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『この世界は不完全すぎる』4話感想。あまりにも辛すぎるラストに言葉を失った衝撃回。このシーンを真正面から表現した制作陣の覚悟を感じた(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 TVアニメ『この世界は不完全すぎる』第4話“天野イソラ”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『この世界は不完全すぎる』第4話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

元アソビング社のデバッガー・アマノとの出会い


 第3話のラストで、Tポーズになっている見張りの村人と遭遇したハガとニコラ。ハガたちの疑いは早々に晴れたものの、爽やかにTポーズのまま去っていく村人たちがシュールすぎました。

 その村の中では、見張りだけではなく動物も含め村中がTポーズに。人間はともかく、猫がTポーズで飛行していくのは見慣れない光景なのもあって、新種のモンスター感がちょっとあります。

 そのバグは、ハガがデバッグストーンを使って報告すると一晩で修正されており、ログアウトできないにも関わらず、バグ修正だけは正常に行われてる様子。気になるのは、一体誰がバグを修正しているのかですよね。

 開発チームに何らかの目的があり、ログアウトできないバグだけをあえて無視しているのか、テスラのようなメタAI的な存在が自動で対応しているのか、どちらの可能性も十分ありそうです。

 そんな中、Tポーズのふりをしていた不審なフェザー種・アマノを発見したハガたちは、消えたアマノを追いかけて家の中に入り、家主のNPC・ルゥから怒られる一幕も。

 RPGだと、主人公たちが勝手にNPCの家に入ってタンスの中を漁ったりするのもよくありますが、どうもこのゲーム内でそれをやると普通に通報されて指名手配されそう。ただ今回のルゥの敵対的な態度については、帰ってきたアマノのただならぬ様子をみて、早く追い返した方がいいと察知したからな気もします。

 そのアマノは、2話でハガたちを襲った元アソビング社のメンバーで、社長たちと袂を分かった元デバッガーであることが判明。


 ちょっと興味深いのが、ハガが言及していた「NPCにあわせて自動生成されるサブクエスト」の存在です。いわゆるランダム生成のクエストは、最近のゲームでも普通に存在していますが、NPC固有の特別なイベントが自動で作られるのは、終わりがない無限の物語がゲーム内に存在しているということでもあります。

 一昔前なら、夢物語みたいな設定だと感じたかもしれませんが、ここ数年のAIの劇的な進化を考えると、そう遠くない内に近いことを実現するタイトルが出てくるんじゃないかと思えるくらいには現実味も感じられてワクワクしましたね。

アマノにとってあまりにも残酷なラストに思わず絶句……。


 アマノの漫画を読んでニコラが号泣するシーンは、あまりのニコラのガチ泣きっぷりに目が行きがちになりますが、ニコラが“漫画の内容を理解できる”ことにまず驚きました。

 物語を評価する能力が備わっているルゥが漫画を理解するのはわかりますが、本来のニコラはイベントで死ぬがNPCでしかないはずなんですよね。テスラと一つになったことの影響を受けているのか、それとも本作のNPCには元々そういった可能性も秘められているのか、どちらにしても今のニコラは限りなく人間に近い存在と言えます。

 ルゥとアマノの馴れ初めのエピソードもグッと来ました。ハガたちに漫画を見せるのを嫌がっていたあたり、おそらくアマノは現実では漫画を描いていることを隠して、一人で黙々と書き続けていたんじゃないかなと。

 そんな時に出会ったルゥは、初めて自分の漫画を面白いといってくれた存在になるので、NPCだろうと特別視してしまうよなぁと納得。自分も同じ立場だったら、アマノみたいにNPCを人間と同一視して入れ込んでしまうような気がします。


 とくに「ずっと漫画を最初に読む人で居続けたい」なんて、もう「毎朝味噌汁を作って欲しい」みたいな遠回しのプロポーズみたいなものですからね。

 本当は、“足が不自由な少女”という設定を与えられたNPCでしかないルゥの怪我を治せるポーションなんてものが存在する可能性は限りなく低いことも、アマノは薄々わかってはいるはず。それでも、彼女のために何かしてあげたいという想いが強かったのでしょう。

 しかし、そんな幸せは、ハガたちを探していた社長と酒井によって踏みにじられることに。もう上記のプロポーズのシーンからある種のフラグがビンビンで嫌な予感はしていましたが、アマノにとってあまりにも残酷すぎる結末がラストに待ち受けていました。

 とくにハガが瓦礫をどけた後の、ルゥの身体が映し出されるシーンは本当に容赦ない表現がされていて、度肝を抜かれました。深夜帯とはいえ、TV放送される作品でここまで描くことに制作陣のある種の覚悟を感じます。

 ルゥ本人よりも先に回りだけが完全に手遅れであることに気付く展開がまたキツい。アマノ役の川島零士さんの熱演も相まって、作中のニコラと同じように本当に「言葉が出ない」という状態に自分も陥っていました。唯一、ルゥ本人だけは願いが叶ったと思い込んだまま最期を迎えられたのが、せめてもの救いでしょうか……。


 ルゥの死を目の当たりにしたハガが、NPC殺害で受けるペナルティやゴア表現に思考を巡らせていたのは、一見場に場にそぐわない印象も受けるんですが、今回ハガ自身がアマノに言っていた、「仕事に没頭することで正気を保つ」行動の現れなんじゃないかなと。ハガにとってデバッグの仕事というのは、強いショックを受けた時の一種の逃避先のようなものでもあると考えると、よりハガに共感できるようになる気がします。

 3話では、テスラからのデバックストーン回収の頼みにあまり前向きではなかったハガですが、今回の一件でもう見て見ぬふりはできなくなりました。しかし相手は、一種のチートであるデバッグモードを容赦なく駆使してくるデバッガーの集団。デバッグモードを使わずにどう立ち向かっていくのか、今後も目が離せません。

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米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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