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『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』開発者・堀井亮佑氏インタビュー。ただのリメイクにしない勇気と、峯義孝という男の孤独を描く挑戦

文:信濃川あずき

公開日時:

最終更新:

 セガが2月12日に発売するPS5/PS4/Switch 2/Xbox Series X|S/PC(Steam)用ソフト『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』の開発者インタビューをお届けします。

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 『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』は“変わる伝説、新たな歴史”というコンセプトのもと、2009年にPS3で発売された『龍が如く3』をリメイクした『龍が如く 極3』と、完全オリジナルストーリーで描かれる新作『龍が如く3外伝 Dark Ties』の2作品を同時収録した、シリーズ20周年を飾る意欲作です。

 今回、本作のプロデューサー兼ディレクターを務める堀井亮佑氏にインタビューを実施。各メディアから寄せられた質問に、堀井氏が熱く語ってくれました。リメイクに対する覚悟、キャスティング変更に込めた思い、そして峯義孝をはじめとしたキャラクターたちへの深い愛情が伝わってくる内容です!

 なお、本作の体験版が近日中に配信されるとのことですので、そちらもあわせてチェックしてください!

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▲堀井亮佑氏。龍が如くスタジオのプロデューサー兼ディレクター兼作詞家。
※このインタビュー記事にはストーリーのネタバレが含まれています。

似たものを作っても意味がない【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――まずは自己紹介をお願いします。

 『龍が如く』シリーズのディレクターの堀井です。本作ではプロデューサーとディレクターを両方担当しています。

――極シリーズとして過去作をリメイクしていく中で、手応えはいかがですか。

 『龍が如く 極2』からかなり時間が経ってしまっているので、正直『極2』のことはほぼ覚えていないんです(笑)。

 今回の『極3』に関しては、『龍が如く3』がすでにあるもの、今もプレイできる状態として存在しているので、似たものを作ってしまっては意味がないというのを軸にしています。とにかく極がどうとかは置いておいて、「『3』を今、僕たちだったらこう作るよ」という観点で、新しく作り直すくらいの気持ちで開発に向かいました。

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 結果的には、本当にリメイクというのがもったいないくらい、新しくフレッシュなものにできたなと思って満足しています。

――実際にプレイすると、新録部分がかなりありますね。柏木さん(柏木修)が撃たれたときの桐生さん(桐生一馬)の演技も変わっていたり。新録を入れた基準や思いを聞かせてください。

 柏木さんの部分などは、元々あったものを撮り直した部分で、メイキング動画にも出ていますが、黒田さん(黒田崇矢さん/桐生一馬役)と相談して決めたところが多いです。

 柏木もそうですし、力也(島袋力也)や峯(峯義孝)もそうですけれど、『龍が如く3』を作った時と比べて、シリーズが10何年も続いてきた中で、キャラクターの位置づけも変わってきたりしています。そういったところで違和感のあるものは撮り直したいなと。

 エモーショナルなシーンは、やはり新鮮なものの方が胸を打つと思うので、そういったところを中心に撮り直しています。

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 ただ、元々あったものを同じように撮り直すケースはそれほど多くなくて、どちらかというと全く新しいシーンとして追加したものが、今回の新録では圧倒的に多いです。

 メインストーリーについては、原作の『龍が如く3』は割とスピーディーな展開だったのですが、「もうちょっと説明があってもいいだろう」という部分がありました。例えば力也との関係性ももっとゆっくりと、彼がどうして桐生に憧れるようになったのかを丁寧に描いてあげないと足りないなと。

 そういったところを考えて、かなりのシーンを追加しています。追加したことで流れが変わるところも当然いろいろあるので、それらも全部作り直し、撮り直しという形でやっています。

――ストーリーを深く描くという点で、キャスティングも変更されていますね。なぜこの方を、という思いを聞かせてください。

 キャスティングの話はいろいろあるのですが、力也や浜崎(浜崎豪)といったメインキャストを変えることは、必要だと思っていました。

 なぜなら、『3』と同じ役者で同じ演技でそのままやっても、体験として変わらないんです。僕らはわざわざ1年かけてこの作品を作るわけなので、「だったらオリジナルをやればいいじゃないか」となってしまう。

