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『FREEDOM WARS Remastered』試遊レビュー&制作陣インタビュー。10年の時を経て『FREEDOM WARS』はどのように蘇ったのか

文:米澤崇史

公開日時:

 PS5/PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)で2025年1月9日(PC版は1月10日)発売が決定した『FREEDOM WARS Remastered(フリーダムウォーズ リマスター)』。メディア向け試遊会でのレビューとプロデューサーの橋野隼弥氏、開発プロデューサーの塚本高史氏のインタビューを掲載します。

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“荊”を使ったスタイリッシュで自由度の高いアクションと究極のディストピア的世界観の魅力


 『FREEDOM WARS Remastered』は、2014年にPlayStation Vita専用ソフトとして発売された『フリーダムウォーズ』のリマスター版にあたります。

 ディストピア的な管理社会を舞台に、プレイヤーの分身となる"咎人”は、生まれながらに100万年の懲役を科された囚人として設定されているという、独自色の強い世界観が大きな特徴。対戦は最大8人、協力プレイでは最大4人までのプレイに対応しており、他プレイヤーと一緒に遊べる点も魅力的なタイトルとなっています。

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 今回発表されたリマスター版では、テクスチャ・ムービーの高解像度化に加えて、4K対応(PS5・PC版のみ)、60FPS対応(Switch版は30FPS)、ゲームバランスの調整にUI・操作系の見直しなど、グラフィック面だけではなくゲーム内容部分にもしっかりと改修が加えられています。

 筆者は10年前にオリジナル版もプレイしているのですが、当時からちょっとコンセプトに対して時代が早すぎたと感じたゲームでもありました。多少粗削りな部分はありつつ、唯一無二の個性や魅力をもったタイトルとして印象深く、ずっとブラッシュアップした続編を待ち望んでいたところがあったので、今回のリマスター版の発表は嬉しかったです。

 メディア向け試遊会で体験して感じたのは、基本が10年前のゲームとはまったく思えないアクション性の幅広さ。さすがに細かい部分は忘れていたのもあって「こんなことまでできたっけ!?」と、結構な驚きがあったくらい、リマスター系のタイトルにありがちな古さみたいなものを一切感じなかったです。

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 そんな本作は、荊(いばら)と呼ばれるワイヤー状の装備を使った立体的なアクションが大きな特徴。荊の使い道はかなり広く、壁に打ち込んで移動手段として使う、敵に急接近しながら攻撃、大型の敵の特定部位に張り付く他、チャージすることで性能が変わり、敵の体勢を崩す、罠のように地面に設置する、敵の一時的に拘束して動きを封じるなど、かなりの多くのバリエーションがあります。

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 とくにおもしろいのが、大型の敵や壁などいろんなものに貼り付ける点。本作は大型の敵の攻撃が強烈な割に、緊急回避手段となるローリングアクションがちょっと頼りない性能なんですが、近くに壁やオブジェクトがあれば、荊を打ち込んで安全地点まで移動する回避手段として活用できます。

 さらに本作では近接武器と遠距離武器をそれぞれひとつずつ装備して、ボランティア(本作におけるミッションの名称)中に瞬時に切り替えて戦えるという仕様になっています。

 これを活かして近接武器で攻撃→荊を壁に打ち込んで移動して攻撃を回避→壁に張り付いた状態で遠距離武器に持ち替えて攻撃……といった感じに、立体的かつスタイリッシュなアクションも可能で、これが決まるとかなり気持ちいいです。

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 また、大型の敵(アブダクターとも呼ばれます)は、部位によっては破壊ができるようにもなっているのですが、小剣かナイフを装備していれば、荊で破壊可能な部位に張り付くと、その接合部を切り落とす“溶断”というアクションを使用することができます。

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 筆者はハンティングアクションゲームの部位破壊が結構苦手で、特定の素材を集めるために強制されると結構ストレスを感じるタイプなのですが、本作ではこの“溶断”のおかげで筆者みたいなプレイヤーでも部位破壊を狙いやすいのが嬉しい。"溶断”は演出も非常に小気味よくてお気に入り。敵に捕まりながらボタンを連打してガリガリと装甲を削っていくのがとにかく気持ちいいです。

 敵の体内に要救助者である市民(シヴィリアン)が捕まっていることもあり、溶断を使って装甲を破壊すると市民を救出する専用の演出が挿入され、こちらも非常に爽快感があります。

