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華佗を殺したのは曹操ではなかった? 果たしてその真相は…!?【三国志 英傑群像出張版#30-3】

文:岡本伸也

公開日時:

 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。

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 英傑群像出張版では、わたしが中国各地で集めた三国志武将の民間伝承の古書から、厳選して文章をまとめて紹介しています。

 今月は【曹操(そうそう)と華佗(かだ)】の二人に焦点をあてて紹介しています。

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 前々回は二人の繋がりの深さ、前回から彼らの民間伝承を紹介していますが、今回は民間伝承の続きとなります。

 前回のものもあわせて読むと、より楽しめますので、未読の方はぜひお読みください!

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その4:華佗の死の真実

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 華佗が曹操の頭痛を治した後、彼は曹操の陣営に留め置かれた。華佗はそのことを快く思っていなかったが、そうは言えなかった。

 ある日、曹操はとても嬉しくて、華佗を兵舎の外に誘って月光を楽しんだ。

 楽しんでいるうちに、華佗はあることを思いつき、曹操に言った。「丞相、知らないことがあるのですが、聞いてもよろしいでしょうか?」と。

 曹操は微笑みながらうなずくと、華佗は「家庭のこと、民政のこと、国家のこと、どれが一番気になりますか?」ぼそりと言い、話し終わると、まっすぐ曹操を見つめた。

 曹操はしばらく考えて、「一族は一、人民は多、国家は一、だからもちろん最も重要なのは民政と国事だ」と言った。

 華佗は「丞相は私一人の治療を任せた。世界は戦争、災害、苦難の中にあり、医療や薬の不足でどれだけの人が命を落としたかわからない。家庭の事、民政の事、国政の事がすべてここに並べられた今、何かおっしゃることがあるのでしょうか?」と返す。

 曹操は華佗の意図を理解し、半日熟考したのとにこう言った「私はただ私的な事であなたをここに置いているのであって、民政や国政のことは忘れていた。もし、私の頭痛の治療法を見つけられたら、故郷に帰してあげよう。」。

 華佗は曹操の言葉は言い過ぎではないと思った。彼は考えた。「丞相の作戦は人民と国にとって有益だ。もし彼が戦場で病に倒れたら困る。その根本的な原因を治さなければ、大変な災難になる」と。

 兵舎に戻った後、華佗はすぐには帰らず、昼も夜も書物を探した。そしてついに頭痛の処方箋を見つけた。

 しかし、処方箋の中に一つの薬があった。それは地下の棺桶の中の死体に湧く一種の虫“僵虫”。毒があり処方箋には“注意”とある。

 華佗はこの処方で曹操の頭痛を治すことにした。しかし、薬を煎じた後、曹操が毒に冒されてしまうのではないかと心配になり、自ら小さな器に薬を注ぎ、反応を見るために飲んだ。

 薬を飲んだ直後、華佗は腹部に激痛が走り、地面に倒れ込み転がった。華佗は毒があったことを知り、曹操を呼ぶともう声が出なかったので、薬の入った鍋を足で蹴り倒し、曹操に「飲むな」と伝え、間もなく死んだ。

 曹操は、華佗が自分のために薬の毒で死んだのを見て「私のせいだ。こんな薬など頼むべきではなかった」と叫んだ。

 曹操は華佗を手厚く埋葬するように命じ華佗を【医聖徳師】と命名し、華佗の妻とその家族に俸給を支給した。

 華佗は曹操の陣営で死亡し、曹操自身が華佗を悼んで涙を流したとき、「私はあなたに危害を加えてしまった」と言ったため、詳細を知らない人や曹操に不満を持つ一部の人は、華佗は曹操に殺されたと言い伝わった。

 これは曹操に対する不当な言いがかりであったのだ。

その5:華佗と曹操を暗殺


 ある年のこと、曹操が頭痛で食事もとれず、夜も眠れないほど苦しんでいたとき、長男の曹丕に頼んで華佗を呼びに行かせた。

 華佗は曹操の脈を診て、「延髄が腫れている。早く取り出してきれいにしないと命が危ない」と言い、小さな針を数本体に刺すと、曹操は数本の小さな針を刺す(鍼治療)とすぐに眠りについた。華佗は曹操の頭蓋骨を切り開き、頭蓋を持ち上げ、脳髄を取り出した。

 曹丕はそれが赤く腫れているのを見た。華佗は脳髄を薬水の入った箱に入れて浸し、箱をきつく覆って曹丕に言った。

 「12時間は開けてはいけない、さもないと脳髄が取り付けられず生き返れなくなる。」と。

 曹丕はこれを聞いて心変わりした。父は弟の曹植を寵愛し、その才能をよく褒めていたので、長男を廃して末っ子を立てようとしたのではないか? と考え先手を打って、密かに箱の蓋を開け、そして閉めた。

 12時間が過ぎたとき、華佗は蓋を開けに戻ってきて、中の延髄が黒くなっているのを見た。

 すかさず曹丕は、華佗が父親を殺したのだと言って彼を殺した。

まとめ


 いかがだったでしょうか?

 前回、そして今回紹介した5つの話は史実や三国志演義とは異なりますが、一部は史跡にまつわる話だったりする事もあり、すべてが嘘と否定できない気もしています。

 その4では、曹操が無実だったという曹操が良い人パターンは珍しい民間伝承でした。

 “弘法も筆の誤り”というべきか、華佗も失敗してしまうお話は華佗も普通の人だったのだなと思わせてもらいました。華佗もいっぱい試行錯誤し、努力しいろんな技を身につけたのだろうなあと想像させてもらいました。

 その5は華佗と曹操を殺す曹丕というびっくり話でした。曹丕ならやりかねない気もします。

 華佗が曹操の脳手術をやるものの失敗するという所は、結局手術をやっていてもこうなるのかというパラレルワールドを見た気分になりました。

 こんなに二人にまつわる民間伝承があるのは、ほんと珍しいです。まさに因縁の二人だったといえるでしょう。

 ご紹介できる民間伝承もそろそろ少なくなってきましたが、面白いものをさらに掘り起こしてご紹介できたらなあと思います。

 次回もお楽しみに!

桃園の智会 第8回は8/11(日)に開催!


 【テーマを決めて順に一言発言】というルールで、初参加、恥ずかしがり屋さんでも平等に楽しめる三国志交流会“桃園の智会 第8回”を8/11(日)に実施します。

 まだ少し先ですが、ご興味があればぜひ参加してみてくださいね。

桃園の智会第8回 開催概要
日時:8/11(日)16時~19時半ごろ
参加費:1000円(お茶、茶菓子付) 要予約
※学割アリ。100円引き
お問い合わせ:三国志ギャラリーまで(078-641-3594)

コラム未公開! 関羽の民間伝承パネル展示中


 春の三国志会で初公開した、本コラムで未公開の関羽の民間伝承が掲載されているパネルですが、こちらは引き続き展示を継続しております。

 7月末位までは展示しておくつもりですので、KOBE鉄人三国志ギャラリーのお近くに来られた際は、ぜひお立ち寄りくださいね!

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岡本伸也英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!

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