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『S.T.A.L.K.E.R. 2』レビュー&開発者インタビュー。最新の技術とノウハウで作られた10数年ぶりの最新作はやっぱり『S.T.A.L.K.E.R.』だった!

文:柏又

公開日時:

 GSC Game Worldより11月21日発売のサバイバルホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2 Heart of Chornobyl(ストーカー2:ハート・オブ・チョルノービリ)』。本作のメディア向け試遊会と合同インタビューが、日本向けの販売を担当するセガにて実施されました。

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 今回は、会場で体験できた本作のプレイレポートと、テクニカル・プロデューサーのEugene Kulik氏とマーケティング・プロデューサーのVlad Novikov氏を迎えてのインタビューの模様をお届けします。

『S.T.A.L.K.E.R. 2 Heart of Chornobyl(ストーカー2:ハート・オブ・チョルノービリ)』先行プレイレポート

令和のAAAクオリティに仕上がりながら『S.T.A.L.K.E.R.』らしさを失わないゲーム内容


 プレイしていて常に感じるのは、現代のAAAクラスのFPSと肩を並べるクオリティのグラフィックと操作性を実現しながら、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズにあったシビアさやサバイバル要素がバッチリ残っている点でしょう。

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 すでにYouTubeなど公開されたゲーム映像を見た人はわかると思いますが、Unreal Engine 5によって制作されたグラフィックは圧倒的。従来のシリーズも当時としてはハイクオリティでしたが、やはり最新作までの時代の流れを感じさせますね。

 操作性も今風のFPSのようにしっかりキャラクターを操作しているフィーリングがありますし、今回はPC版をコントローラーで遊んだのですが、不都合を感じることもなかったです。

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 筆者的に気に入ったのが、食料品アイテムを使ったときにちゃんと食べるモーションが追加されたところですね。とくに缶詰はサバイバルナイフを使って缶を開けた後、肉か魚かわからない中身をひとつずつ食べるのはちょっとおもしろかったです。

 操作や画面表示まわりの大きな特徴としては、低い姿勢を取れるしゃがみボタン長押しがなくなったことと、ミニマップの廃止でしょうか。ただし、銃の精度はハンドガンやアサルトライフルならしゃがみでも十分確保できる印象です。また、ミニマップの代わりに画面上部のコンパス上に周囲の調べられるものや目的地のアイコンが表示されるようになったので、システムとしてはより直感的に遊べるといってもいいでしょう。

新人のストーカーとして初めてのゾーンを体験していくチュートリアルも充実


 今回プレイできたのはゲームの序盤。主人公は、チョルノービル原発事故によって閉鎖区域となったゾーンと呼ばれるエリアで、お宝さがしや冒険を求めて内部を探索する人々“ストーカー”の新人としてキャリアをスタートします。過去作では、大なり小なりゾーンでの実績や経験を持った人物が主人公だったので、ここはちょっと新鮮ですね。

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 ゲーム序盤はいわゆるチュートリアル的な内容となっていて、FPSゲームの基本操作から始まり、探知機を使ってのゾーンで見つかるアーティファクトと呼ばれるアイテムの探索とその利用法について実地で学べます。序盤から過去作でいうブラッドサッカーのようなミュータントに襲われたり、バンディットと呼ばれる敵武装集団を撃退したりと難易度はそこそこ高めですね。

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 今作も、方向キーの左右に消費アイテムをセットしてすぐに使用できるので、ミュータントについてはダメージにともなう出血を包帯でしっかり治療しつつ戦えばなんとかなります。バンディットについては物陰に隠れていると手榴弾を投げたり、回り込んで死角を突いてくるので戦う位置取りに注意したいですね。

放射能汚染やアノマリーの脅威、探索やフリーミッションなど『S.T.A.L.K.E.R.』らしい楽しさが随所に!


 『2』でグラフィックがリアルになっても、過去3部作で確立された『S.T.A.L.K.E.R.』らしさはプレイしていて強く感じるところがありました。

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 たとえば、何もないように見える場所でも放射能汚染されていて近づいただけで放射線に被ばくしたり、マップのあちこちにある超常現象“アノマリー”をボルトを投げて作動させてから通り抜ける(そして失敗する)ような、危険地帯をサバイバルする緊張感がつねにあるのはシリーズならではですね。

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 また、ざっと確認したところ、武器だけではなく弾薬や食料にも重量が設定されていたり、武器やアーマーには耐久力があるなどシリーズの“不便だけれどなくしたらダメ”なこだわり要素がしっかりと継承されているのは好印象でした。

