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【ほぼ週刊電撃スタッフコラム:オッシー】映画『爆弾』に『ハウス・オブ・ダイナマイト』。クリア後ネタバレ感想『ゼルダ無双 封印戦記』はタイマー爆弾で参戦と爆弾祭りや!

文:オッシー

公開日時:

※この記事には『ゼルダ無双 封印戦記』『ハウス・オブ・ダイナマイト』『爆弾』の重大なネタバレがありますので、ご注意ください。[IMAGE]

 みなさんこんにちは。映画って本当にいいものですね。いやー、映画『爆弾』が良すぎた。劇場版『呪術廻戦』も良かったけどさ(原作漫画の死滅回遊編読み直したくらい)。でも『爆弾』を見た衝撃が凄すぎて全部吹っ飛んだよね。ゲームもプレイしまくってるけど、今週は映画気分なオッシーがスタッフコラム26回目をお送りします。


 このコラムでは、狂ったようにプレイしている日々のゲーム体験や、ゲーム以外の趣味である映画鑑賞などで摂取したエンタメコンテンツを、短文レビュー形式でお送りしています。今回は爆弾縛り(?)のゲームと映画。スーパーネタバレ注意。

それは知らない人ですね……新キャラ多すぎて自分の記憶力を疑う

タイトル:『ゼルダ無双 封印戦記』
プレイ状況:クリア済み

 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム(ティアキン)』へと繋がる物語が描かれる『ゼルダ無双 封印戦記』。前作の『厄災の黙示録』も『ブレス オブ ザ ワイルド』の前日譚でストーリーがバチクソ良かったので、今作も大期待。前作はオリキャラのテラコが良すぎた。

 『封印戦記』の舞台は、『ティアキン』でゼルダ姫が飛ばされた遥か昔のハイラル王国建国時代。『ティアキン』では、各地に残る記憶でその一幕が見られるものの、全体像は分からず謎に包まれていた封印戦争が語られる。

 過去に飛ばされたヒロインが現代に戻って来るとか、大好物過ぎるんよ。『ある日どこかで』とか、『時をかける少女』とか、『インターステラー』とか、SF的な枠組みを使いつつ、時空を越えて巡り逢う系が大好きなんよ。そんなめっちゃ良かった『ティアキン』を補完する物語だっていうんだから、そりゃ期待しないほうが無理ってもんですわ。

 ただし、今回の懸念は、時代が離れすぎてるのよね。『災厄の黙示録』は、過去の話とはいえ、そこまで遡っては無かったので、四英傑が出てきてプレイアブルキャラクターになって盛り上がった。けど今回は遥か昔すぎて、『ティアキン』との関連がどうしても薄くなってしまうのよ。

 実際、今回のプレイアブルキャラクターはほとんど新キャラ。メインどころは『ティアキン』の記憶シーンでも出てきたけど、各種族の一般兵クラスはほぼ新キャラだったんじゃないかな。なので、あのキャラが使える! という驚きと楽しみはそこまで無かった。まあ設定上しょうがないんだけどね。

 各種族、メインの仮面賜ったキャラは出てくるけど、それ以外に2名ずつ新キャラがいる。でも、どうしても思い入れある知ってるキャラ使っちゃうから、強制出撃以外だとほぼ使わず。各キャラごとにアクションが特色あるから、使わないともったいないんだけど、そりゃどうしてもゼルダとかミネル使っちゃうよね。

 そんで本題、リンクはどうなるのよって話。出てくるといえば出てくるし、出てこないといえば出てこない……。いやね、謎ゴーレムさんおるやん。動き完全にリンクやん。謎ゴから騎士ゴになるやん。正体はアレやん。リンクと言っていいかは判断に困るよね……。

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▲謎ゴさんは謎だから喋りません。代わりに相棒のコログが喋る。

 でもリンクじゃなくて謎ゴレムスになったおかげで、謎変形からの謎シューティングが楽しめて良かったかもしれない。飛行形態て。完全に変形ロボ扱い。

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▲飛行形態になって爆撃する謎ゴさん。他にもフリーダムガンダムばりにハイマットフルバーストしたりするよ。

