三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。
“因縁の三国志人物(運命の二人)”というテーマで武将二名をピックアップして三国志演義(物語)、正史三国志(歴史書)、民間伝承などから紹介してみるという新しい試み第二弾。
前回は【関羽と張遼(ちょうりょう)】今回は【周瑜と孫策】にしました。
なぜこの2人を選んだかというと漫画『横山光輝三国志』は非常によくできた漫画ですが、三国志演義にある周瑜と孫策の友情話がカットされているからです。
二人の友情から赤壁の戦いに進んで行く伏線になっていると思うので、知らない人には知ってほしいということで今回選んでみました。
孫策と周瑜とはどんな人かまとめてみると下記になります。
●孫策は呉の初代皇帝になる孫権の兄。『江東の虎』といわれる孫堅の子。孫策もその活躍で『小覇王』と呼ばれた。
●周瑜は有名な「赤壁の戦い」で司令官として曹操を破る大金星をあげた。
●孫策と周瑜は同い年。若くからの友人で「断金の交わり※」といわれる熱い友情で結ばれている。三国志演義では、二人は義兄弟の契りを交わし、孫策が兄、周瑜が弟。呉の礎を二人で作り上げた。
※断琴の交わりではない。正史の注にあり
●二人の妻は大喬(だいきょう)と小喬(しょうきょう)の美人姉妹※。
※正史三国志では漢字が大橋・小橋
●容姿端麗な孫策と周瑜。孫策は『孫郎』、周瑜は『周郎』と呼ばれる。
※【郎】とは「美男子」を意味するそう。『美周郎』といったのは吉川英治。⇒しかしこれだと美美男子となってしまう?!
●孫策は25歳、周瑜は36歳と若くして亡くなった。
さて、それぞれの物語をみていきましょう。
因縁の三国志人物たち【周瑜と孫策】
三国志演義での活躍
まずは、三国志演義全120回(全120話)でのそれぞれの活躍をピックアップ。
【孫策】は第7回~第29回まで登場し、一方の【周瑜】は第15回~第57回まで登場しました。
周瑜の方が登場期間が長く、活躍したわけです。
正史三国志
次は正史三国志になります。三国志演義と一番異なる部分を下記にまとめています。
- 二人が義兄弟の記載はない。
- 孫策が袁術に玉璽を渡して兵を得てない。
- ※正史の注に玉璽の話があるが孫策は関係しない
- 孫策も周瑜も袁術の配下色が強い。
- 孫策が亡くなる際、孫権に周瑜を頼れとはいっていない。
- 孫策の死因は暗殺。三国志演義では于吉の呪いで亡くなる。
ちなみに二橋(大橋、小橋)は、皖城攻略の際に二人の妻となっています。
三国志平話(三国志演義の原点)
三国志演義の原点でもある三国志平話では、そもそも孫策は登場せず、周瑜の登場も赤壁の戦いからとなっています。
ちなみに曹操が二喬を狙っている話はあり、周瑜と孔明が話している場に小喬も登場しています。
このことから、孫策の活躍や二人の友情話は三国志演義成立過程で、正史三国志などを参考に加えられたのだと想像されます。
三国志演義の伏線と二人の友情まとめ(英傑群像調べ)
三国志演義より、二人の出会いから、戦いの歴史など絡みのあった場面を抜粋していきます。
- 第15回:孫策が兵を挙げた際、周瑜とたまたま再会して行動を共にする
- 第15回:周瑜は二張(張昭、張紘)を招くよう提案し孫策は家を訪れ仲間となる
- 第15回:孫策と周瑜、太史慈を捕まえる策を話し合い見事生け捕りにして味方にする
- 第29回:孫策、于吉を殺した祟りで死去。孫権らに外政は周瑜に相談するようにと言う。さらに、その場にいない周瑜に友情に背かず弟をよろしく頼むと伝えて欲しいと言い息絶える。ちなみに二喬(大喬、小喬)はこの時に名前が登場し、大喬も孫策を看取る。
- 第44回 赤壁の戦いで諸葛孔明が曹操が二喬を狙っているという話をすると周瑜は激怒。周瑜は孫策との約束で元々曹操に降伏など考えていなかったと言う。
まとめ
父・孫堅の意思を受け継いだ孫策は、周瑜との友情と共に呉の礎をつくり、そして、赤壁の戦いで孫策の意思を付いだ周瑜と孫権が曹操と戦う決意をします。結果、圧倒的不利な中で勝利を掴むことになります。
周瑜亡きあとは、魯粛、呂蒙、陸遜と大都督に意思が引き継がれて話が進んでいきます。呉の物語は、「人から人へバトンを繋ぐ物語」として作られているといえるかもしれませんね。
来週は【周瑜と孫策の民間伝承】をご紹介したいと思います! お楽しみに!
