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『inKONBINI』の開発者に、なぜ日本のコンビニが舞台なのにゲーム内のパッケージは日本語で書かれていないのか聞いてみた!【インタビュー】

文:ライターM

公開日時:

 Nagai IndustriesとBeep Japanから4月30日に発売されるPS5/Switch/Xbox/PC(Steam)用SLG『inKONBINI: One Store. Many Stories』。本作の開発者インタビューをお届けします。

※本記事はNagai IndustriesとBeep Japanの提供でお送りします。
 『inKONBINI』は、“つながり”と“懐かしさ”、そして“日常の静かな美しさ”をテーマにした心温まるストーリー重視のチル系シミュレーションゲームです。

 ゲームの舞台は1990年代初頭の日本。夏の終わりも近づいたある日、大学生の早川真琴は叔母が営む小さな町のコンビニを手伝うことに。それぞれの勤務シフトには、小さな出会いや発見が詰まっており、穏やかでどこか懐かしい時間が流れます。

 電撃オンラインでは、制作チームの代表にして本作のディレクターを務めるクリューエフ・ドミトリー氏に動画インタビューを行いました。本稿では、動画に収まりきらなかった質問を含めた、インタビュー完全版を掲載します。

『inKONBINI』開発者インタビュー 動画

『inKONBINI』開発者インタビュー 完全版

日本文化の中にある“もののあはれ”を表現したい

――まずは自己紹介からお願いします

 こんにちは。ドミトリーと申します。『inKONBINI』のゲームディレクターです。よろしくお願いいたします……押忍っ!!

▲ドミトリー・クリューエフ氏
――なぜ日本のコンビニ、それも都会ではなくて郊外、しかも現在ではなく90年代をゲームの題材に選ばれたのかをお聞かせください。

 このプロジェクトを立ち上げたときに、最初に考えていたのは簡単な作業でゆっくりとリラックスできるシミュレーターを作ることでした。

 どのような舞台が相応しいかと探していた折り、日本文化の中にある“もののあはれ(物の哀れ)”という言葉に強く惹かれてしまい、日常の中にある優しさや切なさ、その瞬間を味わいながらも、それが淡く消えてしまうといった情緒を表現したくて少し昔の日本を舞台にしました。


 もう一つのきっかけとしては、80~90年代の日本を舞台としたゲーム『シェンムー』が個人的に好きだったということもあります。その世代の日本文化をはじめ、ゲームデザインであったり音楽や雰囲気というものにもインスピレーションを受けました。

 ゲームの題材をリサーチしていた折りには、山梨県にある「富士山が背景に映えているローソン」の写真を見つけて、もう鳥肌が立つくらいすべてがマッチ。この雰囲気でゲームを作らなければと思いました。

――体験版をプレイさせていただいたところ、コンビニでの出来事がとてもリアルに感じたのですが、ご自身にコンビニでの勤務経験などあったりするのでしょうか?

 『シェンムー』を手がけられた鈴木裕さんが武術について調査するため中国を訪れたように、私もゲームのプロトタイプを作ってから、日本のコンビニを訪れて詳しく情報収集や調査を行いました。

 80~90年代の日本のコンビニがどのような様子だったのか写真が載っている書籍を探したり、実際にどのような感じなのかとコンビニの店員さんに写真を送ってもらったりもしました。


 ゲームのコンセプトとしてはお店のマネジメントではなく、あくまでも店員目線でのお客さんとのコミュニケーションやその雰囲気を大事にしているので、必要なところだけを切り取ってゲームデザインに当てた感じですね。

――主人公・早川真琴の年齢を大学生に設定した理由をお聞かせください。

 同じようにコンビニを舞台とした世界的にも有名な作品として、村田沙耶香さんが執筆された『コンビニ人間』という書籍があるのですが、その作品ではコンビニという舞台よりも主人公の人生ドラマに重きを置いて描かれています。


 本作ではお客さんとのコミュニケーションという部分を大事に描きたかったので、主人公の人生ドラマにフォーカスがズレてしまわないよう、まだそこまで深刻な人生経験を抱えていない大学生という設定にして、実際、それは正解だったと思います。

 ちなみに、お客さんも完全な他人というよりは、よく来てくれる顔見知りや地元の常連客といった、ちょっとした会話が弾むキャラクターを起用しています。

――主人公の台詞からひと夏の出来事といった印象を受けますが、ゲームの期間としてはどの程度になるのでしょうか?

