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『ガンダム 復讐のレクイエム』1話感想。ガンダムEXの圧倒的強さに"あのゲーム"の思い出が蘇った。61式戦車やマゼラ・アタックの戦闘シーンに大興奮しつつ、ザクの赤い肩が気になる【Netflix】

文:米澤崇史

公開日時:

 2024年10月17日(木)より、Netflixにて配信を開始した『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』1話"呪いの森”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

オデッサ作戦前夜のヨーロッパ戦線で描かれるジオンの一部隊の物語


 『ガンダム』シリーズ第1作『機動戦士ガンダム』の一年戦争を舞台に、これまで映像作品として描かれることが少なかったヨーロッパ戦線に焦点をあてた、完全新作フルCGアニメとなっている本作。

 物語が始まるのは宇宙世紀0079年の11月6日で、『ガンダム』をある程度知っている方向けに解説すると、黒い三連星とホワイトベース隊の戦い(この結果、かの有名なジェットストリームアタックをアムロが破り、マッシュが戦死しています)とほぼ同時期。これは連邦軍による一大反攻作戦“オデッサ作戦”が始まる前夜にもあたります。

 そして本作の主人公であるイリヤ・ソラリは、ジオン軍のモビルスーツ(MS)部隊“レッド・ウルフ隊”の隊長を務める人物。

 ……すでに察しの方もいるかと思いますが、本作の物語は、一年戦争において“ジオンが連邦に押され始める”転換期くらいのタイミングのエピソードであり、歴代『ガンダム』シリーズの中でも戦争映画色の強い、ハードな作品となっています。


 実際、物語は東欧のジオン軍占領下にある基地のひとつが連邦軍に奪われた後、その奪還のために増援として宇宙から呼ばれたソラリたちレッド・ウルフ隊が投入される……という、すでにジオンにとって若干不穏な展開の中スタートします。

 最初の対空砲火をくぐり抜けながらの降下作戦は、MSのパラシュート落下といえば『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』のオープニングが思い出されて、脳内で勝手に『嵐の中で輝いて』が流れていました。映像としては対空砲火の中をくぐり抜けていく迫力が凄まじく、あのサイズのパラシュートが破られるとそのまま墜落するのって、パイロットとしては生きた心地がしないだろうなと。

 そんな中、ほとんど身動きがとれないにもかかわらず、降下中を攻撃してきた連邦のセイバーフィッシュをソラリが平然とザク・マシンガンで落としているのがなかなかにヤバいです。レッドウルフ隊の面々は、地上戦の経験こそ薄いもののエース級の腕前を持っていることがうかがい知れます。

 ちょっと余談ですが、1話でソラリたちが乗っているザクIIって、宇宙向けとされているF型なんですよね。最初に公式から機体情報が発表された時「ヨーロッパが舞台なのに地上仕様のJ型じゃないの?」と疑問に思ったことがあったんですが、これは“レッドウルフ隊は宇宙から降りてきたばかり”という設定に加えて、J型のザクIIを用意する余裕が、戦局で押されつつあったジオンに時間的にも物理的にもなくなっていることのあらわれでもあるのかなと。


 ただこのレッドウルフ隊のザク、全身が赤いソラリ機はともかく、残りの3機が共に左肩を赤く塗っていて、「その部隊名はウルフじゃなくショルダーなのでは?」とツッコんだのは絶対に自分だけではないはず。

 もっとも自分も『ガンダムブレイカー』シリーズで、毎回のように同じようなカラーリングのガンプラを作りましたが(笑)。


 その後の戦闘シーンはめちゃくちゃ盛り上がりました。やっぱり『ガンダム』シリーズってMSが主役なので、MS以外の兵器や歩兵部隊に焦点が当たることってあまりないんですが、上でも触れたセイバーフィッシュを始め、61式戦車やマゼラ・アタックなどの戦闘描写がとにかく豊富で、今までの『ガンダム』の映像作品の中で一番しっかりと描かれていたんじゃないかと感じたほど。

 後半パートの戦闘では、マゼラ・アタックが分離しようとしたところをマゼラ・トップ側が狙い撃ちされて撃破される描写とかあるんですが、あれは物語として必要ないはずなんですけど、わざわざあのシーンを入れてくるのが、マゼラ・アタックというメカをしっかりと描くという制作陣のこだわりみたいなものを感じられましたね。

