アクワイアが6月20日にPC(Steam)向けに配信する新作タイトル『Scars of Mars(スカーズ・オブ・マーズ)』。本作は近未来の火星を舞台にしたリアルタイムRPGです。
そんな本作をクリアまでプレイしたので、システムの紹介も交えながらレビューします。
ちなみに本作は『ロード・トゥ・ドラゴン』や『宇宙の寿司』などに携わった横山栄介さんが手掛けたもの。ゲームらしさが煮詰まったような濃密な体験ができる神ゲーとなっていると感じました。体験版が配信中なので、気になった方はそちらもどうぞ!
※この記事には『Scars of Mars(スカーズ・オブ・マーズ)』のネタバレが含まれています。
※掲載している画面はPC版のものとなります。
索引
世界観はサイバーSF系。連絡が途絶えた火星の研究施設で待つものは?【スカーズ・オブ・マーズ プレイ感想】
本作は、近未来である2158年12月6日の火星が舞台。プレイヤーは、ヒューマノイド部隊の指揮官として、突如連絡が途絶えた研究施設から生存者とともに脱出する極秘任務に挑むことになります。
研究施設は未確認生命体に占拠されたことが原因で連絡が途絶えました。その最後の連絡をした博士を助け出すのが任務です。
一見するとよくある感じですが、実際に遊ぶとちょこちょこと違和感が。例えばゲーム開始時のチュートリアルでは、研究施設を襲った未確認生命体と戦うシミュレーターが登場するのですが……あれ?
火星からのSOSを受信したのが54時間前。にもかかわらず、そこで送られた未確認生命体のデータを使ったシミュレーターが使用できるなんて早すぎません? さらに、情報漏洩を防ぐためとはいえ、ブリーフィングを行っていないというのも気になります。
もちろん、近未来が舞台なのでいまでは考えられないような技術が発展していると考えれば、おかしくないのかもしれません。作戦に従事するヒューマノイドもそうですし。ただ、何かしらの裏を感じます。ただの考えすぎだったらいいのですが……。
地味? 違うね。無駄をそぎ落として情報量が詰まったハイスピードバトルが楽しすぎる!【スカーズ・オブ・マーズ プレイ感想】
こうして、研究施設に乗り込んだプレイヤーたちヒューマノイド部隊。部隊は4機のヒューマノイドで構成されており、3×3の範囲内でそれぞれをリアルタイムで操作して戦います。
同じように敵も3×3の範囲内で行動。敵味方共に配置箇所はランダムで決まるようです。
さて、結論から言いますと……プレイヤー1人で、この4機を同時にリアルタイムで動かすというバトルシステムが神ゲーポイントなんです!(断言)
また、『スカーズ・オブ・マーズ 』のバトル画面を初めて見た人の90%以上は「令和のこの時代に、あまりに地味すぎる……」と感じると思うのですが……。
待った! 違うぜ!!
と、声を大にして否定しておきます。遊ぶとわかるのですが、地味じゃないんです。リアルタイムに4機を動かすために必要な情報が埋もれずにわかりやすくなるように、無駄な要素がそぎ落とされているんです。このへんは追って詳しく語ります。
さてさて、では一度バトルの全体説明に戻ります。バトル中は3×3の範囲内で敵を攻撃したり、回避したりしますが、同じ場所に配置できないことを除けば、行動に制限はありません。
戦闘では、ヒューマノイドごとに装備した武器を駆使して戦います。武器には、クールタイムが存在し、連続で使用できなくなっています。一部の武器は攻撃ではなく、回復やバフを付与するもの、ダメージを軽減するシールドなどができるものも。
敵は攻撃するときに赤い攻撃範囲が表示され、一定時間ののち攻撃します。その際、アラームが鳴るので視覚と聴覚で認識できるので回避するのは難しくありません。
このへんが、一見すると地味に感じるところですが、遊んでいると非常に分かりやすく目に入ってきます。……まあ、頭でわかっても、同時に4キャラを動かすのが大変で、慣れるまでは指がついて行かずによけきれないんですけどね……。
敵の攻撃は頻度が高く、攻撃範囲が1マスのものもあれば、複数のマスにわたるものもあります。プレイ中に遭遇しなかった可能性もありますが、3×3の範囲すべてに攻撃してきたのは、とあるボス敵だけでした。つまり、原則的には“回避できる”バランスです。
これだけだと簡単そうに思えますが、おもしろくなってくるのはここから。
まず回避する場合ですが、隣接しているヒューマノイドがいる場合は、そのヒューマノイドと位置が入れ替わってしまいます。これを踏まえて、ヒューマノイドを移動させるのですが、敵の攻撃は同時にカウンターのチャンスにもなります。