 名残を残しつつ過ぎ去っていく時間を表現するというところで、夏の最後の一週間に設定しています。

 体験版では親分さんというお客さん一人だけですが、製品版では日ごとにさまざまなお客さんが訪れて、どのような対応をするかによって運命というか、お客さんとの関係も分岐していきます。

日本語じゃない文字はオリジナル文字! 生成AIではありません

――舞台が日本のゲームなのに、あえてパッケージングが日本語ではないという理由をお聞かせください。

 ゲームを作る最初の段階で日本語にしてしまうと、細かな商品説明であったりそういったものに時間を取られて雰囲気その物からフォーカスがズレてしまうため、あえて日本語ではないオリジナルの“アスミック文字”を取り入れました。


 子どもの頃に遊んだ『メタルギア』でも、作中に正しくないロシア語で書かれている部分もあったのですが、遊んでいて気にならなかったし、何ならおもしろいとさえ思ったので、本作でもあえて日本語にはこだわりませんでした。

――“日本語ではない文字”を見たときは一瞬、生成AI特有の文字崩れかとも思ったのですが、オリジナルの文字だったのですね。そう言った部分の開発もかなり大変だったのではないですか?

 そうですね、リサーチをしても“日本語のように見えて日本語ではない文字”を作っている人が少なくて、試作段階の文字を日本の方に見てもらったら「中国語に似ている」と言われまして、それもまた目指しているところではなかったんですよね。


 ゲーム開発にあたってそこにばかり時間をかけるわけにもいかなかったのですが、実際に発売しますとアナウンスした後は文字の部分もしっかり作らなければということで、日本の友人に映画のポスターなどを手がけているデザイナーさんを紹介してもらいました。

 最初に“日本語っぽいけれど日本人には読めない文字”というコンセプトで依頼したら、彼もすごく難しいと言っていました。

 彼のスケッチを見ながら「こういうのがいい」という文字を選んで、ひらがな、カタカナ、漢字の3つに分けながら日本語と見比べて商品名などに当てています。

 作中にはだいたい12万程度の文字が登場するのですが、それらをあえてアスミック文字にすることでおもしろい形にできたと思っています。それに、もしも日本語を使って実在する商品名と被るなどという偶然が起きたら訴えられてしまうかも知れませんからね(笑)。

――作中で真琴とやり取りするお客さんは総勢何名くらい用意されているのでしょうか?

 お客さんといいますか、真琴と関わるキャラクターとしては、まずトレーラーに登場していた3人がいます。


 店員として昼のシフトに入っている人物ですが、その人はしょっちゅう商品を置き間違えたりとミスをしていて、真琴がシフトに入る前のちょっとした物語を演出しています。

 また、直接登場するわけではありませんが、真琴の叔母であるヒナおばさんに電話をかけたり、新聞を読んだりすることで、コンビニの周りにもちゃんと世界が広がっていることを表現しています。具体的な登場キャラクターの数は……秘密です。

――お客さんとの関わり方でパターンが変化していくと伺いましたが、具体的にはどのような感じになるのでしょうか?

