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『メダリスト』8話感想。キャラクターの個性を一発で伝えるスケートシーンの表現力に圧倒。けどここで終わるのは生殺しすぎ!?(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 放送中のTVアニメ『メダリスト』第8話“西の強豪(前)”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『メダリスト』8話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

いのりの出場が危ぶまれる中、想定を上回る高得点を叩き出す星羅【メダリスト】

 ハラハラした前回の大会の直前に、自身がキャリーケースを忘れてしまったことに気づいたいのり。

 7話でも、会場に到着した時点でキャリーケースらしきものが見当たらなかったので予想していた通り、やはり会場に着く前になくしていたようでした。

 電車の網棚に荷物上げるのって、こういう風につい忘れそうになるので、使うのを結構躊躇いがちなのは絶対に自分だけではないと思いたい……。


 しかし幸いにも10先の駅で保管されていることが判明。タクシーを呼ぶまでの時間を惜しんで、最寄りの駅まで走るのを即決する司が男前すぎました。走っていくと聞いた時ののぞみの驚きぶりからして、10分とかで着くような距離ではなかったのでしょう。

 ただ、そうなるの困るのは残された側ののぞみで、実際こういう事態になったら子どもに何をさせればいいのか、親の立場だとかなり困りますよね(のぞみの場合は、実叶の時の経験があるとはいえ)。事情を聞いた蛇崩が大事な大会前にも関わらずいろいろサポートしてくれていて、司に負けず劣らずの善人っぷりで一気に好感度が上がりました。

 自分の失敗でいのりが焦りそうになる中、前回自分の優勝は決まっていると言わんばかりの自信を見せていた獅子堂星羅が23.37という高得点を叩き出し、言うだけの実力をもっていたことも判明。大会前、いのりの目標は20点という話が出ていたことを考えると、大幅にそれを上回る点数を叩き出しており、想定していた以上にハイレベルな大会になっていることが分かります。

 すっかり立派になったいのりを見て、「また俺が何もしていないのに成長を……」と涙を浮かべる司には笑いましたが、ライバルであるにも関わらず、そこにスッと入ってアドバイスする蛇崩はやはり面倒見がいいです。

 これまでにも少し仄めかされていた蛇崩と絵馬の関係は、司といのりの関係ともダブる部分が多く、練習しすぎて怪我をする……みたいなのも結構いのりでも容易に想像できてしまうので、この話を聞けたのは司にとって大きなプラスになった気がします。


 また、いのりの応援に名古屋から瀬古間も駆けつけていましたが、仕事の休みを取って自腹で京都にまで遠征してくるのはあまりにも強火ファンすぎて笑ってしまいました。

 のぞみを前にして正直に話そうとするのも、瀬古間の誠実な人柄が伝わって来きました(結局自分がいのりを勝手にスケートリンクに挙げていたのは伝えてないままではありますが)。

Aパートでの蛇崩とのやり取りが伏線になっている構成の美しさ【メダリスト】


 8話でとくに素晴らしかったのが、Bパートで描かれていた各地のライバルたちのスケートシーン。どのキャラクターも、これまで決して描写が多いわけではなかったにも関わらず、スケートシーンの演技と内面描写だけで、個々のキャラクターの特徴が一発で記憶できるレベル伝わるようになっていたのがすごいなと。

 個人的に一番印象的だったのは、星羅への対抗心をむき出しにしていた小熊梨月。『メダリスト』は割と気持ちいいタイプのライバルキャラが多いので、こうしたネガティブ方向の感情を表にしてくるタイプは結構新鮮でした。

 リンクにできた傷でバランスを崩しかけたところから一生懸命持ち直そうとするところとか、つい応援したくなる人間臭さみたいなのがありますし、毒舌系だけど見ていて微笑ましくなるような可愛さもあって、とくに今後に注目したいキャラクターになりました。


 その後いのりの演技が始まる直前で8話は終わりとなり、「ここで終わりか!」と結構な生殺し状態にはなったんですが、滑り出す前のいのりと司のやりとりも非常に良いシーンでした。

 23点を越えるため、プログラムを変えた方が良のではないかと心配するいのりに対して、司が今のままでも勝てると自信をもって断言するわけですが、この時、いのりは気休めではなく、司が心の底から口にしている言葉ということを見抜いているんですよね。

 司自身はまったく意識してないと思いますが、図らずともその前に蛇崩が司に伝えていた「子供は大人の発する空気を察する」という言葉をさり気なく証明するような流れにもなっていて、1つのエピソードの構成としても美しいです。

 司が話している最中、すでにパーカーの紐が途中まで結ばれた状態になっているのもなかなかの芸細で、「このタイミングで結んでたのか」としっかり分かるようになっているのもちょっと面白く、このシーンは是非見返してみていただきたいです。


 次回はいよいよいのりの演技となるわけですが、実は絵馬もまだ滑ってないのが気にがかりな部分でもあります。

 いのりの演技を目の当たりにした絵馬がどんな感情を抱くのか、その上でどんな滑りを見せるのかも、9話の注目のポイントになりそうです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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