冊分に収まらないことが大きな理由ですね。

――最初の舞台が洞窟であるのに対して、タイトルをはじめ、作中でも“空”に大きくスポットが当てられている点も印象的です。

水品先生
空を飛ぶという行為は自由の象徴のイメージがあります。私は10代のころに家庭環境に波がありまして……。そのしがらみから自由になりたいと思っていた自身の過去も影響しています。

――本作は人型の動物などのファンタジーな側面もあり、一方で機械文明が発達するメカニカルな面もあります。このバランスはどのように決めたのでしょう。

水品先生
機械を登場させたほうが引き締まると思ったからです。カフカたちが乗るものをドラゴンにする、といった選択肢もあったかもしれませんが、それよりも機械のほうがキャッチ―になると感じました。あとは、キャラクターが自らの意思で機械という無機質な物を動かすほうが、よりキャラクターの意志が反映されているように見えるのも理由の1つです。

――物語の後半にはとある秘密が明らかになりますが、この部分の構成はどのように決めたのでしょうか。

水品先生
この世界で起きるであろうことを考えているうちに自然に内容が固まっていきました。最初は戦争で食料がなくなった結果、力の弱いヒト類が淘汰されるという生々しい設定だったのですが、対象年齢を考えて少し和らげた結果です。

――ヒト類の過去に触れるまでは明るい内容がほとんどだったので、急にダークな部分が見えたのが印象的でした。

水品先生
元々ほんわかしているだけの作品にはしたくなかったので、そう感じていただけたならよかったです。

――カフカの村を老人たちばかりの村にした理由はあるのでしょうか。

水品先生
実は、カフカの村に老人しかいない理由はしっかりあって、それはまた別の話になっています。カフカが空に出る動機を生み出すためという側面もあります。

――カフカが出発してすぐに後悔するシーンがありましたが、これは水品先生の経験から来るものですか。

水品先生
そうですね。初めて1人で遠出した時の心境を思い出しながら描きました。13歳の子どもが初めて1人でそれまでにはない行動をしたら、間違いなく途方に暮れてしまいますよね。

――カフカは自分で操縦して空を飛ぶのが初めてという設定ですもんね。

水品先生
はい。その設定でありながら、後半ではカフカが飛行機を操作して大活躍するシーンがあります。最初は常識の範囲内でほどほどの活躍に留めておく予定だったのですが、「はたしてそれでいいのか? 自分の想定している読者が本当に求めている展開なのか?」と考え直し、カフカには思いっきり活躍してもらうことにしました。結果として大人も童心に返ってワクワクできるいいシーンになったんじゃないかなと思います。

――村を出たあとにホームシック気味になっているシーンもありました。

水品先生
そこは自分の経験とは離れてしまいますが、子どもが持つ弱さや幼さゆえの失敗、後悔をきちんと描きたいと思っていました。13歳の子どもを大人にとって都合のいいだけの存在としては描きたくないな、と。

 ただ、ある程度愛されるキャラクター性を持っていないと感情移入してもらえないとも思ったので、子どもらしい失敗を描きつつ読者の方に受け入れてもらえるような存在にするための調整に気を遣いました。

――なるほど。また、大人の我々が読むと、言うことを聞いてくれないカフカに対する村の老人たちのほうにもある程度は感情移入してしまいました。

水品先生
子どもたちと同時に親御さん世代にも読んでほしい作品なので、大人だからこそ感情移入できる要素も書こうと思っていました。そう思っていただけてよかったです。

――カフカの他に描き方で注力したキャラクターがいるようであれば教えてください。

水品先生
クレオに関しては、最初はよくいるツンデレキャラにしようと思いましたが、意外とそうはなりませんでした。小学生ぐらいの子がこの物語を読んだ時、明るく世渡り上手なカフカを見て「自分はこんなふうにはできない」と取り残されてしまう子もいるのではないか、と心配だったのですが、クレオがそういう子たちにも寄り添えるような存在になってくれたので、嬉しかったです。ちょっと気難しいけど、とっても素敵な子です。