 まあそんな細けぇこたぁいいんですわ。何と言っても今回はガチの『ゼルダの伝説』。完全にゼルダ姫(とラウル)が主人公ポジション。今までの『ゼルダ無双』でも戦ってはいたけども、今回はまさに無双級の活躍を見せてくれる。リンク不在でも主人公の風格。エンディングでちょこっと例の龍が映るのもいいよね。本編思い出してちょっとウルッときたわ。

 筆者のお気に入りはミネル姐さん一択。『ティアキン』のパーティーメンバーで唯一、今作でも出てくるキャラ。『ティアキン』ではゾナウロボとして活躍したけど、今作では生身で参戦。相変わらずゾナウギア使いまくりんぐ、乗り移りまくりんぐ。なんなら移動要塞みたいなやつにも乗り移って操れる。単体でアクシズ落としできるレベル。最初からミネル姐さんが本気出してたら、ガノンドロフ軍圧倒できたよね、コレ。まさに無双。

 他にも、ラウルさん主人公ムーブだけど判断ミス多すぎ(獅子身中の虫入れすぎ)とか、ガノンさん人望無さすぎ(人望無いから自分の分身みたいなやつしか配下いない)とか、デクの樹さま炎上しすぎ(燃えないと最後のアレ出来ないもんね)とか色々とあるけど、『ティアキン』をやった上だと本当にニヤニヤする展開で楽しい。

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▲ラウルさんが強いしイケメンなんだけど、意外とやらかし多いんだよなぁ。

 爆弾要素は……リミットブレイクしてタイマー爆弾無制限投擲がボンバーマンみたいで楽しかったです(小並感)



 
お次は映画2本行ってみよ。和洋爆弾まつり。ネタバレボンバー注意。


子供に『マイクラ』でTNT爆弾ブロックで作られた家だよって説明したら一発で分かった

タイトル:映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』

 ついこないだまで劇場公開していたのが急にNetflixにきたので視聴。劇場で観に行きたかったんだけど、タイミング合わずスルーしていたのよね。近所のイオンシネマだと毎日一回上映とかだから観に行くのが大変なのよ。

 核ミサイルを撃つか撃たないかの攻防、というあらすじだけ知っていて、興味はめっちゃあった。これ系の映画は手に汗握ってやっぱり面白い。『クリムゾン・タイド』大好き。

 ただ実際見てみたらびっくり、核ミサイルの脅威はあるはあるけど、そこがメインじゃなくて、時間軸をバラバラにした群像劇、という構成の妙が主題の映画だった。『メメント』や『テネット』みたいな感じ。とはいっても、完全に逆順ではなくて、同じ時間における様々な視点を次々と見ていく。この構成が本当に秀逸だった。

 実際の内容は、核ミサイルが観測されてから着弾するまでの19分を複数視点で描くというもの。

 例えば、国防省視点では、観測してからミサイル迎撃するための緊迫の19分。最初は職場でお菓子食ってるゆるい感じからスタートして、ミサイル確認、「え、マジ? 嘘だろ?」という間にデフコンが発令されて……という流れ。

 日本でもJアラートが流れても、「はいはいまた海に落ちるのね」みたいな感覚になっているけど、実際はアメリカでもそんな感覚なんだろうね。本当にミサイルを撃ってくるわけ無い、みたいな感覚から、それが本当だと分かってからの慌てふためく様子がリアル。

 その他にも、着弾予想地点のシカゴの住民視点や、遊説中の大統領視点など、同じ時間帯を扱っているのに、それぞれの視点だと見え方が異なるのが面白い。

 やっぱりこういった核戦争勃発間近を描いた映画は、所属不明のミサイルに対して、大統領が反撃の核ミサイル発射ボタンを押すか押さないか、というのが最大の見所。その大統領視点を最後に持ってくることにより、今までの各視点(の様々な人間の思惑や行動)が、いかに大統領を迷わせ、そして判断させるのかに繋がってくるのが素晴らしい。

