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『ガンダム ジークアクス』3話感想:一年戦争を戦い抜いたザクの強さが印象に残る。“マヴ”に隠された言葉の意味がわかった時の気持ちよさ(ネタバレあり)

文:電撃オンライン

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 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第3話“クランバトルのマチュ”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』3話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

口は悪いが大人としての良識をのぞかせるナブとジェジー【ガンダム ジークアクス感想】


 衝撃の一年戦争編が終わり、再び5年後のマチュたちの時間軸に戻って描かれた3話。

 1話ではジークアクスに乗り換え、初陣ながら軍警察のザク2機を撃墜したマチュでしたが、戦いが終わっても自分が何をしでかしたのか自覚してないまま、「もう帰っていいですか?」と日常に帰ろうとしているのが面白い。

 厳重なセキュリティがかけられたジオンの新型モビルスーツを奪ってしまったとなれば、ジオンが取り戻そうと動く可能性も高く、その上ジェジーにも動かせないとなればクランバトルにも使えず、持っていることにリスクしかないので、「とっとと処分するべき」というナブの主張はもっともだと思います。

 しかしアンキーはそれには取り合わず、ジークアクスを動かせるマチュをクランバトルに誘うという行動に出たのが驚きでした。

 アンキーって、1話でマチュとニャアンが来た時、さり気なく抜いていた銃を隠す描写があり、ただ者ではないと思わせる場面が多く、今回ジークアクスのコクピットを調べている時の様子からも、単なるいちコロニー市民ってわけではなさそうな雰囲気があるんですよね。

 個人的には元ジオンの軍人なのではないか……という予想もしていますが、今一番過去が気になっているキャラクターです。

 ただ、ザクが壊れて使えるのがジークアクスしかない以上、クランバトルに参加するにはマチュに乗ってもらうしか選択肢がほぼないのも確かなんですが、ナブとジェジーはそれでもマチュを乗せるのには反対しているんですよね。

 言葉こそきついものの、2人とも自分たちの事情より、子どもであるマチュを巻き込まないことを優先しているようで、大人としての優しさみたいなのを感じました。

 その後には、マチュとシュウジ、そしてニャアンの3人の出会いも描かれました。

 明らかにサングラスが似合っていないニャアンが「目立ちすぎだろ」と突っ込まれるシーンは笑ってしまいましたが、ニャアンとしては「裏の仕事をする人はサングラスをかけている」みたいなイメージで、形から入ったんだろうということも想像できてかわいいなと。合言葉を言うたどたどしさからも、スレていないことが伺えますし。


 突然“キラキラ”のことを思い出して即早退を決めたり、自分からクランバトルにシュウジを誘うマチュの行動力には今回もビックリ。

 それまで結構悩んでいたので、クランバトルに積極的に参加したいわけじゃなさそうなんですけど、それ以上にあの“キラキラ”をもう一度体験したい……というのが現在のマチュのモチベーションになっているんでしょうね。

 ちょっと意外だったのが、シュウジがマチュだけではなくニャアンのことも信用してガンダムの元まで案内したこと。事前に匂いを嗅ぐような行動がありましたが、匂いからその人物の人となりを判断できる感覚のようなものが、シュウジにはあるということでしょうか。

 また、シュウジが口にした「ガンダムが戦えと言っている」の台詞の真意もどういうことなのか気になるところ。赤いガンダムに搭載されているアルファ・サイコミュ自体に意思があるのか、それともサイコミュの中に、行方不明になったシャアの意思のようなものが入っているのか……。

 シュウジがなぜ赤いガンダムに乗っているのかという理由にも、ガンダムの意思というのが関わっていそうです。

カムランの口から出た“17バンチ事件”とは【ガンダム ジークアクス感想】


 一方、エグザべがサイド6の軍警に捕まってしまっていましたが、コモリ以外のソドンの乗員の多くは、最新鋭機であるジークアクスを盗まれたことしか頭にないようで、今回もまたかわいそうな扱いに。

 ただ面白いのは、エグザべがオメガ・サイコミュを動かせる見込みが低かったにも関わらず、出撃の命令をシャリア・ブルが、かなりの無茶をしてもエグザべを助けたこと。

 このあたり、自分の立場が悪化することも顧みず部下の身の安全を優先する理想的な上司像と、こと赤いガンダムが関わると、いきなり手段を選ばなくなるシャリアの二面性みたいなところも垣間見えます。


 また、『機動戦士ガンダム』でのホワイトベースの乗員、ミライ・ヤシマの婚約者だったカムラン・ブルームも登場しました。

 このカムラン、一見ステレオタイプな世間知らずの金持ちお坊ちゃんキャラに見せかけて、ミライへの想いは本物で根性も据わっているという、個人的にも印象的なキャラクターだったので、『ジークアクス』での登場は嬉しかったです。