 ただ、僕らは『3』を消したいわけではないんです。『極3』ができたから『3』はもういらない、なんてことは全然ないですよ。ずっと『3』は残り続けてほしいと思っています。

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 力也や浜崎はゲームの中で登場シーンがすごく多いじゃないですか。そこが違うキャスティングになると、影響の範囲が大きいんです。

 同じシーンでも、何十回も見てきた中で、違う役者さんだとどうなるんだろう、香川さん(香川照之さん/浜崎豪役)がここにいるとどうなるんだろうと、ワクワクするじゃないですか。いいか悪いか置いておいて、見てみたい。そういう期待感やワクワク感を出すには、ある程度のキャスティング変更が必要だと思っていました。

 当然、批判が出るのもわかっています。でも、僕たちは新しい価値を生み出したい、今回のプロジェクトをフレッシュにしたいという思いがあるので、キャスティングは影響範囲も含めて変えたというところが大きいです。あとは、役者さんとして僕たちが「この人が演じるのを見てみたい」と単純に思った方にお願いしました。

――オリジナル版と『極3』で、大きく変わったなと感じたキャラクターは誰でしょうか。

 やはり香川さんの浜崎ですね。元々の浜崎を担当されたジョージさん(高橋ジョージさん)の演技もすごくよかったのですが、それとはまた違った、いやらしいというか、性格の悪い演技をされるので、さすがだなと思いました。

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 力也も、元々のキャラクターの子分っぽい力也もよかったのですが、笠松さん(笠松将さん/島袋力也役)が演じることでリアリティが増したというか。「こういう若者いるよね」という感じがすごく出て、キャラっぽくないんです。くすぶってる若者ってこうだよね、という感じがすごく出ていて。

 桐生と力也の関係を今回たくさん描いているのですが、そこがすごく生っぽくなったなと思いますし、この力也はこの力也で「素敵なやつだな」と今思っています。すごく納得しているというか、満足しています。

2009年の沖縄をどう再現したか【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――『龍が如く』シリーズは時代を反映する要素が強いと思います。『3』の発売当初と今ではズレが生じると思いますが、そのズレを埋めるためにどういった工夫をされましたか。

 舞台が2009年なので、ゲームの中はなるべく2009年にアジャストさせないといけないということで、まず2009年頃の雑誌を買いました。若槻千夏さんや安西ひろこさんが載っているような雑誌をいっぱい読んで、2009年の人たちの気持ちになってみたりと、いろいろ学習しました。

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 これは結構難しくて、ネットに出ている情報って「平成」とひとくくりにされていて、2009年ジャストなものがなかなかないんです。2000年代なんだけど2009年じゃないとか、いろいろあって。2009年そのものを描くための資料集めはかなり難しかったですね。

 目立つところで言うと、やはりガラケーですよ。スマホではなくガラケーというのは、一番大きな生活必需品の違いですから。赤外線通信のようなものや、今回は待ち受けをアッコさん(和田アキ子さん)にするとバトル能力にボーナスがつくといった能力にも繋がる要素を入れて、時代感が出るものをゲーム的にもフィーチャーしています。

――ゲームデザインに関しても、そのズレを埋めるための工夫はありますか。例えばゴルフが前作より短くなったとか。

 基本的にゲームデザインを古くするつもりはないです。「だったら2009年版をやればいい、めちゃくちゃ古いから」という話なので。ゲームとしては最新、今のトレンドで、とにかく気持ちよく遊べるようにしています。そこを逆行させることは一切していません。

 『龍が如く7外伝 名を消した男』や『龍が如く8』、『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』といった最近の作品と同じくらい、ゲームシステムとしては洗練されたものになっています。