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 冒頭部分でも少し触れましたが、本作の舞台はディストピア的な管理社会であり、プレイヤーの分身となる"咎人”は懲役100万年を科された存在であるという独特の世界観も、今遊んでもなお新鮮に感じられたポイント。

 ストーリーを進めてボランティアを繰り返していくことで、この100万年の刑期を少しずつ短くしていくことができるというサイクルになっているのですが、咎人は囚人なので、最初は行動に極端な制限が課されています。最初は拠点内で一定時間走ることはおろか、許可がないNPCとの会話すら許されません。

 許可されていない行動を取ると、禁止行為を犯したとしてせっかくボランティアで返してきた懲役が再び加算されるなど、実にディストピアらしい世界での生活を体験できます。

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 一方、ボランティアなどで獲得できる"恩赦ポイント”を使うと、さまざまな権利を獲得していくことができ、どんどん自由な生活に近づいていきます。

 ゲームを進めるにつれ、行動できる範囲が広がったり、より強い装備が作れるようになったりという流れは、あらゆるゲームであるものなんですが、本作に関してはそれを"自由の権利を少しずつ開放していく”という形で、世界観と結びつけて表現しているのが非常に秀逸。ディストピア的なSFモノが好きな人には、かなり刺さる世界観になっていると思います。

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ボタンの追加にあわせてオリジナル版から操作が一新。フレームレートの向上も


 今回リマスター版をプレイして、筆者がオリジナル版とのもっとも明確な違いとして感じられたのが、操作性の変化です。

 オリジナル版はPSVitaで発売されたタイトルなので、R2・L2ボタンに割り振られるアクションが存在していなかったのですが、リマスターにあたってR2・L2を前提とした操作に一新されています。

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 荊の操作はL1で固定され、近接武器装備時はR1が弱攻撃、R2が強攻撃、L2がロックオン、遠距離武器装備時はR1がリロード(リロードは□ボタンでも可能)、R2が発砲、L2がエイムモードがという配置に。近接攻撃がR1とR2になっているのに少し慣れは必要でしたが、射撃武器に関しては一般的なTPSに近い操作性になっているので、かなり扱いやすくなりました。

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 また、攻撃と荊との併用も楽になっていて、攻撃した後すぐ荊で移動して距離を取る立ち回りをしたい時などにも混乱が起きませんでした。オリジナル版はなかなか操作が難しいゲームで、結構なプレイヤーが「せめてR2L2があれば……」と感じていたんじゃないかと思うくらい複雑だったので、この点は間違いなく遊びやすくなった部分だと思います(キーアサインで、オリジナル版に近いボタン配置にも変更できるようです)。

 グラフィックに関しては当時の雰囲気をそのまま残しつつ、現世代機向けの繊細な表現へと変わったという印象。モデルの一新ではなくテクスチャの高解像度化のようなので、別のゲームみたいに印象が変わるということはないのですが、元々グラフィック面もリッチに作られていたタイトルなので、現代のゲームとして違和感はなかったです。

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 今回試遊したのはPS5版だったのですが、フレームレートが60FPSに向上しているのもアクションゲームとして純粋に嬉しいポイント。荊アクションの関係で結構激しく画面が動くゲームでもあるので、滑らかにアニメーションしてくれると、より気持ちよくキャラクターを動かせます。

 また、今回は試遊時間が限られていたのもあって詳しく調べることはできなかったのですが、武器改良の仕様がオリジナル版から変更されているとのこと。オリジナル版は、武器に付与されているアビリティ的な要素であるモジュラーの継承にランダム性が絡むなど、ユーザーフレンドリーではない部分が見られていました。そのあたりがより遊びやすい仕様へと変更されています。

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 めちゃくちゃ久しぶりにプレイして、やっぱり『フリーダムウォーズ』でしか味わえない魅力が詰まっていたタイトルだったなと改めて思い出しました。内容にも細かく手が入るとのことなので、まだ本作を遊んだことがない方はもちろんながら、筆者のようにオリジナル版プレイ済の人も、懐かしさと同時に新鮮さも感じつつ楽しめそうです。先行プレイの様子を動画に収録しましたので、ぜひこちらもご覧ください。

『FREEDOM WARS Remastered』先行プレイ。オリジナル版との違いからディストピア的世界観、バトルまで本作の魅力をギュッとまとめて紹介。


 ここからは、オリジナル版のディレクターで、本作では開発プロデューサーを務める塚本高史氏と本作ディレクターの関哲之介氏のインタビューを掲載します。

塚本高史氏&関哲之介氏インタビュー。武器改良の仕様変更は企画がスタートした時から決まっていた

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▲左から塚本高史氏・関哲之介氏。

――オリジナル版は当時のSCEJAさんから発売されたタイトルでしたが、どのようにリマスターが実現したのでしょうか。

塚本
オリジナル版が10年前に発売されてから、いつか続編も作りたいと色々考えていたのですが、なかなかその機会がなかったところに、ようやく復活させられるチャンスに恵まれたといいますか、今ならこの世界感も、ゲームシステムも改めて多くの人に楽しんでもらえるんじゃないかという思いもありました。

 今回ディンプスのチャレンジとして本作をリマスターするために、ソニー・インタラクティブエンタテインメントさんからライセンスをお借りして、パートナーとなるパブリッシャーさんを探している中でバンダイナムコさんに手を挙げていただき、さらにシフト様にもご協力をいただきながら、実現することができたもの本当に嬉しいなと思っています。

――リマスターにあたって、オリジナル版から変わったアピールポイントを挙げるならどこになりますか?

オリジナル版を遊ばれていた方の大きな不満点は、運要素が強い武器の生産・強化周りの仕様だと思っているんです。

 我々としても、あの仕様を今の令和の時代に出すのはまずいだろうということで、プロジェクトの最初の段階から、「ここだけは絶対に変えた方がいい」というお話をさせていただいていました。武器はキャラクターの成長に直結する部分でもあるので、アクションRPGとして楽しみやすくなったと考えております。

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――開発にあたって、とくに苦労した部分はありましたか?

何しろオリジナル版は、開発期間を含めると10年以上前に作られていたタイトルですので、まずそのデータがどうなっているのか紐解きながら開発を進める必要があったのが大変な部分でした。ある種一番リマスターらしい苦労だったかなと思います。

――そもそものお話となりますが、『フリーダムウォーズ』のディストピア的な世界観は、どんな発想から生まれたのでしょうか。

塚本
やっぱり、皆どこかで監視されていたり管理されているという話を当時していて。管理されるというのはすごく窮屈なんですけど、それをあえてやりすぎなくらい分かりやすくすることで、自由を勝ち取る気持ちよさみたいな部分を伝えられるんじゃないかなと考えたのがきっかけです。

 そこからマイルを貯めるじゃないですけど、ゲーム内でいいことをすると自由を少しずつ勝ち取っていけたり、ものすごく長い懲役をちょっとずつ返したりしていく、遊びのサイクルみたいなところを思いつきました。

――アクセサリについて、声優さんに機械っぽく演技してもらうのではなく、合成音声を使った理由は何だったのでしょうか?

塚本
開発当時は合成音声って結構チャレンジだったんですけど、最近はもう珍しくなくなってきましたね。実は、合成音声でやるっていうことの裏側に、“ 好きなことを喋らせる”っていうポイントがありました。

 アクセサリは自分のことを監視する、管理する側のアンドロイド的な存在なんですけど、だんだんそのアンドロイドへの権利が開放されて、セリフや見た目を好きに変えられるようになっていくと、愛着が湧いてくるんですよね。自分を監視している存在なのに愛着があるっていう、すごく変な気持ちを味わってもらいたいなと(笑)。

 そういう感覚が、新しいゲーム性であったり没入感であったりを生むんじゃないかという考えがありまして、実際そこはうまく表現できていたんじゃないかと思っています。

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――オリジナル版から操作が大きく変わっていましたが、この変更にはどのような意図があったのでしょうか。

本作はTPSというジャンルに分類されるタイトルですが、とにかくアクションがいっぱいあるので、オリジナル版の頃からボタンが足りていなかったんです。

 オリジナル版では、ハンタータイプとかいろんな操作のタイプを用意してカバーしていたんですけど、今回はボタンが増えているので、一般的なTPSの操作に寄せた方がユーザーさんも遊びやすいだろうと。とくに新しく増えたL2・R2を軸にして、操作系統を再構成させていただきました。

――オリジナル版の操作に戻すこともできるのでしょうか?

専用のタイプを用意しているわけではないんですが、今回は全ボタンを自由にアサインしていただける形式になっているので、クラシックな感じの操作性を設定いただくことも可能です。

――今回のリマスターにあたって、オリジナル版で実現できなかったことができた部分はありますか?

