PC向け愛憎ブロマンス探索ホラーアドベンチャー『さいはて駅』が配信中です。この記事では、本作の開発者であるびぶさんへのメールインタビューをお届けします。
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『さいはて駅』は、2人の男性の共依存と倒錯的な愛情を描くフリーホラーゲームです。終電を寝過ごした先で“さいはて駅”という奇妙な場所に閉じ込められてしまった主人公“春夏冬(アキナシ)ハル”は、偶然居合わせた同僚の“立浪(タツナミ)シオン”と協力し、2人で帰還することを目指します。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
索引
実は開発者自身が一番のオタク!? 作り手と受け手が同じ目線で楽しめる“みんなで盛り上がれる”作品!【さいはて駅インタビュー】
――あらためて、『さいはて駅』の注目点を教えてください。
『さいはて駅』は、総ダウンロード数35万を超えるフリーホラーゲームです。現在では13カ国語に翻訳され、国内外から幅広い支持を得ています。
本作の魅力は、ホラーながらもかわいいビジュアルや2人の歪な関係性だけにとどまりません。
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多くのファンがイラストや考察を通じて二次創作を行い、コミュニティに能動的に関わってくださっています。
コミュニティでは定期的にイベントや投稿企画も開催しており、作品とファンの間に自然な熱量が生まれ続けています。
そして何よりの魅力は、開発者自身が一番の“オタク”であること。ファンと同じ目線で作品を愛し、語り、楽しむことで、作品の熱量を内側から支えています。
作り手と受け手の境界が曖昧な、「みんなで盛り上がれる」作品。それが「さいはて駅」の魅力だと思っています!
――開発で苦労したところがあれば、教えてください。
2024年5月18日に日本語版を、2025年3月7日に9言語を追加したローカライズ版をリリースしました。(現在は13言語)
その際、ゲーム内で言語をリアルタイムで切り替えるローカライズの仕組み作りには苦労しました。RPGツクールの標準機能には言語切り替えの機能がないので、翻訳依頼~実装~LQAまでの流れを効率化するまで半年以上はかかりました。それまでは手動で文字をコピペしていました。
現在はプラグインを使用させていただき、外部データベースから情報を書き出して言語ファイルを管理する仕組みが出来たので、翻訳者の方と同時に実装作業や校正作業が行える環境が整っています。
――開発をするうえで、特に気を付けた点などを教えてください。
RPGツクールで本格的にゲームを作るのは初めてだったため、「自分にできる範囲で最大限の表現をし、必ず完成させる」という覚悟で開発に取り組みました。謎解きやアクション要素は、親切すぎず難しすぎないバランスを意識し、ゲーム内でヒントが得られるよう調整しています。
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また、DLC『黄昏電鐵』では、久しぶりにプレイを再開した際にもスムーズに進められるよう、仲間に「話す」ことで次に何をすべきかが思い出せるコマンドを導入しました。
自分の考える最強のカップリングで形に残るものを作りたい! 物語の核となる関係性が生まれたきっかけとは?【さいはて駅インタビュー】
――男性ペアによる共依存という物語テーマは初期から考えていたのでしょうか。それとも、ゲームを開発していくなかで見えてきたのでしょうか。
「自分の考える最強のカップリングで、何か形に残るものを作りたい」という動機からスタートし、最初から“共依存”というテーマは決まっていました。
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ただ、構想初期のシオンはヤンデレではなく、宮沢賢治著『銀河鉄道の夜』に登場するキャラクター「カムパネルラ」のように、他人のためになるのであれば自分はどうなっても構わないといった残酷なほどに純粋な青年として描かれており、物語の都合で仕方なくカニバリズムに至るような展開も検討していました。
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しかしストーリーが思うように進まず、キャラクターたちにストーリーを任せた結果、自然と“男性同士の共依存”や“愛憎”といった重く濃密な関係性が物語の核として浮かび上がってきました。
――ゲームタイトルにこめた想いを教えてください。
元々電車や駅というモチーフが大好きで、学生時代には在来線を乗るためだけの旅によく行っていたのと宮沢賢治著『銀河鉄道の夜』が大好きなので駅を舞台に。
そしてホラーといえば有名な都市伝説という共通認識「きさらぎ駅」を彷彿とさせるように、覚えやすく短くキャッチーになるようにしました。
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開発中期までタイトルは『Last Train』『ミッドナイトトレイン』などと無難なものでしたが、タイトルを決めてから方向性が一気に定まりました。
実は「最果て」というタイトル回収の展開は、ラストシーンを作りながらタイトルに沿って思いついたものでした。
――春夏冬(アキナシ)ハル、立浪(タツナミ)シオンともに非常に人間味にあふれたキャラクターとなっていました。キャラクター設定や外見ビジュアルを考える際に、意識した部分はありましたか?