 バトルもそうですね。『龍が如く3』のバトルってめちゃくちゃ難しいんですよ。僕もクリアできないぐらい、シリーズで一番難しいと言われているのですが、そこに変に引っ張られていないというか。エンジンも変わりましたし、その後アクションタイトルを10本くらい作ってきた僕たちが、最新のドラゴンエンジン、最新のアクションで、変に過去に引っ張られずに作ったので、そういったところは安心していただければと思います。

――今回、琉球武器について調べてみたのですが、棒やクワなど農業由来のものもありますし、ゲーマーには三節棍の方が知名度が高いかもしれません。今回の8種類の採用理由を教えてください。

 そこも結構悩んだところで、琉球武器ってたくさんあるんですよね。だから装備して切り替えて……みたいなことも考えたんですけど、まあ、面倒くさくて(笑)。「もういいや」と思って、とにかく連打でバシバシやるだけで8種類が自動で繰り出され、気持ちいいアクションが体感できるというところをベースにしようと思いました。

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 アクションとしてこの8つの武器を切り替えていく要素については、変にごちゃごちゃしないように意識しました。また1個1個の武器の知名度というよりも、それぞれの武器の個性や切り分け方、「ここでヌンチャクを出すならこういう感じで出すとちょうどいいね」といったゲームデザインやアクションを踏まえながら決めていった感じです。

――『3外伝』では峯が主人公になっていますが、神田(神田強)の兄貴にも新しく光が当たっていると感じました。これまで結構どうしようもない悪役として描かれていたキャラクターですが、本作では愛着が湧きやすくなっているように感じます。こういった掘り下げ方をした意図を教えてください。

 『3外伝』は峯の話でありつつ、神田がヒロインみたいな話になっているので、ぶっちゃけ神田はめっちゃいっぱい出てきます(笑)。それはもう仕様だったというのもありますし、神田自体は他のキャラとの大きな違いとして、「あれですべて」というか、深みのないキャラクターなんですね。

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 最初から大っぴらにクズ、というのが皆さんの認識だと思うんですけど、本当にただクズなだけなので、絆ドラマなどで掘り下げていってもずっとクズなんですよ(笑)。だから、神田の人間性の深みを感じるところは、そんなにはないと思っています。

 その一方で、もしかしたら今回で神田ファンが増えるんじゃないですかね。「何回見てもクソだな」と思いつつ(笑)、普段そばにいると違う生活的な一面も見えてくるので、逆に好きになる人は増えるんじゃないかなと思っています。

峯義孝というコンプレックスの塊【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――大吾さん(堂島大吾)のこともかなり描かれるのでしょうか。

 それはもう当然ですね。峯のストーリーの中で軸となるのは、神田を利用して自分が極道として中に入っていくというところです。峯は神田を利用するところから始まって、やがて彼のもとに帰ってくるんですけど、その先にはやはり堂島大吾という存在があり、大吾に対して失望したり憧れたりする峯の感情の動きを本作ではすごく描いています。

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 ちなみに『3外伝』では峯の独り言が多いというか、峯自身の心の内の声がナレーションっぽくいっぱい出てきます。今まで『龍が如く』シリーズではあまり取り入れてこなかった形ですが、今回はそれがすごく多いですね。

 登場人物こそ少ないですが、「この時にこう思った」とか「この時に希望の光を見た」とか、そういった“感情の揺れ”のようなものが物語の軸になっているので、今までの『龍が如く』とはちょっと違った、内向的な表現がすごく多い話になったと思います。

――峯が心の中で神田にツッコんでいるところは笑ってしまいました。

 ありましたね(笑)。その辺も含めて、桐生や春日(春日一番)だと口にしちゃうようなことも、峯はちょっとボソボソ心の中でツッコんだりするタイプだと思うので、そこは結構楽しいと思います。

――峯の感情の揺れを描いた中で、堀井さん自身が「峯ってこういう人だったんだ」と改めて気づいた部分や、今回の外伝で出せた魅力を教えてください。

 峯というのは、僕はコンプレックスの塊みたいな人間だと思っていて。イケメンだし、体もいいし……いいポリゴン使っていますし(笑)。お金もあるし、頭もいいし、他から見たら羨ましがられる人間だと思うんです。

