どのようにしてこれらのローカライズを実現させてきたのか。そして今後はどこを目指していくのか、スパイク・チュンソフト執行役員かつアメリカ支社のCEOも務め、同社の海外事業を率いる飯塚康弘氏にインタビューを行いました。
そのタイトルに対する熱量がなければ、よいローカライズは実現できない
――まず、飯塚さんの役職と来歴を簡単に教えてください。
飯塚康弘氏(以下、敬称略):スパイク・チュンソフトの執行役員をやらせてもらっています。旧スパイクに入ってから、ずっと海外ゲーム関係を担当していて、簡単にいえばスパイク・チュンソフトの対海外特攻隊長のような感じですね。あとはアメリカ支社の代表として、欧米コンソール市場展開のマネージメントをしています。
――ローカライズというと、海外のゲームを日本語訳するというイメージがあると思いますが、実際にはほかにもさまざまな業務がありますよね。具体的にどういう業務があるのかを教えてください。
飯塚:まずローカライズに関わるポジションとして、プロデューサーという存在がいます。これはそのタイトルを日本でどういう形で売っていくかを考える役割の人です。当然、ローカライズ作業やマスター管理をするといった作業もあります。
それとは別に、ローカライズするタイトルを獲得するために交渉をするマネージャーが存在します。こちらはタイトルの発掘や、それに対して市場性があるかどうかをリサーチするのが仕事です。いいタイトルがあれば社内でプレゼンをし、通れば版元との交渉を経てライセンス契約を結ぶ、といったことを行います。
もちろんそれ以外にも、PRを担当する部門やセールス部隊もいますが、ローカライズのタイトルに携わる重要や役職としては、主にこの2つです。シンプルにまとめると、交渉役と実働部隊というようなイメージで、常に動いています。
――タイトルの選定はどのように決めているのでしょうか?
飯塚:マネージャーがいるとはいえ、候補となるタイトルはスタッフみんなが探していて、それぞれ好きなジャンルも違うんです。例えば僕はゾンビゲームが好きなので、とりあえずゾンビものであれば、とりあえずコンタクトを取ろうとします(笑)。『ダイイングライト』とか『デッドアイランド』、『HOW TO SURVIVE』『They Are Billions』とか。
それ以外でも、例えば『バルダーズ・ゲート3』など、テーブルトーク系の海外RPGが好きなメンバーもいれば、『シティーズ:スカイライン』のような街作りゲームが好きなメンバーもいたりしますね。
飯塚:そうですね。プロデューサーの食指が動くということは、おそらく同じ嗜好を持つ人たちがファンとしているだろうと。ゾンビゲームが好きな僕を例にすると、同じくゾンビゲームが好きな人はきっとこのゲームも好きだろうなという気持ちで選んでいる部分もあります。逆にゾンビゲームにあまり興味ない人がゾンビゲームを取ってくるのは、ちょっと難しいかなと。
――タイトルに対する熱量みたいなものが必要だと?