もともと彼らは「うちよそ」創作から生まれたキャラクターでした。その派生キャラクターを使って別のゲームを作ろうとしたものの一度は頓挫し、ビジュアルや性格を引き継ぐかたちで「さいはて駅」のキャラクターとして再構築されました。
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主人公・ハルの「自己否定」と「自信のなさ」は当初から一貫しており、彼に合わせる相棒として「元気で倫理観がズレているキャラ」にすると掛け合いが面白いなと考え、シオンというキャラクターが生まれました。
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メインキャラ3人(ハル・シオン・アオイ)は赤・青・黄の三原色になるようにデザインし、それぞれに自分自身や身近な人の要素を分解し、キャラクターとして醸成しています。
――『さいはて駅 [黄昏電鐵]』を開発することになったきっかけや理由があれば教えてください。
黄昏電鐵は相棒の立浪シオンの過去にフォーカスしたストーリーです。元々本編にもう一つエンディングを追加する予定でしたが、この世界のままだとあまりにも救いがなさすぎると思い、急遽壮大な旅のDLCの開発を決行しました。
また、セルフ二次創作として『誰そ彼電鉄』という、全ての境界が曖昧になる時間帯の電車で2人が対話をするショートショートを書いていました。その夕景の世界観をもう少し広げていきたいと思いテーマが決まりました。
本編で使用させていただいた楽曲を作曲しているnonai soundのコニシユカさんが公開されている楽曲を聴いて、「鉄道」「思い出を巡る(廃墟)」「夕焼け(過去への憧憬)」といったキーワードを抽出し、詳細に絵にしていきました。
コニシユカさんにはオリジナル楽曲も作っていただいています。BOOTHさんにてサントラも販売中です。
黄昏電鐵は、2人の関係性にロマンスを感じている場合はプレイしない方が幸せかもしれません。しかし、2人やその他取り巻くキャラクターたちの苦しみと浄化をより深く味わいたい方はぜひ、本編をプレイ後に苦しみを見届けてください。
新作『※このゲームはフィクションです。』は“何者かになれると信じていた人”がテーマ。ゲーム開発をはじめたきっかけや感銘を受けた作品を語る【さいはて駅インタビュー】
――ゲームの開発に携わることになったきっかけについて教えてください。
大学時代にthatgamecompanyさんの『Sky 星を紡ぐ子どもたち』、Nintendoさんの『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に触れ、深い感情や自然の感覚を疑似体験できるゲームというものに興味を持ち自分でも開発してみたいと思ったのがきっかけです。
卒業制作でUnityを使用して3Dの鉄道のゲームを作りました。結局完成はしませんでしたが、自分でもゲームを作ることが出来るという自信がつきました。
それからOMOCATさんの『OMORI』やナンキダイさんの『キミガシネ』等の素晴らしく心が震えるツクール製のゲームに触れたことでRPGツクールに興味を持ち、『さいはて駅』を開発しました。
開発期間は3ヶ月という、実験的かつ荒削りなものでしたがありがたいことに多くの方の協力を得てそれが予想を超える反響をいただき今に至ります。
――ここ数年でもっとも感銘を受けた、おすすめのインディーゲームについて教えてください。
世界中で多くの支持を集めたインディーゲーム『OMORI』です。
RPGツクールというツールに興味を持ち始めたのも、この作品がきっかけでした。
『OMORI』が描く痛みや他者との関わり、そして自分の罪と向き合うような内省的なテーマは、初めて触れたときに大きな衝撃を受けすぎて心の中に傷跡として残っています。
そして何より、ビジュアルが素晴らしいです。恐怖と、残酷なほどに楽しげな世界のコントラストを絵本のようなラフなタッチで表現しているのが魅力的です。
私はもともと商業デザイナーとして活動していたため、「商業らしく」といった無意識の枠にとらわれていた部分がありました。しかし『OMORI』は、「ゲームのアート表現としての解放」「RPGで内省的なテーマを表現しても良いという解放」を行なってくれたのです。
それ以降、RPGツクールを使用してOMORIのような体験を自分でも作ってみたいと思い『さいはて駅』と『黄昏電鐵』を開発しました。ただの参考や好きな作品という以上に、ゲーム開発という新たな人生を歩ませてくれた、とても大切なゲームです。
もしまだ遊んでいない方がいたら、ぜひぜひ触れてみて、傷ついて、温かい気持ちになってほしいです。本当に素晴らしいゲームです。
――8月31日まで開催中の『さいはて駅』ポップアップストア at マンガ展の見どころについて教えてください。
この度、株式会社TORICOさんと株式会社CS.FRONTさんに主催していただき、初のポップアップストアを開催していただけることになりました。8月31日(日)までマンガ展 渋谷/MAGNET by SHIBUYA109 5F(〒150-0041 東京都渋谷区神南1-23-10 MAGNET by SHIBUYA109 5F)で開催され、入場料は無料です。
会場では、描き下ろしイラストやゲーム内イラストを使用した新作グッズをご用意しています。また、イラストパネルやポスター、エントランスサイネージ(MAGNET by SHIBUYA109 1F)の展示なども行っています。
オタクの皆さんに直接届けられる場ができたことがとても嬉しく、私自身が一番のオタクとして全力で楽しんで準備しました。作品の世界観を愛してくださる方に、実際に触れてもらえる特別な空間になると思います。
ぜひ遊びに来てください!
――今後の新作について教えてください。
『※このゲームはフィクションです。』は、「創作者」であることの人間関係における感情の歪みや「何者かになれると信じていた人」をテーマとしたホラービジュアルノベルです。
恐怖や不穏さだけでなく、強迫観念、嫉妬、孤独、依存、逃避願望、安心といった、創作者でなくとも誰もが心のどこかに抱えている複雑でどうにもならない感情を掘り下げ、プレイヤーの心に傷跡を残す物語体験を目指しています。
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これは自身のゲーム開発による環境の大幅な変化から来る精神的摩擦や私生活での揺らぎの肯定を始めとしたセルフセラピーとしての側面もあります。
ビジュアル面では、前作からは雰囲気をガラリと変えたデジタルホラー×サイケデリックというグラフィック表現に挑戦し、RPGツクールでポイントアンドクリックのノベルゲームを作るという技術面でも新しいアプローチを模索しています。
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精神的にセンシティブな表現や、暴力的・グロテスクな描写を含みますので、ご自身の心のコンディションにご注意ください。(※本作は18歳以上を対象としています)
今作も愛憎入り乱れる地獄をお見せできるように鋭意開発中です。
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
プレイしていただいた方、実況していただいた方、視聴していただいた方、イベントに来てくださる方、応援してくださっている方、イラストやコスプレなどファン作品をたくさん作っていただいている方などなど、本当に本当にいつもありがとうございます。生きる糧です。
これからも自分のペースで作品を届けていけたらと思っていますので、見守っていただけたら嬉しいです。
最後に、いつでもファンアートを待っています。欲を言えば二次創作ファンゲームも待っています。ゲームやらせてください。
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