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ネタバレ注意:5月1日は『ガンダム 閃光のハサウェイ』でマフティーの◯◯が実行された日。ハサウェイのために奔走したケネスを待ち受けた結末は…

文:米澤崇史

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 5月1日は、原作小説版『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の物語終盤において、ある重大な出来事が起こった日です。すでに原作の結末を知っている方は、「ああ…」と思い出しながら、あらためて原作小説を読み直してみてはいかがでしょうか?

※原作小説版『閃光のハサウェイ』のラストシーンに言及した、激しいネタバレ記事となっています。約30年以上前となる1989~1990年に刊行された作品ですが、2021年から展開中の劇場映画版はまだ完結前ですので、ご注意ください。

歴代『ガンダム』シリーズの中でもショッキングな異色のラストシーン

  『閃光のハサウェイ』は、『機動戦士ガンダム』の生みの親である富野由悠季監督が執筆し、1989~1990年にかけて全3巻が発売された小説。ブライト・ノアの息子、ハサウェイ・ノアが主人公を務め、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のシャアの反乱から12年後にあたるU.C.(宇宙世紀)0105年を描いた作品です。

 2021年6月11日には、原作の刊行から約30年越しとなる劇場アニメ版も公開され、大きな話題を呼びました。

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 そんな『閃光ハサウェイ』原作小説版のクライマックスにあたる5月1日に行われたのが、反地球連邦組織のリーダー“マフティー・ナビーユ・エリン”ことハサウェイ・ノアの処刑です。

 ハサウェイ(マフティー)らは、地球連邦が認めた人々だけが地球に住むことができるという「地球帰還に関する特例事項」法案の可決を食い止めるため、アデレードの会議を襲撃します。しかし、それを待ち構えていたケネス・スレッグ率いるキルケー部隊の罠に嵌ってしまい、ハサウェイはΞ(クスィー)ガンダムごと捕まってしまいます。

 マフティーの存在を危険視する連邦政府の閣僚らは、形式上の軍事裁判すら行わずハサウェイの処刑を決定。この時、横暴な連邦政府のやり方に嫌気が差していたケネスはすぐ軍を辞めようとしますが、自分の後任がハサウェイの父、ブライト・ノアであることを知り、ブライトにマフティーの正体を悟らせないために、最後の仕事として処刑の執行を引き受けます。

 結局、ケネスの号令で予定通りに処刑は執行され、ハサウェイはその生涯を閉じることになります。

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 それまでの『ガンダム』シリーズで複数に渡って登場してきたハサウェイがついに主役としてガンダムに乗ったのに、最後に負けて銃殺刑にされてしまうというラストは、最初に読んだ時にはあまりにもショッキングでした。様々な挑戦的な作品が作られてきた『ガンダム』シリーズの中で、現在でもなお異色と言えるラストシーンだと思っています。

最大限を尽くしたケネスの苦労が水の泡になるやるせなさ

 ハサウェイが捕まったあとは、ケネスの視点を中心に物語が進むんですが、この絵的には地味なクライマックスが他の『ガンダム』シリーズとは一線を画していて面白いんですね。もちろんケネスとしてはハサウェイを殺したくないわけですけど、連邦政府の決定を覆す術はなく、ハサウェイのために唯一できることが自ら手に掛けることだというのがまた切ない。

 ただ、この時のケネスはメンタル的に追い込まれていたのもあって、連邦軍の大将であるメジナウム・グッゲンハイムにマフティーの正体がハサウェイであることを明かすという、珍しく迂闊なミスも犯しています。

 結局、これがきっかけでハサウェイ=マフティーという情報が新聞社にリークされ、その正体が公表された上、ブライトがハサウェイの処刑を執行したという捏造報道までされてしまうという、最後のケネスの奮闘がほぼ台無しになってしまうやるせないラストへと繋がることになります。

 マフティーの正体を知った時のグッゲンハイムは、ハサウェイとブライトに対して同情的な発言をしていて、一見良識のありそうな人物として描かれています。そもそもケネスを騙すために嘘をついていたのか、それとも同情したのは本心ながらも、連邦の権威を高めるために利用できると割り切ったのか、真意を考察するのがなかなか面白いキャラクターでもあります。

 原作だと正体不明のままだったマフティーの支援者、クワック・サルヴァーの正体がこの人なんじゃないかという説もあって、個人的には結構可能性はあるんじゃないかと思っています。

 その場合、ケネスの失言がなかろうがグッゲンハイムは当然マフティーの正体は知っているのでリークは防ぎようがなく、そもそもハサウェイをスカウトしたのは、最終的に作戦が失敗した時にブライトとの関係を利用するためだったとか、さらに救いのない話になっていってはしまうのですが……。

 原作未読でも、ハサウェイが処刑されてしまうという結末だけは知っている人も多いと思いますが、こうしたケネスの奮闘っぷりや、処刑を待つハサウェイが覚悟を決めるまでの心境など、他の『ガンダム』作品ではなかなか味わえない方向性の魅力に溢れた作品でもあります。原作小説も読んでおくと、より劇場版も楽しめるようになるのではないかなと。

 果たして、劇場版でこのやるせないラストが再現されるのか、それとも別の結末を迎えるのか、今から楽しみ……なんですが、やっぱりまずは『サン オブ ブライト』の続報が欲しいところですね!



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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