飯塚:そうですね。好きならプレイはもちろん、いろいろ調べたり、資料化したりすることも含めて、愛情持って取り組めると思うんです。まあ前提として、ローカライズ部署にいるメンバーたちは総じて超洋ゲーオタクですね(笑)。
――確かにローカライズ分野に入ってくるということは、少なからず海外ゲームに愛着がある人たちではありそうですね。
飯塚:日々slackでやり取りしていても、「このゲーム知ってますか?」みたいな情報が流れてくるんですよ。それで「おもしろそうだから、ちょっと進めてみようか」と話が進んでいくこともあります。これは新規開拓系の話ですけどね。
逆に古くからお付き合いのあるパートナー会社の場合は、彼らから「ちょっと新しいタイトル作ってるんだけど、どう?」みたいな感じで連絡をいただいています。
例えば『サイバーパンク2077』のCD PROJEKT REDさんや、『バルダーズ・ゲート3』のLarian Studiosさん、『ARK』のStudio Wildcardさんとは、複数のプロジェクトを通して、お互いビジネスを超えた信頼関係が築かれているので、新規タイトルの相談があったときにはテンションはかなり上がりますね! どんな面白いゲームなんだろう? って。
飯塚:ありますね。その時は非常に困ります(苦笑)。やはり海外ゲームを同じ月に2本出すというのはそうそうできません。もちろん事前にスケジュールを組んでやる、という方法もできなくはないのですが、世界同時発売のタイトルが絡むと、それも難しい……。仮にA社とB社がそれぞれお話を持ってきてくれたとして、それが同じ月に世界同発だった場合、片方の会社に「発売日をズラしてほしい」なんて言えませんからね。
そもそも原則として、意図的にタイトルを同じ時期に出すことはしていません。ローカライズ、セールス、マーケティングの業務はタイトルの大小に関係なく、1タイトルに掛かるカロリーはほぼ同じなので、同じ月にタイトルを複数出してしまうと、どうしても100%の力を分散しなければならない場合があります。やっぱり、1つのタイトルに全身全霊をかけて取り組まないと、パートナー会社さんが信じて預けてくれたタイトルに申し訳ない気持ちになります。
タイミングでいえば、日本で一番売りやすい時期なども真剣に考えなければいけないところですね。『バルダーズ・ゲート3』のときは、10月に日本版の発売日を12月21日と告知したのですが、そこに決めたのは、5大GOTYの1つ目Golden Joystick Awardsにノミネートされたことが分かり、だったら12月にあるThe Game Awards 2023にもノミネートされるはず! 確証はありませんが、GOTYを絶対獲得できる! と本気で思っていました。そして、アワード結果が出た後に発売することにしました。
結果、僕らの予想を超えるたくさんの賞を獲得してくれたおかげで、今まで本作を知らなかった多くのユーザーの皆さんにも伝わったと思います。
――完全に追い風でしたね。
飯塚:5大GOTYを取っちゃうのは前代未聞ですよね。でもLarian Studiosは「DLCや続編は作りません!」って発表して……潔く、本当にLarian Stduiosさんらしいと思いました(笑)。
飯塚:僕が会社に入った当初から、すでに『V-Rally』とか『コリン・マクレー ザ・ラリー』とか、コアなレースゲームなどをやっていました。当時は日本産のゲームが市場のメインであったなかで、海外ゲームを持ってくるビジネスに手を出している会社は少なかったと思います。
ときおり海外のパブリッシャーさんが日本に支社を作るものの撤退といった状況を見ながら、かれこれ20年以上もやっていると、いろいろありましたが、このビジネスを諦めず続けられたのも、期待してくれるユーザーの皆さん、そして世界中のパートナーさんとの繋がりのおかげだと思っています。
――20年ぐらいローカライズに携わってきたなか、日本で海外ゲームの地位が上がってきたなという実感はどこで感じましたか?
飯塚:当社が携わったタイトルでいえば、やはり『ウィッチャー3』だと思います。あの時代は、PS4であれだけのシームレスなオープンワールドかつ、グラフィックが綺麗なアクションRPGってほかになかったので、僕も含め多くのユーザーの皆さんもびっくりしたんじゃないかなと。
――『ウィッチャー3』も、もう発売されてから約10年経つというのも驚きですね。
飯塚:あのときCD PROJEKT REDさんって、今とは違い日本ではまだ広く知られている会社ではなかったですよね。僕らが初めてCD PROJEKT REDさんと関わったタイトルは『ウィッチャー2』のXbox 360版なんですが、そのおかげで『ウィッチャー3』も担当させてもらうことができました。
――『ウィッチャー2』の時は、スパイク・チュンソフト側からアプローチしていったのでしょうか?