 後半で体験した内容はまだお届けできないのですが、今作もけっこうな時間遊べそうな予感がありましたね。

長い休止期間を経てついに発売される本作を手がける2人にインタビュー


 体験プレイ終了後には、テクニカル・プロデューサーのEugene Kulik氏とマーケティング・プロデューサーのVlad Novikov氏が参加してのメディア合同インタビューが実施されました。オリジナルの3部作から10年以上の時を経て登場する本作。間には開発が中断していた時期もあったとか。そのような歴史を経て発売にいたるまでの経緯や開発のビジョン、ゲームの見どころにいたるまで語ってもらいました。

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▲テクニカル・プロデューサーのEugene Kulik氏(写真左)とマーケティング・プロデューサーのVlad Novikov氏(写真右)。

――過去作からかなり期間が開いてのリリースとなりましたが、プロジェクトが始まるきっかけについて教えてください。

Vlad
本作の開発は2012年に始まりましたが、当時のテクノロジーは我々のニーズを実現できるものではありませんでした。しかし、Unreal Engine 5、具体的には5.1の登場によって新しい世代のツールがでそろったことで、詳細にわたる世界や興味深いストーリーを構築できるようになったのがきっかけです。

Eugene
彼の説明とほぼ同じですが、長期にわたって実現にはテクノロジーの限界があったということですね。

――今回の体験会で、メディアにある程度完成したものを披露できたことへのことの感想を教えてください。

Vlad
ファンのみなさんにプレイしていただけるのはエキサイティングなことですね。

――発売が9月から11月に延期された理由について教えてください。

Vlad
もちろん努力はしていましたが、発売に際して我々のビジョンを完全な形で実現させたいという思いがあったからです。これだけの規模のゲームを作る際は、あちこちで並行に開発されていたものを最終的にひとつにまとめるという手順が必要となります。しかし、発売までの期日が近づくにつれて、もう少し時間があれば先ほど述べたポテンシャルが実現できるということが分かったので、ファンの期待する内容で発売できるように延期することを決めました。

 時間をかけてはいますが、それだけの価値のものになるという自信をもっています。

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――今作はタイトルに『2』がつくナンバリング作品ですが、ナンバリングとなった理由について教えてください。

Vlad
従来作は3部作でひとつのくくりとなっていて、各タイトルは3部作の○作目という扱いでした。今作は、従来作とはまったく新しいストーリーで、かつまったく新しいテクノロジーを活用したものなので、バージョンを上げるという意味もあってナンバリングタイトルとするにふさわしいと思いました。

Eugene
3部作に登場していたキャラクターの多くが今作にも登場します。と同時に新しいメカニクスやアノマリーも存在しますね。

――過去3部作に対する時系列はどのあたりになるのでしょうか?

Vlad
実世界で経過した年数と同じ、おおむね10数年あとですね。世界観としては時間経過によって廃墟になっているところと、テクノロジーの進化による部分のコントラストをより強く見せることができる感じになっています。ストーカーたちはより現代のものに近いデバイスを使う一方で、クラシックなラジオから音楽を聴いています。かなり昔ではなく、かといって遠い未来でもない、ほどよい時間経過となっていると思います。

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――久しぶりの新作ということで、シリーズの伝統として残すところと最新のゲームとして改善していく部分についての考え方についてお願いします。

Vlad
最初の3部作はFPSであり、サバイバルホラーであり、そして没入型のゲームである、という明確な特徴がありました。今作についても、最新のテクノロジーやトレンドを採り入れるのはチャレンジングではありましたが、我々としては方向性やゴールは明確でした。

 しかし、先ほど申し上げたようにテクノロジーが発展したおかげで、我々は『2』のゾーンを構想にかなり近い形で開発できるようになりました。我々としてはうまくできたと思っていますが、最終的にはプレイヤーのみなさんに判断していただくことだと考えています。

――今作は早い段階から日本語サポートが行われることがアナウンスされていましたが、スムーズなサポートができた理由について教えてください。

Vlad
ボイスについては英語に加えてウクライナ語を採用しています。これによってゲーム体験がより本物となるからです。字幕については、世界でポピュラーな言語はすべてターゲットですね。過去3部作のプレイヤー傾向も確認した結果、『S.T.A.L.K.E.R.』が人気になりうる地域はサポート対象に含めています。日本においての『S.T.A.L.K.E.R.』は比較的歴史の新しいシリーズになりますが、熱心なファンが多いとのことで彼らの機体に応えるべく日本語サポートを決定しました。

Eugene
とくに、今作はストーリー部分にかなりおもしろいものを多く盛り込めたと思っているので、できるだけ多くの人に届けたいですね。

Vlad
今作は、3部作よりもストーリーのシネマティクスを重要視しているので、ゲームプレイと同様にストーリー部分も楽しんで欲しいです。

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――本作はさまざまな見どころがあると思うのですが、日本のプレイヤーへとくに見てほしいところはありますか?