攻撃範囲が表示されて攻撃を仕掛けてくるまでに、攻撃するとカウンターアタックとなって、通常よりも大きなダメージを与えられます。このダメージ量がかなり大きいので積極的に狙っていきたいところ。慣れるとバンバン狙えます。
ただ、積極的に狙って敵の攻撃を受けては元も子もありません。いかに、敵の攻撃範囲から退避して、なおかつ、操作しているヒューマノイドでカウンターアタックを狙う……。4機のヒューマノイドを操作する関係で、慣れないうちは回避するのに精一杯ですが、慣れてくると入れ替えをうまく使いながら、カウンターアタックを決められるようになって、戦闘がかなり楽しくなってきます。
ちなみに本作はフレンドリーファイアありの鬼畜仕様(ホメ言葉)。仲間同士の攻撃が当たってしまうこともあるので、慌てて適当に遊ぶと同士討ちでしっちゃかめっちゃかに(涙)。正直、オプションでフレンドリーファイアの有無を設定したくなるくらいムカつくことがあるので……だからこそ、慣れると楽しいんですけどね。
行動範囲が3×3というのも、4機のヒューマノイドを移動させるには狭いかと思いましたが、むしろ、これ以上広いと手が回らなくなってしまうので、これがベスト。限られた範囲でスピード感あふれるバトルが楽しめます。
初回プレイではぎこちなかった複数キャラ操作が、何度も遊ぶようにどんどん頭と指が覚えていって、スムーズになっていく。いわゆる、プレイスキルが上がることによって、どんどん面白くなっていく部分も神ゲーポイントになるわけですね。
……で、慣れたと思ったら武器などを変えたことによって、また別の形でのキャラの動かし方が要求されたりして「ムキー!」となることもあるんですが、そうやって“ゲームがうまくなっていく自分”を感じられるのが、本当に楽しすぎるんです。
ちなみに、4キャラを同時に動かすのは大変なんですが、仲間が敵に倒されて操作キャラが減っていくと……めちゃくちゃスーパー回避を連発できるようになって、それはそれでアドレナリンが出ます! やっぱ、1キャラだけ見て遊ぶと、赤いマス=敵の攻撃範囲に素早く対応できますからね。よくできてますねー。
だがしかし! パーティメンバーが少なくなると敵の攻撃をよけやすくなる代わりに、火力が大幅に落ちていくわけで……敵を倒すのに時間がかかり、これから語る“制限時間”との兼ね合いが出てくるわけです。ほんと、よくできてますねー。
バッテリーが切れる前に救出せよ。時間に追われるリアルタイムな緊張感がクセになる!【スカーズ・オブ・マーズ プレイ感想】
本作では、開始時にランダムで自動生成されるマップを任意に選んでルートを決めていき、最深部にいるボスを倒すとクリア。ストーリーが進むようになっています。
道中のマスには、敵がいたり、アイテムを入手できたり、ランダムでイベントが発生したりとさまざま。白線でつながっているマスならどこにでも移動できます。
どのようなルートをたどっても最後にはボスにたどり着けるのですが、ふたつのことに気を付けなければいけません。
ひとつ目がアイテム。アイテムは大きさが設定されていて自由にインベントリに収納でき、クリア後に入手できるようになっています。
アイテムによって、大きさはさまざまですが、何を入手したかわかるので、欲しいものの取捨選択が重要に。基準のひとつとしてレア度で決めることもありますが、本作では同じステージ内で入手できるアイテムのレア度はすべて同じになっていました。
なので、初めて見るアイテムだと名前だけでは性能がわかりませんが、基本的にインベントリに配置したときに多くのスペースを必要とするアイテムほど入手できる機会が限られているので、そちらを優先するのがよさそう。
ただし、インベントリに収納した時点では、アイテムは入手したことになっておらず、道中で敵にやられてしまうと一部のアイテムを無くしてしまいます。
同じことはバッテリーがなくなったときにも起きます。このバッテリーがふたつ目。
バッテリーは、ヒューマノイドが活動できる時間。ざっくり言うと制限時間のようなもので、作戦中はつねに減少します。戦闘中や進むマスを決めているとき、アイテムの整理しているときなど、例外はありません。
これによって、一度作戦が開始されると達成するまで、止まることは許されないという緊張感を持ってプレイできます。どのようなルートで進むかにもよりますが、一度の作戦で5~6回、多くても10回ほどの戦闘が行われても、十分クリアできました。
むしろ、バッテリーが足りていないというのは、アイテムの性能が低く、戦力差が大きいときなので、素直にヒューマノイドを強化した方がいいですね。
入手したアイテムは、設計図となっていて、作成するか、強化するために使用できる強化ポイントに変換できます。
