任天堂とユニバーサル・ピクチャーズが共同出資、任天堂とイルミネーションが共同製作し、世界的なヒットを記録した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023)』の続編、『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が2026年4月24日より公開されます。

前作に引き続き、イルミネーション創業者で代表のクリス・メレダンドリ氏と、任天堂代表取締役フェローの宮本 茂氏が共同でプロデューサーを務めています。
映画の公開に先駆けて、宮本 茂氏への合同インタビューが行われました。映画の魅力や“任天堂劇団”の活躍など、映画がより楽しくなるお話をたっぷりと語ってくださいました。
物語のコアはピーチ姫の出生の秘密
――試写会で鑑賞させていただき、主人公・マリオの存在感があるのはもちろんですが、ほかのキャラクターにも見どころが用意されていると強く感じました。群像劇のような物語の見せ方、脚本はどのように固まっていったのでしょうか?
1作目に引き続き、メイン脚本家をマシュー・フォーゲルさんが担当しています。
前作を作る際は、あらすじが違うと何度もやり直したんです。ゲームは遊んだ人の体験があるからおもしろいのであって、そのまま映画にしてもおもしろくないと僕は思っています。
そこでいろいろ話し合って作っていったんですが、結果としてはゲームと同じ流れになったのが前作です。マリオの世界を紹介するのが、メインになってくるんですね。このキャラクターはこういう人、キノコ王国はどこにあるのかなど、自己紹介するのに時間をたくさん使いました。
本作では自己紹介が終わっているので、「初めて観る人も、楽しければいい」って開き直って、キャラクターを描いていこうという大まかな方針が決まりました。ゲームではキャラクターはプレイヤーでもあるのであまり描けませんが、映画ではいろいろ語れるので。
何を、コアにするか。ピーチ姫が出生の秘密に興味を持つ方向にしようというのは、1作目の時から決まっていました。
ほかにも前作でクッパが小さくなってしまったので、出さないと期待外れになってしまうこと、ヨッシーの卵を出したので本作に登場させるなど、いろいろな要素をうまくまとめていくのが脚本の主な作業でした。この作業が、意外と楽しくて(笑)。

自分の出生の秘密に興味を持つピーチ姫に対して、マリオがどんな風に気づかったら程よい恋愛感が出るか、セリフの密度、目的が決まっていく部分があります。

クッパに関して、僕はずっと言っているんですが、クッパは悪役で、その悪役をマリオが倒す物語ではないんです。“マリオ劇団”があって、主に悪役を演じているのがクッパで、演目によってはマリオたちと友だちになる可能性もあるんです。だから憎いボス、凶悪なヴィランにはしたくないというのがありました。

ヨッシーはマリオをやる上で出したかったんですが、1作目だと出番がなくて……どうしても使いたいので卵を出しました。実はジャングル王国に行く途中に、ヨッシーアイランドを通るシーンがあり、ちらっと何匹か出ているんですけどね。
前作を観た方はわかると思うのですが、その後のヨッシーの卵にどんな事件が待っているのか……。ヨッシーのエピソードだけで、1本作ろうかと思いましたね(笑)。
前作のエピソードを活かしつつ、それぞれの人の役割を任天堂らしく作りこんでいくのが、おもしろくて作っていて楽しかったです。それをマシュ―さんに戻して、練っていくんですよね。それでちょっとずつ作りながら、隙間をまた埋めていく作業。
本作は、アニメーションでよかったなと思いました。作りながら、ある程度のブロックを作って間を埋めていくとか、その間のセリフを直していくみたいなことが自由にできるので、とても楽しく仕事をしました。
――クッパJrが登場し、クッパの新たな一面が見られたのも印象深いです。特に印象的なシーンはありますか?
先ほど話したように、悪役を担当している存在ですが、かわいい、許せるところがあってほしい。クッパJrとの関係を描くなかで、クッパサイドの物語のアウトラインができ上がっていきました。