飯塚:これは友達の紹介ですね。BIOWAREさん開発の『ドラゴンエイジ:オリジンズ』の日本語版を当社から出させてもらったことをきっかけに、BIOWAREとすごく仲よくなりました。BIOWAREとCD PROJEKT REDは昔から仲がよくて、そこで「日本で展開するんだったらスパチュンっておもしろい会社あるよ」と紹介していただいた形になります。
実際にE3でお会いした際、「このゲームを日本で展開してほしいんだけど」と言われたのが、『ウィッチャー2』のXbox 360版でした。
「正直、日本ではXbox 360版だけだと厳しいので、PS3版も出そう」と勧めたのですが、そのころすでに『ウィッチャー3』に取り掛かっていて、移植にリソースは割けないと言われました。新作『ウィッチャー3』は絶対にすごいゲームになる! ってすごい熱量のアピールを受け、何も確証はなかったですが、最終的には『ウィッチャー2』やりましょう! ってなっていました(笑)。
――なかば先行投資みたいな形でのスタートだったんですね。
飯塚:その後、新作を見せる準備ができたということで、『ウィッチャー3』を見せていただいたのですが、これが本当にすごかった。世界同時発売にこだわっているということで、当時当社に在籍していた現CD PROJEKT REDジャパン・カントリー・マネージャーの本間覚さんがポーランドに行き、何カ月も現地で作業をしていましたね。向こうにいるあいだ、ずっとブリトーしか食べなかったと言っていました(笑)。
本間さんがCD PROJEKT REDに行ったあとも付き合いは続いていき、『サイバーパンク2077』にも携わることができました。東京ゲームショウにはキアヌ・リーヴス氏が来るということで盛り上がったものの、その後発売延期の発表があるなど、波乱万丈なときをいっしょに乗り越えてきたおかげで、CD PROJEKT REDさんは本音で話せる大切なパートナーです。
このような関係を築けたのは、やはり海外ゲームのローカライズ事業を長く続けてきたこと、あきらめずに続ける会社の方針がよかったのではないかと。あまり振るわない時期もありましたが、それでも着実に続けてきたからこその結果なのかなと思います。
――開発側からしても、長く続いているというだけで安心感もありそうですね。
飯塚:そう思います。新しいパートナーさんに僕らが過去に担当したタイトルリストをお見せすると驚いてくれます。「えっ、あのタイトルも担当してたの?」って(笑)。
ちょうどこの前調べたのですが、今現在でローカライズした作品は106タイトルありました。これは廉価版は含めていない、純粋なタイトル数です。せっかくなので全部パッケージを用意して、飾っておけばよかったなと思いました(笑)。
――ちなみに100タイトルめはなんだったのでしょうか?
飯塚:100タイトルめが『サイバーパンク2077』なんです。一番大変だったと言っても過言ではないタイトルですが、まさにメモリアルタイトルとなりました。運命を感じてしまいます。
――ほかに思い入れ深いタイトルなどはありますか?
飯塚:個人的には『デッドアイランド』ですね。シネマティックトレーラーがすごく斬新で衝撃を受けたのを覚えています。女の子が倒れているシーンから始まり、どんどん逆再生で巻き戻っていき、最終的には家族旅行を楽しもうとしている家族の絵になるという……本当に素晴らしい映像だと思います。
オープンワールドゾンビものの先駆けだったということもあって、プライベートでもやり込みました。あと『テラリア』もたくさんプレイしましたね。
【PS3『デッドアイランド:ダブルゾンビパック』ノスタルジートレーラー】
――ローカライズするタイトルもバリエーションが豊富ですよね。
飯塚:うちはタイトルの大小などはあまり考えておらず、誰かがおもしろそうだなって思ったらやるというスタイルです。大抵、そういう出会い方をしたゲームって成功するイメージがあるように思います。
スパチュンといえばビジュアルノベル! 海外でのブランディングも順調
――海外で展開しているスパイク・チュンソフトのタイトルは、どう評価をされているのでしょうか?
飯塚:例えば『ダンガンロンパ』や『ZERO ESCAPE』、『AI: ソムニウム ファイル』などの作品は、Steamでいうと“ビジュアルノベル”というジャンルに当たるのですが、品質の高いビジュアルノベルを揃えているブランドとして、世界のユーザーに認知されています。
ストーリー性が強く、かつアニメ風の独特なビジュアル、そして『ダンガンロンパ』なら学級裁判、『ZERO ESCAPE』なら脱出ゲームといった、その作品に合ったオリジナリティのあるゲーム性を好むユーザーが増えています。僕らとしても、継続してビジュアルノベルコンテンツの提供を続け、同ジャンルのパイオニアの1社になりたいという気持ちでやっています。
幸いなことにMAGES.さんの科学アドベンチャーシリーズの欧米展開も任せていただいています。とくに『シュタインズ・ゲート』はビジュアルノベルとして人気の作品ですし、実は中国でもすごく人気があります。欧米のみならず、アジア地域含めてビジュアルノベルに強いというブランディングができてきていて、この先も期待ができるジャンルになっています。
――ファンの傾向としては、やはり日本のアニメが好きなユーザーが多いといった感じでしょうか?