 例えば、劇中で度々、電話越しに聞こえていた暗号の羅列みたいなのが、核ミサイル発射コードの解除キーだったりするんだけど、最後までは機械音声みたいに無機質な読み上げなのよ。でも最後まで見ると、同じ音声なのに、声が震えているように感じるのよね。だって反撃の核ミサイルを撃ってしまったら、核戦争の引き金を引いて世界は滅びるかもしれないわけ。そんなのまともに読み上げられるわけ無いじゃん。

 その他、放蕩娘に父親から電話かかってきて邪険に扱うけど、実は父は政府高官で、娘のいるシカゴに核ミサイルが落ちることが分かっているから最後にかけた電話だったりする。父は強権発動で家族だけは助けようとするけど間に合わず、人払いして頭を抱えるシーンとか、政府高官なのに身勝手過ぎるとも思うけど、実際あと19分で家族が確実に死にます、となればそうなるよなぁ、とかね。

 最終的に、ミサイルがシカゴに落ちたかどうか、大統領が反撃の核ミサイル発射ボタンを押したかどうかは明言されずに終わるのも良い。本作では爆発シーンは皆無。でもきっと鑑賞したみんなの心の中では、恐ろしい結末が浮かんでしまうことだろう。薄氷の上の仮初の平和はいとも容易く破られるのだ。それこそが、タイトルの『ハウス・オブ・ダイナマイト』。

 実は息子と鑑賞していたのだが、複雑な構成にあまり理解が出来なかったのか、「ハウスオブダイナマイトってどういうこと?」と訊かれた。ちょっと考えて、「『マインクラフト』でTNTブロックで作られた家に皆で住んでいるようなもの。みんながルールを守って生活していれば問題ないけど、誰かがフザケて火を付けたらみんな死んじゃうよね? 現代はそんな状態でみんな暮らしているってこと。怖いよね。」と答えたら納得してくれた。『マインクラフト』って凄い。

あ、これヤバい方(良い意味で)の佐藤二朗だ!

タイトル:映画『爆弾』

 毎週映画を観る
筆者による、今年の最優秀邦画賞待ったナシ映画。めちゃくちゃ面白かった。

 鑑賞した人は口を揃えて言うだろうが、佐藤二朗による佐藤二朗の為の佐藤二朗映画。だって
作中7割くらいが取調室にいる佐藤二朗の顔のアップなんだぜ。主演は山田裕貴だけど(山田裕貴の演じる類家もいいキャラだけど)、そんなの関係ねえ、この映画の主役は間違いなく佐藤二朗。

 佐藤二朗はコメディ俳優のイメージが強いと思う。福田雄一監督作品だと毎回出てるし。福田監督作品はノリが合わないので敬遠することも多いんだけど、たまに見ると佐藤二朗のコメディーノリがパターン化していて、正直あまり好きでは無かった。

 一方、シリアスな作品に出る時の佐藤二朗はマジで怖い。映画『さがす』や『岬の兄妹』の佐藤二朗は鬼気迫っていて本当に怖かった。あの佐藤二朗を知ってしまうと、コメディの時の佐藤二朗も怖く感じてくる。そのくらい怖い。その前提で今回の『爆弾』は、純度100%ヤバい方の佐藤二朗です。ありがとうございます。本当に最高でした。

 演技的には、コミカルな部分もあるのよ。特に序盤は、一見コメディ佐藤二朗な装いもある。ただその裏に潜む純粋な悪意の片鱗がダダ漏れしているので、物語冒頭にある刑事役・染谷将太とのやり取りから、背筋がゾクゾクしてくる感覚がある。

 純粋な悪意と言ったけど、そうとも言い切れない。作中で染谷将太は“無邪気”と表現したが、それも一理ありつつも、その一言では収まらない、自己顕示欲や嫉妬心や絶望が入り乱れて、とにかく“恐ろしい何か”に成り果てている。
それが佐藤二朗演じる人物・スズキタゴサク。

 そう、佐藤二朗演じる役名はスズキタゴサク。実名とは到底思えないが、最後まで身元不明なままなので、ずっとスズキタゴサク。主人公の類家(山田裕貴)からは「タゴちゃん」と呼ばれたりする。
おいおい、タゴちゃんと言えば当コラムでも大人気(当社比)の田語ライムちゃん(※画像参考)やんけ。

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▲【参考】FMV界のタゴちゃんこと田語ライムちゃんのご尊顔。

 それはさておき、このスズキタゴサクが自販機破壊と暴行でしょっぴかれて、取り調べを受けるところから物語は始まる。そして終始取調室で終わる。それなのに、めちゃくちゃに面白いのだ。

 この取調室で、スズキタゴサクは爆発テロの予告めいたことをし始める。それが当たり、さらにいくつかの爆弾を予言し始める。当然、警察は犯人がスズキタゴサクだと断定し、取り調べを続けていく……というある意味密室劇(実際は外の爆発シーンや捜索シーンもある)。スズキタゴサクはかなりの切れ者で弁も立つので、取調官やその周辺の警察も巻き込んで密室劇は続いていく。

 ファーストバウトは染谷将太演じる等々力。スズキタゴサクの危険性に気づいたものの、警視庁管轄になり所轄刑事の等々力は早々に外される。以後は外側で独自の調査を開始。外回りチームでは一番切れ者で活躍していたと思う。終始、諦念を漂わせた表情が上手い。

 セカンドバウトは渡部篤郎演じる清宮。かなりのベテランで強者感も強かったが、度重なるスズキタゴサクの心理的揺さぶりに負け、理知的な装いを脱ぎ捨ててブチギレたところで退場。冷静なようで苛立ちが隠しきれない演技が素晴らしい。さすが名優渡部篤郎。

 インターミッションとして、序盤から小者感を出す巡査長の伊勢。取り調べの書記なのでずっと取調室にいるが、スズキタゴサクと二人きりになったタイミングで翻弄され、功名心をくすぐられる形で良いように操られる役どころ。でも文学部出身で、スズキタゴサクの出す謎解きの石川啄木の詩を一瞬で看過したところだけは輝いていた。

 サードバウトは伊藤沙莉&坂東龍汰の外回りお巡りさんチーム。基本的にはずっと外回りチームなのでスズキタゴサクと絡まないが、間接的に色々としてやられ、激怒した伊藤沙莉が取調室に乗り込んでくる。その際のスズキタゴサクの言動は感動すら覚えるほど気持ち悪いので必見。「殺したい、という欲望」を向けられることを望むスズキタゴサクは無敵すぎる。

 ファイナルバウトはいよいよ主人公の山田裕貴演じる類家。ボサボサで服装にも頓着しないテンプレ天才刑事だが、ちゃんとコミュニケーションが取れるというか、頭を下げて人に頼み事ができるのが意外だった。ただそれも、すべてを理解した上で人を操るための行動、というのが徐々に分かってきて、単なるテンプレ天才を超えた存在、という演出になっている。

 つまり、スズキタゴサクと類家は同類なのだ。それは作中でも頻繁に言及されるし、類家自身もそれを早々に認めている。その上で、「破壊するのは簡単だが、維持するほうが難しい(ので面白い)」と言ってのける類家。それを複数人の凡人を屠ってきたスズキタゴサクが迎え撃つ。怪物同士の戦いの始まりだ。これが最高に面白い。

 最終的な展開はぜひ見てもらいたいが、「踏みとどまれるか、否か」という一線において、スズキタゴサクと類家が分かたれているのが、この作品のテーマなのだと強く感じた。

 紛うことなき傑作だが、難点もある。尺の問題もあるのだろうが、最後の方は若干心理描写が雑に感じ、動機(というか行動原理)に納得できない部分もあった。ただ、それも気にならないほどの没入感があるので、140分の上映時間があっという間に感じた。

 
ネタバレ感想を書いていてなんだが、とにかくネタバレを踏む前に観て欲しい!

 洋画でも邦画でもカリスマ的なヴィランというかサイコパス殺人鬼はいるが、
スズキタゴサクはレクター博士(『羊たちの沈黙』)やジョン・ドゥ(『セブン』)に並ぶ存在と(勝手に)認定します! 売れて続編の『爆弾2』も映画化キボンヌ。

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