 『逆襲のシャア』でもシャアのアクシズ落としを阻止するため、終身刑を覚悟で核をロンド・ベルに横流しするという覚悟の決まりっぷりがすごくて、『ガンダム』の名脇役の1人なんですよね。

 個人的にあそこのブライト・ノアとのやりとりがめちゃくちゃ好きで、気になった人は是非『逆シャア』を見てほしいところ(この人がいなかったら、アクシズ落としが成功して宇宙世紀の歴史が大きく変わっていた可能性もあります)。

 『ジークアクス』ではミライが登場していないとはいえ、そのカムランがソドンについて言及するのは運命じみたものも感じます。シャリアとは以前から面識があるようなので、その時に一度ソドン自体は目にしていたんでしょうね。


 また、シャリアとカムランの会話の中では、“17バンチ事件”という気になる単語も登場していました。

 名称から『Zガンダム』のティターンズが反連邦運動を鎮圧するために毒ガスをコロニーに流した“30バンチ事件”を連想しそうになりますが、ソドンが入国することで起きる可能性があるということは、コロニーで起きた反ジオン運動に関連した事件である可能性は高そうに思えます。

3話にして戦う相手がかなりの強敵【ガンダム ジークアクス感想】


 そして、後半の大きな目玉となったのが、マチュとシュウジの共闘が早くも実現したクランバトル。

 映画ではTVのエンディング曲の『もうどうなってもいいや』が流れていたところに、星街すいせいさんの新曲『夜に咲く』がサプライズで流れたのはビックリしましたね。


 マチュだけならともかく、赤いガンダムに乗ったシュウジとのコンビなら、ビットが使えなかろうが楽勝だろうと思っていた節もあったんですが、一年戦争を戦い抜いたベテランということもあり、相手のザクコンビがかなりの手慣れでした。

 最初の動きでマチュの方が練度が低いと判断して攻撃を集中させるのもそうですし、攻撃をかわされるとみたら、閃光弾で視界を奪ってからタックルで突進してくる判断力、割り込んできた赤いガンダムを同時攻撃でふっとばしたり、3話で戦う相手とは思えないほどの強さ。

 前回の01ガンダムの戦闘シーンと同じく、こういう無名のエースパイロットの強さみたいなのを表現した戦闘描写が好きすぎる人間なので、今回のザクの戦いもいろいろ癖に刺さりましたね。

 勝因となったのは、マチュが落としたヒート・ホークをシュウジが投げたのを感じ取り、相手をその軌道にまで誘いこんだこと。一歩間違えばヒート・ホークがジークアクスに当たって大惨事になっているところ、ニュータイプとしてマチュとシュウジが共鳴しあっていたからこそできた戦術でした。


 ただ、今回赤いガンダムが装備していたのって、おそらく初代『ガンダム』のハイパー・ハンマーに相当すると思わしき武器なんですよね。

 劇場先行版の話になってしまうのですが、シャアが行方不明になったソロモンの戦いでは、ガンダムはハイパー・ハンマーを装備していなかったものの、ソロモン内で遭遇した連邦の軽キャノン(ガンキャノンを近接戦闘にも対応できるよう改良した機体)がハイパー・ハンマーを使っていたので、その時放置されていたハンマーを拾っていたのかな……と思ったりもしました。

 このあたり、シュウジがどうやって赤いガンダムを手に入れたのか……というところにも繋がってきそうな気がします。

 また、ここでついに、今まで使われてきた“マヴ”という言葉の一部が、実は“M.A.V.戦術”に絡んだものだったことが明らかに。

 昭和時代から使われてきたほうの“マブダチ”の略にしては、何となく使われ方に違和感はあるけれど、ギリギリ成り立たなくはない……くらいの塩梅で”マヴ”という言葉が使われていたので、映画館でエグザべたちの会話を聞いた時、それまでのモヤモヤが一気に消えてスッキリしたのを覚えています。この”マヴ”という単語の使い方は本当に絶妙でした。

 一方で、シャリアたちの会話にはちょっと引っかかるところもあります。自身も編み出すのにかかわった戦術のはずなのにシャリアがどこか他人事だったり……。

 そもそもシャアとシャリアがそろって出撃したのって、一年戦争の後半だと思われるんですよね。そのタイミングでM.A.V.戦術が確立されたからこそ、最後にジオンが一気に優位に立ったという考え方もできるとはいえ、教本に書かれていることは本当なのか? という疑問は少しあります。

 また今回でついに映画の範囲が終わり、次回からはまったく展開が読めない未知の範囲に突入することになり、ますます放送が楽しみに。予告に登場した、連邦に関連してそうなキャラクターが何者なのかにも注目したいです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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