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『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』9話感想。俺の知っている五稜郭シオンと違う…!? メタバースならではのギミックにしてやられた感(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 2024年6月2日(日)に放送された、『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』第9話“彼の正体”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』9話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。 [IMAGE]

データ上の存在にも生命を感じるイナはアンノウンをどうとらえたのか


 8話ラストでは、イナの真似ばかりをしようとしているタイセイの問題点、イナがアンノウン側にいる可能性と繋がっている疑惑など、物語が本格的に動き始めた感じが出てきました。

 9話前半では、そのイナに関連したエピソードが描かれました。アンノウンの出現場所が自分とイナの行ったことのある場所ばかりだという、気付いたことをすぐに報告するタイセイは偉い、と思ったんですが、カドミチはあまり真面目に取り合ってくれません。

 イナがアンノウンと何らかの繋がりがありそうなことを知っている視聴者のメタ的な視点だからこそ湧いてくる感情ではあるんですけど、「カドミチ、ちゃんと真剣に考えてやれよ!」と思ってしまいます。

 これ、もし初代『シンカリオン』の三原フタバだったらきっとハヤトの話をちゃんと聞いたんじゃないかと思ったりもして、子供たち運転士と大人たちとの関わりがまだあまり密接ではない、『チェンジ ザ ワールド』だからこそ起きたことなのかなと思ったりもします(すでに感づいているカドミチがタイセイに気をつかってわざとトボけた可能性も少しありそうですが)。


 回想のなかで、イナがデータ上の動物たちが蔑ろにされることに怒りを覚えているさまが見られたことも含め、彼女のキャラクターが理解できるようになってきた感はあります。

 実態のないデータの存在でも一つの生命として認識する考えの持ち主だすると、ほぼ人間のような人格を持っているビーナを作ったの納得。今回の動物園の一件があったからこそビーナを作ったとも考えられます。本作がメタバースを題材にしているのは、単に流行っているからではなく、しっかりと物語のテーマに関わってくる要素になっている気がします。

 気になったのは、 「自分一人でも立ち上がる」という台詞。もしアンノウンがデータ的な存在だと仮定すると、イナは操られているとかではなく、自分の意思であちらに行った可能性すらありそうだと思えてきました。

函館の運転士・五稜郭シオンから感じる猛烈な違和感


 イナのエピソードと並行して9話で描かれたのが、函館支部の運転士である五稜郭シオンにまつわるエピソード。

 始めてシオンが登場した時、「あれ?」と困惑したのは絶対に自分だけではないはず。事前の情報からシオンの存在は明かされていて、個人的にも登場をすごく楽しみにしていたキャラクターだったので、完全に別人が出てきたのには度肝を抜かれました。


 その直前にデータ上の生命体の話が出ていて、シオンの自身喋り方がカタコト気味なのもあって、アンノウンが人類を探るためにシオンの偽物を送り込んで来たんじゃないかとまで妄想を広げていたんですが、これは完全に深読みのしすぎでした。

 シンカリオンの訓練では、古武道を生かした動きでアンノウンを撃破。前回のテンといい、後輩のスペックが高すぎてちょっとタイセイやリョータの立つ瀬がなくなりつつあります。

 この時の動きを記憶していたアカネが、古武術をやっていることをドヤ顔で指摘するも、すでに全員話を聞いた後だったオチには笑いました。とくに仲間になってからのアカネは、考え方がドライで大人っぽい面が目立っていたので、こういう年相応のかわいさが垣間見えるシーンは結構新鮮。ただ指摘の内容自体は完全に当たっているので、やはり洞察力がズバ抜けて高いのも間違いないです。


  「入部を祝して」というマイの口ぶりからするに、テンやシオンも鉄道部の部員扱いになっているっぽいのも面白いなと。今までの『シンカリオン』シリーズだと、主人公たちが所属している支部以外の運転士は、物理的な距離があるので、アンノウン出現時に共闘することはあっても日常シーンでの関わりは薄めでした。

 本作ではメタバースを通すことで、大宮支部以外の運転士との関わりが日常的に描かれそうなのは、今後楽しみな部分です。

 そしてラストでは、現実のシオンは女の子であることが判明。すでに公式サイト等で明かされていますが、シオンは貴重な女の子運転士として印象に残っていて、登場時からずっと「どうなってんの!?」という状態だったので、してやられた感がありました。


 メタバースならアバターの容姿を変えられるのはちょっと考えれば分かることなんですけど、本作だとタイセイたちが全員現実の姿のままでメタバースに入っているので、アバターという概念の存在がすっかり思考の外にいってしまっていましたね……。

 自己紹介の時に中学1年生と言って「いや明らかにタイセイたちより年上だろ!」とツッコミを入れてしまったんですが、アバターの容姿を自由に設定できるなら誰も中学1年生には見えない見た目にツッコミを入れなかったのも納得できます。

 シオンがユキの好意に困惑気味なのは女の子同士だからなんでしょうけど、シオンが自分の正体を明かすであろう次回が楽しみ。これでユキもアバターの中身が男性だったという2段オチだったらまた面白いんですが、果たしてどう着地するのでしょうか。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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