電撃オンライン

舞台『かまいたちの夜』ゲネプロレポート。紛れもなく『かまいたちの夜』最新作と呼べる素晴らしい内容でありながら、舞台でしか体験できない贅沢すぎる作品に!

文:カワチ

公開日時:

最終更新:

 1994年にスーパーファミコンで発売された『かまいたちの夜』を題材にした舞台『かまいたちの夜 ~THE LIVE~』の舞台挨拶とゲネプロが東京公演開始前日の6月19日におこなわれました。

 ここでは、ゲネプロを観劇したシリーズファンによる、本公演の魅力や見どころをネタバレ少なめでお伝えしつつ、囲み取材での出演者たちの意気込みもお届けします。

[IMAGE]

これは紛れもない『かまいたちの夜』!

 事前のインタビューにて、原作者・我孫子武丸さんから“キャラクターもストーリーもオリジナルなので、「こんなの『かまいたちの夜』じゃないじゃん」と思われるかもしれません”と聞いていた筆者はドキドキしながら舞台を観劇しましたが、その心配は杞憂でした。

 本作は1994年に発売された『かまいたちの夜』の舞台化ではありませんが、2024年に生まれた新作の『かまいたちの夜』であると断言できます。

[IMAGE][IMAGE][IMAGE]

 我孫子さんはオリジナル版の『かまいたちの夜』を作ったときに、コンピューターゲームならではの仕掛けを次々に取り入れられたそうですが、今回の舞台『かまいたちの夜 THE LIVE』は舞台ならではの仕掛けが多数用意されており、とても驚かされます。

 筆者もそれなりにいろいろな作品をチェックしていますが、本作はどんでん返しに至るまでのこまかい伏線が上手だったり、そんなトリックが何重にも張り巡らされているので、新鮮に驚くことができました。

[IMAGE][IMAGE]

 また、“どんでん返し”は人によっては冷めてしまうこともあるかもしれませんが、そこは実績のある演出家・野坂実さんの作品。

 繊細な部分は本当に繊細に違和感を仕込んでいて芝居の邪魔はしませんし、逆に大胆なところは大胆に演出するので、そのサプライズで一気に世界観に引き込まれます。

[IMAGE]

 その衝撃は初代『かまいたちの夜』を周回プレイしていてはじめてサブストーリーを見つけたときだったり、『かまいたちの夜2』で金の栞を隠したあとに突如として怪文が差し込まれたときの「な、なんだこれ!?」というワクワクや戸惑いの感覚にも似ていたかもしれません。

 しかも、ゲームの『かまいたちの夜』と同じように「次はなんだ!?」「まだあるの!?」といった衝撃が次々に襲ってきます。「こんなことやるのもありなの!?」と到達していく仕組みもお見事。舞台でしか見れないのが残念でもありながら、舞台でしか表現できないことを詰め込んでいく、そのスピリットこそ『かまいたちの夜』であると思えます。

[IMAGE]

 また、『かまいたちの夜』らしさも満載で、オリジナルのBGMが使われているほか、実写の背景と流れるテキストで状況が描かれる部分も多く、予想以上にサウンドノベルを楽しんでいる雰囲気が楽しめます。また、公演は観客参加型となっていて、配られるうちわを振って選択肢を選び、登場人物の行動を観客のジャッジで決めていくことに。

 物語を楽しむだけでなく、登場人物たちの未来を決めるプレイヤーのひとりとして、観劇するだけでは味わえない緊張感を体験できます。

[IMAGE]

 なお、公演まで明かされていなかったストーリーに関して、序盤だけ紹介すると、ゲーム『かまいたちの夜』のシナリオが再現されたシーンからはじまったものの、ノイズが走って暗転。続いてVRゴーグルを付けたメンバーが映り、じつはVR版の『かまいたちの夜』を制作中のメンバーであることが明かされるというもの。

 舞台はスパイク・チュンソフトが買い取った三日月館ということになっており、しっかりと『かまいたちの夜』シリーズと繋がった構成。

[IMAGE]

 このVRのゲームという設定が上手で、『かまいたちの夜』らしいシーンを役者たちがたくさん再現してくれます。また、透や真理、香山さんを演じていた人物もVRから元に戻れば別人。透役の伊月と真理役の小松はぜんぜんいい雰囲気ではないのでギャップがおもしろいですし(でも、軽くあしらわあれるところが『かまいたちの夜』の主人公らしくもあったり)、凄惨な死体だって現実には存在しないので、緊張する展開の開幕から一転、改めてキャラクターたちの和やかな会話が楽しめるのでギャップがおもしろいです。複数人のキャラクターを演じ分ける各役者の芝居も必見!

 そんななか、作業を進めるなかで不可解な出来事が起きたり、豊田陸人さんが演じる比企が意外な形で登場したりと、目まぐるしくストーリーが展開。現実とVRというふたつの視点で進行するだけでも引き込まれるものの、そんなものは余興とばかりに次々に驚きの仕掛けが!

[IMAGE]

 ここから先はどんなトリックが用意されているのか、ぜひ劇場で確かめてみて欲しいです。6月20日(木)から東京・シアター1010にて、6月28日(金)から大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演されるので、ぜひ足を運んでみてください!

囲み取材の模様をお届け!


 ゲネプロの前には囲み取材があり、ヴァサイェガ渉さん、豊田陸人さん、高柳明音さん、ドロンズ石本さん、塩月綾香さん、細貝圭さん、そして、構成・演出を手掛けるノサカラボ代表・野坂実さんが登壇。本作の稽古の様子や初日に向けての胸中を語りました。

[IMAGE]

 本作はマルチエンディングを採用しており、28通りのエンディングと、100通りを超えるシナリオパターンが用意されているとあって、ヴァサイェガさんは「大丈夫かなって緊張しています。ちょっとでも他のことを考えるとセリフが飛びそうで。毎日の稽古のなかで変化が生まれて、試行錯誤しながら作ってきました。やっと本番を迎えられるのが嬉しいし、いい意味で緊張しています」と心境を語りました。

[IMAGE]

 豊田さんも「緊張していてやばいです。ずっとセリフを言っていないと不安」と同意しつつ、「今はセリフや脚本がガッチリ固まったので80%は決まっています。残りの20%は初日の瞬間まで悩み抜いて、最後に役を完成させたい」と伝えました。

[IMAGE]

 また、ヴァサイェガさんと豊田さんは少年忍者のメンバー同士で、ヴァサイェガさんは「入所が同じタイミングの同期でずっと一緒にやってきたけど、外部の仕事を2人で一緒にやるというのは初めて。話し合うことがとくに大切な作品だったので、すごくやりやすかった」と稽古期間を振り返り、豊田さんもその意見に同意しました。

 野坂さんは実際に人が動いてみると上手くいかない場面が多かったことで、稽古に入ってから台本が60%くらい変わったことを明かしました。

[IMAGE]

 細貝さんは「長いこと、舞台の仕事をしていますが、初めての体験で、何回もキャパオーバーを起こしました。みんなで何度も話し合いを重ねるなかで、若い2人が本当に真摯に作品に向き合っている背中を見て、僕らも背中を押されました」とヴァサイェガさんと豊田さんの奮闘を称えました。

 また、石本さんも、「若いみなさんが膨大なセリフ量を頑張っているので、それをサポートしていきたい」と心強い発言をおこないました。

[IMAGE]

 高柳さんは「稽古ではスタッフさん数人の選択でルートを決めたり、あらかじめどのルートにするか決めたりして演じていました。本番ではお客様がどんなジャッジをして、誰に投票するか全然わからないので、ドキドキするし楽しみ」と見どころを語り、

 塩月さんが「結末が28通り、選択肢も含めたらルートが100通り以上。稽古でそれを一通りやったので、混乱しながらなんとかここまで漕ぎ着けた感じです」と苦労を語りました。

[IMAGE][IMAGE]

 最後にヴァサイェガさんが「ゲームの新たな動きも発表されたばかりの最高のタイミングでこの舞台が上演できます。ゲームファンの方もそうでない方も、舞台に来ているけどゲームをしているような楽しさを舞台で味わってもらえたら嬉しいです」と笑顔で意気込みを語り、会見を締めくくりました。

カワチRPGとビジュアルノベルが好きなゲーマーで、誰にも気付かれないようなマニアックな小ネタを記事に織り込むのが好き。深みのあるゲームが好きかと思えば、本当は肌色が多ければなんでもいいビンビン♂ライター。

舞台『かまいたちの夜 ~THE LIVE~』公演概要

あらすじ

とある場所に閉じ込められた『かまいたちの夜』の登場人物たち。

 「こんや、12じ、だれかがしぬ」という手紙が発見され、本当に殺人事件が起きてしまう。プレイヤーであるあなたはさまざまな選択肢を選びながら物語を進めていく……。

 でも、何かが『かまいたちの夜』とは違う? そして、新たな殺人事件も発生? いったい何が本当なのか?

 舞台ならではの仕掛けもたっぷりの本作で、あなたは真の犯人を見つけられるのか。

スタッフ
  • 原作:我孫子武丸
  • 構成・演出:野坂実
  • 脚本:望月清一郎

協力:スーパーエキセントリックシアター、スパイク・チュンソフト
主催・製作:NoSty(ノサカラボ/style office)

出演
  • ヴァサイェガ渉
  • 高柳明音
  • ドロンズ石本
  • 塩月綾香
  • 田中孝宗
  • 大髙雄一郎
  • 槙原唯
  • 谷口就平
  • 細貝圭
  • 安田裕
  • 豊田陸人
ほか

【東京】
期間:2024年6月20日(木)~6月23日(日)
場所:東京シアター1010
チケット料金(全席指定・税込):S席9,900円/A席9,000円

【大阪】
期間:2024年6月28日(金)~6月30日(日)
場所:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
チケット料金(全席指定・税込):一般9,500円

チケット
一般発売:5月29日(水)10:00~

    本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります