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『ガンダム ジークアクス』2話感想:あったかもしれない、もうひとつの一年戦争。完璧すぎるアイキャッチの再現度に驚かされつつ、シャリア・ブルの視点に焦点を置いた一年戦争編の構成に納得(ネタバレあり)

文:電撃オンライン

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 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第2話“白いガンダム”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』2話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

オープニングに仕込まれた『Zガンダム』ネタに思わずニヤリ【ガンダム ジークアクス】


 ついに先週から放送がスタートした『ガンダム ジークアクス』。まず、これから毎週ガンダムが見られる喜びが、『ガンダム』シリーズファンとして嬉しい点です。

 2話でまず盛り上がったのが、映像付きのオープニングが始めて公開されたこと。

 主題歌の『Plazma』は、劇場で初めて聴いた時から、何度も聞き直して耳馴染みがかなりある状態だったのもあって、それに映像が加わるとさらにテンションが上がりまくります。


 鶴巻監督らしいオシャレな映像の中、印象的だったのがマチュたちが走るシーン。最初はマチュとジークアクスだけだったのが、ラストでニャアンやシュウジだけではなく、エグザべやシャリア・ブルまで一緒になって全力疾走しているのは、前後のシーンとかキャラクターとのギャップもあってかなりインパクトがありました。

 あとはサビのあたりの戦闘シーンでの、ジークアクスを赤いガンダムが盾で庇いながら爆風の中から現れるカットなんかは、完全に『機動戦士Zガンダム』のOP冒頭のガンダムMK-Ⅱのオマージュになっているというファンサービスにもニヤリ。

 その前のカットでは、ジークアクスに乗ったマチュがソドンからカタパルトで出撃するようなシーンもあったり、今後の展開にいろいろ妄想が膨らみます。

シャアが強奪したのは、実はホワイトベースではなかった?


 そして本編部分はというと、前回の予告からも察せられた通り、劇場先行版『Beginning』の前半部分にあたる一年戦争のパートのストーリーが展開されていました。

 劇場で思わず吹き出しかけた、聞き馴染みのありまくるBGMからのナレーションは残念ながらなかったものの、ザクのモノアイがアップになってサイド7に侵入するシーンはやっぱり何度見ても鳥肌モノのカッコよさ。

 天井のレバーらしきものをザクが引っ掛けてしまい、取れたレバーが宇宙を漂っていくのも初代『ガンダム』にあった演出で、カット割りまで徹底して寄せているこだわりが凄まじいです。

 一方で明確に違うのが、シャアが出撃していること。

 初代『ガンダム』では、シャアではなくデニム、ジーン、スレンダーの3人が、連邦のV作戦を探るため偵察任務に就いているのですが、『ジークアクス』ではジーンに変わってシャアが直々に偵察に出ており、本来主人公のアムロ・レイが乗るはずだったガンダム(RX-78-02)を強奪するという、初代『ガンダム』を知っていると目玉が飛び出そうになる驚きの展開に繋がっていきます。


 ちなみにこの時にガンダムが放置されていたのは、エンジントラブルでトレーラーが動かなくなってしまい、テム・レイたちは牽引できる車を探してその場を離れていた……というのが元々の流れ。

 『ジークアクス』では該当シーンはありませんが、その後に登場するテム・レイが、クレーンらしきものがついている車両に乗っているのが確認できるので、ほぼ同じ出来事が起こっていたと考えられます(しかし、この後のテム・レイがどうなったのかが気になりすぎる)。

 迎撃にガンキャノンが登場するというのも初代『ガンダム』にはなかった展開ですが、元々ガンキャノンが背負っている大砲は実弾だったので、『ジークアクス』版のガンキャノンは武装構成も違っています。


 肩を掠めただけでもザクが転倒するほどの威力があるあたり、ザク・マシンガンと違ってガンダムでも当たればタダでは済まなさそう。もし乗り込んだのがシャアでさえなければ、ここでガンダムは破壊されて強奪は阻止されていたんじゃないかなと思います。

