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【VTuberインタビュー】よろづ萩葉さんに古典のおもしろさを聞く。「それ書いちゃっていいの?」と思った『枕草子』がきっかけに

文:うご

公開日時:

 古典のおもしろさを伝えるために活動する個人VTuber・よろづ萩葉(しゅうは)さんへのインタビューをお届けします。

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 YouTubeチャンネルでは、古典の雑学などを語る動画をはじめ、教科書に掲載されている古文をアニメで解説する授業動画を投稿。また、ゲーム配信や朗読、雑談配信などを行っています。

 本記事では、よろづ萩葉さんの自己紹介をはじめ、古典にハマったきっかけ、これから古典を楽しむためにおすすめの作品、今後の目標などを語っていただきました。

よろづ萩葉(しゅうは)2018年11月12日デビュー。奈良〜江戸時代の古典文学や歴史に関する動画のほか、ゲーム配信や朗読、シチュボなど好きなことを配信中。

古典に興味を持ったきっかけは『枕草子』。「文学を読むだけではわからない背景がおもしろい」と語る古典の魅力

――まず、自己紹介をお願いします。

よろづ萩葉です。古典VTuberとして活動していて、今年(2024年)で6年目になります。古典好きの方と古典のおもしろさを分かち合ったり、古典にあまり詳しくない方、苦手意識がある方に古典文学のおもしろさや魅力をわかりやすく伝えるために活動しています。

動画投稿がメインですが、最近は配信活動も増やしています。配信では、リスナーの方々と「古典っておもしろいよね」と会話を楽しんでいます。

――そもそものお話になりますが、古典に興味を持ったきっかけを教えてください。

最初に『枕草子』の現代語訳を読んだときに、1000年前の作品なのに現代でも共感できることが書かれていたことに感動しました。

ほかにも、「それ書いちゃっていいの?」って思うような、人の悪口とかが書かれていたのがおもしろくて(笑)。なので、それが興味を持った最初のきっかけだったと思います。

――そうだったんですね。そこから、ほかの作品を調べたりしたんですか?

そうですね。最初は『枕草子』の作者である清少納言がなんで書いたんだろうとか、その時代や人間関係を調べました。

調べていくうちに、文学を読むだけではわからない背景がおもしろくて、歴史を物語みたいに楽しんでいました。そこから、ほかの時代も調べていって、古典への興味が広がっていきました。

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――ちなみに、とくにお気に入りの人物はいますか?

やっぱり清少納言が一番好きですね。あとは、百人一首の撰者である藤原定家も好きです。

――最初に読んだ『枕草子』から、変わらずに清少納言が好きなんですね。理由はなにかありますか?

清少納言は中宮定子という人物に仕えていたのですが、『枕草子』はその人のために書いたと言われています。背景を知って、主従愛といいますか、そういったことが美しいなと思い、好きになりましたね。

――では、古典以外に好きなものはありますか?

古典に付随して日本史も好きですね。

――日本史は、古典とは切っても切れない関係ですよね。

そうですね。動画のなかでも、日本史の話なのか古典の話なのかとわからなくなるくらい関係性が深いと思います。でも、どこから興味を持って調べていけばいいのかわからないので、世界史はちょっと……。

――昔のローマ帝国史を調べますと、似た名前の人物がたくさん出てきて、わからなくなりますよね。

すごいわかります!ただ、日本史や古典関係でも藤原ばっかりだと言われたりもするので、どっちもどっちなのかなって(笑)。

日本史が好きでも、名前を覚えるのはなかなか大変だなと思いますね。

――古典は一生楽しめる趣味のような面もあると思うので、よろづ萩葉さんが活動されているモチベーションもそこから来ているのかなと感じました。

たしかに6年活動していますが、次から次へと作りたいものや調べたいものが出てきますし、なにかしら常に追われているので終わりがないと思います(笑)。

古典のルールは、現代のライトノベルの設定と似ている?よろづ萩葉さんが感じる『光る君へ』の影響

――では、ここからは古典について話をお聞きしたいと思います。古典はどのように勉強していますか?