ちなみに、周瑜の民間伝承は、“才能の片鱗”、“周瑜殺人事件”の2編を以前のコラムでも紹介していますので、そちらもご覧ください!
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桃園の智会イベント 第七回を5/4(土)実施しました!
三国志交流会【テーマを決めて順に一言発言】により、初参加、恥ずかしがり屋さんでも平等に楽しめる三国志交流会を実施しました! GW、お盆、正月にやっています。早いものでもう7回目。
自分の好きな三国志を語る会なので正史、演義などの違いは問題なく、どんなジャンルの三国志が好きでも盛り上がれるように工夫しています。
今回も他県や小学生からご参加いただきたいへん盛り上がりました。毎回参加者が変わると話題も変わるのでいつも楽しいです。
今回はとくに“if(もし)”について多く時間を割きました。例えば、孔明が延命していたらどうなった? などですね。
そして、今回の企画2つ目として、【三国志武将でサッカーチームを作ろう!!】というのをやってみました! 以前のコラムでも紹介した、第五回では1コーナーを使い「野球の打線を三国志で組んでみる」というのを実施し盛り上がりました。
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今回、三国志に詳しくてもサッカーに詳しい参加者ばかりではなかったのでフォーメーションまでは考慮せずに実施。ざっとポジション毎に役割を紹介して武将を数人ずつあげて貰う形で集計投票し決定しました。
個人的には孫策はFWだと思っていたのですが、みんながGKだというのでGKになりました。多分そういうギャップも人それぞれ意見が違うと思いますが、それも含め楽しんで結果見て貰えるとうれしいです。
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実は盛り上がりすぎて用意していた企画1つは時間切れで実施できず。次回お盆休みの8/11に持ち越してやろうと思っています。
自分の三国志を語るので知識レベルは関係ないので初心者も大歓迎です。あなたの好きな三国志を思いっきり話せる場所は意外と少ないですよ! 次回もお気軽にご参加ください!
桃園の智会第8回 開催概要
日時:8/11(日)16時~19時半ごろ
参加費:1000円(お茶、茶菓子付) 要予約
※学割アリ。100円引き
お問い合わせ:三国志ギャラリーまで(078-641-3594)
三国志武将でサッカーチームを作ろう!! 選考結果
人選はイベント参加者の投票で決定。違うポジションで名前重複する場合は除外。1チーム15名選抜。並び順で前にいる方がレギュラー、フォーメーションは考慮せず、というルールで行いました。
◆チーム魏 <監督>曹操
FW:夏侯淵、楽進、張郃
MF:李典、徐晃、賈詡、夏侯惇、于禁、許褚
DF:張遼、曹仁、郝昭、典韋、満寵
GK:曹丕
◆チーム蜀 <監督> 劉備
FW:馬超、張飛
MF:関羽、魏延、法正、黄忠、馬謖、馬岱
DF:趙雲、姜維、龐統、王平、馬良、徐庶
GK:諸葛亮
◆チーム呉 <監督>孫権
FW:甘寧、周泰、周瑜、孫堅
MF:太史慈、黄蓋、呂蒙、陸遜
DF:張昭、徐盛、韓当、陸抗、魯粛、諸葛瑾
GK:孫策
◆チーム後漢 <監督>献帝
FW:呂布、華雄、顔良、文醜
MF:公孫瓚、董卓、陳宮、高順、皇甫嵩、袁紹
DF:李儒、田豊、華佗、張任
GK:張角
コラム未公開! 関羽の民間伝承パネル展示中
春の三国志会で初公開した、本コラムで未公開の関羽の民間伝承が掲載されているパネルですが、こちらは引き続き展示を継続しております。
7月末位までは展示しておくつもりですので、KOBE鉄人三国志ギャラリーのお近くに来られた際は、ぜひお立ち寄りください!
岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!