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昼の世界へ踏み出す『夜廻』開発陣――日本一ソフトウェアが挑む新たな田舎暮らし生活SLG『ほの暮しの庭』インタビュー

文:滑川けいと

公開日時:

 日本一ソフトウェアが2026年7月30日に発売予定のNintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/Steam向けゲーム『ほの暮しの庭』。本作の開発者インタビューをお届けします!

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 『ほの暮しの庭』は、どこか懐かしい田舎暮らしを体験できる生活シミュレーションゲームです。開発は、『夜廻』シリーズを手がけたチームが担当しています。

 ホラーゲームとして人気を博した『夜廻』の開発チームが携わっているSLG……ホラーと思いきや、どうやらほのぼのとしたスローライフSLGのようですが……?

 本作の発表以来、ゲーム内容が気になっている方も多いことでしょう。あえて“田舎暮らし生活シミュレーション”というジャンルを選んだ理由、ゲームでは一体どのようなことができるのか、開発スタッフの溝上侑さんと勝又美桜さんにさまざまな質問をぶつけてきました!
※インタビュー中は敬称略

溝上 侑(みぞかみ ゆう)『夜廻シリーズ』や『MAD RAT DEAD』のディレクター。『ほの暮しの庭』では企画・ゲームデザイン・シナリオ演出を担当。

勝又 美桜(かつまた みお)グラフィックデザイナーとして『探偵撲滅』や『BARステラアビス』を始めとする数々のタイトルを手がけてきた。本作では開発責任者としてプロジェクトの進行管理や一部グラフィックの監修を担当。

『夜廻』のグラフィックを最大に活かす『ほの暮らしの庭』


――『ほの暮しの庭』の制作がスタートした経緯をお聞かせください。

溝上
私と勝又は『夜廻三』の制作に携わっていたのですが、このふたりの間で『夜廻』のグラフィックを使って何か新しいものを作りたいと話していたのがきっかけです。

 『夜廻』はホラーゲームということもあり、ボリュームが出しづらかったところがありました。ですので、本作ではもう少し遊びの幅を増やし、プレイ時間を確保できるようなタイトルにしたいと思ったんです。そこで、日常のシミュレーションゲームというジャンルを選びました。

 すごく暗くて夜しかないゲームを作ってきたので、私個人としてもいつか明るくて可愛らしい画面を作ってみたかったんです。『夜廻』にはない、昼間のグラフィックにも挑戦したタイトルになります。

 ですから、『夜廻』ファンの方々、そして弊社のユーザーにはぜひ本作をプレイしていただきたいですね。それに加えて、あまり弊社を知らない方々や他社さんの生活シミュレーションゲームをプレイしていた方にも新しい体験として触れてみてほしいです。

――本作の注目ポイントを教えてください。

勝又
コンセプトは日本の限界集落における生活シミュレーション、いわゆる“田舎暮らし”です。主人公が迷い込んだ村で、村人と交流しながら村の一員になっていく……というストーリーをみなさまには楽しんでいただけたらなと。

 それに合わせて『夜廻』から引き続き、ノスタルジックな懐かしいグラフィックをのんびりと楽しんでいただきたいです。懐かしい2Dならではの町並み、田舎や自然の表現といったグラフィックはかなりこだわって作っているので、『夜廻』との違いも楽しんでほしいですね。

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▲上が『ほの暮らしの庭』、下が『夜廻』のワンシーン。昼夜の違いもありますが、『ほの暮らしの庭』は画面全体を通して色彩が豊かなのがわかります。
溝上
『夜廻』は夜しかなかったので、非常に暗い、よく見えない画面でした。ですが、本作は明るいので、『夜廻』では見えなかった部分がよく見えると思うんです。当時もすごく一生懸命描いていたのですが、気付いてもらえない部分もあったと思います。今回は真っ向勝負で隠すところなしで全部描いています。綺麗な自然だったり、風景だったり世界観全体を楽しんでいただければと思います。

 注目ポイントはやはりこの“2D表現にこだわっている”ところですね。手描きのタッチだと懐かしい、温かみのある雰囲気が出ていると思います。2Dならではの動物の細かい仕草もそのアニメーションならではのところが大きいので、手描きの2Dの美しい背景や世界観に注目していただけたらなと。