学生のときには理系を選択していたので、古典や日本史などを専門的に学んだことがないんです。なので、趣味で研究者の本などを読んで、そこから興味を持って調べるようになりました。

――そうなんですね。研究者の本を読まれているとのことですが、どのような本や文献を参考にしているのですか?

研究と言っても、研究書のような専門的な本はあまり読んでいません。最近は『光る君へ』(※)の影響で『源氏物語』関係の本が出版されていて、ドラマの時代考証をされている方が書かれた一般向けの歴史研究の本があるので、そちらを読んでいます。

※2024年1月7日より放送中の大河ドラマ。平安時代中期の貴族社会(平安貴族)を舞台に、『源氏物語』を執筆した紫式部の生涯を描く。
――たしかに『光る君へ』の影響は大きそうですね。ほかに古典関係で注目されているコンテンツはありますか?

『光る君へ』では『源氏物語』が注目されていますが、『太平記』の話を元にしたTVアニメ『逃げ上手の若君』(※)が放送開始されたので、『太平記』にも注目されている印象がありますね。

あとは、藤原定家の直筆による古今和歌集の注釈本が京都で新たに見つかったニュースがありまして。そのニュースでは、“国宝級の発見”だと言われているので、界隈でも結構盛り上がりましたし、その影響で藤原定家にも注目が集まっている印象があります。

※『週刊少年ジャンプ』にて連載中の松井優征さんによる漫画作品。TOKYO MX・BS11ほか全国30局にて2024年7月6日よりTVアニメが放送中。
――それは大発見ですね!最近はTVアニメや大河ドラマの影響で古典文学が親しみやすくなってきたかと思います。よろづ萩葉さんはどのように感じていますか?

やっぱり、書店などに行ったときに、一番目立つところに『源氏物語』のコーナーが設置されているのをよく見ます。なので、世間的にも古典への興味が高まっているように感じていますね。

――古典は年代も作品数も幅広いですよね。そのなかでも、これから興味を持った方、勉強してみたいなと思っている方におすすめの作品などはありますか?

僕が個人的に好きという理由もありますが、やはり『枕草子』がおすすめの文学です。長編小説ではなく短編集みたいな作りになっているので、一部分だけ読んでも楽しめますし、初心者でもわかりやすいと思います。

内容も日記のようなものから、おもしろいものや苦手なものが書かれていたりするので、現代でも共感性が高いかと。古典文学と聞くと、難しいものといったイメージがあるかと思いますが、実際は初心者の方でも触れやすいと思うので、おすすめの作品です。

――おお、興味が出てきました。時間があるときに読んでみようと思います!

ぜひ読んでみてください!

――個人的な興味の質問になってしまいますが、古典では和歌などを詠まれている作品が多く、注釈がないと難しい表現が出てくると思います。よろづ萩葉さんは、自分で調べて解釈をされているんですか?

調べないとわからない作品が多いので、調べますね。

専門家の方は調べなくても理解できると思いますが、現代の人たちが和歌の内容を理解しようとすると、どうしても調べないと難しい言葉や表現が出てくるので、難しいと感じると思います。

ただ、その時代によく使われていた表現が結構あるんですよ。現代の短歌は、自分の気持ちを素直に詠みこむか、もしくはその人ならではの歌が好まれます。でも、昔の和歌は、如何に型に則るか、ルールに則って美しいものを詠んでいるかが好まれる傾向にあります。

なので時代にもよりますが、時代によってよく使われている表現は調べなくても次第に意味がわかるようになっていくかと。

――年代によって、流行った言葉や表現があるんですね。

そうなんですよ。たとえば平安時代初期につくられた古今和歌集と、鎌倉時代初期につくられた新古今和歌集では表現の仕方が結構違っていて。同じような時代の歌だと似たような表現が出てきたりします。

――そうなんですね。時代が移り変わっていくにつれて、すこし崩すのがオシャレになっていくとかもあったんですかね?

そうですね。流行はあったと思います。

ライトノベルの設定で人気の設定があるとか、そういった感じだったんじゃないかなと。

――最近の異世界ものの流行に近いところを感じます(笑)。

たしかに似ていると思います(笑)。

――そのあたりの表現にも注目すると、より楽しめそうですね。YouTubeを拝見しましたが、神社などにも行かれていて解説をされていましたね。旅行もお好きなんですか?

