電撃オンライン

『ANTHEM#9(アンセム・ナンバーナイン)』試遊レポート。ジェムを合わせて超絶コンボを決める新感覚のローグライト【BitSummit the 13th:電撃インディー#1048】

文:米澤崇史

公開日時:

最終更新:

 集英社ゲームズから発売予定のPC(Steam)向けゲーム『ANTHEM#9(アンセム・ナンバーナイン)』の試遊レポートをお届けします。

[IMAGE]

“デッキ構築型ローグライク”に敷居の高さを感じている人にこそうってつけのゲーム【ANTHEM#9】


 集英社ゲームズがパブリッシングを担当し、個人ゲーム開発者のkoedaさんが手がけるジェムマッチローグライトゲーム『ANTHEM#9』。

 7月18日~20日にかけて開催されるインディゲームの祭典“BitSummit2025”で、プレイアブル出展されます。今回は出展されるものとほぼ同じバージョンを、イベントよりも少しだけ先にプレイする機会をいただきましたので、感想を交えてゲーム内容を紹介していきます。

 本作は、いわゆる『Slay the Spire』に代表される、“デッキ構築型のローグライク”に近いゲームです。

 まさに現在進行系で大流行中のジャンルではあるのですが、よくも悪くもストイックな面があり、ゲームシステムを本格的に理解してからがスタートみたいな側面もあったりするので、敷居の高さみたいなのを感じたことがある方もおられるんじゃないかと思います。

 自分も「おもしろいんだけど難しい……」と感じがちなタイプだったのですが、本作に関しては、プレイを始めてからすぐに「めちゃくちゃおもしろい!」と感じられました。

 というのも、システムがシンプルでとっつきすいのが大きかったです。

 デッキ構築型ローグライクだと、個々のカードの性能を認識した上で、それぞれのシナジーを考えてデッキを組む必要があったりしますが、本作では1バトルに3種類までセットできる“スキル”がカードデッキに相当する要素になっています。

 エリアごとに交互にスキルデッキが入れ替わる仕組みなので、事前に3×2の2パターンを分を設定しておく必要はありますが、1バトルに影響するスキルは最大3種類までなので、非常にシンプルです。

[IMAGE]

 そのスキルを発動する際に必要になるのが“ジェム”というリソース。

 攻撃時は、使用するスキルを選択するのではなく、消費するジェムの組み合わせによって発動するスキルが変化する……という仕組みになっています。

 例えば“ハードエッジ”というスキルの発動に必要なジェムが赤1・青1、“ポイズンビート”に必要なジェムが青1・緑1だった場合、赤1・青1のジェムを消費すると“ハードエッジ”、青1・緑1を消費した場合は“ポイズンエッジ”が発動します。

[IMAGE]

 1ターンに発動できるスキル数に上限はなく、手元のジェムの組み合わせの数分攻撃ができるのですが、おもしろいのが、同じ色のジェムは数珠つなぎのように共有できること。

 先程の“ハードエッジ”と“ポイズンエッジ”の例なら、赤1・青1・緑1の順でジェムを消費することで、前半の赤1・青1の部分でハードエッジ、後半の青1・緑1の部分でボイズンエッジの発動条件をそれぞれ満たすので、重複した青1の部分のジェムを節約して2つのスキルを発動できます。

 個々は微々たる差に見えるんですが、ゲームが進めば進むほど凄まじい数のコンボが可能になるので、1の差が積み重なって、最終的に大きな差になっていきます。

[IMAGE]

 スキルの中には、3つ消費して発動するものもあるので、上記の組み合わせに赤1・青1・緑1で発動するスキルを設定できたりすれば、一度に3種類のスキルを発動させることも可能。これがうまくハマり、効率のいいコンボが完成した時の爽快感は抜群です。

 ただ、ジェムを選ぶ際には制限時間もあるので、あまり悠長にはしていられません。限られた時間の中でベストの組み合わせを選ぶ思考力の重要性みたいなところでは、パズルゲームに近いプレイ感覚もあるのかなと。