勝又
本作のパッと見の印象は『夜廻』を感じてもらえると思うのですが、動いている部分は圧倒的に本作は多いです。川の流れもそうですし、人や動物も動いています。『夜廻』のグラフィックだなと思うのですが、違いはかなり感じていただけるかなと思います。息づいているんですよ。

溝上
『夜廻』は死んでましたね(笑)。本作ではキラキラしてます。

――『ほの暮しの庭』というタイトルですが、どのような思いが込められているのでしょうか。

溝上
この名前をつけたのは私なのですが、田舎暮らしがコンセプトとお伝えした通り、ほのぼのとしてゆったりとしたスローライフを表現したくて“ほの暮し”という造語を作っています。

 なので、ユーザー各々のペースでほのぼのとした暮らしを体験していただけたらと思います。

――『夜廻』はホラーだったこともありボリュームを出せなかったというお話がありましたが、本作のボリュームはどのくらいを想定されていますか。

勝又
いわゆるストーリークリアでいうと60時間程度を見込んでいます。ただ、本作はSLGなので収集要素や住民との交流なども可能です。それらを含めると100時間以上遊べるかもしれないです。

溝上
やり込みと言ったら、やっぱり日本一ソフトウェアですから。そのあたりもご期待に応えられるよう頑張って作っています。

勝又
絶賛開発中でして、パーセンテージ的に言うと65%くらいの進捗でしょうか。もう佳境に入っており、どんどんやり込みを強化していけたらと思っています。これから忙しい時期に入って……なんならもう忙しいです(笑)。

農業、狩り、釣り……リアルな田舎暮らし体験を追求した生活シミュレーション


――続いて、ゲーム内容について詳しく教えてください。本作は田舎暮らしを体験できるという内容ですが、実際にはどのようなことができるのでしょうか。

溝上
『ほの暮しの庭』は土地がすごく広いので、そこでいろいろなことができます。農業や畜産、あと釣った魚の養殖もできるので、遊びはたくさんあります。山間の村なので山菜取りをしに山へ行ったり、山にある石切り場で採掘をしたり。罠を仕掛けて野山の獣を捕まえる、または狩りで仕留めるということも可能です。

勝又
狩りといえば、弓を使って遠距離で獲物を狙うというアクション性があるんですよ。

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溝上
野生動物は基本的に人に出会うと逃げちゃうのですが、気付かれないようにゆっくり近づいて、少し離れたところから弓で当てなくてはいけない。そのため、狩りはハイリスクハイリターンで何も取れないという日もあるんです。

勝又
野生動物にもそれぞれ特性があって、当たったら逃げる動物もいれば、襲ってくる動物もいるんです。そのリスクとリターンをどう取るのかで狩りをやっていくわけですね。

溝上
リスクを取らずに毎日安定して稼ぎたいのであれば農業や畜産をやる、といったように自由に遊んでもらいたいですね。

勝又
ほかには季節の変化だったり、買い物などを通じて村人と交流できたり、仲よくなることで料理のレシピをもらえたり。できることが多岐にわたるので、プレイヤーの自由度は非常に高いです。

溝上
この多岐にわたるできることのなかから好きなものを選んで、自由プレイしていき、お金を稼いでいく……というのが基本的なゲームの流れになります。

勝又
効率を重視したい人、村や家のレイアウト作りを楽しみたい人、村人との交流を楽しみたい人、それぞれがそれぞれの楽しみ方ができるようになっています。好きなことから手をつけていって大丈夫ですよ。

溝上
他にも自治会の集金や墓参りなど、田舎の住人らしいイベントも用意されています。田舎暮らし生活SLGですから。ぜひみなさまに体験いただきたいです。

 ちなみに『夜廻』は田舎が舞台だと思われていたようなんです。私はすごい田舎出身なのですが、あれは全然都会ですよね(笑)。

――主人公が暮らすことになる村はどのような場所なのでしょうか。

溝上
主人公が暮らすのは“彼ヶ津村(かがつむら)”という集落なのですが、ここは山間部にある人口の少ない村です。小さい村ながらにも四季折々の行事だったり、お祭りだったりがある。昔からの風習を守っている、昔ならではの暮らしを続けている昔から変わっていない集落なんです。そこに主人公が迷い込むわけですね。

勝又
田舎ならではの暮らしは結構独特だと思うんですよ。村人同士はとても仲がいいのですが、迷い込んできた主人公は新入りじゃないですか。なので、村人は最初警戒するような素振りを見せてくるんです。

