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『メダリスト』9話感想。いのりの成長を感じて親目線で見守った回。蛇崩&絵馬にも感情移入していたからこその感慨深さも(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 放送中のTVアニメ『メダリスト』第9話“西の強豪(後)”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『メダリスト』9話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

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 大事なキャリーバッグをなくしてしまうというハプニングがありつつも、司の尽力もあり、無事に大会出場を果たすことができたいのり。

 8話はいのりの出番が来たところで終わるという、なかなか生殺しな状態になっていましたが、9話ではお待ちかね、いのりの滑りのターンです。

 名港杯ではプログラムの採用を見送った2回転。それを危なげなく飛べるようになっていることに成長を感じつつ、身体の重心移動のコツをいきなり掴んだのには驚きました。

 いのりが元々本番に結構強いタイプなのもあると思いますが、できるようになったタイミングを考えると、直前に靴なしでイメージトレーニングしていたのが良い方向に働いた可能性が結構ありそうです。

 最後はいのりの得意技でもある、フライングシットスピンからのブロークンレッグで締めくくり。途中には肉体的なきつさを吐露するところも描かれていましたが、フィギュアスケートは表情も含めての演技になるので、それを表に出さないようにしないといけないのも大変な部分だなと。

 スポーツの中でも、自分の表情にまで気を使わないといけない競技はなかなかないですよね。

 外からはそんな大変さを微塵も感じさせない、見事なパフォーマンスをやりきったいのり……でしたが、不自然な転びかたをしてしまい、一気に不穏な展開に。

 怪我自体は軽い捻挫で、これは最後に刃をひっかけて躓いたことが原因だと思います。が、今までの滑りの中でも、いのりの内心が今回ほどキツそうに描かれていたことはなかったんですよね。

 滑っている最中はアドレナリンが出ているので本人も気づかなかったのかもしれませんが、滑っている段階からすでに身体的な異変は起きていたということかなと思います。

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 いのりの怪我という衝撃展開が描かれる一方、9話のもう一つの見どころとなっていたのが絵馬の演技です。曲調や体格が大きいなどの影響もあると思いますが、演技の質がいのりたちと明確に違う、と感じられるのがすごいところ。

 ダブルフリップとダブルトーループを決める時の氷を蹴るカットとか、フィニッシュのフライングキャメルスピンの演出とか、素人目に見ても今のいのりよりも上の領域にいることが分かる描かれ方にもなっています。いのりの24点台を越える25点台を絵馬が叩き出したのには、あの演技を見た後には納得しかありませんでした。

 結果としてはいのりが負けてしまった形にはなりますが、これまで蛇崩との過去が丁寧に描かれてきた(加えて蛇崩がめちゃくちゃいい人すぎて好きになっていた)のもあって、結構絵馬側にも感情移入してしまっていたので、素直に「良かったな……」という気持ちになれました。

 もちろん絵馬が純粋に良い子というのもありますが、周囲に対して自分が出遅れていることの"焦り”みたいなものは現実で自分自身も抱いてきた経験があるので、ある程度その辛さが想像できるからこそ生まれた感情なのかなとも思いました。

 そのあとの表彰式のシーンでは、結果3位で終わってしまった星羅が銅メダルをしっかりと喜んでいて、めっちゃいい娘だなと印象に残りました。いい子(人)多い……。

 その星羅とは逆に悔しがっている梨月も、今後レギュラーで出て欲しいくらい良いキャラをしている……と思っていたら、まさかの星羅・美豹と同じクラブの仲間になる展開に! 天真爛漫で天才肌の星羅に、2人が振り回されたりヤキモキしたり……という光景が用意に想像できて、この3人がメインのスピンオフが見たすぎます(本編より大分ギャグ要素が強めになりそうですが)。

 一方、いのりの怪我の原因が、練習のしすぎにあることも判明。8話で蛇崩が絵馬の怪我の話を聞いた時、いのりも同じタイプだと感じてはいたのですが、早速それが当たってしまった形に。

 今回いのりが負けた要因が、絵馬との積み重ねてきた練習量の差でした。頑張りたくても頑張れないということに、すさまじいもどかしさがあることは容易に想像できます。

 そのうえで、その現実をしっかりと受け止めるいのりは本当に偉い。最後に出られなかった表彰式の代わりに司がメダルを渡して、初めて手にしたメダルを喜ぶシーンもグッと来ました。

 いのりも絵馬の演技を自分の目で見たからこそ、負けたことにも納得がいったんでしょうね。

 そして今後は、理凰の話が動き出しそうなフラグも立ってきました。司たちは気にしていないようでしたが、実際の光のコーチは夜鷹純であるにも関わらず、表向きは理凰の父の慎一郎が務めてることになっているところとか、謎とも言える部分が結構あるんですよね。そのあたりの事情がいつ頃明かされるのかが気になるところです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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