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 でも、自分が持っているものは薄っぺらいと同時に理解している。お金に集まってくるだけで、いざという時は助けてくれない。そういう孤独や金の虚しさを一番知っている人間なんですよ。

 その孤独を抱えながら、でも人を信じたい、堂島大吾みたいな存在に憧れる。自分に足りないものと向き合って「なんで俺はこうなんだ」ともがく話でもあるんです。そこが一番人間らしくて、僕らが感情移入しやすいところでもある。僕もコンプレックスの塊なので(笑)。

――サブストーリーも、桐生編や春日編とはまた違った感じがしますね。

 サブストーリーのおもしろさは全然違いますね。意識してかなり変えました。桐生や春日は何でも助けちゃう。困っている人がいたら「どうした」というタイプですけど、峯は言えないんですよ。「知らねえよ」と思っちゃうので。正義感が別にあるわけではないし、峯自体はヤクザなので、ヤクザがカタギの人を助けても、基本やらないし、やっても迷惑だろうという気持ちがあります。

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 でも、やっぱりほっとけないところや見過ごせないものは彼にもあって。けど、桐生だったら「お前はなんとかだ」と勝手に説教できるんですけど、峯は「ヤクザの説教なんて聞きたくないだろう」とわかっている。

 でもその中でも「君はこうなんじゃないの」とか、「俺はヤクザだから、俺の言うことなんて信じてくれないかもしれないけど、でもあんなやつとは付き合わない方がいいよ」みたいな。峯なりの優しさというか、「自分はヤクザである、大衆から求められる存在ではない」とわかった上で、「でもここは」というところが出せたつもりなので、そこは今までとは違っておもしろかったなと思います。

脇道の充実とこだわり【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――桐生編の“アサガオライフ”や“ツッパリの龍”についても、コンセプトをお聞かせください。

 一番初めの企画書の段階から、その2つは入れていました。『龍が如く3』の時もアサガオは出ていたのですが、わりと各イベントが単発で、絆を描けてはいるものの浅い感じがしたんです。さらに、その後のシリーズでの桐生は孤独なルートをずっと行くじゃないですか。それに対して『3』って一番、家族の絆を描きやすいところですし、ここで描かないと意味がないなと思っていました。

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 生活の中で家事をこなす形にしたのは、父親としての桐生をちゃんと描きたかったからです。父親って、何かイベントがあった時にだけいいことを言う人、というのとは違うと思うんですよ。毎日子どものために料理を作ったり掃除したり、そういう積み重ねがあって、ようやく距離が縮まって悩みを相談してくる。それが健全な子どもとの関係だと思うんですよね。

 僕自身、料理や裁縫が苦手だからこそ、そこを中心にしたゲームにして、やることでパパとしてのランクが上がっていく。やりたくないことを子どもたちのためにやって、その結果として何かがよくなるという子育ての基本を、ゲームデザインとして再現したいなと思いました。実際、ゲームを進めていくとアサガオの子どもたちが、「実は好きな子がいて」とか「学校でこんなことがあって」と教えてくれるようになります。今回の自信作ですね。

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――『極3』ではアサガオの子どもたちをお世話して、『3外伝』では神田のお世話をしています。この“お世話の対比”がすごいなと思ったのですが、設計の狙いはどこにあるのでしょうか。

 神田は、もう「お世話する」というか、神田に勝手に振り回されているという感じが強いですね。どちらかというとパシリに近い(笑)。『極3』と『3外伝』で、桐生と峯という明確に人柄が違う人間がいて、アサガオのほうはメリットのない奉仕というか、家族のために尽くすとか、桐生の親父らしさや優しさみたいなところがちゃんと出るようにしたいなと思っていました。

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 同じようなシステムにするとつまらなくなってしまうので、神田のほうはどちらかというと、ミッションをこなすことで評判が上がるとか、金がもらえるとか、ちょっと打算的な要素をシステムをベースにしています。割り切った“稼ぎ重視”な部分が軸になりつつ、その中にちょっと峯も思うところがある、という設計ですね。