 ただ、村人たちと交流を深めると、心を開いてもらえますので、その過程を楽しんでもらえるとよいですね。最初こそ素っ気ないかもしれませんが、仲よくなると村での暮らし方のアドバイスをしてくれるかもしれません。共同体で暮らすという印象ですね。

溝上
村人と仲よくなるとその人の深いところまで知れるようになるので、表の顔と本音の部分とが明らかになっていくサブストーリーが描かれます。

 なぜ主人公が“彼ヶ津村”に迷い込んだのか……という部分も、ストーリーでわかるかもしれません。そのあたりはちょっとお楽しみということで。

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――季節のイベントがあるとのことでしたが、ゲーム内時間でクリアまでにはどのくらいの期間がかかるのでしょうか。

溝上
季節は春夏秋冬で1年に設定しているのですが、プレイヤーがシナリオをどんどん進めていけばその1年のなかでクリアできますし、数年かけてじっくり楽しむこともできます。ひと区切りをつけるタイミングは出てくるかもしれないですが、田舎暮らし生活SLGですから何年でも終わりなく遊べるようにしています。

勝又
季節ごとに収穫できる野菜などの収穫物も異なるんですよ。ほかにも釣れる魚や雑貨屋さんに売っている商品のなかに季節物が混ざるなどの変化があるんです。たとえば冬にこたつが売り出されるなどですね。村全体、システム全体を通して、季節感はかなり大事に作っています。

――こたつが売られるということは、家の中のカスタマイズもできるんですね。

勝又
はい。内装も結構こだわっている部分でして、部屋に置ける家具の種類は豊富に用意しています。また、一部の家具は色が変えられるなどバリエーションもかなり用意しているので、プレイヤーの個性を発揮して自分好みのハウジングをしていただきたいですね。

 家自体の改築も可能で、見た目も変えられます。農業や狩りでたくさんお金を貯めて、ハウジングに全部突っ込むみたいなプレイも全然アリですね。

溝上
最初は簡易小屋みたいな感じなのですが、お金を使って家をどんどん大きくしていく。その体験を楽しんでほしいです。

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勝又
家の改築もお金の使い道のひとつですが、狩りをするのにも素材が必要だったりとか雑貨屋さんで野菜の種を買ったりとか。どうしても“暮らし”なので、いろいろなところでお金を消費していくことになります。

 どこにお金を使っていくのかもプレイヤーそれぞれの判断になってくるのかなと。本作では主人公の衣服やアクセサリーなどを購入して着せ替えることもできるため、見た目にこだわることにお金を使うのもいいと思います。

 お金の稼ぎ方ですが、種を買って育てて、収穫できた野菜を出荷することで得られます。野菜には品質があり、肥料で土の質を高くすることで上げられるんですよ。品質が高いと売却金額も大きい。なので、品質を上げていってどんどんお金を稼ぐということもプレイヤーによっては可能です。畑にも普通のものと畝のものなど種類があり、作物によっては育成に向き不向きがあります。野菜作りもかなり奥深く作っています。

 また、野菜は加工も可能なので、たとえば漬物にして売るだとか、豆を収穫してそれを豆腐にして売るのか、醤油にして売るのかとか。どれが一番お金を得るのに効率がいいのかを楽しむプレイングもおもしろいと思います。

――ちなみにおふたりが好きなシミュレーションの要素はなんですか。

勝又
レイアウトにも繋がってくる、見た目の要素ですね。畑には通常のものと畝が作れるものと2種類があるので、ただ効率を重視するだけじゃなくて、見た目を考えて楽しめるという点が私個人的にはかなりお気に入りの部分です。

 今回水田も作れるのですが、水田も田舎っぽい雰囲気になります。秋になると水田の周りに彼岸花が咲いたりするんですよ。ロケーションも含めて、農業を楽しめるというのが気に入っています。ノスタルジックな風景も自分で生み出せちゃうというのがいい。自分で作っていても、すごくいいなって思うポイントです。

溝上
あえてひとつ選ぶのであれば、動物の仕草です。本作は2Dということでアニメーションがたくさん入っているのですが、動物の仕草にすごくバリエーションがあって可愛いんですよ。

 いろんな場所に生き物がいて、鳥だったらお魚をくわえてきたり、ニワトリだったら床をつついたり、棚に乗ったりするんですよ。仕草がいちいち可愛いので、ただ単に通り過ぎるのではなく、そうしたところにも足を止めて目を向けてもらえるとうれしいですね。

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まだまだ謎が多そうな『ほの暮らしの庭』。最新情報を知りたいなら公式Xをチェック!