塚本
少し分かりにくい部分なんですけど、海外のユーザーさんにもっと遊んでいただきたいという想いがありまして、新しく英語のボイスを実装しています。アクセサリのボイスもすべて英語対応しているので、日本語圏以外の方々も楽しみやすくできたのは1つのポイントかなと。

――新しいモンスターや武器の追加といった新要素はありますか?

そのあたりはないのですが、一部諸事情で収録されていないものを除き、オリジナル版をリリースした際に、いろいろなところで展開していたDLCを最初から収録しております。全部持っていたという方は、なかなか居られないのではないかなと思うので、そこは新鮮な気持ちで楽しんでいただける部分になっていると思います。

 あとはアクセサリのボイス8種を最初から選択できる形になった仕様変更や、作中に登場するプロパガンダアイドルについて、英語版のリリースに合わせて展開していた新曲をゲーム内に追加で実装していたりという新要素はあります。

――AI周りの挙動を変更されたとお話がありましたが、どのような意図があったのでしょうか?

まずオリジナル版では、人間のキャラクターが非常に手強く、ユーザーさんからさまざまなご意見が届いていたという部分でした。

 改めて確認したところ、移動しながら完璧なエイムで攻撃してきたりしていたので、ちょっと通常エネミーの動きにしては高度すぎるかなと。自分の中では、通常エネミーは倒されるのがある種の役割だと思っているところもあり、もうちょっと気持ちよく倒せるような形に再調整させていただきました。

 それに付随した部分として、通常エネミーを倒すと、回復など戦闘中に使えるアイテムをドロップするように仕様を変更しています。リソースの回復だけではなく、モジュラーが手に入ることもあったりするので、オリジナル版にはなかった“通常エネミーを倒す楽しみ”みたいな部分を、ゲームデザインの中に組み込んでトータルで見直しました。

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――オリジナル版では都道府県ごと対抗戦のような要素もありましたが、本作ではどうなっているのでしょうか?

塚本
前提としてオリジナル版では、国内版と海外版で使っている地図が違っていて、海外では世界地図の中から都市を選んでもらう形式だったんですが、今回はワールドワイドのユーザーさんにも日本の地図で遊んでいただく形式で統一しています。海外のユーザーさんにも、日本地図の中から都道府県を一つ選んでいただいて、地域対抗戦に参加をしていただく形になります。

――本作ではクロスプレイ可能なのでしょうか?

塚本
基本的にクロスプレイは実装しておらず、各プラットフォームの中でネットワークプレイをお楽しみいただく形になります。ただ、PS4とPS5間はマッチング及びランキングが共有されているので、ご一緒にプレイいただけます。

――今回はリマスターという形でしたが、続編を作りたいという想いはありますか?

塚本
そうですね。元々、オリジナル版を作っていた時からずっと続けたいと思っていたタイトルなので、今回のリマスターで可能性が生まれれば作りたいという想いはあります。ただ本作に関していうなら、入れられるものは全部入れられたかなと思っています。

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――新しいエンディングや、ストーリー部分の追加はないのでしょうか?

塚本
そこはすごくやりたかった部分ではあったんですけど、ストーリーについてはオリジナル版からいじらないでおこうと判断しました。

 やっぱり新しいストーリーを期待されている方もおられるとは思うのですが、そこについてはもし次に機会をいただけるのなら……という形になるでしょうか。そこも含めて、本作次第になると思います。

――今の時代に『FREEDOM WARS』をもう一度リリースするにあたって、とくに世界観とゲームシステムのどちらがアピールポイントになると考えておられますか?

塚本
両方がそうなるのではないかと感じています。ディストピア的な世界観のゲームは他にもあると思うんですけど、10年前は日本とアジアがメインで、それ以外の地域でも挑戦はしていたんですが、なかなかうまくいっていなかったんです。

 けど今のタイミングであれば、「こんなゲームがあったのか」と知っていただけて、100万年の懲役だったりアクセサリだったりといった要素から、世界観的な新しさみたいなのを感じていただけるのではないかなと。

 あとは現実の社会も、10年前より監視が強くなったり閉塞感みたいなのが増しているところがありますよね。アクセサリって、意思疎通できる監視カメラとかスマートフォンみたいな存在でもあるので、10年経った今の人たちにも刺さってくれるんじゃないかと期待しています。

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