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『サイレントヒル 2』リメイク版の開発裏話。岡本基Pが明かす、このリメイクの意義とは?【インタビュー】

文:シュー

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 KONAMIが10月8日に発売予定のPS5/PC(Steam)用サイコロジカルホラーゲーム『SILENT HILL 2(サイレントヒル 2)』。その世界最速試遊体験会が東京で行われました。

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 世界各国からゲームメディアが集まり、一同に恐怖を体験してきた(?)試遊会では主要制作陣が登壇。本記事では、さまざまな質問に対して回答いただいたものをまとめています。

原作に対する深い愛情と敬意。端々から愛が伝わる制作トーク


 登壇したのは『サイレントヒル』シリーズのプロデューサーを務める岡本基氏、コンポーザーの山岡晃氏、コンセプトアーティストの伊藤暢達氏の3人。そして開発を行ったBloober TeamからはクリエイティブディレクターのMateusz Lenart氏、リードプロデューサーのMaciej Głomb氏の2人が集まりました。

――岡本さんに質問です。今回、オリジナル作品に関わっていた山岡さん、伊藤さん2人と制作してみていかがでしたか?

岡本:『サイレントヒル 2』は非常に長く愛されてきて、考察もユーザーさんがとてもたくさんしてきたタイトルです。オリジナルを知るお2人と仕事をすることによって、設定を掘り下げて作ることができて良かったと思います。

――素晴らしいサウンドに感動しっぱなしでした。新たに書き下ろされた楽曲はあるのでしょうか?

山岡:曲は全曲書き直しています。オリジナルの曲をパーツで使っていますが、基本は全曲アレンジしています。トータル9時間の曲数に登るので……サウンドトラックをどうしようかと悩んでいる最中です(笑)。

 25年前の音楽がすごく愛されていて嬉しいのですが、新しい『サイレントヒル 2』ということで、新しさやこのゲームを初めてやる人に感動や興奮を感じて欲しいなと思い、オリジナルを使いつつも全曲変えました。

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――リメイク版に登場するクリーチャーについて。原作との違いはあるのでしょうか。

伊藤:基本的にはバトルデザインに関係する、微妙なビジュアルの違いがあります。

 また、ある人物のストーリー的に「当時こうしたら良かったのにな」と感じた部分は、クリーチャーに新たに反映しています。原作と比べるとはっきり分かるのですが、そういったリメイク版とのビジュアルの違いも考察して楽しんでいただけたらなと思います。

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――開発会社として、とくに皆さんに注目してもらいたいポイントはありますか?

Mateusz:まず我々は原作の『サイレントヒル 2』に対して深い愛情と思い入れがあります。今回の作品では、ゲームプレイ全体のレベルデザインからあらゆる要素を非常にうまく煮詰め直して、ゲーム体験全体が成立するように、コンバットデザインから探索要素まで一体感のあるゲームプレイとして成立するように目指しています。

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Maciej:先ほど語られたことが完璧で付け加えることはほとんどないのですが、試遊している様子を会場を歩いて観察する中で、制作サイドではない外部の方がどのような反応をしているのか、新鮮なゲーム体験をどのように堪能しているのかを、間近で見られるのは制作の立場として非常に知見が得られたと思います。

――今回、Bloober Teamを選んだ理由はどこだったのでしょうか?

岡本:『サイレントヒル』シリーズをリブートするにあたって、世界中のスタジオが候補に上がりました。その中でもやはり同シリーズへの愛情の強いチームにお願いしたいと思い、いくつかのチームの中から私が実際にBloober Teamを訪ねて、そこで確信を得たので選びました。

――オリジナル版と比較してプレイのテンポ感、感触が良くなっていたのですが、このあたりの意識はされたのでしょうか?

Mateusz:難しい判断ではあったのですが……原作はかなり序盤が間延びしていたので、序盤の部分は今どきの作品らしく盛り上がりを加える方法も検討されていました。

 ですが最終的には、原作の状況や雰囲気を尊重しつつ、現在のペースを変更したものに落ち着きました。

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――『サイレントヒル』シリーズの未来において、今回のリメイク版はどのような存在になるのでしょうか?

岡本:『サイレントヒル 2』が皆さんにとっての『サイレントヒル』シリーズのクオリティのスタンダードであったり、思い出のベースだったりすると思います。今作を自信を持ってお届けすることで、ファンの皆さんにその他のすべての『サイレントヒル』シリーズのクオリティを保証し、KONAMIが自信を持って送り出していきますよ、ということをお伝えしたいと思います。

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――完全に同じものは作りたくはない、変えたくない、とおっしゃっていました。開発チームと意見を戦わせた部分もあったのでしょうか。

岡本:スタート時点でいうと、クリーチャーのデザインを一から変えようと議論をしたこともあります。サウンドに関しても新しい方向性を作ろうとしていました。

 リメイクですが新作になるような想いで作っていたので、とくに最初は大胆な意見が多かったです。新作の『サイレントヒル』としての議論をしたこともあります。

Maciej:さまざまな意見がありました。原作から一切変えない案もあったのですが、現代の市場で通用する作品に、という思いもありましたので。議論を重ねた結果、変更を模索して現在の形に落ち着きました。

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――主に山岡さん、伊藤さんにお聞きします。リメイクに携わってみて、いかがでしたか?

山岡:セルフカウンセリングと言いますか、音楽やゲームを作る前の気持ちですね。自分の25年前の生き方や、どんな生活をしていたのかという思いを持ちながら、リメイク版に挑みました。

 ただ、結果として思い出せなかったんです。自分が何を考えて『サイレントヒル 2』に挑んだのかを思い出せなくて……そういう問答との毎日だったので苦しかったですね。

 というのも、音楽作りの深い所になりますが、25年経過して「本作が大好きな人たちにも、新しく遊ぶ人たちにも良い作品として受け入れてもらいたい」という部分に対し、自分はどういうことをしなければならないのかと考えていました。

 当時を振り返ると、実はいくつかの楽曲にベースが入ってないんです。お金がなかったので、ギターのチューニングを下げてベースの代わりにしていました。そういうすごくギリギリな感情、オリジナルを作るときの「世の中に受け入れてもらいたい、尖ったものを作ってるんだ!」というエッジのある気持ちや葛藤を忘れていたんですね。なので、そんな懐かしさと当時の強い感情を思い返していました。

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伊藤:僕は最初、2019年頃に岡本さんから『サイレントヒル 2』のリメイクに参加してくれないかとのDMを貰いました。その時点ではオリジナルをリブートする必要はまったくないと思っていたので、断ろうと考えていましたね。

 ただ、参加しないでまったく違う方向性に行ってしまうのであれば、参加してストーリーテリングだったり、『サイレントヒル2』コアファンとしての軸は引き継ぐために尽力しよう、との思いで参加しました。

 私の想いはKONAMIさんだったり、Bloober Teamとはまた違っていると思いますが、『サイレントヒル 2』をまだ遊んだことのないプレイヤーに対して、原作のインパクトをどうやったら当時作ったよりもブラッシュアップして伝えられるか……ということに個人的な力点をおいて参加していました。

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