 ノルンもおもしろいキャラクターなのですが、尺が足りずに書き切れなかった部分があるので、続編が書ければ登場シーンを作ってあげたいと思っています。カフカ、クレオ、ノルンの3人が冒険に出るお話もいつか書きたいですね。

――森沢晴行先生のビジュアルについて、水品先生はどのタイミングでご覧になったのでしょう? 感想もお聞かせください。

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▲本作の口絵。左からロジャー、クレオ、ハヤテ、カフカ、チル、ヘルガ。
水品先生
改稿が終わるころだったと思います。キャラクターデザインについては、小説の中の描写を元にオーダーを出したところ、イメージ通りのものを描いてくださいました。カフカはすごく可愛くて、ロジャーさんも思い描く姿そのままで驚きました。

――タイトルの『明けの空のカフカ』は、いつごろ決めたのでしょうか。

水品先生
応募のときに決めました。

――昨今の小説は内容が伝わりやすい長めのキャッチーなタイトルが多いですが、比較的シンプルなネーミングにした理由はあるのでしょうか。

水品先生
こだわりなどは特になく……私はタイトルやキャラクター名などを考えるのが苦手なので、どうにか決めないとと思って絞り出した結果『明けの空のカフカ』になりました。

――田端さんはタイトルについてはいかがでしたか?

田端さん
カフカが暗い空を飛んで心細い中、夜が明けて……というシーンが印象的だったので『明けの空のカフカ』はピッタリだと思いました。他にも印象的な夜明けのシーンがあって作品全体にマッチするタイトルだったので、綺麗にまとまっているし他に用意する必要もない良いタイトルだと思いました。

――井澤さんからもコメントいただけますでしょうか。

井澤さん
“明けの空”には物理的な意味だけでなく、カフカという人間の視野が広がるという意味も読み取ることができるので、いいタイトルだなと。

水品先生
作中の夜明けの描写にもその意味合いがあったので、タイトルでそれを生かせる形になってよかったです。私はカズオ・イシグロ先生の『日の名残り』が好きでして、あの作品では夕暮れを人生の黄昏に重ねているのに対し、『明けの空のカフカ』は人生の始まりや世界を知っていく不可逆な一歩を夜明けに例えています。

――他に候補のタイトルはあったのでしょうか。

水品先生
最初は “カフカ”だけにしようと思ったのですが“フランツ・カフカ”を連想する人が多いかなと思って止めました。電撃文庫だと『アリソン』とタイトルの方向性が被ると考えたのも理由の1つです。『明けの空のカフカ』は同期の東堂杏子先生にも褒められたので、結果的にこのタイトルにしてよかったなと今では思っています。

――第31回電撃小説大賞の同期の先生たちとは交流なさっているのですね。

水品先生
はい。同期の人たちとはDiscordで交流しています。情報を共有したり相談をしあったりと、大事な存在です。

懐かしい“電撃文庫らしさ”を持った物語【明けの空のカフカ インタビュー】

――読者の感想にはなりますが『明けの空のカフカ』はテンポもよく非常に読み進めやすい作品という印象でした。執筆の際に読者目線で意識した部分はありましたか。

水品先生
特に改稿時に読みやすさをかなり意識しました。その理由として、私自身に子どもが生まれてから絵本を読むようになり、絵本の文章の端的な表現、リズムのよさ、わかりやすさに感銘を受けて、そこから強く影響を受けました。

 最近だと子ども向け番組からも似た影響を受けています。まだ成長の途中にある子たちのことを真剣に考え、同じ目線でわかりやすく伝えようとする姿勢に感動し、改稿の際にはより分かりやすさを意識して調整しました。

――田端さんや井澤さんからも、本作について大賞で審査した際の印象などをお伺いしたいです。

田端さん
率直にいい物語だと思ったのですが、応募原稿では序盤は少しだけ冗長なところもあって。しかし、カフカが空に出たあたりから先は一気に物語に引き込まれました。派手な内容ではないのに、カフカの冒険と成長が胸に響いて、自分に子どもができたら読ませたいと思いました。

井澤さん
選考会では、田端さんが熱烈にこの作品を推していましたね。

田端さん
つたない部分ももちろんありましたが、この作品には普遍的な魅力があると確信して、選考会では強く推させてもらいました。このインタビューでも、水品先生が子どもにも読んでもらうことを意識していたと仰っていましたが、それが明確にわかるような読みやすさも高評価のポイントの1つです。

――井澤さんはいかがでしたか。

井澤さん
私はベテランというほど業界歴が長くはないのですが、この作品は世界観が印象的で、読んでいると心が洗われるような気持ちになりました。小説を読んでこう感じるのは久しぶりでしたね。

――実際の選考会では、お2人以外の反応はどうだったのでしょう?