お気に入りのシーンは、ネタバレになるのでここでは言えませんがたくさんあります。全体を通して、マリオの世界らしくていいなと感じました。
――本作の設定が“正史”になっていくのでしょうか?
もともと僕は長い間、映画は作らないと言っていました。その理由は、僕らの作ったキャラクターたちは、次にどんなゲームに登場するかわかりません。キャラクター設定がたくさんあると、ゲームを作ろうと思った際に縛りになってしまいます。ゲームで縛りが生まれるのいいけど、ストーリーを作ったことに縛られたくないというのが、映画を作らなかった理由です。
しかし、ここに来て、映画を作ることでいろいろ膨らませていくのもおもしろいなと。映画で作った設定は、できるだけゲームでもそっていきないと思っています。
『スーパーマリオギャラクシー』がメインになった理由とは?
――『スーパーマリオギャラクシー』(2007年)をメインにした意図や、経緯を改めて教えてください。
1作目を作っている時から、「2作目はギャラクシーだよね」って話がなんとなくあったんです。実は前作でも、ピーチ姫が空を見ながらギャラクシーについてちらっと話しているシーンがあるんですよね。ただ、ベースにしようというところまでは決まっていませんでした。
脚本の方から、『ギャラクシー』をベースに、タイトルにも入れたらどうかと提案があって、そうだなと思いました。横に広がるオデッセイではなく、縦に広がるギャラクシーというのも、腑に落ちました。
マリオの世界って、ステージなんですよね。ニューヨークからキノコ王国に行き、ドンキーコングのジャングルも取り込んで。“マリオ劇団”にとってはいい舞台ができました。オールキャストで楽しんでもらえればいい。
――前作と同様、海外で大ヒットしている状況のなか、日本公開がスタートします。今の心境はいかがですか。
前作と状況が似ているのは、その通りですね。
日本版は、少し特殊なんです。ほかの国は、英語版をローカライズしています。1作目は脚本の段階から、日本語と英語が同時に進行していました。本作では英語の脚本を、日本語で全部描き直していて、ローカライズではなく日本語版を作っているんです。
しかも上映時期もずれているので、数字を出さなければならず、日本担当の僕としてはプレッシャーがすごくあります(笑)。
試写会など観てくださった方の反応を見ると、マリオが好きな方たちが「マリオを好きな人たちが作っている映画だ」と、受け入れてもらえているなと感じました。
前作を観ていない方でも、マリオを知らない方でも、かなり楽しんでもらえる出来だと思います。
映画では“任天堂劇団”が大活躍!
――フォックス・マクラウド(『スターフォックス』シリーズ)の登場に驚きました。『マリオ』シリーズ以外のIPのキャラクターの登場は、どのように判断していったか教えてください。また、特に推したキャラはいるのでしょうか?
ゲームのジャンルでは、IPのキャラクター同士を混ぜないというルールを決めて運営してきました。唯一の例外が、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。あれはおもちゃ箱のなかで、任天堂のキャラクターたちも人形という設定なんですね。だから、混在してもOKって言ってきました。
これから『ピクミン』だけは唯一の例外として、どのキャラクターとも混在してもいいと決めようと思っています。掟破りのキャラクターを1つ作ります。
先ほどお話した“マリオ劇団”も含む“任天堂劇団”には、たくさんのタレントがいて、ゲームの仕組みにあったキャラクターを登場させています。だからゲームの仕組みを考えている時点では、『マリオ』になるか『ゼルダ』になるかわからない状態で考えているんですよ。
映画として発展していくなかで、“任天堂劇団”で誰がどんな風に出演するのがいいのか、共演もあるってことで、ゲームよりも縛りを少し緩めてもいいのではないかという方針になっています。
今回はギャラクシーなので、優秀なパイロットがいるといいということで、フォックス・マクラウドです。これは、イルミネーションからの提案。そこから、どんな登場の仕方をしたら嬉しいか積極的に考えていきました。
推しは、ピクミンです。いつもは端っこにいることが多いですが、今回は堂々と大きく登場します。ピクミンは世界のあちこちにいることを、戦略的にお伝えできるように動いていきますので、よろしくお願いします。
――たくさんの小ネタが散りばめられていましたが、どのように選択していったのでしょうか?
それは、ひとえにイルミネーションの力ですね。監督を含めて、僕よりも『スーパーマリオ』のことをよく知っている人たちがそろっています。
1つのポイントは、小さいユニットを作ることです。例えば3分のユニットが30個集まれば、90分になりますよね。そして、ユニットを差し替えていく。僕の作り方と似ているのですが、ほとんど捨てないんですよね。無駄な物は作らないけど、差し替えられたものはすごく、たまに並び替えもあって、密度高く作りこんでいくのがイルミネーションのテクニック。
また、親子そろって映画館で観てくださる方も多いと思います。子どもは楽しんでいるけど親は義務として座っているだけとか、逆に親は感動しているけど子どもが走り回っているようなものではない作品を作りたいと思いました。
もう息をつかせる暇もないほどバーッと駆け抜け、約90分で終わると決めて作ったのがすごくよかったと思います。
――映画だからこそできたと感じたことはありますか?
ゲームデザインで難しいのは、ゲームにどっぷり入ってしまうこと。ずっとゲームを作り続けて世界に入り込んだ人と、初めて遊ぶ人が同じように遊ぶので、気を付けて作りましょうとよく話しています。
映画作りに関して、僕は素人なので、見れば見るほど入り込んでしまって。客観性をどう保つか、すごく意識しました。
また、7割くらいの時点でほぼ完成しますね。十分なネタがそろったなと感じるのが7割くらいのときで、ゲーム制作とも近いです。
映画だからできることは、たくさんあります。ゲームは期待通りの展開、リアクションじゃないと、とんでもない方向に行ってついていけなくなることがあります。でも、映画は大胆に裏切ることができるんですよ。それは、映画の楽しいところだと思います。
また、ゲームではできない表現やセリフで感情が語れること。脚本を練り、絵を見ながらベストなセリフを作るのは、すごく楽しかったです。
制作中はサウンドなどが全部入っているものを観ることはないので、完成したものを観たのは試写会のとき。結構、感動して……。
40年間作って来たものの思い出もあって、キャラが出てくるたびに嬉しかったです。
任天堂のゲームで遊んできてくれた方は、同じように思い出があると思うので、絶対に楽しんでもらえるなと思いました。
――ありがとうございました。