Eugene
私というゲーマー個人の視点になりますけれども、ゲームのアトモスフィア(雰囲気)だと思います。アトモスフィアというと環境全体の話になるわけですけれども、その中にはストーリーのほか、フィールドのなかで出会うキャラクターや動植物も含まれます。また、カッコイイ武器もたくさん存在していますね。

Vlad
今のコメントでEugeneから武器のことが最初に出てこなかったことが以外だったのですが(笑)、我々のチームは銃器が非常に好きでゲーム中の銃声は射撃場で録音してきたものを使用しています。私自身は戦闘を好むタイプではないのですが、そんな私でも入り込めるゲームになっていると思います。

 そして本作はサバイバルホラーであることが大きいと思います。探索先について目的とリスクを理解すること、探索のための装備やリソースを準備すること、そしてなによりも大事なのはやり遂げる自信をもって出かけることなのだと考えています。

 ただし、“ゾーンでは自信が高ければ高いほど死ぬのが早い”ということわざもあります(笑)。

――プレイしていてわりとシビアな難易度でさすが『S.T.A.L.K.E.R.』と感じました。今作ではじめてシリーズに触れる方もいると考えられるなかで、なにか配慮しているところはありますか?

Vlad
我々としては、なるべくプレイヤー層を広げたいと考えているのですが、このゲームは万人向けにリラックスして楽しめるというわけではありません。勇敢にもこのゲームに挑戦しようという人のために、いくつかの段階に分かれた難易度が設定可能です。そして3部作にはなかったチュートリアルもゲーム内に用意してあります。サバイバルに必要なものは提供しますが、基本的にはプレイヤー自身が探索して、自分のプレイスタイルを発見していく形になるでしょう。

――今作のメインストーリーをクリアするまでのプレイ時間はどのくらいを想定していますか?

Eugene:今作のメインストーリーは多くの分岐があります。初回プレイでもいくつかの分岐を進んでいくと思われますが、だいたい20~40時間程度はかかると思います。ただし、ゲームのすべてのストーリー部分を体験したい場合は100時間かそれ以上はかかるでしょう。

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――ゲームクリエイターには、作品ごとにさまざまなカラーを表に出す人もいますが、『S.T.A.L.K.E.R.』の開発チームがこの世界を作り続ける理由について教えてください。

Eugene
我々も開発を通して、ゾーンという場所のファンになっていることが挙げられるでしょう。開発に際してチョルノービリの立ち入り禁止区域に何度も足を踏み入れています。ゲーム内の存在するオブジェクトは、区域内で撮影した写真をもとに作られています。

Vlad
将来的に『S.T.A.L.K.E.R.』フランチャイズを拡大したいという野心はもちろん持っています。ゲーム以外のメディアやジャンルに拡大したいという気持ちもあります。しかし、オリジナルの3部作を出してからかなりの時間が経っているので、現在使用している最先端の技術やゲームをもってしっかりとした基盤を築くことを大切にしています。

――日本のプレイヤーやメディアへのメッセージをお願いします。

Eugene
非常に大変な環境のなかで、我々はこの作品に情熱と魂のすべてを注ぎ込んで開発しています。気に入っていただければ幸いです。そして、みなさんをこのユニバースに喜んでお迎えしたいと思います。

Vlad
今、Eugeneが言ったことと同意見です。付け加えるとするならば、我々は非常に高い誇りをもって、このドリームプロダクトと呼べる作品に注力してきました。これを達成しつつあることに喜びを感じています。この作品のプレイやストーリー、シネマティクス、そして複雑で巨大でアメージングなゲームを皆さんに楽しんでもらえればと思います。

――ありがとうございました。

製品概要


商品名
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl​(ストーカー2:ハート・オブ・チョルノービリ)

対応機種
PC(Steam/Epic Games Store/Windows)/Xbox Series X|S

発売日
2024年11月21日(木) 発売予定

希望小売価格
通常版:7,227円(税込7,950円)
Deluxe Edition:9,545円(税込10,499円)
Ultimate Edition:13,181円(税込14,499円)
※デジタル版のみ販売

ジャンル
サバイバルホラーFPS

プレイ人数
1人

メーカー
GSC Game World

CERO表記
審査予定

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