 本人は終わった後で「意外とあっけないものだな」とか言ってますが、“操縦系統が違う連邦製のモビルスーツをマニュアルもなしに動かす”、“近距離で放たれたビーム攻撃に反応して回避する”、“ビーム・サーベルでコクピットだけを破壊”と、やっていることはかなり人間離れしています。

 アムロも近いことはやっていますが、近距離のビームに反応して回避しているのはとくに凄まじく、『ジークアクス』のシャアはこの時点でもうニュータイプとしての能力に目覚め始めている可能性もあるなと思いました。そう仮定すると、ガンダムに特別なものを感じて、自分のザクを捨ててまで乗り換えた“勘”の良さにも納得がいくんですよね。

 さらに停泊していたペガサス級のブリッジを破壊して、後の“ソドン”になる戦艦の奪取にも成功するわけなんですが、今まで乗ってたのが初代『ガンダム』にもいたパオロ・カシアスだったのもあって、ここで奪われたのは、ホワイトベースそのものだとずっと思ってたんですね。


 けど、その後の戦闘シーンで映し出されるモニターに“LMSD-70”という艦籍番号らしきものが表示されていまして、これはペガサス級の2番艦であるホワイトベースではなく、初代『ガンダム』のアニメ本編には登場していない、1番艦のペガサスのものにあたります。

 確かに『ジークアクス』の作中でも、“ペガサス”と言われているシーンはあり、これは自分は“ペガサス級”という意味合いで使われているものだと思っていたんですが、本当に艦そのものがホワイトベースではなくペガサスだったということなんだろうなと。

 やっぱりホワイトベースはアムロやブライトたちの船であってほしいので、ファンとしてはちょっと胸を撫で下ろすような気分もありつつ、ホワイトベースではなくペガサスがサイド7に入港しているあたり、シャアがガンダムを奪った以外にも、初代『ガンダム』の一年戦争とは、前提の設定が細かく変わっているんだなということが改めてわかります。

01ガンダムに乗る、名もなきエースが生み出す名勝負のロマン

 その後のRX-78-01(01ガンダム)との戦いは、とくに胸躍ったシーン。

 最強のパイロットであるシャアがガンダムに乗ってしまったら、もう対抗できる存在はほぼいないだろうと思いましたが、ここの01ガンダムのパイロットは、高性能な試作機を任せられているのも納得できるエースパイロットとして描かれているのが個人的にかなりツボだった点で。

 初弾を目眩ましの用に使って、シャアのガンダムを狙うと見せかけて、その背後にいる奪われたペガサス級を狙ったり(“足”がなくなったらガンダムをジオン本国に持ち帰ることもできなくなります)、弾を撃ちきったバズーカを投擲して武器にしていたり、戦い方がクレバーなうえに、シャアの撃ったビームを完全に見切って回避しており操縦技術もめちゃくちゃ高いんですよね。

 最初にこのシーンを見た時、バズーカを上手く使っているあたりで「まさかアムロが乗っているんじゃ?」という考えが脳裏をよぎったりもしましたが、手慣れた戦い方や、完熟訓練の最中だったという状況からするとプロの軍人と考えるほうが自然なので、さすがにその可能性は低いのかなと。

 誰が乗ってたか知りたい、という気持ちはありつつも、『機動戦士ガンダムUC』1話でのクシャトリヤvsスタークジェガンみたいな、名もなきエースの戦いが好きすぎる身としては、今回のこの01ガンダムの戦闘シーンも、名もなきエースが生み出した名勝負として記憶しておきたいなという想いが強いです。あえて多くを語らないからこその良さって、絶対あると思うんですよね……!