飯塚:そうですね。ナラティブな要素と、日本ならではのテイストは、本当に認知され、需要が伸びてきているなと感じます。プロモーションについても、例えばSummer Game FestやGamescomといったゲーム中心のイベントより、アニメ中心のコンベンションであるAnime Expoに力を入れる流れです。
現在スパイク・チュンソフトに興味を持っている、期待しているファンはハイエンドを売りにしたゲームではなく、日本風(アニメ風)でストーリー重視で作られているタイトルを求めていると思います。まずは、スパチュンを慕ってくれるファンが求める、良質な作品を提供することに引き続き努力していきます。
――MAGES.の『シュタインズ・ゲート』のように、別メーカーから海外展開をお願いされるパターンも増えてきそうですね。
飯塚:はい。ようやく、新しいパートナーさんの海外展開をお手伝いできる準備が整いました。STEAMは参入して9年目、アメリカ支社が設立7年目になります。地域や販売プラットフォームなど、それぞれに適した販売の手法や、コミュニティ運営、マーケティングなど、今まで培った自社のノウハウをパートナータイトルの海外展開で活用できればと考えています。
しかし、僕らのブランドも万能ではありません。なので、スパチュンと組むことで成功率が上がる、販売数が伸ばせる可能性があるタイトルを選んで協力させていただきます。
誤解しないで欲しいのは、スパチュンだけが選ぶ訳ではありません。パートナーさんもどこのパブリッシャーに任せるのかを選んでください。そこの選択肢の1社にスパチュンが参入するということです。
この考え方は、海外ゲームのローカライズビジネス20年で培ったものです。僕らに任せてもらえればしっかり売る自信がある、だからこそパートナー会社に交渉し、日本での販売をまかせて頂いているわけです。で、今回の海外展開についても同様で、ようやく海外市場への販売サポートの準備ができたという状況です。
僕らとしても、無作為になんでもやりますとは言えません。当社が担当することで、パートナーさん自身が海外展開をするよりも確実に売り上げが伸びるっていう可能性があるものしかやってはいけないと思っています。
――日本のタイトルを海外向けにローカライズしているのは、どのような方たちなのでしょうか?
飯塚:アメリカのメンバーは10人ですが、半分がローカライズ専属の部隊です。彼らも日本のアニメ文化などに詳しいオタク精鋭たちです。そうでないと、キャラクターの個性などをうまく訳せません。例えば設定が学園もののゲームだとすると、日本の学園アニメに精通していた方が、確実にクオリティの高い翻訳ができるでしょう。
洋ゲーのローカライズチームの話と同じで、携わるメンバーがまずファンであり、愛を持っていないといけない。そんな彼らたちがいいと思うゲームじゃなければ、きっと売れません。だって、彼らが納得できないクオリティなら、その人たちが属するコミュニティにも受け入れられないということですから。
――洋ゲーを日本で売る際には描写の制限がありますが、日本から海外に出す場合、例えば露出の度合いに対しては厳しいなどがあると思います。このような国別の表現の差異について、どのようなことを気にかけていますか?
飯塚:こちらのメンバーに注意しているのは、お利口さんにはなってほしくないということです。ある程度ノウハウが溜まってくると陥りがちなのですが、「過去こうだったから、事前にこうしておいたほうがいい」と開発に提案してしまうケースがあります。レーティングに忖度してしまうんです。
もちろん限度はありますよ。女性キャラクターの胸が全部出ていたりとか、明らかなNGはともかく、肌の露出度合いなんてパーセンテージで決められているわけではないので。
とはいえ事前に修正したところで、さらに修正指示を出されるかもしれないですし、もしかしたらオリジナルのままでも問題ないかもしれない。可能ならば誰だって、そのゲーム本来の形で遊びたいですよね。
――具体的に海外で好評だったタイトルはどんなものがありますか?
