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【米澤崇史のガンダム、次に何見る?】今だからこそ勧めたい『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』。戦闘シーンを見ているだけで興奮する最高峰の作画に、コウとガトーのライバル対決、カッコいい量産機の魅力

文:米澤崇史

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 『ガンダム』ファンのライター・米澤崇史がオススメの『ガンダム』作品を紹介する連載【米澤崇史のガンダム、次に何見る?】。第1回は、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』を紹介します。

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 今、『ガンダム』シリーズがアツい。

 筆者はかれこれ30年くらいは『ガンダム』を追いかけているシリーズファンなのですが、とくにここ数年の盛り上がりの凄まじさを実感している方は多いんじゃないかと思います。

 自分の周りでも『水星の魔女』や『ジークアクス』をきっかけに『ガンダム』シリーズを見始めたという人も多くて、『ガンダム』の話ができる機会がどんどん増えていて、「こんな時代も来るんだなぁ……」としみじみ感じています。

 個人的に、その盛り上がりの一つの要因となっていると思っているのが、アニメのサブスクリプションサービスの存在。

 昔は『ガンダム』を見ようと思っても、それなりのお金や手間がかかってハードルがあったんですが、今だと契約しているサブスクのラインナップにあれば、かなり気楽に視聴できるようになったのは非常に大きかったと思います。

 その上で必ずと言っていいほど話題になるのが「どのガンダムを見ればいいの?」ということ(『ガンダム』ファン同士で議論させれば、朝まで語り合うことになるのは必須の話題です)。

 そこで、本コラム【ガンダム、次に何見る?】では、「『ガンダム』作品がたくさんあるけど、何を見たらいいのか分からない!」という方向けに、“ガンダム見放題作戦 THE OPERATION[G] 2024”と題して70作品以上が見放題配信されているU-NEXTから、オススメのタイトルを紹介していきます。

 連載第1回では、OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』をピックアップ。

 いろいろな意味で、今視聴するにはこれ以上ないタイミングの作品でもあるので、そのポイントや魅力を語っていきます。

『ジークアクス』で興味をもった人に見て欲しい『ガンダム』作品【ガンダム0083 スターダスト・メモリー】


 『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY(以下、0083)』は、1991年に発売されたOVAシリーズ。1992年には、一部新作カットを加えて再編集を行った劇場版『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』も公開されています。

 監督は、後に『機動戦士ガンダム MS IGLOO』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』など複数の『ガンダム』作品を手掛けた今西隆志氏。

 メカデザインに『マクロス』シリーズで知られる河森正治氏、後にユニコーンガンダムやウイングガンダムゼロ(Endless Waltz版)など多数の主役機体を担当したカトキハジメ氏らが参加しているという、非常に豪華な布陣で制作されている作品です。

 この『0083』、今オススメしたい理由はいくつかあるのですが、まず一つが現在放送中の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の後や、並行して見るのにピッタリの作品だということ。

 『0083』はその名の通り、『機動戦士ガンダム』のラストである一年戦争の終結から3年後の0083年の宇宙世紀で起こった出来事が描かれます。

 『0083』を楽しむ上では、ある程度一年戦争の知識があったほうがいいのですが、『ジークアクス』を見ていれば一年戦争のこともある程度分かっているハズなので、スムーズに作品世界に入れるようになっています。

 ただ、気をつけないといけないのは、『0083』は宇宙世紀の正史の流れの作品なので、ジオンではなく連邦が勝利しているという違いがあること。

 ジオンが負けたことで、スペースノイドが苦しい立場に追い込まれつつあるという前提の設定さえ抑えておけば、同じ一年戦争の後を描いた『ジークアクス』とは、違いも分かりやすく楽しめると思います。

“オーパーツ”と呼ぶに相応しいセル画時代のアニメの魅力が詰まった戦闘シーンは必見【ガンダム0083 スターダスト・メモリー】


 またこの『0083』、OVAとして制作された作品なので、全13話と比較的短く話がまとまっていて、なおかつかなりリッチな作画で制作されています。

 やっぱりどうしても昔の作品を見ると、最新の綺麗な絵に比べると見劣りしてしまい、つい見るのを敬遠してしまう……という経験をしたことってあるんじゃないかと思うのですが、『0083』に関してはその心配は不要です。

 とにかく書き込みの量が凄まじく、セル画で制作されていた『ガンダム』シリーズの中では最高峰ともいっていい情報量での重厚感のある戦闘シーンが描かれています。

 よく現代では再現不可能な作画のアニメを“オーパーツ”と表現したりしますが、本作の戦闘シーンはまさにその言葉にぴったり。

 カッコいいロボットが動くとテンションが上がるタイプなら、この作画を目当てに見ても損はしないと断言できるレベルです。

 なお本作を制作していたのはサンライズの第2スタジオ。

 在籍していた中核アニメーターたちによって後に設立されたのが、日本を代表するアニメスタジオの一つとなるボンズ(『僕のヒーローアカデミア』や『鋼の錬金術師』など)だった……といえば、いかにすごい面々によって作られたかが伝わるのではないかと思います。

