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新レーベル“PARCO GAMES”キーマンインタビュー。第1弾タイトル選出の狙いや“パルコならでは”のパブリッシングについて聞いてみた【電撃インディー#1091】

文:電撃オンライン

公開日時:

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、8月19日に発表された、パルコによるインディーゲーム新レーベル“PARCO GAMES”についてのメールインタビューを掲載します。

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 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

あのパルコがゲームパブリッシング事業に参入。インディーゲームに特化した新レーベル“PARCO GAMES”


 パルコは、8月19日にゲームパブリッシング事業に本格参入するとして、インディーゲーム領域に特化した新レーベル“PARCO GAMES”の創設を発表しました。

 パルコといえばファッションビル“PARCO”を全国で展開し、ファッションはもちろんエンタメやアートなどのカルチャーを発信している企業。

 そんなパルコですが、2023年にはゲーム事業専門チームが発足されており、2024年9月からゲーム事業開発部としてイベントやコラボなどを行っていました。

 “PARCO GAMES”はパルコのゲーム事業を総合するブランド名称として発足し、より戦略的かつ継続的な事業推進をするために設けられたレーベルとのこと。

 パブリッシング第1弾タイトルとして『南極計画』『CONSTANCE』『the Berlin Apartment』の3本が発表されており、それぞれ2025年冬の発売を予定しています。

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 “PARCO GAMES”創設の詳細については、8月19日の掲載記事をご覧ください。


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それぞれのタイトルを選んだ狙いや“パルコならでは”のパブリッシングについてインタビュー【PARCO GAMES】


 メールインタビューには、PARCO GAMESで『南極計画』を担当する山中さんと、『CONSTANCE』『the Berlin Apartment』を担当する清水さんより回答をいただきました。

──発表された作品を、ゲームパブリッシングの第1弾にした意図を教えてください。

山中
:『南極計画』の開発者であるRexLaboとは、当初『南極計画』の次の開発作品についてご一緒できればと思い、お声がけをしていました。

 しかし『南極計画』についてご紹介をいただいた際、本作のもつ“美しく過酷な自然”を非常にストイックに表現している点、たった一人で旅する子どもの描写をはじめとした“孤独の魅力”に心惹かれ、この作品の魅力を世の中に広めたいと思いこの度パブリッシングをご一緒することにしました。

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 『南極計画』は900年後の南極大陸という、未知の世界を主人公である子どもがたった一人で冒険する作品です。

 ゲーム業界という未知の領域にチャレンジするPARCO GAMESとしても『南極計画』の子どもとともに冒険を始めたいと考えております。

清水
:昨年のTGSでbtf Gamesのブースを訪れた際、作品の映像としての美しさや独特の雰囲気に強く惹かれ、思わず声をかけたのが始まりでした。聞けば、彼らのチームには渋谷PARCOに遊びに来たことのあるメンバーもいたということで、最初はイベント事業に関してポジティブな情報交換を続けていきました。

 そんなある日、彼らがアジアでのパブリッシャーを探していると聞き、「ぜひ私たちにやらせてほしい!」と申し出たことが、きっかけになりました。

 パルコとして、彼らのどちらのタイトルにも惹きつけられるグラフィックやゲームプレイ性があると感じましたが、特に第一弾のタイトルについては、PARCO GAMESの進む方向性を示すものとして重要だと考えました。決め手となったポイントは、どちらの作品にも、ゲームを通じて感じてほしいメッセージや物語が一貫して込められていることです。

 『CONSTANCE』は、悩めるアーティストの受容と再生の物語。日々の忙しさの中で自分自身の表現を取り戻し、過去のトラウマさえも乗り越えていくストーリーは、現代を生きる働く皆さんへのエールともいえる作品です。アートと自己表現をテーマにしたこのゲームは、多くの人の心に響くものがあると思います。

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 一方、『the Berlin Apartment』は、約120年という長い時代を生き抜き、さまざまな困難や変化の中で力強く姿を変えてきたベルリンの街を舞台に、そこで懸命に生きた人々の物語を追体験する作品です。

 それぞれのエピソードには、その時代のベルリンを生きる人々の葛藤や想い、困難を乗り越える覚悟が描かれています。歴史ある街とそこで生きた人々のドラマが交錯するその物語は、とても胸を打たれるもので、プレイヤーの心に深い印象を残すと思います。

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 どちらのタイトルも、作品としての魅力はもちろん、伝えたいメッセージや物語がしっかりと息づいています。皆さまにもぜひその世界観や感動を体験していただければ嬉しいです。

──それぞれの作品について、特に魅力を感じた部分はどこですか?

山中
:『南極計画』の魅力は“美しく過酷な自然”の姿をストイックに表現している点、“孤独の魅力”を表現している点です。

 『南極計画』は絵本のような幻想的なフィールドを楽しめる一方、その環境は自然そのもの、非常に過酷な設定になっています。-30度以下の極低気温、目の前が何も見えない猛吹雪などが無慈悲にプレイヤーの体力を削っていきます。

 その厳しい環境を生き抜く方法は完全にプレイヤーにゆだねられており、岩陰に隠れて吹雪を凌いだり、HPを回復しながら吹雪の中を突き進んだり、プレイヤーの自由な判断で、その人だけの冒険を作ることが可能です。

 まさに“美しく過酷な自然”との向き合いを本作で体験いただけます。

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 また“孤独の魅力”については、主人公の子どもはたった一人で南極の自然を旅します。