飯塚:『ダンガンロンパ』や『ZERO ESCAPE』も好評いただいていますが、1番は『AI: ソムニウム ファイル』ですかね。全体の売り上げ比率の半分くらいが北米なんです。ほかのタイトルは日本の売り上げが半分くらいを占めることが多いのですが、『AI: ソムニウム ファイル』は北米のコアなファンが支持してくれました。
ちょうどアメリカ支社を立ち上げたタイミングだったこともあるかもしれません。アメリカ支社のメンバーたちが企画段階から力を入れていて、プロモーションもそのまま日本のものを流用するのではなく、海外で受け入れられるような……言ってしまえば海外の日本オタク向けの調整をしたことが功を奏したのではないかと考えています。
――プロモーションの話だと、例えば映画のポスターのデザインが、日本と海外ではぜんぜん違うということがよく話題になりますが、ゲームでもプロモーション展開の違いはありますか?
飯塚:ありますね。例えばサムネイルですが、海外ではネットミームとかを取り入れることがあります。『AI: ソムニウム ファイル』はまさにそうした方向性だったかと。
男の人たちが横並びでガッツポーズをしている有名なネットミームがあるじゃないですか。あれをゲームのキャラクターたちにやらせてバズっていましたね。ファンからの受けもよくて、「このTシャツが欲しい!」という声も多かったので、少数ではありますがSNS投稿でプレゼント企画も実施しました(笑)。
――海外の企業やファンは、ものすごくフットワークが軽い印象がありますよね。
飯塚:ノリでうまくやっていくのはすごくおもしろいですよね。あと海外では限定版のニーズがあります。
うちは年に1度、世界のユーザーに向けたアンケートをとっているのですが、その時にパッケージ版を買う理由を聞いているんです。僕はずっとパッケージ版を買うのは中古で売れるからだと思っていたのですが、アンケートを見るとそうではなくて、ほぼコレクション目的で驚きました。
そもそもアンケートに答えているのは熱量が高い方が多いとは思いますが、予想以上にコレクション目的の方が多かった印象です。そのようなコアなファンの方は、なにかしら作品に対してのメモリアルというか特別感を持っていて、だからこそ限定版も、本当に自分の好きなゲームのものは優先して買うと。
Steamにも、ゲームをプレイするとトレーディングカードがもらえる機能があると思います。あれも自分のお気に入りを示す行為というか、いわゆる“推しゲー”ですよね。でもあれってコンプリートするためには誰かから買ったり、トレードをしなければいけない。海外のユーザーのほうがトレーディングカード機能に対しては積極的で、コレクション性に執着しているように感じます。
Anime Expoを見ていても、満遍なく好きというよりも、自分が好きなものに限っては本気でめちゃくちゃ好きという感じ。『ダンガンロンパ』に関しても、好きでいてくれるファンはずっと推し続けてくれている……だから、そういうファンを獲得できるゲームは強いですね。
これは海外支社のメンバーの力も大きく、例えばSNSの投稿で「今日は○○の誕生日です!」って誕生日投稿をして、非常に喜んでもらえています。この前も『AI: ソムニウム ファイル』の2作目が発売されて2周年記念といった投稿をしていました。
1周年はともかく、日本ではコンシューマーゲームタイトルで2周年ってあまり祝わないと思うんです。スタッフとファンとの距離感も近くて、友だちみたいに話すこともあります。これらは海外特有のコミュニティの作り方で、日本とはまた大きく異なりますね。
STEAMのユーザーレビューは重要
――国内海外問わず、レビューを見て買うか買わないかを判断する人は多いと思います。とくにSteamは購入したユーザーしかレビューを書けない点からも、その声は非常に大切ですよね。
飯塚:そうですね。レビューの評価を購買の基準にしているユーザーさんはすごく多いと思います。あの評価って、GOODを付けた人の数が、全体の投票数の何割を占めるか、という仕組みなんです。全体の95パーセント以上が圧倒的好評で、85パーセントから90パーセントが非常に好評、のようにGOODの割合で評価が変わります。