井澤さん
選考会では作品の内容よりも、「この作品をどこで出すのが適切か?」という議論が白熱しました。電撃文庫か電撃の新文芸かで意見がわかれる中、田端さんが強く推してくれたおかげで電撃の新文芸賞として受賞に繋がりました。

――部外者の立場からすると、どの作品を賞に選出するかがポイントになるのかな? と思っていたのですが、本作については“どこでどう出すか?”のほうがポイントだというのは意外でした。

田端さん
電撃文庫は「おもしろければなんでもあり」を標榜していますし、電撃の新文芸も「次のおもしろい、ここにあります!」を掲げ、その精神性は似ているので、どこのレーベルで出してももちろん問題ないという前提がまずあります。その上で、どのレーベルで出すのが一番インパクトを作りやすいか、というところを議論した結果、今回は電撃の新文芸賞という形になりました。

――作品のインパクトを最大化するためのジャンルわけとレーベルなんですね。

田端さん
どこで出すにしても、まずは「誰かに強く届けたい!」というメッセージ性は必要だと思います。その点で『明けの空のカフカ』には10代に向けたメッセージが込められていたと感じました。

水品先生
つばさ文庫で出せないかという話にもなったそうですよね。私自身もつばさ文庫への応募を考えていたこともあったので、それはそれでうなずけるお話でしたが。

田端さん
冗談半分ですけどね。子ども向けであることから「つばさ文庫なら行けますよね!」と言っていたら、肯定されつつも偉い人たちに一旦落ち着きなさいとなだめられました(笑)。

――個人的には『明けの空のカフカ』には、昔ながらの電撃文庫を感じるものがありました。

田端さん
カクヨムに掲載された『明けの空のカフカ』の読者のレビューにも「かつて電撃文庫が好きで、最近は読めていなかったが当時を彷彿とさせる作品を読めた」といったような感想がありました。本当にその通りだと思っていて、今回が電撃の新文芸賞を開設してから初の電撃小説大賞なのですが、その最初の受賞作が『明けの空のカフカ』でよかったと思っています。電撃の新文芸というレーベルの可能性を広げてくれたなと。

井澤さん
『明けの空のカフカ』は世の中の作品たちがいろいろな場所に羽ばたいていける可能性を広げてくれた作品だと思います。

――『明けの空のカフカ』の今後の展開について希望などあればお聞かせください。

水品先生
小説のオーディオブック化ができたら嬉しいです。音声であれば文章を読むのが苦手な人も楽しんでもらえるようになりますし、カフカたちに声が付いた様子も気になります。個人的な願望だと、いつか私が大好きなサンリオとのコラボができたら最高です。カフカとシナモロールとか、クレオとキティちゃんとかが並んでいたら、堪らないモフモフ感でとても可愛らしいと思います。

 あとは図書館などに置いてもらって、長く楽しんでもらえたら嬉しいですね。

――小説家として今後書きたいものなどありますか。

水品先生
『明けの空のカフカ』では、レギュレーションのために削った部分もあるので、そこをお見せできる機会があれば嬉しいです。他の作品だと、以前に書いていた恋愛小説を手直ししたいです。

――最後に読者へのメッセージをみなさんからお願いします。

水品先生
本作は子ども向けの作品だと思われる方もいるかもしれませんが、大人にこそ読んでいただきたい作品でもあります。昔ライトノベルを読んでいたけれど今は読んでない方から、ライトノベルに興味があるけどまだ読んだことがない方まで、ぜひ幅広い世代に読んでいただけたら嬉しいです。

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