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『この世界は不完全すぎる』1話感想。王道ファンタジーと思わせてからの衝撃のラストがエグすぎた。あとから見返すといろいろな伏線に気付けて気持ちいい(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 TVアニメ『この世界は不完全すぎる』第1話“下働きのニコラ”の感想記事をお届けします。
【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『この世界は不完全すぎる』第1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

小さな辺境の村から始まる王道ファンタジー的な冒頭にワクワク

 7月5日(金)より、いよいよ放送がスタートしたTVアニメ『この世界は不完全すぎる』。『コミックDAYS』にて連載中の、左藤真通さんによるコミックのTVアニメ化になります。

 本作、いろいろと仕掛けが多い作品になっていて、ちょっとこの段階で言及するのは早いんですが、普段ゲームを遊ばれることが多い電撃オンラインの読者の方々には結構刺さる作品なんじゃないなと。自分も今回のアニメ化にあたって原作を読ませていただいたのですが、やはりゲーマーとして興味をそそられたり共感できる部分も多くて、めちゃくちゃ放送を楽しみにしていました。

 そんなアニメの冒頭は、本作のヒロイン・ニコラがホイモイドラゴンと遭遇するシーンからスタート。

 原作を読んだ時もまったく同じことを思ったんですけど、ホイモイドラゴンを見た時の「ドラゴン!?」というニコラの反応には「ドラゴン……? これが……?」と返したくなります。
 
 一見ちょっと目がガンギマリで怖いのですが、よく見ると結構愛嬌があってかわいかったり、なかなか奇跡的なデザインをしていると思います。もっとも戦闘になると本当の頭部みたいな部位が口の中から出てきて、そっちの姿は本当にキモくはあるのですが……。


 そして茂みの中から主人公・ハガも登場。ハガを見た時の第一印象は、めちゃくちゃゴツくて強そうな外見に反して、温厚で超のつく慎重な性格という見た目と中身のギャップがあるキャラクターだったのですが、1話を最後まで見終えると、見た目と中身がこんなに違う理由にこれ以上ないくらい納得できました。

 ニコラが住むのは、フェルナーク大陸内の小国・ベイル王国にある辺境中の辺境にある小さな村。こういう田舎の村から物語が始まるのは、まさに王道ファンタジーモノって雰囲気があってワクワクしますよね。

 その当のニコラは、変化のないいつも通りの日々に飽きはじめているようで、村の外からやってきた珍しい人間であるハガに興味を持ちます。

 筆者もド田舎の出身なので、こういう都会に憧れる田舎の若者のマインドみたいものに結構共感できるんですけど、ニコラの場合ホイモイドラゴンに遭遇したことすら、「いつもと違うことが起きた」とポジティブに捉えてるのがすごい。子どもならではの怖いもの知らずという面はあるにしても、この時点で普通の人とはちょっと違う度胸の片鱗みたいなのが垣間見えます。


 一方、これから起こる何かに備えて黙々と準備を進めているハガは、ホイモイドラゴンが再び村を襲いに現れたことを察知。この時のハガ、ちょっと尋常ではない焦りようで、単純に戦いが怖いのかなと最初思っていたんですけど、そうではないことが後に分かってきます。

 最後にニコラに対してかけた「“今は”君を死なせるわけにはいかない」という台詞も、ハガのなんとも言えない立場を暗示していますね……。

すべてがひっくり返る衝撃のラスト。ハガの心境を想像すると辛すぎる


 Bパートでは、単身ホイモイドラゴンへと戦いを挑むハガのシーンも描かれましたが、1話の戦闘シーンなのにとにかく絵面が地味なのが面白い。爆弾でよろけたところに弓矢でダメージを与えるのを繰り返す、一種のハメ技的な戦い方で、爆弾は当然ながら弓矢だってダダじゃないでしょうし、ものすごくコストパフォーマンスが悪そうです。

 しかしその作戦も一人では限界があり、ハガ自身も諦めてかけていたところ、ニコラに触発され余所者を嫌っていたはずの村人たちが手を貸し、一丸となってホイモイドラゴンを撃破するというまさに王道的な展開。無事に村は救われニコラも仲間となって、これから二人の旅が始まる……と誰もが思ったであろう矢先、本作の本当の物語の始まりとも言うべき衝撃シーンが待ち構えていました。


 実はハガの正体はVRMMOゲームである本作の世界のバグを探すデバッガーであり、その目的はホイモイドラゴンを倒すことではなく、その後に起こる村人の全滅イベントを確認すること。このラストに至るまでの各シーンで伏線がかなりしっかりと貼られているので「もしかして…」みたいな予想はあったんですが、それでも初めて原作でこの部分を読んだ時は、展開のエグさに度肝を抜かれました。

 しかもハガは、このイベントを何度も繰り返し見て、自分を慕ってくれるニコラが死ぬのを何度も体験しているんですよね……。たぶんニコラの役割って、プレイヤーにショックを与えるためシナリオ上絶対に死んでしまうポジションのNPCで、外に憧れているという設定もプレイヤーとの交流の取っ掛かりを作るためなのでしょう。


 見返してみると、ホイモイドラゴンとの戦いの最中に村人たちが助けに来てくれたシーンと、力をあわせてホイモイドラゴンを倒したシーン、どっちもハガが喜んでいる様子が一切なくて、村人たちに対する後ろめたさや、村人たちが全滅するのを黙って見届けなければいけない辛さなど、いろいろな感情がハガの中で渦巻いていたことが想像できます。

 個人的に、1話は最後のオチを知った状態でもう1回見直して完成する話だと思っていまして、改めて見返すと上記のように「あー!」と納得する描写がゴロゴロ見つかります。最初の方に触れた、ハガの見た目と性格がマッチしてない問題も、ゲームのアバターとプレイヤーならそりゃ全然違うものになるよなと。

 個人的に好きなのは、ハガがバグを報告するシーンで、紙に手書きでエクセルっぽいシートを自作してそれに記載していること。

 ハガ達みたいな本格的なものではないんですが、実は筆者もゲームのデバッグの経験が少しありまして、その時もエクセルで報告書を作っていたので、たぶんハガたちも同じようにしていたんだろうなと想像はすぐつくいたのですが、この後に及んでマス目を手書きしてまでその形式を踏襲する几帳面さは、完全に常軌を逸してます。


 まぁ「ログアウトできない」という異常事態になっても、まだ仕事としてデバッグを続けていること自体がおかしくはあるのですが、社会人として尊敬できる一方で、そこまでいくとちょっと引きそうになるレベルの真面目さが、ハガというキャラクターの面白い部分でもあります。

 しかしラストでは、死んだと思っていたニコラがなぜか生き返ってハガの元へ。超のつくバカ真面目なデバッガーであるハガが、死んだはずのNPCが復活するという“バグ”に遭遇した時、どういう選択を取るのか。2話の展開にも要注目です。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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