 旅は非常に過酷ですが、木々のさざめきや吹雪の音、雪を踏みしめる足音を聞きながら子どもは美しい世界を堪能しています。

 私はプレイをしながらこの子どものように「周囲の音や美しい景色を1人静かに楽しむこと」が非常に贅沢で特別な体験だと感じました。

 日々のあわただしさから少し離れて、静かで幻想的な世界を孤独に味わうことも『南極計画』が提供できる大きな魅力だと感じています。

清水
:『CONSTANCE』は、アーティストの精神世界を舞台にした、ビジュアルの美しさも際立つ作品です。

 繊細なグラフィックや印象的な背景デザインはもちろん、メトロイドヴァニアらしい広大なマップを絵筆や絵の具といったユニークなツールを使いながら、自分の思いのままに駆け抜けていく爽快感がたまりません。

 特に、自由度の高いアクションがプレイヤーを惹きつけるポイントで、ゲームの中にどっぷり没入できる魅力を持った作品です。

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 『the Berlin Apartment』は、簡単な操作で誰でも楽しめるのに、奥深い体験を届けてくれるという点が特徴です。

 細部まで美しく描き込まれたイラストの3Dマップを探索する楽しさはもちろん、異なる時代を旅しながら、歴史ある街ベルリンと、その時代ごとに懸命に生き抜いた主人公たちのドラマを追体験するというストーリーテリングが秀逸です。

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 没入感のある美しい世界と心に響く物語が融合した、特別な作品に仕上がっています。

──これまででもっともおもしろいと感じたゲームとその理由を教えてください。

山中
:『ゼルダの伝説 風のタクト』です。

 両親含め『ゼルダの伝説』シリーズが大好きで、初めて目にしたゼルダシリーズは『時のオカリナ』でした。当時プレイはできなかったのですが、親に頼んで“時のオカリナ”と同じ青いオカリナを買ってもらったのを覚えています。

 そして『風のタクト』は幼少期の私が初めて1人で最後までプレイできた作品でした。『時のオカリナ』から続く音楽をキーとした魅力的な展開と、海の世界を自由に航海し新しい島をさがしてゆくワクワクさ、何よりリンクやゼルダ、ガノンドロフが本当に人間味にあふれそれぞれの“想い”に共感できることが非常に魅力的だと感じていました。

 改めて考えると、キャラクターや世界観を通して“想い”に触れ、共感できる本作の魅力はPARCO GAMESの掲げる“心動かす「物語」が感じられる作品”の魅力に通じるものがあるなと思いました。

清水
:1本だけ選ぶのは本当に難しいのですが、小学生の頃に初めてプレイして以来、今でも色あせずに心に残っている作品のひとつが『MOTHER2』です。これで年齢バレちゃいますね……(笑)。

 ゲームって「良い」かどうかの定義が人それぞれ違うと思うんですが、自分にとっては、プレイした当時の感情や記憶とともに思い出せるゲームが特別な存在になっているように感じます。

 『MOTHER2』には魅力的なキャラクターがたくさん登場して、幼い頃の自分でも思わずクスッと笑ってしまうエピソードもあれば、今振り返ると実はかなりシリアスかつビターな大人向けのストーリーもあったりして……。

 ゲームを開始してから頼もしすぎたブンブーンがあっさりハエと間違われて葬られちゃったり……、訪れる街やモブキャラクターに至るまで細部にこだわりが感じられる名前や設定、そして流れるBGM──どれを取っても作品全体から“粋”がにじみ出ているというか。

 さらに、何歳になってプレイしても、その年齢ならではの新しい発見があり、ずっと記憶に残り続けるだけじゃなく、その時々に違った感動を与えてくれる──そんな底知れない魅力を持つ作品として、自分にとっては特別な1本です。

──ゲームパブリッシングにおいて“パルコならでは”をどうやって創出していくのでしょうか?

山中
:パルコの特徴である“オフラインの拠点があること”、“演劇、ギャラリーなどの文化創造事業を行っていること”はパルコならではのパブリッシングに非常に魅力的に作用すると考えています。

 オンラインでパッケージを展開するだけではなく、実店舗での作品の打ち出しや、他エンタメコンテンツとのコラボレーションを行うことによる、作品の魅力発信の多角化などが、パルコらしいパブリッシングをつくっていくと思います。

清水
:パルコはこれまで、さまざまな分野のエンターテインメントを発信するだけでなく、その街や土地に文化として根付かせていくための取り組みを続けてきました。

 クリエイター自身や彼らが生み出す作品の魅力、そしてその作品に込められた想いや熱量、物語をどう届けるかにこだわり、真摯に向き合ってきたパルコならではの目線や経験を織り交ぜながら、ゲームの未来を拡張し、コミュニティに貢献していく……。

 そのための労力と情熱を惜しまないことが、“パルコならでは”ということになるのではないかなと思っています。時には既成概念にとらわれないこともやっていくかと思うのですが、一緒におもしろがってくれたらうれしいです。

──電撃オンライン読者にひとこと、メッセージをお願いします。

山中
:PARCO GAMESはパブリッシング業の始動により、いよいよ本格的にゲーム事業にチャレンジします。

 ゲーム好きの一人として、ゲーム業界の盛り上がりに少しでも貢献できるように、いつか「PARCO GAMESがなんかおもしろいことやってるな」とみなさんに感じてもらえるように頑張りますので、ぜひ見守っていただけますと幸いです。

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清水
:これまでは展示会やPOP UPといった形でゲームカルチャーに関わってきましたが、いよいよパブリッシャーとして、より一歩深くその世界と向き合うことになりました。いちゲーマーとして、皆様とより深いつながりを持てることに、心からワクワクしています。

 電撃オンラインを読んでくださっている皆様にも、たくさんの「ワクワク」や「物語」を届けられるよう、真摯にさまざまなコンテンツを発信していきますので、もしPARCO GAMESのコンテンツを見かけた際は、そこに込められた想いや情熱をぜひ感じてみてください。

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