 その後は、『ジークアクス』本編にも深く関わっているであろう、シャリア・ブルとシャアの出会いが描かれました。

 初代『ガンダム』でのシャリアは、高いニュータイプ能力を持ちながらも、ニュータイプとして完全に覚醒してたアムロと戦闘になってしまい、わずか1話で退場してしまったキャラクターです。


 その時もシャリアとシャアは互いに好感を抱いており、悪い関係ではなかったのですが、まるで死に急ぐかのように単独で出撃するシャリアをシャアは引き止めず、増援も送らずに見殺しにしたとも取れる行動を取っていました。

 シャアはこの時、彼の判断に疑念を抱くララァ・スンに対してシャリアの心情を説明しています(どんな説明だったのかはぜひ『機動戦士ガンダム』本編で!)。実際その説明は嘘ではなさそうですが、シャアの本来の目的がザビ家の打倒であることを考えると、相手の心が読めるシャリアの存在はかなり危険で、仲間に引き込むか早期に排除するかの二択しかなかったのかもしれません。

 初代『ガンダム』のシャアは、シャリアを仲間にするまでは信じきれなかった(かもしれない)のに対し、ニュータイプとして早くに覚醒していそうな『ジークアクス』では、同じニュータイプであるシャリアの本質を理解できたからこそ、同志として迎え入れた……というのは、ひとつの可能性として考えられるかなと(シャリア以上に強力なニュータイプだった、アムロやララァと出会っていないというのも大きそうですが)。

終盤の展開の大幅カットに驚きつつも、シャリアの視点であることに気づいて納得

 一方、ビックリしたのが、劇場先行版での終盤、とくにソロモン落としが阻止され、シャアが行方不明になるまでのシーンが大幅にカットされていたこと。

 むしろ本編に関わりそうなのは、あの終盤部分だと思っていたので、映画を見ていない人には、ソロモンで何が起こったのかさっぱりわからないんじゃ……と心配になったりもしたんですが、思えばソロモンで何が起こっていたのか知っているのは視聴者だけで、シャリアですら一切知らないんですよね。

 一年戦争パートが最後にシャリアのナレーションで締めくくられていることから考えても、“シャリアの知っているシャア”に関する情報をまとめたのが、この第2話なんだろうなと納得しました。映画を見ていない人は、シャリアと同じ目線で物語を楽しめるということで、先に映画を見た人とは違った楽しみ方ができるような構成になっているのが絶妙だなと。

 映画では、ソロモン落としもシャア側の視点で描かれているので、起こっていること自体は同じでも、とくにシャアに対して受ける印象はまったくといいほど違っていました(映画のほうは、いい意味でも悪い意味でもシャアらしさにあふれまくっていました)。

 TVだと該当シーンを別の使い方で持ってくるかもしれませんし、最後まで放送されないまま終わる可能性も十分考えられます。まだ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を上映している映画館が近くにあって、シャアに何があったのか知った状態で物語を見たいという方は、この機会に見てみるのも大いにアリだと思います。


 あとは、この一年戦争パートがすごかったのは、徹底した『機動戦士ガンダム』の再現で、映画になかったアイキャッチがBGMや構図も含めて再現度が完璧すぎて笑ってしまいました。

 多くの人が知っているであろう、ガンダムがビーム・サーベルを振り下ろしている止めカットだけではなく、初期の頃に使われたタイトルロゴのみのバージョンが別々に用意されている徹底っぷり。

 それ以外にも、ガンダムが大地に立つシーンや、ビーム・サーベルでガンキャノンの腹部を貫くシーン、01ガンダムを蹴り飛ばすシーン(いずれも『機動戦士ガンダム』とは鏡映しのように反転しています)など、『機動戦士ガンダム』のカットをモチーフにした構図がこれでもかと使われていて、映像は新規でストーリー展開も違うのに、なぜか構図とBGMには既視感がありまくるという体験が逆に新鮮でした。よくもここまでやりきったな……と。

 3話からは再びマチュたちの話に戻るようで、物語的にはいよいよ本番といったところ。来週の放送も非常に楽しみです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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