不具合を評価として掲載されないように、僕らはコミュニティハブで、必ずテクニカルサポートの窓口を設けています。これがあると、不具合があったときに、指定のユーザーサポートに連絡することもできますし、スレッドに質問を投稿することもできます。要は、問題を伝える先が無くて仕方なくレビューで伝えるようなケースをなくす必要があります。
――ここ数年でPCでゲームを遊ぶ層がグッと増えたように感じますね。
飯塚:確実に増えていると思います。ゲーミングPCやゲーミングチェアの売り場がこんなに広く用意されているのは、それだけニーズがあるということですから。インフルエンサーの影響を含め、ゲームがより身近になってきているのではないでしょうか。ただ、プラットフォームが多種多様になってきているとも感じます。
――PCゲームの一般化にともない、海外ゲームへの注目度も高まっているようにも感じます。
飯塚:今のユーザーさんはAAAタイトルだとかインディーゲームだとかは、あまり気にしないようになっていると思っています。それよりもインフルエンサーのプレイを見て、おもしろそうだから買おうくらいの気楽さを感じます。日本のゲームとか海外のゲームとかはもちろん、どこのプラットフォームだろうが、自分ができる環境のものを買うのかなと。
昔はゲームの情報を得るためにはトレーラーを見たり、メディアの記事を読んだりする必要がありましたが、今は情報が溢れているので、調べれば調べるほど自分に合うタイトルかどうかがすぐに判断できると思います。
海外展開を考えるパートナー社との、コミュニケーションを強化
――今後の展望や、どのようにアプローチをしていく予定なのかなどを教えてください。
飯塚:海外ゲームのローカライズに関しては、引き続き今のスタンスはキープしていきたいですね。我々がおもしろいと思ったもの、かつお客さんも楽しんでくれるタイトルを探していきたいです。
そのために常にアンテナを張ってはいるものの、我々にも限界はあります。昨今は発売されるゲームの本数も桁違いですし、面白いゲームとの出会いは運命みたいなところがありますね(笑)。
日本から海外への展開に関しては、パブリッシャーサポートを主軸に、いろいろなことができる環境が整いつつあるので、今年から積極的に新しいパートナーさんと直接お話できる機会を作っていきたいと思っています。
欧米のゲームのローカライズが実績としてあるので当然ではありますが、欧米からはよくお声がけいただく一方、日本やアジアからはまだまだです。スパチュンは大型タイトルしか扱わないみたいな謎のイメージもあるらしく、これはまずいなと思っています。『ディスコ・エリジウム』や『They are Billions』、『リサーチアンドデストロイ』なども扱っているんですけどね。
ですので、日本ならびにアジアの新しいパートナーさんと気兼ねなくコミュニケーションが取れるような環境を用意しなければいけないと思っています。
――今後、パブリッシャーやデベロッパーの方々が、スパイク・チュンソフトに気兼ねなく相談できる窓口を作ってアピールしていくわけですね。ちなみに今年のBitSummitへの出展は、これらを見越しての展開ということでしょうか?
飯塚:はい、出展します。スパイク・チュンソフト・カフェを! メインエリアに、ゲームなどの展示ではなく、カフェを作ります!
パーテーションに区切られて、パイプ椅子に座っての商談では、上手く話をする自信がないんですよ。ソファーをドドンと置いて、アイスコーヒーとか京都のご当地クラフトビールとか飲みながら、ゆったりと商談したほうがいい話ができそうに思えませんか?
今回のBitSummitは過去最大級の規模らしいので、せっかくだから皆さんの記憶に爪あとを残したいですね(笑)。ぜひ、1人でも多くのパートナーさんといろいろとお話をさせていただければと思います。
こういう変わったことをポジティブにとらえてくれるレアなパートナーさんは、おそらく僕らスパチュンと相性がいいと思いますので、積極的にブースへお越しください。あと、以下のメールアドレスに直接ミーティングの希望をお送りいただければ、アレンジします!
「海外ビジネス」お問い合わせアドレス:
ask-partner@spike-chunsoft.co.jp