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節分アニメといえば(?)『ケロロ軍曹』。約150話をまたぐ、壮大なつながりも!?

文:米澤崇史

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 今年は2月2日に迎えることになる“節分”。

 近年では豆まきよりも恵方巻きがピックアップされがちな印象がありますが、その分コンビニやスーパーで見かける機会も増え、「もうそんな時期になったか~」という季節感を感じさせてくれる日になっています。

 アニメでも、そんな"節分”をテーマにしたお話が展開されることがあり、この時期に見るにはピッタリ。今回はその中でも、吉崎観音先生の漫画を原作としたアニメ『ケロロ軍曹』から、2つのエピソードを紹介していきます。

第43話“ギロロ 飛び出せ節分!であります”(1stシーズンより)

 『ケロロ軍曹』は、アニメも第7シーズンまで続いた長寿番組ということもあり、節分をネタにしたエピソードも複数存在しています。

 その一つ目が1stシーズンの第43話“ギロロ 飛び出せ節分!であります”です。

 この回は2話構成になっていて、前半の“泣けない赤鬼 であります”では、ケロロが“泣いた赤鬼”のような本を読んで触発され、ギロロが赤鬼、ケロロが青鬼のポジションを演じて、日向夏美の好感度を上げよう画策して失敗するというエピソードが描かれていました。


 後半の“ギロロ 飛び出せ節分!であります”では、ケロロも青鬼ではなく赤鬼に扮しようと作戦を変更するのですが、タイミングがいいのか悪いのか、その時期は節分の真っ只中。ちょうどいい標的として、夏美から理不尽に豆をぶつけて痛めつけられたことで、ケロロは夏美に仕返しを画策します。

 そこでケロロがクルルの協力を得て用意したのが、人間を鬼へと変えてしまう能力をもつ光線銃でした。銃で撃たれた夏美は、セクシーな鬼の衣装に姿を変えられた上、豆を吸い寄せる誘導波を発する鬼の角を生やされてしまいます。

 ケロロたちは最初こそ節分の風習にならい、普通に豆をぶつけて夏美をおいかけていたものの、途中で豆がなくなってしまい、今度は味噌や豆腐、醤油に豆乳といった、豆を使った食品をぶつけて嫌がらせをするという方向にシフトしていきます。……このあたり、作中で夏美も怒っているのですが、めちゃくちゃ食品を粗末にしているお話でもあるので、今の時代だと作るのはなかなか難しそうなエピソードだなと。

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 最終的にケロロは切り札である大量の納豆を取り出し、日向家の権力を明け渡すように迫り、夏美は窮地に追い込まれます。

 そこに駆けつけたのが、ケロロの部下でありながらも、夏美に想いを寄せているギロロ伍長でした。ギロロは元々夏美の味方をすると思われたからか、クルルによって監禁されていたのですが、どこからか夏美の助けを求める声を聞きつけ、鬼のような形相であっという間にケロロたちを壊滅させます。

 この時、ケロロは秘密兵器であるフルーアーマー装備を身にまとった“フルアーマーケロロ”になっていたのですが、弱点であるむき出しの頭を的確に狙われ、まったくフルーアーマーの強みを活かせないまま倒されてしまったのには笑いました。

 しかし、その後ケロロが密かに用意していた落とし穴にギロロは落ちてしまい、再度夏美はピンチに陥りますが、実は夏美が変えられた姿は"鬼”ではなく”雷様”だったことがここに来て判明。雷様の力を使えるようになった夏美にトドメを刺され、ケロロの作戦はまた失敗します。

 最終的に、夏美は助けてくれたお礼をギロロに伝え、二人の仲が深まる形で幕を閉じるのですが、結果的だけを見るとケロロ(青鬼)が悪役になり、ギロロ(赤鬼)が人間から好かれるようになるという、“泣いた赤鬼”の構図が再現されているという構成が秀逸。

 “鬼”という一点以外、あまり繋がりがなさそうなAパートとBパートのお話が、オチでしっかりと繋がる気持ち良さを感じられるエピソードになっていました。

第197話“穴があったら掘りたい であります”(4thシーズンより)


 もう1つのエピソードが、4thシーズンの第197話“穴があったら掘りたい であります”。こちらでは、節分の時期に宇宙で流行るとされる感染症“宇宙ドリル”にケロロが感染してしまうエピソードが描かれます。

 “宇宙ドリル”に感染してしまったケロロは、“穴”という言葉や“掘る”ことを連想させるものに過剰反応するようになっていました。頭に角のようなドリルを生やし、超人的な身体能力を得たケロロは、家中を穴だらけにしようと暴走を始めますが、見た目が"鬼”だからか豆が弱点だとすぐに判明し、逆に追い詰められていきます。

 ところが"宇宙ドリル”には、他人に伝染するという性質も存在していたようで、尻の穴にドリルを刺されたことで、最初はタママ、次にギロロ、さらにはクルルにアンゴル・モアと、次々と頭にドリルを生やしたドリル鬼が増えていき、最終的に正気なのは夏美一人になってしまいます。

 このあたり、伝染の仕方が仕方なのでギャグっぽく描かれてはいるんですけど、起きていることは割とホラーで、完全にゾンビもののパニック映画のノリ。ドリルが生える場所は個人差があり、クルルは両目からドリルが生えて完全に目が見えなくなっていて、こういう目が潰れたクリチャーってホラーゲームでよく出てくるよな……と連想したりもしていました。

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 ある程度ですが個人の意識も残っているようで、ドリル鬼になった後のギロロは、「"宇宙ドリル”のせいにすれば、夏美の尻にドリルを刺しても許されるのでは?」と考え、執拗に夏美を狙い始めていました。ケロロ小隊の中でも比較的まともなギロロが一番ヤバい奴と化しているのは、かなり普段とのギャップがあります。

 またまた絶体絶命の窮地に陥った夏美を救ったのは、ケロロたちの同僚でもあるガルル小隊のプルル看護長でした。ケロロたちはプルルに"宇宙ドリル”への特効薬である“宇宙恵方巻”を食べさせられて正気を取り戻し、"宇宙ドリル”を巡る騒動は事なきを得ました(マスクをしているドロロだけは食べられなかったようですが)。

 このエピソード、先ほど紹介した43話と比較すると、“ギロロが夏美を助ける(43話)”、“ギロロが夏美を執拗に襲う(197話)”、“夏美だけが鬼に変えられる(43話)”、“夏美だけが(ドリル)鬼にならない(197話)”と、何かと対照的な構図になっています。

 脚本を担当された方は別なので、偶然の一致なのか意図したものかは分からないんですが、もし意図されていたなら、間に約150話ものエピソード(現実世界の時間だとおそらく3年)が挟まっているわけで、誰が気付けるんだと思える仕掛けがされているのが面白いです。

 また、感染したケロロがドリルに関連した単語として『機動戦士ガンダム』のMSVである"アッグ”にやたらと反応していたのが、『ガンダム』ファンとしてはニヤリとなったポイント。

 他にも『∀ガンダム』のイーゲルとか、『鉄血のオルフェンズ』のガンダム・キマリスヴィダール(当時はまだ存在していませんが)にも反応しそうです。これ以外にも、毎回のように『ガンダム』ネタがぶち込まれるのが『ケロロ』の特徴でもあり、サンライズ製作という強みをこれ以上ないほど活かした作品でしたね。

 かなりの人気作品なので、リアルタイムで放送を見ていたという方もおられるかと思いますが、改めて当時気付かなかった新たな発見を探してみるのも楽しいかもしれません。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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