 主人公ごとに同じようなシステムが2つあるとつまらないというのもあるので、結果的に2人の人格の差が、ゲームシステムにも影響するような形に設計しました。

――光と影、陰と陽のような対比でしょうか。

 結局2人とも、根は裏社会の住人(だった)という点で繋がっている部分があり、さらに孤独という点でも2人は似ています。ただ、ひねくれているか、ひねくれていないかが違う。峯はやっぱりひねくれていて、物事に対して斜に構えている。「本当の絆なんかない」「子どもたちの絆だって本当のものじゃないかもしれない」と、そういう風に見てしまうタイプでありつつ、どこかではそれを求めている。その辺の悲哀みたいなものがあります。

 桐生はそういう人間になりたい、子どもたちを愛したいという気持ちがあるし、そうなりたいという願望がある。前向きにいい方向に向かっていきたいという気持ちがあるんです。そうやって動き出していき、最初は何もできないけれど徐々にパパっぽくなっていく桐生の成長を描けたかなと思います。

――アサガオライフの中で、裁縫のミニゲームがおもしろいですよね。

 裁縫ミニゲームは結構難産でした。裁縫は絶対入れたいと言っていたんですけど、裁縫のゲームってあまりないじゃないですか。新人や若手のメンバーにも「お前らクリエイターなんだ」とか言ってアイデア出しをさせたんですけど、あやとりみたいなものとかいろいろ出てきて、結構困っていたんです。

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 で、ずっと考えているうちに、ミシンって針に対して布が近づいてくるじゃないですか。固定点に対して地面が動いてくるパターン。これ見たことあるなと思って。「ああ、これ『アウトラン』(1986年にセガがリリースしたアーケードレースゲーム)じゃん」と(笑)。

 昔のレースゲームって、車体は変わらない位置にあって、地面が動いているんですよね。「これ、ミシン版『アウトラン』だ」と思って。そこから「『アウトラン』って知ってる?」とみんなに聞いて、あまり知らないメンバーにも『アウトラン』を見せて、「こんな感じで、こっちの地平線に桐生の顔が出ているようにするんだ」みたいな話をして始めたという感じです。

 あれは本当に自分でちょっと天才だなと思って(笑)。社内で説得するのが結構大変だったのですが、結果的におもしろいものになってよかったです。ステージも8つほどあって、最後は龍の刺繍のようなもので超難しいので、ぜひ頑張ってください。

――桐生さんの真剣な顔が映っているのが話題になっていますね。

 あれは結構意図的に「このカットにしよう」と最初から決めていました。『アウトラン』にするという時に絶対必須だったのが、手が出てくることと、桐生の顔がとにかく地平線の奥にあること。

 デザイナーからは「でもこれ、どう考えても姿勢がおかしいんですよね、成り立たないですよ」と言われたんですけど、「絶対に真剣な桐生の顔がないとダメ」と駄々をこねて残した感じです(笑)。結果的には入れてよかったですね。

峯の闇と、神田との関係【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――バトルについてお伺いしたいのですが、『極3』と外伝、それぞれ桐生と峯が戦うわけですが、新しくなったポイントや、こう戦うと気持ちいいというところを教えてください。

 『極3』に関しては2つのスタイルがあるというのがポイントです。“堂島の龍・極”をベースに、桐生らしさというか、荒っぽさを意図的にいろいろ入れています。最近の桐生はどんどん洗練されていますが、もう年なので、フレッシュな技、ドロップキックとかが似合わなくなってきているんです。

 それに対して今回の桐生はやっぱり若い桐生なので、昔の『3』の時に使っていた荒っぽい技を多めに復活させたりして、気持ちよくて洗練されているけれど若々しい、荒っぽさがちゃんとある、というところを目指して調整しました。

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 琉球スタイルは、『8外伝』の武器を使ったパイレーツスタイルに近い感じの気持ちよさを残せるようにというのがコンセプトです。

 峯は桐生に対してクールでスタイリッシュなキャラクターなので、荒っぽい桐生とスタイリッシュな峯、という対比が出るようにしています。ただ、クールなだけじゃないんですよ、峯って。中ではいろいろ思っていることもあるし、切れると怖いし。その辺の偏屈なところを表現するために、闇覚醒というモードを入れた感じですね。

――桐生編と峯編のサイドコンテンツの差別化について教えてください。桐生は何でもノリでやっちゃうほうですが、峯の場合は?

