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独創的アクションRPG『カセットボーイ』レビュー。世界を“回転”させて視点を変えれば道は拓ける【電撃インディー#1221】

文:電撃オンライン

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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、1月15日に発売される、ワンダーランドカザキリが開発した独創的なゲームシステムと切ない物語が融合したアクションRPG『CASSETTE BOY / カセットボーイ』のレビューをお届けします。

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 なお、電撃オンラインでは尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!


「君が見ていなかったから、月がなくなった」――哲学的な物語への導入がGOOD【カセットボーイ:レビュー】


 「君が見ていなかったから、月がなくなったんだ」主人公の少年は、夢のような世界でそう告げられます。

 本作の舞台は、“見えていないものは存在しない”という、非常にユニークで少し切ないルールで成り立っている世界。そんな世界で、少年は失われた“月のかけら”を集めるための冒険に旅立つことに。

 少年の部屋には、ラジカセが置いてあります。このラジカセは部屋の中で唯一インタラクトできるアイテムです。ラジカセからは冒頭で月がなくなったことを教えてくれた存在と思われるものからの声が届きますが、いったいどのように物語にかかわってくるのか想像を掻き立てられるでしょう。

 この幻想的な物語は、ゲームボーイを彷彿とさせる限定的な色使いで描かれたドット絵と見事に融合し、プレイヤーを強く引き込みます。ただ懐かしいだけではない、どこか儚げで、探索するほどに世界の謎に引き込まれていく。そんな独特の没入感が、本作の大きな魅力となっています。

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“集中”が世界を回す。ヘッドホンが拓く、新次元の謎解き体験【カセットボーイ:レビュー】


 序盤の冒険は、剣を振るい、フィールドを探索する、往年のアクションRPGのスタイルで進みます。しかし、少年がキーアイテムである“ヘッドホン”を手に入れた瞬間、本作はその真の姿を現すのです。

 ヘッドホンを装着することで、少年は“集中”し、なんとステージであるダンジョンそのものを、まるごと回転させることができるようになります。

 一見すると行き止まりに見える壁も、視点を90度変えれば新たな通路に。離れていて届かなかった足場も、世界を回せば目の前に繋がる。この“世界の回転”ギミックは、本作のゲームプレイの核であり、最大の面白さと言えるでしょう。

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 キャラクターが道をふさいでいるところは、回転させればそのキャラクターは存在しないことに。先に進んで回転を元に戻すと、通り抜けることができています。

 行き詰まって、何度も世界を回しているうちに、ふと特定の角度でピタリと道が繋がった瞬間の「これだ!」という閃きは、本作でしか味わえない快感に満ちています。

 これは単なるパズル要素ではありません。“見えていないものは存在しない”という物語のテーマと深く結びついています。視点を変え、世界を違う角度から“見る”ことで、それまで存在しなかった道が、プレイヤーの目の前に存在するようになるのです。

 この、世界のルールを自らの手でハックしていくような感覚は、他のゲームでは味わえない独創的な体験と言えるでしょう。

ボスはただの猫じゃない? 物語とシステムが織りなす知的な暗喩【カセットボーイ:レビュー】


 本作の知的な面白さを象徴するのが、冒険の序盤で立ちはだかるボス、月のかけらを拾って巨大化した猫です。ただ攻撃をよけて剣を振るうだけでは勝てません。“世界の回転”を駆使して、ギミックを作動させる必要がある、歯ごたえのある戦いが楽しめます。

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 しかし、最初のボスが猫であることには、さらに深い意味が隠されているように感じました。それは、有名な思考実験“シュレディンガーの猫”です。これは“観測されるまで、物事の状態は確定しない”という量子力学の考え方を示すものですが、まさに本作のテーマそのものではないでしょうか。

 プレイヤーが“観測”する(=特定の角度から見る)まで、道は繋がっているかどうかが“確定しない”。そして、画面外にいるキャラクターは“存在しない”ことになる。ボスが猫であることは、このゲームの根幹を成すルールの、見事なメタファー(暗喩)になっているのです。この事実に気づいた時、本作が単なるアクションパズルではなく、極めて知的な仕掛けに満ちた作品であることを確信するはずです。

 また、本作の魅力は奥深いメインストーリーだけではありません。寄り道要素として、純粋な謎解きに特化した“ダンジョン・チャレンジ”のようなコンテンツも用意されています。ここでは物語から一旦離れ、とにかく“世界の回転”ギミックを存分に駆使して、高難易度のパズルに挑むことができます。ストーリーの合間に頭の体操として楽しむもよし、クリア後にじっくりと自分のパズル力を試すもよし。

 アクションRPGとしての冒険と、純粋なパズルゲームとしての歯ごたえ、その両方を高いレベルで味わえるボリューム感も、本作の特筆すべき点でしょう。

 古き良きアクションRPGへのリスペクトと、独創的で心に響くストーリーテリング、そして“世界の回転”という革新的なゲームシステムが融合した『カセットボーイ』。月がなくなった世界の真実とは? そして、自室のラジカセが果たす役割とは――。この美しい謎に満ちた世界を、ぜひあなたの“視点”で解き明かしてみてください。


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