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『ガンダム ジークアクス』10話感想&考察:◯◯◯の最期は『ジークアクス』でも変わらなかった。後戻りできなくなっていくニャアンの今後が心配すぎる(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第10話“イオマグヌッソ封鎖”の感想記事をお届けします。

[IMAGE]【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』10話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。
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 予告にギレン・ザビが登場していたことでも話題を呼んでいた10話ですが……もう、いろいろと大変なことになっていました。

 まず驚いたのが、キシリアがギレンについての話をしているシーンで、「贔屓の秘書官と別荘に入り浸っている」「コロニー落としで大量の人間を殺した罪悪感で眠れなくなっている」という、元のギレンのイメージからは到底想像できないような話が出たこと。

 ギレンは元々、人類と地球の将来のためには、増えすぎた人口を一度減らす必要があるという思想をもっているので、コロニー落としで人口を減らせたのは、ギレンとしては本来歓迎するべきことだったはずなんですよね。

 ただ、一年戦争の終結から5年も経ち、ギレンも歳をとっています。

 歳をとったら、過激だった思想が丸くなるのは現実でもよくある話で、『機動戦士ガンダム』では、ギレンの父であるデギンも、元は過激なタカ派だったのが連邦との和平を考えるようになり、ギレンから「老いたな、父上」と評されていました。

 戦争が終わって5年経ち、あの時のデギンと同じようにギレンも丸くなっていった……というのは結構納得で、ギレンとデギンもやっぱり親子だったんだなと、ちょっと2人への見方が変わってきました。


 一方、シャロンの薔薇を回収した後のソドンのシーンでは、マチュがいきなり馴染んでいたのにかなりビックリしました。

 確かに、マチュは指名手配されているのでサイド6に戻ることもできず、地球に行くという目的も果たしたので、次は何をしたらいいのかわからない状態ではあったんですよね。

 ジークアクスを盗んだ罪が帳消しになったわけではないので、選択肢自体がなかったのもあるでしょうし、シャリア・ブルと行動をともにすればシャロンの薔薇について知ることもできるので、マチュにとっては一石二鳥ではあったんだろうなとは思います。

 いつの間にかシャリアを“ヒゲマン”、コモリを“コモリン”と呼ぶ距離の詰めっぷりもおもしろいですが、着替えの用意をしてくれるコモリに素直にお礼を言ったのもちょっと驚いたポイント。

 捕まってもジオンの制服がダサいと文句を言っていた少し前のマチュからはなかなか想像できず、ララァとの出会いを通してマチュも周りのことが少しずつ見えるようになってきた結果かなと感じました。

 シャリアの過去についてのシーンも印象的だった部分で、シャリアがニュータイプに目覚めたのは「自由になった」と感じた瞬間だったんだろうなと。

 その一方で、シャリアは自分のことを否定的な言葉で評し、シャアのカリスマ性に惹かれたのではなく、そんな自分と似ていたから彼の同志になったのだと明かしています。

 つまりは、シャリアから見てシャアもまた……ということになるわけですが、『ジークアクス』のシャアって本心を見せるシーンが少なく、『機動戦士ガンダム』と比べると、少し人間味が薄いんじゃないかとも感じていたので、シャリアの言葉には納得できるところがありました。シャリアが自分のことをどう評していたのかは、アニメ本編でご確認ください。

 妹・アルテイシアが連邦にいることを知ったのも最後の最後でしたし、アムロやララァといった存在と結局巡り会えなかったという違いも影響しているんじゃないかと思います。

ギレンはキシリアを本当に殺そうとしていたのか?【ガンダム ジークアクス感想】

 そして、なんといっても今回一番度肝を抜かれたのが……『ジークアクス』でもあっけなく暗殺されてしまったギレンの最期です。

 『機動戦士ガンダム』でも、キシリアへの警戒が甘かったことが死因になっていたので、『ジークアクス』でもキシリアに殺されること自体は納得なのですが、まさか登場してものの数分で退場とは……。

 ただ、2人のやりとりを見た限り、やっぱり『ジークアクス』のギレンは、『機動戦士ガンダム』のギレンとはキャラクター性が結構違っている印象を受けました(見た目はほぼそのままですが)。

 キシリアがギレンを殺した最大の理由は、『ジークアクス』の世界でも、父であるデギンを殺したから……らしいんですが、デギンの暗殺を指摘された時のギレンは、演技でとぼけているのではなく、キシリアの発言に困惑しているような反応に見えます。

 つまりは、『ジークアクス』の世界ではデギンの死にギレンは関わっておらず、疑心暗鬼になったキシリアが、ギレンが黒幕だと思い込んでいるだけという可能性は結構あるんじゃないかなと。


 これがただの疑心暗鬼だったとすると、ギレン派が裏で関与していたとキシリアが考えていたサイド6での暗殺騒動についても、実はギレン派は関わっていない可能性があります。

 とはいえ、ギレン派はキシリアの側近にまでスパイを送り込んでいたので、キシリアが身の危険を覚えるのはおかしくないのですが、逆にいえば殺そうと思えば殺せるタイミングはあったはず。

 派閥争いの過程で計画を妨害することはあっても、ギレンはキシリアへの殺意までは持っていなかったんじゃないかという気がしています(そのキシリア自身も、ギレンが昔より甘くなったと感じているようですし)。

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 今回の戦闘シーンでは、ビグ・ザムに突撃して槍をぶっ刺していくエグザベ率いるギャン部隊の姿に見惚れました。

 初登場シーンといい、ギャンがこんなカッコよく描かれる日が来るとは。


 キシリア派の精鋭部隊は、正式採用されたゲルググではなくギャンの方を主力にしているようですが、Iフィールドがあるビグ・ザムと戦うなら、ビームが主体のゲルググよりギャンの方が適してるんですよね。

 元々ビグ・ザムの量産はギレンが主体で進めていた計画でしたし、ギレン派の主力がビグ・ザムになることを想定していたとすれば、キシリア派があえてギャンを使っている理由にも納得がいきます。

 逆にジフレドはビグ・ザムに対して有効な武器を持っていなかったんですが、ビットを囮に使って接近し、Iフィールドが張れない装甲の内側にビームを叩き込むという戦法で撃破していました。

 ジフレドの性能はあるにしろ、一年戦争でジオンが勝った要因のひとつでもあるビグ・ザムをほぼ単機で撃破できているあたり、ニャアンのパイロットとしての成長速度が尋常ではありません。

 ただ、シュウジとキシリアのために戦っているニャアンはともかく、エグザべは割と一般人に近い感性をもったキャラだと思っていたので、何の躊躇いもなく同じジオンの部隊を奇襲していたのは意外だったところ。

 キシリア暗殺事件の黒幕がギレン派だとエグザべも思っていそうなことに加えて、ジフレドのパイロット暗殺騒動もありました。エグザべにとってギレン派はフラナガン・スクールの友人たちの仇とも言えるので、すでに倒すべき敵として認識されているのかもしれません(それでも、イオマグヌッソが使われた際にはかなり動揺していたあたり、やっぱり本質は変わってないなと感じましたが)。

 また、今回の戦いで、最終的にニャアンはどうなってしまうのか……というのは心配になってきた部分。

 元々ニャアンって、人を殺すことに一切の躊躇いがないキャラクターとして描写されていたので前々からそこは気になっていたんですが……今回はあまりにも死んだ人間の数が多すぎるので、仮にマチュと仲直りできたとしても、戦いが終わった後にニャアンが日常に戻れるのか、ちょっと暗雲が立ち込めてきた感じがあります。


 キシリアから何が起こるのかの詳細は伝えられてなさそうとはいえ、シュウジに会いたい一心でここまでやるのは、果たして許されることなのか……いろいろと思ってしまいますよね。

 しかもキシリアとニャアンとの会話から察するに、まだ今回で終わりではなく、次は地球が標的になりそうなのも恐ろしいところ。

 ミゲルたちが暗殺という手段を使ってまでキシリアの計画を止めようとしていた正当性が、図らずとも証明されてきた流れになっています。

 一方、シャリアの言葉を受けて、シャロンの薔薇の中にいるララァを解放するべく出撃したマチュ。

 「シュウジに会いたい」という想いは今もありつつも、ララァのことや人間の死に対しての憤りを覚えるなど、シュウジ以外の周囲にも目が向くようになってきていて、ついに『ガンダム』の主人公らしくなってきた感じがあります。

 ただ、マチュはジフレドに乗ってゼクノヴァを起こしたのがニャアンだとはまだ気づいていない(ニャアンがジオンに入ったことを知らないので当たり前ですが)ので、ニャアンだと知った時にどんな反応を示すのか、またニャアンに対してどんな言葉を掛けるのかが、来週の楽しみなポイントです。

 あとは、明らかにタダ者ではなさそうなシロウズが何者で、どんな意図で動いているのかというところですよね。

 レオ・レオーニたちは死にましたが、シロウズはある程度こうなると最初からわかっていたかのように脱出に成功していました。


 シロウズの目的はララァを解放することなのか、それともザビ家に引導を渡すことなのか。

 今回、ギレンが『機動戦士ガンダム』と同様にキシリアに殺される末路を迎えたように、もしシロウズの正体がシャアであるなら、キシリアに引導を渡す役もまたシャアになるんじゃないか……とは予想してはいるんですが、尽くこっちの予想が当たらないのが『ジークアクス』という作品。

 またこちらの予想の上をいくような展開が待ち受けているんじゃないかと期待しています。

米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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