 峯をプレイヤーキャラクターにするのは今回は初めてなので、そのキャラクター性を壊さない範囲で、さまざまなプレイスポットを楽しむように設定しました。何でもやってくれる人というよりは、「ああ、この時こんなことをやったんだ」、「へえ、そうなんだ、これ結構好きなんだ」という感じが残るようにしています。

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――やっぱり神田を呼べるというのは、差別化として大きなポイントなんですね。

 峯が呼べるのって神田くらいなんですよ。だから「呼べたらおもしろいかな」と思って。人生で神田を呼ぶ機会なんてないでしょう(笑)。ファンも嬉しいでしょうし、お楽しみ要素的に入れたという感じです。

アクティビティへのこだわり【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――カラオケなどのアクティビティで、役者さんへの演技指示はされたのですか?

 「テンションはこんな感じで」とかは伝えました。カラオケはノリノリでやっていただきましたね。みんなですごく楽しく収録できたし、まさか中村獅童さんに歌ってもらえるとは思わなかったので、よかったです。

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――ゲームギアや『スラッシュアウト』、『消防車』といった過去のハードやタイトルが実装されていますが、今後も『龍が如く』の中で再現したいゲームはありますか?

 今後はちょっとわからないですね。今回は『救急車』がオススメです。失敗すると患者が死んでしまうという点が今だと衝撃的ですが(笑)、あれはすごく気に入っています。

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 毎回、「次のゲームセンターには何を入れようか」というのはチームで相談して決めるのですが、ぜひ今回の『救急車』は遊んでほしいです。本当にすごい、凄まじいゲームでした(笑)。

ヤクザでありダークヒーローである峯【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――今回、外伝も含めて峯という男の人生を描ききっていると思うのですが、彼の人生を描ききった今、彼に一言声をかけるとしたら?

 「素直になれよ」って感じですかね。やっぱり素直になれない人なんです。春日とかは素直になれるじゃないですか。「ごめん」とか「俺が悪かった」って言えるのですが、峯は悪いことをしてしまっても、すんなり自分の非を認められるタイプではないし、好きでも「好き」と言えるタイプでもないんです。

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 もっと楽に生きていれば、多分もうちょっと違う道もあったのかもしれません。でも、それができないのが峯であり、そんな男たちのドラマなので、仕方ないですね。

――『3』の最後は、秘書に対して素直になろうとしたんですか?

 そうですよ。「お前だけだ」って。金とか関係なく、自分を慕ってくれるのは誰だろうというところで。だから、あれは一瞬の希望ですよね。それも含めて、やっぱり切ない男だし、かわいそうですよね。

――『3外伝』は峯が主人公ですが、桐生や春日のような“正義の主人公”とはかなり違う主人公です。制作上で注意したポイントや苦労されたところはありますか?

 やはりヤクザであるということと、正義感があるキャラクターではないというところで、峯をゲームの主人公として成立させるのは結構難しく、かなり苦労したところです。サブストーリーで誰かを助けるにしても、何かしらモチベーションがないと助けないと思うので。そのモチベーションの1つとして、いやいや神田にやらせられる「神田カリスマプロジェクト」というのが機能している部分もあるんですよね。

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 そういったところも含めて、峯らしいというか、“ヤクザであるが故のダークヒーロー的な解決”は意識しました。人の幸せなどどうでもいいと思っているけれど、目の前の女の子が苦しめられていたら助けたい。そういう人間の感情は峯にも当然あるので、そのバランスはかなり繊細に描いたつもりです。

リメイクで難しいのは“どこまで引きずるか”【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――過去作を含めて、リメイク作業でもっとも大変だったことは何でしょうか?