 随伴歩兵や戦車と一緒に、機械化部隊の一人として泥臭く戦うMSという、ずっと見たかった光景をついに映像化してくれた感もありました。


 同じフルCGアニメだった『機動戦士ガンダム MS IGLOO』と比べると、さすがに丸20年くらい経っていることもあってCGが大幅に進化していて、とくにMSのディティールの細かさはすごい。61式戦車のような現実味のある兵器と戦っている絵面もあわせて、「本当にMSという兵器が現実に存在しているんじゃないか」という錯覚を体験できました。

ゲーム『ジオニックフロント』を思い出す、ザクでガンダムと戦う時の絶望感


 ソマリたちの活躍によって無事基地が奪還された後は、司令による戦意高揚のための演説が行われていましたが、この内容が「この世界にはアースノイドとスペースノイドがいて、連邦とジオンという2つの勢力に分かれて戦っている」という、めちゃくちゃざっくりとした『ガンダム』の世界観の説明の役割を果たしているのが秀逸です。

 レッドウルフ隊のメンバー同士のちょっとした会話からも、スペースノイドであるジオンの兵士たちにとって、地球の自然環境はストレスでしかないことも感じ取れるようになっています。


 本作はストーリーの流れが結構シンプルな戦争映画なので、上で書かれたことくらいを認識していれば、『ガンダム』の前提知識がなくても話を流れを十分理解できるような作りになってるんですよね。このあたり、初のNetflixオリジナル作品ということもありますし、今まで『ガンダム』を一切見たことがない層も意識して作られているんだろうなと。

 そしてその後には、今度は連邦軍が奪われた基地を取り戻すべく攻撃をかけてきましたが、その中にはなんと本作オリジナルのガンダムである“ガンダムEX"の姿が。

 エース級であるはずのレッドウルフ隊の面々が手も足も出ず撃破されていくのは、一般兵士の目線から見て、“ガンダム”と対峙することがどれだけ絶望的なのかが、これ以上なく理解できました。


 個人的に思い出したのがPS2で発売された『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』という一年戦争中のジオンの一部隊に焦点を当てたゲームでして、アムロが乗るRX-78-2ガンダムと遭遇するステージがあるのですが、そこのアムロが明らかにまともに戦ったら勝てない化け物級の強さに設定されていて、ガンダムを敵に回す恐ろしさみたいなものをこれ以上ないほどに味わったトラウマがあります。本作に登場するガンダムEXの暴れっぷりは、あの時に筆者がアムロが乗ったガンダムに対して味わった絶望感に通じる部分がありました。

 他にもザクが後ろから61式戦車に撃たれてヒヤッとするシーンとか(『ジオニックフロント』では、背後から撃たれれば61式戦車だろうが下手するとMSも一発で撃破されるシビアなバランスでした)、古くからの『ガンダム』ゲーム好きは、結構な割合が『ジオニックフロント』を思い出したんじゃないかなと。

 味方が次々と倒される中、起死回生のザク・バズーカの一撃を放ったソラリでしたが、予想通りガンダムにはダメージは与えられず。ソラリも手も足も出ずやられてしまい、トドメを刺されそうになるという、続きが気になりすぎる幕引きで第1話は終了。

 連邦の攻撃が始まる直前、ソマリが攻撃を先に察知するという「ひょっとしてニュータイプなのか?」と思えるような謎めいた描写も印象的でした。


 これが普通のTVアニメなら、来週までヤキモキしながら待たないといけないところなんですが、本作はNetflixの独占配信作品なので、すでに最終話の6話までのエピソードがすべて配信されているのも嬉しい点。

 あまりにも続きが気になったので、実は自分はもう結構先まで見てしまったのですが、1話の後も見どころが満載で、マニアックな機体が活躍したり、意外なキャラクターの登場や、ロボットアニメとして燃える展開があったり、『ガンダム』ファンとしてめちゃくちゃ楽しく見れました。

 『MS IGLOO』とか『08小隊』とか、ミリタリー色の強い『ガンダム』が好きな人には確実にぶっ刺さる内容になっていました。『ガンダム』ファンであれば、本作のためにNetflixに入っても絶対に損はしない作品になっていると思います……!



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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