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『萬手一体(Out Of Hands)』レビュー:すべてが“手”でできた悪夢。心をえぐる異形のデッキ構築型ローグライクカードADV【電撃インディー#990】

文:sexy隊長

公開日時:

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、Game Riverが開発、Lightning Gamesがパブリッシングを担当する、すべてが“手”でできたデッキ構築型ローグライク・カードバトルRPG『萬手一体(Out Of Hands)』をレビューします。

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 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!


悪夢と記憶が交錯するストーリー。全てが異形で構築された“手”の世界

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 『萬手一体(Hands Up)』は、目覚めたら、身体が無数の“手”で構成された異形へと変貌していたという衝撃的な始まり方をする、心の傷と向き合うローグライク・カードバトルRPGになります。奇妙で不気味な夢の世界をさまよい、失われた記憶の断片を追いながら、悪夢の化身“ナイトメア”との戦いを通じて真実を探っていくストーリーが楽しめます。

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 ストーリーの根幹にあるのは、“論理”、“神秘”、“行動”といった分裂した三つの思考。それぞれがプレイヤーの選択に影響を与え、ストーリーの展開を揺さぶる仕掛けが施されています。歪んだ記憶、ねじれた感情、封じ込めた傷といった“心の闇”と正面から向き合う、ダークで繊細な心理劇がプレイヤーの脳を直接攻撃してきます。

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どの作品よりも衝撃的なビジュアル“すべてが手”の世界

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 本作の最大の特徴は、なんといってもすべてのビジュアルが“手”で表現されていること。目、鼻、口までもが手で構成されたキャラメイク。しかも静止画ではなく、うごめく実写表現……。筆者は集合体恐怖症なので、この異様さとリアリティがトラウマレベルのビジュアルになっています。

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 この強烈なビジュアルは、開発者であるZeyu Yang氏が自らの悪夢体験をもとに制作したと語っており、まさに作中同様に夢と現実の境界が崩れたような、不安定で異質な世界観が堪能できます。しかし……悪夢すぎでしょ……(笑)。

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ビジュアルとは裏腹に本格的な戦略と緊張感がせめぎ合うカードバトル

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 戦闘システムは、デッキ構築型のカードバトルがベース。“手”のカードを使い、“記憶”とそれを守る“感情”で構成された敵と戦う『Slay the Spire』系のローグライクに、物語性や探索要素を組み合わせた贅沢な作品になっています。

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 感情を先に倒さなければ記憶には攻撃できないというシステムが、ただの殴り合いに終わらない緻密な戦略性を生み出しており、ビジュアルに目を奪われがちですが、カードバトルとしてもかなり面白い作品です! カードの種類はもちろん、“顔”パーツによる強化要素や“呪い”の存在など、プレイすればするほど、深みにハマっていくシステムが魅力的です。

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 探索パートでは、マップ上のアイコンを選んで進む形式で、テキストベースの演出とともに悪夢世界を少しづつ紐解いていく感覚が楽しめます。ホラー感たっぷりの世界観とRPG要素によって緊張感ある没入体験を演出しています。

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 難易度は“ストーリー(初心者向け)”と“ノーマル”から選べるほか、戦闘表現を“文字”か“感情の擬人化”から選択可能です。ホラーが苦手な人にも配慮した表現、カードバトルが苦手な人も配慮した難易度設定など、かゆいところに手が届くような、様々なプレイヤー視点に立った配慮が感じられます。

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 日本語ローカライズの質も非常に高く、セリフ回しや演出のニュアンスもしっかりこだわりを感じる設計になってたのも個人的には嬉しいポイントでした。

奇っ怪な見た目だけじゃない、まさかの心を揺さぶる一作

 『萬手一体』は、単なるビジュアルの奇抜さにとどまらない、ゲームとしての完成度と独創性に満ちた傑作だと思います。

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 カードバトルの戦略性、ストーリーの重厚さ、そして“手”で統一された圧巻の世界観とビジュアル。そのすべてが噛み合い、“奇作”ではなく、“怪作”と呼ぶにふさわしい独自の存在感を放っています。

 ホラー要素、カードゲーム、ストーリー重視型RPG、味わったことのない独創性……どれか一つでも好きなら、間違いなく刺さる作品だと思うので、気になる方は体験版で第1章を試せるので、まずはその“異様な魅力”を体験してみてください!

 2025年のインディーゲームシーンを代表する一本として、自信を持って推薦したい作品です。

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