――ニンテンドーダイレクトで公開されたタイトル発表動画では、最後に人の影のようなものが出てきたのですが、これは一体……?


溝上
影なんて見えていました?

勝又
実際そんなもの作った覚えはないんですよ。よく動画の最後に人が映っていると聞くのですが……そんなもの見えますかね?

 おかしいですね。まあ、今回動画を見られたのは『夜廻』ファンの方が多いと思うので、思い込みが作り出したのかもしれません。もう一回気になる方は、もう一度ご覧いただければと思います。

――な、なるほど……?

勝又
『夜廻』ファンのみなさまに「懐中電灯だー」と思ってくださると思って作ったのですが……。おかしいですねぇ。

――虫の声も……なんだかゾワっとしました。

溝上
本作は山での暮らしですから。虫の声や自然の動植物の音など、キチンと作っています。今も絶賛制作中ですが、ロケーションによって音の響き方などが大きく変わってくるんですよね。音は雰囲気を形作る大事なパーツだと思うので、すごくこだわりがあります。

勝又
春の草を踏む音と落ち葉を踏む音と雪を踏む音って、やっぱり違います。サウンドでも季節感を楽しんでもらいたいですね。鈴虫の声やセミの声など、季節の境目みたいなものを楽しんでいただけるかなと思っています。また、時間帯によるサウンドの雰囲気の違いも楽しんでいただきたいですね。

――今回東京ゲームショウ2025に出展されるということなのですが、出展内容について教えていただけますか?

溝上
基本的に展示を予定しています。『ほの暮しの庭』の世界観、雰囲気がわかるものを、ひと足早く楽しんでもらえるような出展を予定しています。

 また、来場されたお客さんにはノベルティとして、舞台となる彼ヶ津村をイメージした観光案内パンフレットや植物の種を配布する予定です。観光案内パンフレットは力作でだいぶ見応えがあるので、来場して手にしてほしいです!

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――ちなみに今後の情報出しについてうかがいたいのですが。続報はいつくらいになりますか?

勝又
今回のインタビューでもお話しましたが、かなり要素の多いゲームになっています。ですので、少しでも情報をお送りできるよう毎週公式Xでゲームの一部を公開していく予定です。少しずつみなさまにゲームの要素をショート動画にして公開していけたらと思っていますので、楽しみにしていてください。


――最後に本作を楽しみにしているユーザーにひと言ずつお願いします!

勝又
私自身作っていて、とても楽しいゲームに仕上がっていると感じています。農業や村人との交流など、楽しみにしている方がいましたらぜひご期待してお待ちいただければと思っております。

溝上
今までずっと暗いゲームを作っていたので、念願叶って明るくて可愛らしいゲームが作れて個人的には嬉しく思っています。やっと作りたかったものが作れたなと。それに伴って新たな表現などにもいろいろ挑戦していますので、ほのぼのとしたストーリーや表現を楽しみにしていただければ嬉しいです。どうぞご期待くださいということで、よろしくお願いします。

『ほの暮しの庭』商品情報

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参考小売価格:9,020円(税込)
発売日:2026年7月30日
販売元:日本一ソフトウェア

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ほの暮しの庭

  • メーカー:日本一ソフトウェア
  • 対応機種:Switch2
  • ジャンル:シミュレーション
  • 発売日:2026年7月30日
  • 希望小売価格:8,200 円+税

ほの暮しの庭

  • メーカー:日本一ソフトウェア
  • 対応機種:PS5
  • ジャンル:シミュレーション
  • 発売日:2026年7月30日
  • 希望小売価格:8,200 円+税

ほの暮しの庭

  • メーカー:日本一ソフトウェア
  • 対応機種:Switch
  • ジャンル:シミュレーション
  • 発売日:2026年7月30日
  • 希望小売価格:7,200 円+税

ほの暮しの庭

  • メーカー:日本一ソフトウェア
  • 対応機種:Steam・PC
  • ジャンル:シミュレーション
  • 発売日:2026年7月30日
  • 希望小売価格:8,200 円+税