 また、ジェムの組み合わせは運任せというわけではなく、APというポイントを消費して手持ちのジェムの色を変えたり、特定のエリアに止まれば、スキルの発動に必要なジェムの種をカスタマイズできるといった要素もあり、プレイヤーの関与できる余地が多いのも特徴。

 シンプルなルールでありながら、ほどほどのランダム性と戦略性がしっかりと両立しているのが、非常によくできているなと感じた部分です。

STを削り、敵の攻撃をどれだけキャンセルし続けられるか【ANTHEM#9】


 もう一つ特徴的なシステムとして、“ST”というスタミナにあたるゲージの存在も挙げられます。

 スキルには、相手のHPとSTのそれぞれに与えるダメージ値が設定されており、STを一定量削ると、こちらに飛んでくる予定だった相手の攻撃をキャンセルすることができます。

[IMAGE]

 「HPダメージは高いけどSTダメージは低い」とか「HPダメージは低いけどSTダメージは高い」とか、スキル側にもいろいろなバリエーションがあります。

 本作にはHPを回復する手段が限られるので、攻撃のキャンセルは戦闘への影響が大きく、表示される相手の行動をしっかりと確認しながら、どのスキルを切っていくかの判断も重要。

 例えば相手の攻撃が1回しか来ないターンなら、一定以上STを削る意味はあまりないので、HPダメージを削るのに適したスキルをメインにしたり、ジェムを使わず温存して、複数回攻撃が来るターンに備えておく……みたいな戦略も効果的です。

[IMAGE]

 また、1ターンごとに選択できる“ブレス”というボーナス効果があるのですが、その中には相手の攻撃を1回強制的にキャンセルさせるものもあり、非常に強かったです。

 ただ、前提として本作は、ブレスや特定のエリアで得られる様々なボーナスで自分を強化しながら、奥にいるボスを撃破するのが主な目標。

[IMAGE]

 攻撃をキャンセルするブレスは、そのバトル内においては最強クラスの択なんですが、中にはスキルを永続的に強化してくれるブレスもあったりするので、その場限りの効果であるキャンセルを選び続けているとスキルの強化が進まずに、最後のボス戦で攻撃力が足りなくなることも。

 その場だけではなく、長期的な視点も含めて考えないといけないのも戦略性を生んでいます。

[IMAGE]

 ブレスの種類は多岐におよんでいて、一部のスキルで付与できる毒の効果を強化するみたいなピンポイントなものもあり、同じスキルデッキでのプレイでも、どのブレスを選んで進んだかで、最終的な性能がまったく違うようになるのも珍しくなさそうで、試行錯誤のしがいのあるシステムになっていると感じました。

個人で開発しているとは思えない洗練されたUIやアニメーション【ANTHEM#9】


 個人的にプレイして衝撃を受けたのが、UIやアニメーション演出のセンスの素晴らしさです。

 自分も少しゲーム制作に関わった経験があるのですが、デザインと機能性を両立させたUIを作るのってめちゃくちゃ難しいんですよね。

 とくに個人による開発だと、ゲーム部分がよくできていても、UIや画面演出が簡素だったりすることが多い印象なんですが、本作はデザインからアニメーションの演出に至るまで、あらゆる面が洗練されていて、いい意味で小規模開発らしさを感じないゲームとして仕上がっています。

[IMAGE][IMAGE]

 本作のUIやアニメーション演出は全体が美しく纏まっていて、これを小規模開発されている……というお話を聞いた時は衝撃を受けました。

 事前情報なしに本作をプレイして、個人が開発したゲームだと気づく人はほとんどいないのではと思えるレベルで完成度が高いです。

 ゲームシステムもよくできているのですが、こういう演出面の気持ちよさみたいなツボまでしっかりと押されているのは本当に素晴らしいと感じました。

[IMAGE]

 難易度選択も用意されていて、この手のジャンルに触れたことがない人でもプレイしやすいのもうれしいポイント。

 細かいところにまで配慮が行き届いていて、いかにこだわりをもって丁寧に作られているか、少し触っただけでも感じられるタイトルになっています。BitSummitに参加される方は、ぜひとも試遊されることをオススメしたいです。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります