電撃オンライン

映画『TOKYOタクシー』が泣けたけど実質YOKOHAMAタクシー。オート戦闘が進化しすぎな『ドラゴンルインズ2』クリア後感想【ほぼ週刊電撃スタッフコラム:オッシー】

文:オッシー

公開日時:

※この記事には『Dragon Ruins II』、映画『TOKYOタクシー』の重大なネタバレがありますので、ご注意ください。

 みなさんこんにちは。先日、脳ドックに行ってきたんですわ。色々とガタがくる歳なので、ちゃんとメンテナンスしないと、ということで。特に最近、物忘れが激しいので、なんなら重大な病気が見つかるんじゃないかってビクビクしながら行ってきましたわ。結果、どこも異常無し。健康優良児(おっさん)。いや良いことなんだけど、原因が無いとそれはそれで対処しようが無くて困るよね。ゲームやってると指先使うからボケないと信じて育った世代オッシーのスタッフコラムもはや30回目。いつもお付き合い頂きありがとうございます。

[IMAGE]

 このコラムでは、狂ったようにプレイしている日々のゲーム体験や、ゲーム以外の趣味である映画鑑賞などで摂取したエンタメコンテンツを、短文レビュー形式でお送りしています。今回はゲームと映画いくぜ。松竹創業130周年記念(凄すぎない?)ネタバレ注意。

ベンチャー企業の経営者が言うところの「走りながら考える」ってこういうこと

タイトル:『Dragon Ruins II』
プレイ状況:PS5版 クリア済み

 戦闘完全オートウィザードリィとして好評だった『Dragon Ruins』に続編が登場。前作は1マップだけで割とすぐにクリアできてしまったが、今作は倍増どころじゃない。クエストごとにダンジョンが用意されているので、15個もダンジョンがある。

[IMAGE]
▲難易度ごとに分けられたクエストごとにダンジョンがある感じ。

 このゲームは敵も味方も完全にオート戦闘。しかもデフォが高速設定なので、あっという間に戦闘が終わる。死にそうだから回復しようとか、こっちの敵死にそうだから先に攻撃しようとか、そういう戦略性は無し。勝手に状態異常で戦線崩壊して全滅とかざらにある。ただこれが良い。疲れたゲーマーの心に染み入るのよ。

 いや確かに、『ウィザードリィ』は戦闘が魅力だという意見も分かる。呪文回数の残りを計算しながら潜って、ギリギリで引き返すんだけど、毒の計算間違えてダンジョン出口の一歩前で力尽きたりね。そういうヒリヒリした戦闘・探索が醍醐味、っていう意見も分かる。

 でもさ、疲れるじゃん。心が折れたりするじゃん。我々も若くないのよ。どんなに理不尽な回転床に惑わされても、罠解除失敗して壁の中にいても、手塩にかけて鍛えたマイキャラがボーパルバニーに首を刎ねられてもさ。若かったら何とかなりそうだけど、心がおっさんだと、現実でもツラいのに、なんでゲームでもこんなツラい目に遭わなきゃいけないんだってなるのよ。

 それがさ、『Dragon Ruins』はあったけえのよ。いや見た目は『ウィザードリィ』よ。ダンジョン探索や宝箱の罠解除、宿屋でのレベルアップやフレーバーレベルで浮かび上がってくる世界観やストーリー。まんまWizなんよ。でもあったけえ。自動戦闘ってだけで『ウィザードリィ』の精神負担がぐぐっと減るのよ。探索して、Wiz的な気分は味わえるけど、その実はダンジョンウロウロして戦闘眺めているだけってね。これはもう焚き火眺める長尺動画と同じ、ヒーリングなんすわ。

[IMAGE]
▲こんな感じで勝手に戦ってくれる。

 前作も大好きだったけど、さすがにラスボス倒しちゃったらやるモチベ湧かないので、すぐに終わっちゃうのだけが難点だった。

 それが今作だと、ダンジョン爆増。1から15に増えた。増えすぎ。もちろん、一つのダンジョンは短め。でも敵は結構強くて、ワントライでクリア出来る感じじゃない。ちょっとずつレベルを上げて装備を整えて行動範囲を広げていく楽しみは健在。それが×15。増えすぎ。

 キャラビルドも深みが増した。イチから作る感じじゃなくて、デフォキャラからパーティーを組むのだけど、デフォキャラがめっちゃ増えてる。侍とかNINJAとかも勿論いるが、人外とかもいる。あと巨人とかも唐突にいる。巨人だし半裸。仲間に誘うのに勇気いる。そもそも人外に動物とかいるけど意思疎通だいじょぶそ?

[IMAGE]
▲筆者はパーティー内でカップリング作る派だからこんな感じ!


 さらに、5レベル上がるごとにアビリティみたいなのを選択して付けられる。これで個性が付けられるのはいいね。僧侶だけど手先が器用で罠解除得意キャラとか、くノ一にクリティカルアップ盛って必殺キャラとかね。まあオート戦闘だから実際に機能してるかは分からない。ええんよ。初代『ウィザードリィ』だってACが実は機能してなかったバグあったけど、みんな何となく強くなった気がしてたやろ。プラシーボ効果やで。

 戦闘の快適さも上がっている。オート戦闘は前作から変わらないんだけど、なんか戦闘中に動けるんだよね。Wizよろしく、玄室に入ったところがエンカウントポイントなわけ。普通だったら、そこで敵を全滅させるか逃げるかするまで戦闘が続くわけじゃん。ところが本作は、戦闘中も動けるの。玄室に宝箱あったら開けられるわけ。でも戦闘はオートで続いている。どんな状況やねん。玄室によっては戦闘中にウロウロしてダメージ床踏んで全滅の危機とかもある。いいから戦闘に集中しろ。

[IMAGE]
▲戦闘しながら普通に探索できる。よく考えると結構シュール。

 また、戦闘が終わってないのに玄室から出ると逃げた扱いになるっぽい。だからオート戦闘見守って、やばくなったら外にでればいい。それどころか、戦闘中に帰還アイテムとかも使える。ボスからは逃げられないとかも無い。普通に帰れるし、街からその場にワープで戻れる。主人公たち器用すぎない?

 この『Diablo』のポータル的なヤツが便利なのよ。ダンジョンの奥まで潜って、クエストボス倒すじゃん。そんで入口まで戻って報告するとお金がもらえるわけ。で、再度クエスト受けると、また奥まで潜ってボス倒さなきゃならないの辛いじゃない。ところが、この帰還アイテム使うと、同じダンジョンだと帰還アイテム使った地点に戻れる。そこが、ボスのいる玄室だと、ワープで戻って一歩歩くとまたボスと戦えるわけ。以下繰り返し。

 確かに、それを防止するために、帰還アイテムは道具屋で買えるんだけど、買うごとに単価が上がるようになっている。でもクエスト報酬>帰還アイテムのウチはプラス収支でボスだけ狩れるわけ。これが効率よくて楽しい!

[IMAGE]
▲街に帰還すると減った体力を回復する分、お休みするんだけど、後半は数カ月休んだりする。もっと働け。

 いやね、本作はとにかく金欠なのよ。キャラのレベルアップにもお金が必要だし、アイテム買うのにもお金が必要。武器も鍛冶屋で鍛えられるんだけど、これがグレードアップ分岐とかもあってお金がいくらあっても足りない。でも雑魚敵狩っても微々たるお金しかドロップせず、一円も落とさない敵もざら。なので常に金欠なわけ。

 ところがこのボス連戦錬金ならサクサククエスト報酬が貰える。ボス戦とはいえ、戦闘は秒で終わるので周回も楽。作業といえば作業なんだけど、どんどん溜まるお金にヒーリング効果ありあり。『クッキークリッカー』みがある。

 そうしていくとレベルも上がるし武器も強化できて、さらに上の効率を求めて高難易度ダンジョンに潜って……と止まらない。結局、ダンジョン数は増えてもあっという間にラスボスまで倒しちゃった。とはいえ、今回はクリア後の高難易度ダンジョンもあり、裏ボスもかなり歯ごたえあるので、また延々とレベル上げやハクスラを楽しめる。

[IMAGE]
▲ラストダンジョンは前作と同じでドラゴン討伐。いいね。

 最近はSteamとかでも作業のお供的なデスクトップ常駐型ヒーリングツール増えてきたけど、これも用途としては近しいと思う。ゲーマーの癒やしって、チャリンチャリン溜まるお金とか、定期的に鳴り響くレベルアップの音とかなんだなって再認識。ゲームで疲れてゲームで癒やされるなんてゲーマー冥利に尽きるってもんよ。


 お次は映画編。まさかの感動系。ホラーとかサイコサスペンスばっかり観ているわけじゃないのよ。ネタバレ注意してくだされ。

後半はほぼYOKOHAMAタクシーだけど、東京ディズニーランドみたいなもんだからセーフ

タイトル:映画『TOKYOタクシー』

 松竹創業130年記念作品。130年って凄すぎない? 弊社角川書店が創業80周年とかで歴史ある~とか思ってたけど、さすが天下の松竹はレベチが過ぎる。世紀超えてるじゃん。

 そんな歴史の重みしか感じない松竹の記念作品が『TOKYOタクシー』。東京でタクシーって、急になんか身近になったと思うやん? ノンノンノンののんのんびより。これがまた、人間の人生の重みを感じさせる作品になってるのよ。

 いやね、普段はサイコによる連続殺人事件が起こるホラー映画とかさ、人間の嫌なところを凝縮したイヤミスとか好んで観てるよ。だからタクシーといったら、乗客が人気の無い場所で乗ってきて、目的地が墓地で~みたいな幽霊系とか、乗客が実は殺人鬼で~みたいなサイコもののイメージしか無いわけ。そんな要素、名優が揃い踏みの感動作『TOKYOタクシー』にあるわけないじゃん。(鑑賞後)……あったわ! まあかなり意訳してだけど……(正解は最後に)。

 主役はかの名女優・倍賞千恵子(御年84歳)。相方はキムタクこと木村拓哉。『ハウルの動く城』(2004年)コンビやんけ! なんでも二人の共演は『ハウルの動く城』以来なんだって。というか『ハウルの動く城』20年以上前なんか…そら年取るわ。倍賞千恵子は『ハウルの動く城』でヒロインのソフィー役。お婆ちゃんから子供まで全部やっていた。さすがに子供時代は若干厳しかったと思うけど、だってその時ですら還暦過ぎてたわけだもんね。ちなみに本作では、倍賞千恵子の幼少期は蒼井優が演じてる。

 そんな二人の役どころは、タクシーの運転手(キムタク)と乗客(倍賞千恵子)。以上。マジで。それ以上でも以下でもないのよ。

 いや、劇場で本作の予告を何回か目にしてたけどさ。絶対そんなわけないと思うじゃん。だってキムタクと倍賞千恵子だよ。松竹130年記念作品だよ。筆者レベルになると、あらすじすら観る前から確信してたよね。キムタクは倍賞千恵子の生き別れの息子だろうって。たまたま乗り合わせた客と小粋なトークをしていく内に、実は生き別れの息子だって気付くパターンだろうってね! ボクは(こういった邦画の泣かせ展開に)詳しいんだ!

 ……まったく違いました。赤の他人です。お詫びして訂正致します。

 まったくの赤の他人なんだけどさ、それが逆にいいのよ。赤の他人で、なんなら本来はすれ違いすらしなかった二人が、たまたまタクシーの運転手と客で出会って、たった一日で絆(というより「縁」かな)を繋ぐ。ただそれだけの映画なんだけど、めちゃくちゃ深くてじんわり染み入るのよ。

 さすが名匠・山田洋次監督。油ギットギトのジャンクフード(も好きなんだけど)じゃなくて、出汁の旨味が染み入ったおでんのような味わい。久しぶりに山田洋次監督作品観たけど、子供の時は気づかなかった深みが映画から感じられる年齢に自分がなったことに、自分でも驚いたよね。なんか嬉しくなった。

 構成は非常にシンプル。個人タクシー運転手のキムタク演じる宇佐美浩二が、知り合いの運ちゃんから譲ってもらった(押し付けられた?)長距離のお客さん、それが倍賞千恵子演じる高野すみれ。すみれは自宅やらを引き払って、神奈川にある老人ホームに入居するためにタクシーを呼んだの。長距離ではあるけど、東京の葛飾から神奈川の葉山までの旅程。それだけ。高速で行ったら2~3時間で着くんじゃないかな。

 でも、すみれは、これが東京の見納めになるから、ということで、様々な思い出の地を巡りたいと申し出る。それに付き合う浩二。誠実ではあるが、(家庭でも色々とあり)ややそっけない対応の浩二と、とにかくお喋りなお婆ちゃんのすみれ。最初は噛み合わない二人も、すみれが自分の半生を語り始めてから、徐々に近づいていく……。

 いやー、このすみれの半生が凄いのよ。東京の下町で生まれ育った器量良しではあるんだけど、波乱万丈というかなんというか、あまり人や運には恵まれなかった。恋と別れ、残された私生児。モラハラDV夫との結婚とその衝撃的な顛末……。80年以上に渡るすみれの人生が、そのまま日本(東京)の歴史になっている。国の歴史と人ひとりの人生って、分かたれているようで、そんなことは無いんだなって、当たり前だけど実感した。若い頃を演じた蒼井優の演技が素晴らしかったのもあるけど、それらの出来事を昨日のことのように語る倍賞千恵子にやっぱり凄みを感じた。

 そんな人ひとりの(割と重たい)人生史を、断片的に後部座席から聞かされるわけ。キムタクもどんな顔して良いのか分からないながら、相槌を打ちながらただただ聞いているしかできない。でも、ここのキムタクの演技もいいんだよね。気苦労が多くて、頻繁にため息ついているキャラなんだけどさ。でもすみれの人生の否定はしないで、ずっと寄り添っているの。

 今更だと思うけど、キムタクって声がいいなと思った。往年のドラマとか、『ジャッジアイズ』とかでしか聞いたことなくて、特にその時は思わなかったけど、あの特徴的な低めの声で相槌を打ってるだけで、なんか落ち着くんだよね。きっとすみれもそれで信頼を寄せていったんだと思う。

 キムタクのいつもの主演作みたいに、特にカッコいい名言を決めるキャラとかでは無いんだけどさ。すみれの(かなり重い)人生の物語を聞いて、気の利いた言葉を紡げ無くて、それでも悩んだ挙げ句、思いやりのある素直な言葉が出てくる、っていう実直な人柄が表現されていてとても素晴らしかった。すみれの「死にたかった」という言葉に、「それでも生きていて良かったと思いますよ」っていう、キムタクの言葉、決して派手では無いけど心を打ったね。

 というかやっぱキムタクってカッケーんですわ。何回か車を降りて一緒に景色を眺めながらお茶したりするんだけどさ。ちゃんと老婦人をエスコートしてて、それが様になるんだよね。さすがキムタク。最後、二人で高めのレストランで夕食を取るんだけど、そこで「最初から思ってたんですけど、爪キレイですよね」って、普通84歳のお婆ちゃんに言える? 実際、すみれは渡米してネイリストの修行をしていて、爪はキレイにしてあったんだけど、なかなか言えないぜ。さすがキムタク。なお、本作には明石家さんまと大竹しのぶの元夫婦がカメオ出演(というか声だけ出演)してるんだけど、これもキムタクの交友関係の成せる技なんだろうかと勝手に思っていた。さすがキムタク。

 正直、物語の筋は分かりやすくて、(キムタクが生き別れの息子じゃなかったこと以外は)、ほとんど展開は読めていた(送り届けた後のアレとか、最後の手紙の内容とか)けど、そういうのは関係ないよね。筋が分かっていても、上質な役者と上質な演出でしっかり観られるし、感動できる。一例を挙げると、最初はドライブレコーダーの車内カメラみたいなアングルなの。運転手のキムタクと後部座席に座るすみれのカットね。それが、心の距離が近づくにつれて、助手席に座るんだよね。カメラも横からのアングルで、距離も近くなる。こういう演出で、しっかり二人の距離が縮まったことが分かるからさすがだよね。

 ツッコミどころとしては、後半はほとんど神奈川(というか横浜)なので、実質YOKOHAMAタクシーやんけとは思った。あとすみれの決死のアレがタマヒュン必至なので、男性諸君は注意されたし。

 なお、最初の方で言ってたタクシーモノあるあるだけど、途中で誰もいない座席に蒼井優いたし、すみれは○○なので、意外とタクシーモノあるある踏襲してるなと勝手に思ってました。まあそんなことを『TOKYOタクシー』観ながら思ってるやつは多分筆者しかいないわな。誠にごめんなさい。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります