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『この世界は不完全すぎる』2話感想。デバッグ作業中のハガたちがどう見ても不審者。 デバッグモードを乱用した隅田の末路にゲーマーとしてゾッとする(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 TVアニメ『この世界は不完全すぎる』第2話“羽賀マコト”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『この世界は不完全すぎる』第2話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

街の人から不審がられるのも納得のデバッグ動作


 実は本作の世界はVRMMOゲーム『キングス・シーカー・オンライン』内で、主人公・ハガはログアウトができなくなったデバッガーであるという衝撃の事実が明らかになった第1話。

 ログアウトできない緊急事態にも関わらず、未だ律儀にデバッグを続けてバグの報告を続けている、超のつくバカ真面目なハガが、設定上絶対に死ぬはずのNPCの少女・ニコラが生き返ったというバグを報告しない選択を取ったのはちょっと意外なところでした。


 デバッグをする上では良い行動も悪い行動も試さないといけないので、NPCはただのデータとして扱わないと色々都合が悪そうですが、そのNPCに対しても情を抱いて接してしまうのは、デバッガーとしては結構致命的な弱点でもありますよね。

 ハガはあの村でのイベントを何度も繰り返してその度にニコラと交流を重ねていたようなので、尚更情が湧いてしまったのもあるんでしょうけど、人間の姿でほぼ同じような人間を何度もテストのために殺したりしないといけない時もあると考えると、VRMMOのデバッガーって現実のデバッガーとは違ったところで結構メンタルに来そうな気がします。

 またその後の、顔をこすり当ててながら、壁の判定がちゃんと設定されているかを確かめるハガたちのデバッグ作業を見て、周囲のNPCがドン引きしているシーンは個人的にツボに入りました。


 何も顔をこすりつけなくても、板のようなものを使うなどもう少しスマートな方法がありそうな気はしますが、デバッグで何度も操作キャラで壁に当たって判定あるか確かめる作業って、たしかに映像化するとこんな感じになるんだろうなと。

 我々視聴者の視点からするとなぜこんなことをしているかも分かるんですが、実際の光景として目にするとあまりにも不審者すぎます。ツボとかを割って回ったり、ゴミ箱を漁ったり、実際のゲームでもプレイヤーがとっている行動ってNPCからするとめちゃくちゃ怪しいんだろうなと改めて思いました。

早くも登場した同業者のデバッガー。おちゃらけた中に怖さを内包する酒井のキャラクターが良い


 そして第2話にして早くも、ハガと同じゲーム内に閉じ止められたデバッガーである酒井と隅田が登場。こういうVRMMOものの場合、主人公と同じ存在を出すのって物語としては転機みたいなタイミングになることが多い気がするんですが、2話からあっさり出てくるのが本作のすごいところ。

 その酒井、初登場がいきなりハガをナイフで刺してくるのでヤバい奴の印象が強いですが、そこから一転して仲間に誘ったり、言ってること自体は案外もっともだったりするのもギャップがあって面白い。

 実際、自分がもし同じ立場であればデバッグモードを使ってしまうと思いますし、間違いなくデバッグの仕事は放り投げている気がします(このログアウトできない期間、働いてないから給料もらえないという話にはならないでしょうし)。どちらかというと、まだデバッグを続けているハガの方が異常なところがあるんですよね。

 酒井役の谷山紀章さんの演技も印象的。谷山紀章さんといえば、ちょっとお調子者系のキャラのイメージが強いですが、その奥にある怖さというか、一見おちゃらけているけど怒らせるとヤバそうな雰囲気をちょいちょい覗かせるのがゾクッとします。


 一方、勧誘がうまくいかないことにしびれを切らした隅田は、デバッグモードを使ってハガたちを攻撃してきます。

 本来、高レベルじゃないと使えない大技をクールタイムなしで連発しているらしく、まともに戦っても勝ち目がなさそう……という絶体絶命の状況から、デバッグ作業で見つけていた判定がない地形を利用して逆転する流れはめちゃくちゃ熱かった!

 昼間のシーンでは何も異常はなかったと話していたので、追加でもう1周した時に見つけられた場所だったんでしょう。もしあの時、ハガがニコラに気を使ってデバッグを1周で切り上げていたらこの方法は使えなかったので、皆から異常だと言われるくらいハガが真面目にデバックしていたからこそ勝てたという構図になっているのが、非常に本作らしくて良いです。

 しかし、ハガはそこまで気にしていなかったですが、あの後隅田がどうなったのか想像すると無茶苦茶怖い。長年ゲームやってると、何もない空間に落ち続けるバグって結構な人が1回くらいは体験したことがあるんじゃないでしょうか。

 最近のゲームならファストトラベル画面を開いて戻れたりしますが、昔のゲームにはなかったので、もうゲームを落として再起動するしか方法がなかったんですよね。それができない場合意識があるかぎりずっと落下し続けるのではないかと想像すると……なかなかゾッとするなと。

 1日ずっと落下し続けるのを想像しただけでも、十分に気が狂いそう。自業自得ではありますが、なまじ状態が想像できる分、ある意味ホラーよりも怖い結末だったかもしれません。


 異世界モノの作品ではチート能力を主人公が持っているケースは多いですが、本作の場合チート能力にあたるデバッグモードを主人公が使わずに、敵がガンガン使ってくるという構図はなかなか新鮮。

 普段はともかく、今回のように追い込まれても頑なにデバッグモードを使わないのは何故なのか、そのあたりの理由が今後明らかになっていくのも楽しみにしています。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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