はい。旅行をしていると日本史関係の場所があったりするので、そういったスポットを巡ったりするのも趣味です。なので、活動の一環として取り入れていて、最近は観光関係の動画も投稿している感じです。

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――これまで巡った場所のなかで、お気に入りの場所やおすすめスポットはありますか?

やっぱり古典が好きなので、京都が好きですね。なので、京都の神社や仏閣巡りはしています。

なかでも、この間投稿した下鴨神社は有名な場所ですが、森に囲まれていて静かな場所だったので、お気に入りの空間でしたね。

歴史のあるコンテンツだからこそ、悩む動画作り。学校で動画が使われた実績も

――ここで話がガラッと変わりますが、最近はなにかに特化型のVTuberの方が増えてきていますよね?

そうですね、最近は増えている印象があります。

――よろづ萩葉さんは、夏休み科学Vtuber相談室(※)にも参加されていますが、専門知識を持っている方々の話を聞ける企画はおもしろいですよね。

科学相談室のメンバーには本当の研究職の方もいますし、いろいろなVTuberもいるので、いい企画だと思っています。

※身近な疑問に博士号持ち、研究者などのさまざまな専門家バーチャルYouTuberが動画で回答してくれる企画。
――そうですよね。答えられない質問があるのかなって思います(笑)。

本当になんでも答えられると思います(笑)。

――どのような回答動画が公開されるのか楽しみにしています! ところで、動画を高校の授業で活用してもらったとお聞きしました。どういった経緯で活用されたのか、教えてください。

活動の一環として、高校の教科書に載っている内容の解説動画を投稿しているのですが、授業でその範囲を習った生徒からコメントで「授業で先生が見せてくれました」と教えてくれました。

自分で作った動画のことですが、すごいなって感動しちゃいましたね(笑)。

――でも、実際にすごいことだと思います。

学校の先生が活用してくださるということは、内容としてもそれくらいのレベルの動画が作れている自信にもなりますので、純粋にうれしかったです。

――そうですよね。わかりやすいからこそ、活用されたと思います。これまで6年間活動されてきて、楽しかったことやうれしかったことを教えてください。

動画を見てくださった方から「古典が全然好きじゃなかったけど、古典に興味持つようになった」とコメントをいただくと、やっていてよかったなって思いますね。

――自分が好きなことを周りの方が一緒に好きになってくれるのはうれしいですよね。

そうですね。やっぱり、古典はあまり人気がない科目ということもあり、そのおもしろさを伝えたいと思っています。また、古典界隈が盛り上がってほしい気持ちもあるので、自分の動画で興味を持ってくれて、そこから古典への興味がどんどんと広がってくれたらうれしいです。

なので、まず1人が好きになってくれたことが第一歩といいますか、自分が活動している意味だと思うので、本当にやっていてよかったなと感じています。

――古典への興味の輪が広がったらいいですね。逆に、ここまで活動してきて大変だったことはありますか?動画を作られているので苦労などもあるかと思います。

古典の話は、平安時代の文学だと1000年前のことなので諸説あるものが多いです。たしかなことはわかっていない、でも有力な説はあるみたいな感じなので動画を作るときは悩むことが多いですね。

有力な説だけを紹介するのも正しいわけではないですし、だからといって諸説をすべて紹介するとキリがないので選別が難しいです。あとは、動画を作ってから「あの説も入れたほうが良かったな」みたいなことを感じることも多いですね。

――とくに、歴史系を取り扱っていると大変だと思います。選別もしないといけないですし、なによりガチ勢もいらっしゃるので……。

やっぱりコメントもいただいたりしますし、いろいろな方がいらっしゃるので、難しいところですね。

でも、好きな説は入れたいなと思っていて、動画を見てくれている方の好きな説もあると思うので、できるだけカバーしたいと思っています。

――あっちを立てればこっちが立たずみたいで、相当大変なことをされているんだなと感じました。加えて、よろづ萩葉さんはイラストやモデリングも全部ご自身でやられているんですよね?

そうですね。動画は慣れているので楽に作れますが、絵は習ったこともないですし、絵がそこまで描けるというわけではないですし、いろいろと調べながら書いていますね。

でも、モデリングが1番大変で。実は今も少しずつ改善しつつ、アップデートをしています。

――ちなみに、モデリングはどのくらい時間がかかるんですか?

結構かかりましたね。

現在、動画などで見せている姿が3回目のアップデートをした姿ですが、1回目のときは時間が結構かかっていました。使用しているLive2Dの公式がわかりやすい説明動画をあげてくれていましたが、全くわからない状態から始めたので慣れるまでが大変でした。

――大変でも、古典の魅力を多くの人に伝えていきたいからこそ、VTuberとして頑張るモチベーションになりますか?

そうですね。好きなことだから続けられているんだろうなと思います。

「学校の授業だけで嫌いにはならずに、古典の裏側も一緒に知って好きになってもらいたい」

――これからチャンネルを見にくる方に向けて、アピールポイントがあれば教えてください。

古典は学校の授業で文系に限らず理系でも習う科目ですが、どうしても苦手な方が増えてしまっていて、一番苦手だと感じている人も多くいると思います。

それは、授業で助動詞を覚えなきゃいけない、古語を覚えなきゃいけないといった辛い記憶があるからじゃないかなと。ですが、そういったことではなく、この文学はどういう内容なのか。作者の気持ちや書かれた時代背景を好きになってもらえれば、苦手な方でも古典を楽しんでもらえると考えています。

学校の授業だけで嫌いにはならずに、古典の裏側も一緒に知って好きになってもらいたい。そういったことを新しく見に来てくれる方に伝えていきたいですね。

――動画や配信で注目してほしいポイントはありますか?

全体的に古典関係の動画や配信が多いので、興味がある方にぜひ見に来てほしいです。

動画では古典の解説系などの難しい話をしていますが、配信ではできるだけしないようにしています。なので、詳しいことを知りたい方は動画を、そこまで専門的な知識がなくても古典を楽しめるような話、古典オタクの語りが聞きたい方は配信を見に来ていただければと思います。

あとは、お便りを募集して僕が30分間お話しするラジオのような配信も始めました。

僕の声が眠りやすい声だと言われているので、睡眠導入剤のような配信や朗読などの配信を増やしているので、気になった方は見に来ていただければうれしいです。

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最近の配信では和風のゲーム配信もしていますので、こちらも興味があればぜひ覗きにきてください。

――動画は一時停止などして、ゆっくり見られるのでいいですよね。和風のゲームを配信でプレイされているとのことですが、古典知識を持っているとおもしろかったなと感じるゲームなどはありましたか?

つい最近まで『大神』をプレイしていましたが、神話がもとになっていたりしたので、『古事記』などに詳しい方は楽しめそうだと感じました。

ゲーム自体もボリュームもすごかったですし、すごく楽しめました。

――『大神』は名作ですので、プレイされたことのない方は遊んでほしいですね。では、直近の目標や今後やってみたいことなどはあれば教えてください。

つい先日チャンネル登録者数5,000人を突破したので、次は10,000人を目指してがんばりたいです。それから、9月に京都の観光マップみたいなものを作りたいなと思っています。

今まで配信では何回か同じような企画をしていたんですけど、改めて印刷ができる形で一緒に楽しめる地図を作り、聖地巡礼のように古典にゆかりのある場所を巡れるものを作りたいなと思い、現在動いています。

――ガイドマップを持って思いを巡らせながら旅行したらおもしろそうですね。

ありがとうございます!

今までは、動画をメインにYouTubeの活動をしていましたが、YouTubeでは一部の方にしか届けられないので、今後はYouTube以外の場所でも活動したいなと思っています。

――素敵な目標をありがとうございます!最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

古典をお好きな方はもちろんですが、古典にまったく興味がない方でも、ゲーム配信や朗読、ラジオ配信などいろんなことをしていますので、ぜひ一度覗きにきていただけたらうれしいです。僕と一緒に楽しい時間を過ごしましょう!

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