 お客さん一人一人がパズルみたいなものなので、例えば商品の配置をちょっと変えるだけでも会話内容が変化したりと、些細な変化に重点を置いています。

 ベースとなる物語の展開自体は基本的に一本道ですが、ひとつひとつの会話には無数のパターンがあって、例えばオススメの商品を選ぶという会話でも40通りぐらいのパターンが用意されています。


 具体例を挙げると、やたらとコーヒーばかり飲んでいるお客さんに「あまりコーヒーを飲み過ぎるとイライラしちゃいますよ?」とお茶を勧めると、以降はよくお茶を買ってくれるようになったりもします。

 こういった細かな心情変化がキャラクターのエピソードに影響するわけですが、お客さんみんなにドッグフードをオススメするなどといった遊びも可能です。

 他にも、背の低いお客さんに対して高いところに置かれた商品を取ってあげるなど、信頼関係を築くことでお客さんの態度が変化することもあります。開発では特に、これらの会話やお客さんの反応パターンを考えることに時間を費やしました。

好きが高じてオリジナルのカプセルトイや同人誌も制作!?

――お客さんとの会話に加えて、天候変化なども独特の空気感の演出にひと役買っているなと感じたのですが、そのあたりのこだわりをお聞かせください。

 このゲームを作るときに一番大切にしていたことは、やはり雰囲気や空気感ですね。

 また、リラックスできる空間というのも大切にしていて、冷蔵庫の音であったり、店の外で風が吹く音だったりと、そういった“音”にも重点を置いています。

 よい音を表現できるように注力して、プレイヤーにはコントローラーを握った瞬間から、舞台はコンビニだけれどもまるで温泉に来たかのようにリラックスできるような雰囲気を作りました。

 それに合わせて、会話のトーンもすごく大事にして、雰囲気に合うような言葉選びを意識しています。

――BGMがとても落ち着くモノになっていたり、真琴のナレーションがとても詩的だなと感じました。そのあたりのこだわりをお聞かせください。

 雰囲気を大切にしていたので、まずはモノローグを日本人女性の声で始めようと思いました。

 BGMについてはインタラクティブなサウンドトラックを作っていて、主人公がいる場面に応じて雰囲気が変わります。これらのサウンドを作るにあたっては、宮崎駿さんや北野武さん、久石譲さんの音楽からインスピレーションを受けつつ、チルな感じの音楽を意識して時間の流れなども表現してみました。

 開発の最後に日本の音楽プロデューサーになったようで楽しい体験でした。

――本日初めて見せていただいて大変驚いたのですが、プロモーションのために同人誌やカプセルトイまで制作するのは、かなり大変だったのではないでしょうか?

 作中でコミックを作っていたら止まらなくなってしまって、ゲームの中だけじゃなく作り上げることにしました。中身もしっかりとレトロな感じになっていて、本当に90年代に存在していたかのようなものを作りたかったんです。


 コミックに登場するキャラクターはみんなお茶の種類をモチーフにしていて、悪者のコーヒーと戦っているという世界観になっています。

 カプセルトイについても、お客さんを待っているちょっとした時間にも楽しめるように作ろうと決めていました。

 ゲームではカプセルトイが大好きなサトシというお客さんが登場して、彼はお釣りをもらうときも小銭でちょうだいと言ってきます。


 カプセルトイも毎回同じキャラクターが出てもおもしろくないなと思ってキャラクターを作り込んで、レアリティなども設定して、本当にカプセルトイを楽しんでいる雰囲気を出したかったんです。

 真琴とサトシの会話でも、コレクションをコンプリートしたいと言った会話もあって、その深みを表現するためにもゲーム内ゲームとして作り込むこととなりました。


 ちなみに、カプセルトイをすべて集めることも可能で、そのために運を上げる要素というものも用意しています。

※編集部注:同人誌とカプセルトイは、限定版の特典として同梱予定となっています。
――では最後に、本作を楽しみにしているユーザーへのメッセージをお願いします。

 みなさん応援ありがとうございます。このゲームを作るにあたって、途中で力尽きることなくリリースまで漕ぎ着けられるとは思っていなかったです(笑)。

 多くの時間と資金を費やしてお届けできた作品なので、ぜひともゲームを遊ばれるときにはスマホをいったんオフにして、本作ならではの雰囲気に浸っていただければと思います。

――本日はありがとうございました!

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