敵に新型のガンダムが盗まれた初の作品【ガンダム0083 スターダスト・メモリー】


 ストーリーのとっつきやすさも『0083』の魅力(以降、物語の中盤までのネタバレがありますのでご注意ください)。

 核兵器を搭載した新型のガンダム試作2号機が、ジオン残党“デラーズ・フリート”のエースであるアナベル・ガトーに盗まれるという、物語の始まりとなる1話の展開がまずインパクト抜群。

 今でこそ、新型のガンダムが敵の手に渡ってしまう展開は珍しくないですが、主人公が盗むことはあっても、敵側に盗まれるというパターンを描いたのは、この『0083』が初めてだと記憶しています。

 しかも核弾頭が装填された状態だったわけですから、盗まれた2号機がいかにヤバい代物かということは、『ガンダム』の知識がほぼなくても分かりやすいです。


 また、その試作2号機とガトーを追いかける主人公のコウ・ウラキのドラマは、強大なライバルを相手に新米パイロットが急成長していく少年漫画的な要素が強めです。

 コウは試作2号機の強奪の瞬間に偶然居合わせた際、残されたもう1機のガンダムに乗り込んでガトーと交戦し、以降は2号機の追撃任務につくアルビオンに配属され、ガトーを追い続けることになります。

 一年戦争で“ソロモンの悪夢”とまで恐れられたエースパイロットであるガトーに当初はまったく敵わないコウですが、戦いを得ていく内にグングンと成長し、ガトーに引けを取らないエースへと成長していきます。

 『0083』の物語は、このコウとガトーのライバル関係がまず話の中心にあるので、世界観についての知識がさほどなかったとしても、ストーリーに置いていかれることはない作りになっています。

 それでいて、どちらの側にも正義があって単純な勧善懲悪ではない『ガンダム』シリーズらしさも溢れていて、どの陣営に共感したかによって、受け取り方がかなり変わってくる作品にもなっています。

“ガンダム試作1号機フルバーニアン”をはじめとしたモビルスーツのカッコよさ【ガンダム0083 スターダスト・メモリー】


 あとは個人的な話になってしまうのですが、歴代様々なガンダムの中でも、本作の主人公機であるガンダム試作1号機の宇宙型装備“ガンダム試作1号機フルバーニアン”がめちゃくちゃ好きなんです。

 巨大なブースターを左右に搭載しているロマンとヒロイックさを兼ね備えたデザインに加えて、宇宙と地上で装備が変わるという設定はリアリティを感じましたし、メカ的なギミックとしても魅力でした。


 フルバーニアンの初戦闘となる、ジオンのモビルアーマー“ヴァル・ヴァロ”との戦いのエピソードも非常に印象的です。

 コウはその前の戦いで、地上用の調整がされていたガンダム試作1号機で無理に出撃して機体を大破させてしまい、自信を喪失してアルビオンを脱走していたのですが、そんな彼を助けたのが、ジャンク屋を営んでいたケリィ・レズナー。コウは家に泊めてもらう対価として、壊れていたモビルアーマー(ヴァル・ヴァロ)の修理に手を貸していました。

 途中、コウはケリィが元ジオン兵で、デラーズ・フリートに参加するためにヴァル・ヴァロを修理していたことに気づくのですが、戦いを忘れて生きる選択肢がありながらも、なおもパイロットであり続けようとするケリィに共感し、後で敵味方になると分かっていながらも、最後まで修理に協力します。

 そうして無事ヴァル・ヴァロの修理は終わったのですが、デラーズ・フリートが欲しがっていたのはヴァル・ヴァロのみで、戦争で片腕を失っていたケリィをパイロットとしては見ていませんでした。

 そこでケリィは自分の価値を証明するべく、単身ガンダム試作1号機フルバーニアンに勝負を挑み、そのパイロットがコウだと知りつつも戦うことになります。

 つい先ほどまで一緒に修理をしていた機体で二人が殺し合うのがなんとも切なく、戦争の無情さや狂気といった側面が表現されていた名エピソードだったと思います。

 また、フルバーニアン以外も、とにかく本作のモビルスーツはガンダムだけではなく、量産機に至るまでどれもカッコいいのも特徴です。

 第1話で連邦に使われているザクを一刀両断して介錯するドム・トローペンはあまりにカッコよく、定期的に見返しています。

 自分はどちらかというと連邦のファンなので、エース向けの少数量産機、という設定にロマンを感じる“ジム・カスタム”も、ジム系のモビルスーツの中で1、2を争うくらい好きな機体です。


 また、5月31日からはスマートフォン向けアプリ『ジージェネレーション エターナル』でも、イベント『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY 第1弾』がスタートしています。

 今回の記事でも触れたフルバーニアンとヴァル・ヴァロが入手できるイベントで、戦闘中に主題歌やBGMがしっかりと流れるのもアツいです(フルバーニアンにSPチップを使うのも検討中……)。


 物語の終盤には、最近話題になっていた“とある人物”も登場したり、いろんな意味で今見るのがピッタリな旬な作品といえる『0083』。この機会に、是非ご視聴ください。


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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