設計図から作成しないと使えないうえに、強化ポイントは序盤こそあまり入手できませんが、進めていくうちに大量に入手できるので、どんどん作成していくのがよさそうです。
3つのパーツで自分好みのヒューマノイドに【スカーズ・オブ・マーズ プレイ感想】
ヒューマノイドは、素体(FRAME)、クラス(CLASS)、武器(WEAPON)の3つのパーツで構成されています。
素体は、いわゆるヒューマノイドの体。HPや攻撃力、移動速度などのステータスに影響します。
さらに、射撃タイプなら遠距離での攻撃力、防衛タイプならHPや防御力が高いなど素体ごとにタイプが設定されているので、ヒューマノイドの方向性を決める重要な部分です。
クラスは、装備できる武器を決めるパーツになっています。さらにクラスごとの特殊能力があるので、同じような武器を装備できる近接型でも攻撃力に特化させるか。それとも、生存能力を高めるか。クラスは、素体で決めたある程度の方向性を確定させる重要なものです。
武器は、そのままヒューマノイドが戦闘で使用するものです。片手武器と両手武器の2種類があり、片手武器は右手と左手にひとつずつ装備でき、両手武器はひとつだけ装備できます。
戦闘では、武器のアビリティを使用して戦いますが、アビリティが攻撃だったら攻撃だけ、回復だったら回復だけというようにその武器でできることはアビリティに依存します。通常攻撃とアビリティで別れていたりはしないのでそこは注意しておかなければいけません。
アビリティ以外の性能として両者を比較すると、片手武器は性能が控えめでクールタイムが短い。両手武器は性能が高めでクールタイムが長いといった差があります。どっちが突出して強いということはないので、自分好みのものを装備してOK。
個人的には、敵の攻撃を回避するために操作する駒を頻繁に変えて移動させるので、クールタイムが短い武器の方が使い勝手が良かったです。その中でも近接武器の二刀流がかっこよさも考えていい感じでした。見た目には影響しないんですけどね。
そうして作りあげたヒューマノイドは、そのまま作戦で使用できますが、どうせ性能を自分好みにしたのなら見た目も自分好みにしてしまおう。ということで、性能に関係ない部分の見た目と名前を変更できます。
変更できる見た目は顔に当たるMASKです。32種類から選択できるので、全員を女性にしたり、修羅場をくぐってきた歴戦の軍人にしたり、ヒューマノイドということで明らかにロボットのようにしたりできます。
そこから名前も変えれば、完全に自分だけの部隊にできます。プレイヤーはヒューマノイド部隊の指揮官なので、それくらいの自由はあってもいいと思います。
さらに部隊ごとに効果を発揮する“研究”も行えば、準備は万端。“研究”では、全員の性能を強化したり、特別な効果を持つアビリティを覚えられるので、忘れずに覚えておきたいです。
やり直したいときも、簡単にポイントを還元してできるので、研究ポイントをすべて使いきっておくと無駄がありません。
本作をクリアしましたが、かなり戦闘がおもしろく一気にプレイしてしまいました。難度としては高めなので、適当に操作したり、武器などを決めていると戦闘に勝利するのは難しい。
ですが、勝つためにはどのようなヒューマノイドを作りあげるかを考えている時間も楽しいです。名前や見た目を決めると愛着もわきますしね。体験版もあるので、ぜひ!
「●●ゥ! 何やってんだよおお!!」なんて、思わず声が出ちゃう。地味だけど、実は実況プレイ向けで、人のプレイへのダメ出しも楽しい【スカーズ・オブ・マーズ プレイ感想】
個人的には、リアルな知人の名前をつけて実況プレイをするとめちゃくちゃ盛り上がると感じました。凡ミスで敵の攻撃を避けきれなかったときとか、フレンドリーファイアで仲間を撃墜しちゃったりした時とか、「なにやってんだよ、●●ゥゥ!」みたいに思わず感情移入して叫んじゃうこと請け合いです。
遊ぶとわかりますが、本質的にはアクションゲームなので、いろいろな場面でギリギリのドラマが生まれやすいゲームなんですよね。なので、遊んでいる方も見ている方も声が出ちゃう系の神ゲーだとプッシュしておきます! 人のプレイを見ている時のダメ出しといいますか、「いいから1回オレにやらせろ!」と言いたくなる人は絶対多いはず(オレです)。
あ。ハクスラやカスタマイズの部分も沼ゲーなので、その部分にハマる人も多いと思います。古からある、「新しい武器やスキルを手に入れて、面白いアセットを考えたから、試しにあとワンプレイだけ……」と言ってたら夜が明けるヤツです。自分の場合、気が付いたらエンディングでした(笑)。時間が飛ぶので、その点はご注意!