 リメイクで一番難しいのは、過去のものをどこまで引きずるかだと思うんですよね。そこがふわふわしてしまうと半端なリメイクになってしまう。

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 今回は、「過去作を大事にはするものの、頼りたくない」ということを最初から考えていました。『龍が如く3』って、今振り返って見てみると結構アラがいっぱいあるんですよ。でもプレイヤーの皆さんにとっては個々に思い入れがありますから、「絶対これは変えないでほしい」という強い意見が出てくる。そこを恐れるなら、“昔のまま”を選択した方が、楽だし安全と言えます。

 でも、それは本当に作っている意味がない。だから、思い出と戦う勇気はやっぱり必要ですし、その勇気がないと“極”プロジェクトには半端に手を出せない、やっちゃいけないなというのは、つくづく思いました。

――2025、2026年の新しいゲームにするという感覚を出すために、若いスタッフに意識的に何らかのお願いをしたりしたのでしょうか?

 今回のチームは歴代でも一番若いスタッフが多くて、平均年齢もすごく若くなっています。ある意味、昔のものに変に引っ張られないでいいというか。「メインストーリーって、こんなもんで終わりなの? じゃあ俺たちが今作り直そうぜ。さあどうしよう」という感じのチームの雰囲気を作っていきました。

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 若いメンバーが、変に「過去でこうだったから」というところにこだわりすぎず、「私だったらもうちょっとアサガオの絆を入れたい」とか「もうちょっとここをこうしたい」とか、バトルも含めて頑張ってくれたので、フレッシュさがすごく出ています。若々しいゲームになったと思っています。

――今の開発状況はどうなっていますか?

 ちゃんと発売されますよ(笑)。開発はちょっと前に終わりました。ヤバいバグも頑張って直しましたから、もう大丈夫です。立ち上げで固まるバグとか、初めてのバグがすごく多かったですが(笑)。

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 開発期間は約1年でしたけれど、やっぱり大変でしたね。プロデューサーと同時にディレクターもやっていると本当に大変なんです。バグって、最近のゲームですと3万~4万は報告されるのですが、それぞれ「こういうバグで、こうやっている時に敵が2人になります」とか「太一がいなくなりました」、「おもしろい光景があります」みたいに報告が上がってくる。

 さらにバグについては、直し方によっては新たな問題が出てしまうこともあるので、「ここの敵を消して、こっちの敵を残して、こっちをずらします」のような指示を直接出していました。そういうことを最後の最後までやっています。

 バグの処置って、いわば手術みたいなものなんです。「ここが痛いから、ここを切っちゃいましょう」といった提案に対して、「それだと指が使えなってしまうでしょう」といった話をちゃんとして、最適な解決策を出す。自分はそれに関しては本当に自信があるので、ぜひそれを世の中に伝えていきたいですね(笑)。

20周年に込めた感謝のボリューム【龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties】


――最後にファンへのメッセージをお願いします。

 『極3』+『3外伝』ということで、『極3』はリメイク作ではあるのですが、僕たちは本当に新作のつもりで作ったくらい、フレッシュな作品になったと思っています。

 リメイクと言えないというか、リメイクの常識を超えるくらい、昔プレイした方も、ちょっとした過去の思い出に浸りつつ、それを単にトレースしただけではない、すごく挑戦的なものが作れたと思っているので、ぜひ楽しんでいただければと思います。

 『3外伝』のほうも、峯というシリーズではちょっと特殊な人物を主人公に、いつものお決まりとは違った解決方法や感情が描かれている作品になっているので、こちらもかなりの自信作です。ぜひあわせて遊んでいただければと思います。

 20年という長い間やらせていただいた中で、今回は記念作品でもあるので、2本のボリュームで大変ではありましたが、皆さんへの感謝も込めてお届けできましたので、ぜひ遊んで楽しんでいただければと思います。ありがとうございました。

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