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鏡の中の楽園で紡がれる友情ストーリーの最後の選択は…「戦う」か「逃げる」か? 制作参加型朗読劇『物語の魔法屋 -写世の僕から現世の君へ-』で沢城千春・山谷祥生・高塚智人が魅せた熱演をレポート(ネタバレあり)

文:電撃オンライン

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 工画堂スタジオとインクストゥエンターの2社がタッグを組んだ朗読劇『物語の魔法屋』は、事前投票によって、登場人物の設定や物語の展開作りに協力できる“制作参加型の朗読劇プロジェクト”です。


▲画面左から、沢城千春さん、山谷祥生さん、高塚智人さん


 ノア役の沢城千春さん、リベル役の山谷祥生さん、ヴィア役の高塚智人さんが出演する第二弾公演『物語の魔法屋 -写世(うつしよ)の僕から現世(うつしよ)の君へ-』が、2026年5月24日に東京の科学技術館 サイエンスホールで上演されました。


 ここで昼公演の様子と、物語の2つの結末をレポートしていきます。




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※この記事には『物語の魔法屋 -写世の僕から現世の君へ-』の重大なネタバレが含まれています。

鏡の中の楽園・写世で少年たちが紡ぐ友情


 “物語の魔法屋”は、いろいろな魔法道具を取り扱うお店。なかでも目玉は物語の力を閉じ込めた魔法薬です。店主であり、大魔法使いでもある師匠(声優:上村祐翔)の弟子になることで、彼と一緒に魔法薬を調合することができます。

 調合の方向は、師匠と彼の問いかけに応えること(公式SNSなどで行われる事前投票)。


 完成した魔法薬は、朗読劇として上演され、結末は会場で行われる最後の調合で変化します。師匠と一緒に登場人物を見守り、物語を紡いできたからこそ、より深いストーリー体験が味わえる朗読劇になっています。

 最初に師匠(上村さんは声の出演)が登場して、『物語の魔法屋 -写世の僕から現世の君へ-』の調合(選択結果)を振り返ることが出来ました。師匠自身も改めて自己紹介してくれたため、調合に参加せずに純粋に朗読劇として鑑賞にきた弟子の皆さんも“物語の魔法屋”がどんなところなのか分かりやすい仕組みになっていました。


 物語の舞台は、調合で選ばれた“架空洋風”の世界。

 高塚智人さん演じる青年ヴィアのナレーションで、物語はスタートします。物語を朗々と紡ぐ様子は、独特の存在感があり、タダ者とは思えません。

 しかも彼は、物語に干渉する不思議な存在・弟子たちの存在をうっすら気がついているようで……。彼が何者なのか、とても気になる幕開けです。


 沢城千春さん演じるノアは、元貴族の家に生まれた少年で、騎士学校に通っています。家の再興を望む親から過度な期待を背負わされたノアは、幼いころから友達も作れず、人見知りになってしまったようです。真面目で優秀なため、先生たちには認められていますが、生徒の中では浮いている様子。

 さらにノアは、親の望むまま騎士になっていいのか悩んでいます。まだ子どもと言っていい16歳のノアが孤独を抱え、家や将来のことで悩んでいる状態は切なく、見ていて胸が痛くなります。

 そんなノアにとって唯一の友達と言える存在が、山谷祥生さんの演じるリベルです。リベルは幼い頃に鏡越しに会っていた不思議な少年で、彼について話すときのノアは、本当に楽しそうで、大切な存在だということが伝わってきます。

 幼い頃のノアたちは鏡越しに友情を築きますが、ノアの親に見つかって家にある鏡がすべて壊され、それ以来会えなくなっていたのでした。


 そんなある日、ノアはリベルの声を聞きます。その声に導かれるように騎士学校の楽器庫に行った彼は、何者かの手に掴まれて鏡のなかに引きずり込まれて……。

 鏡の中に入ったノアは、成長したリベルと再会。リベルは幼い頃と変わらない優しい声や笑顔で、ノアを迎えてくれます。

 その微笑ましい様子を、ノアを鏡のなかに引きずりこんだ張本人・ヴィアは嬉しそうに見つめていて……。ヴィアは存在の主張は激しいですが、リベルも信頼しており、悪い人でもないようです。


 リベルとヴィアの家である、お菓子の家に招待されたノア。そこでノアは自分がいる場所が、リベルのためにヴィアが作った、鏡のなかにある写世(うつしよ)であることを知ります。

 写世はたくさん美味しいものが食べられ、景色も美しく、いつでも好きなときに眠れる、幸せが詰まった楽園。

 しかしお菓子の家に向かう途中、怪しげな声が会場内に響いており、安心安全な場所ではないことが示唆されています。

 離れていた時間を取り戻すように楽しく遊ぶノアとリベル、それを愉快に盛り上げるヴィア。

 遊んでいるシーンは、どれもコミカルで、微笑ましかったです。なかでも印象的なのが、「ノアとリベルが幼少期に一緒にやりたくてもできなかった遊び」という調合のときに選ばれた「かくれんぼ」のシーン。

 通常の「かくれんぼ」とは異なり、隠れた人が皆に聞こえるキメ声でキメ台詞を言って、ほかの2人に見つけてもらうという斬新な内容です。なお台本にセリフの指定はなく、アドリブでのお芝居になります。

 最初に挑戦したノアは「リベルが好きだよ」と言いますが、見つけてもらえません。最終的には、沢城さん自身が体験したハプニングを話して、会場を笑わせていました。

 2人めの挑戦者となるリベルは「ここは僕に任せて、逃げるんだ」など、王道のセリフを畳みかけるような勢いで話して、語彙力の豊富さにも驚かされました。トリになったヴィアは、かわいく「見つかっちゃった」と自分から見つかりに行く方向に! 三者三様の楽しいアドリブが楽しめるのも、生の朗読劇だからこその楽しさですね。


 写世でリベルと過ごすなかで、ノアは笑顔や本当の自分の気持ちを取り戻していきます。学校にいるときと写世では声の明るさが全然違って、沢城さんの表現力のすごさに圧倒されます。


 一方のリベルは、だんだんと影がある様子を見せて……。

 物語はノア視点で進んでいきますが、独白の形で、リベルとヴィアの事情も語られます。

 現世のリベルは重い病気を患っています。

 長年ベッドで生活していた幼いリベルは友達が欲しいと願うようになり、その想いが通じて鏡越しにノアと話せるようになったのです。

 リベルは頑張るノアの姿に憧れ、生きる希望をもらっていました。しかし突然の別れが訪れ、彼は泣いて暮らすようになるのです。


 リベルに救いの手を差し伸べたのが、長い間彼のことを見守っていたヴィア。なんと彼は子どもを見守る妖精で、ノアとリベルが鏡越しに会話ができたのもヴィアのおかげでした。

 リベルとヴィアは、再びノアに会える方法を探して、あと少しで会えそうなところまでたどりつきます。

 ノアにどうしても会いたい、でも別れの辛さをもう1度味わいたくない、そんな葛藤に苦しむリベル。最終的に会いたいという強い気持ちを我慢できず、リベルはノアを写世に呼んでしまったのです。

 何年も会えない大切な友達に、もしも会えるなら……。リベルのような行動に出てしまうのも、わかる気がします。

 そもそも悪いのは、リベルではありません。悪いのは、無理やり引き離したノアの親ですからね!

 ノアに対して、明るく朗らかに接するリベル。しかし彼も孤独を抱えていて、苦し気だったり、泣いていたり、繊細な姿を山谷さんは丁寧に演じられていました。


 ヴィアからは、リベルや守るべき子どもたちを本当に大切に、慈しんでいることが伝わってきました。でも妖精のためか考え方がややズレがあって、ノアに疑われることも……。そんな不思議なところも彼の魅力。高笑いなど芝居がかった面白い言動と、リベルを想うシーンの真剣な姿、そのギャップがステキでした。


 リベルから重い病気であること、どうしても会いたくて強引に呼んだことなど、彼の事情を聞いたノア。ノアは自分も会いたかった、写世に来たのは自分の意志だと告げて、2人の友情はますます深まります。

 一緒にいた時間は少なくてもノアとリベルの友情は本物で、離れていてもお互いを想う気持ちはずっと繋がっていたんですね。

 穏やかな時間は、鏡の世界の主である魔物の襲来で突如壊されます。鏡の魔物は子どもたちの魂が好物で、ノアやリベルを狙っていたのです。逃れる方法は、鏡の外の現世へ行くこと。

 現世まであと少しというところで、リベルの身体に限界がきてしまいます。さらにリベルは、自分の命が残り長くないため、現世に行っても意味がないと言って……。

 それでも助ける方法を見つけるからといって、一緒に現世に行こうと手を差し伸べるノアがカッコイイ! 彼に憧れるリベルが、その手を取るのも納得です。

 自分の願いに応えて現世に戻ることを決めたリベルに、ノアは騎士の誓いを立てます。親の希望で騎士を目指していたノアが、守るべきものを見つけ、自分の意志で誓いを立てるまでに成長したのは見ていて感慨深かったです。

 しかし、魔物に追いつめられて……。このあとの結末は、弟子たちの最後の調合によって変化します。

 物語の分岐点で休憩が入り、調合をやり直すことができました。

 ノアたちの心の動きをみたあとなので、より納得できるものを選べるのが嬉しいです。また、責任を持って物語を見届けようという気持ちになります。

 物語全体を通して、登場人物たちの名前や目、髪の色、ノアが鏡を見つけた場所、リベルの好きな童話、ヴィアの得意料理など、調合結果がしっかりと活かされていて関連するセリフが登場するたびにニヤニヤしてしまいました。そんな気持ちが味わえるのも、参加型朗読劇だからこその楽しさですね。

最後の選択は、「戦う」か「逃げる」か!


 最後の調合で選べた選択肢は、鏡の魔物に対して「戦う」か「逃げる」かです。

 昼の部では、「戦う」という結果に!

 ノアは戦う決意をしますが、鏡の世界の主である魔物を倒すことはできないとヴィアは言います。しかしヴィアいわく、「負けない方法」はあるようで……。

 写世と現世を二度と行き来ができないほど完全に切り離せば、鏡の魔物は二度と写世を見つけることができなくなるといいます。そのためには、強力な魔物に戦いを挑むくらい、強い意志が必要だというのです。

 二度と現世に戻れないと知っても、リベルといることを選んだノア。そんなノアを、ヴィアも友達として歓迎します。3人は写世で、永久に仲良く、楽しく過ごすのでした。

 こちらの結末では、最後にノアの弟であるファクトが登場。現世でノアを苦しめた両親が、その後どうなるのかを想像できる展開になっています。


 なお、夜公演では「逃げる」が選ばれました。こちらの場合は、現世に戻ったノアは騎士として立派に成長。長い年月を経て、役目を果たした彼は天寿をまっとうすることになります。そして死後の不思議な空間で、再びリベルとヴィアに再会し……。

 どちらの結末も、3人が絆を深め、相手を思いやったからこそたどり着いた結末で、見ていてシンミリしました。

 イベント終了後には、キャスト陣によるアフタートークが行われました。


 昼の公演が「戦う」という結末になったことについて、沢城さんは自分もそちらを選ぶと話されていました。

 ほかにも役への向き合い方など、貴重なお話を聞くことができ、楽しいひとときとなりました。

▲朗読劇に参加されたキャスト&アンサンブルの皆さん

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