日本一ソフトウェアは、Switch/PS5/PS4/Steam用RPG『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』のGlobal Press Conferenceを9月26日13:00より開催。この発表会に登壇した1人で、本作の開発責任者を務める細野裕矢氏へのインタビューを行いました。
この記事では、このインタビューの内容を掲載してきます。
日本一ソフトウェア
開発一部 制作一課
チームリーダー
細野裕矢氏
『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』の開発責任者を務める。過去に『void* tRrLM2(); //ボイド・テラリウム2』の開発責任者を担当。
『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』開発者インタビュー
続編制作のきっかけはアメリカのキャラクター人気投票?
──『ファントム・ブレイブ』の新作が20年以上もの時を経て制作されることになった経緯からお願いします。
やっぱりそこが気になりますよね(笑)。まず、きっかけとしてはアメリカのほうで日本一ソフトウェアのキャラクターの人気投票を開催したことです。そのとき、弊社のタイトルはアメリカでいくつも出していましたが、まあ上位は『魔界戦記ディスガイア』シリーズのキャラクターが占めるんだろうな、と思っていました。ですが、フタを開けてみると『ファントム・ブレイブ』のキャラクターが『ディスガイア』よりも上位に入ってまして。
この結果を見て、正直意外ではあったんですけれど、「20年前のタイトルであっても、マローネたちの活躍を望んでいる方々がいらっしゃるんだ」ということを思い知らされました。弊社のアメリカの子会社であるNIS Americaからも、「どうにか動かしてみませんか?」と相談されたこともあり、日本のほうでも根強いファンのみなさんがいることは把握しておりましたので、「じゃあやってみましょうか」という感じに企画がスタートしたんです。
それに、弊社には『ディスガイア』という主力タイトルがありますが、それに並ぶようなIPをもう1つ作りたい、という思いを長く抱いてましたので、そういった意味でも『ファントム・ブレイブ』の新展開をスタートさせるタイミングとしてはよかったのではないかと思います。
──この20年の間に、『ファントム・ブレイブ』の続編を作ろうという動きはなかったのでしょうか?
これが、本当になかったんですよね。他ハードでのリメイク作品は何本か出していて、Wii版で外伝シナリオを追加したものを出せたりはしたんですが、続編となるとどうにも。オリジナル版が20年前の作品ということで、当時制作に参加していたスタッフが今ではほとんど残っておらず、動きにくかったというのも理由ですね。
そんな状況から20年ぶりの新作を作るということで、スタッフは戸惑いましたし、ユーザーのみなさんも戸惑ったと思います。実際、本作の制作を発表したときの、記者のみなさんのどよめきっぷりといったらなかったですよ(笑)。
──『ファントム・ブレイブ』というと、オブジェにファントムを憑依させる“コンファイン”をはじめ、特徴的なシステムが多数実装されていましたが、それらを本作に甦らせることになった際、とくに注意した点、力を入れた点などがありましたら教えてください。
“コンファイン”などは、『ファントム・ブレイブ』を代表するシステムで、非常に面白い要素ですから、当然本作でも採用しています。
ただ、20年前のゲームということで、操作性などけっこう不親切に感じる部分が多いんですよね。そのあたりは古参のファンの方が違和感なくプレイできるように、今のユーザーのみなさんにもとっつきやすいように、そのあたりのフォローは手厚くやろうと思いつつ作っています。
──具体的にはどんな部分にフォローが入っているのでしょうか?
細野:『ファントム・ブレイブ』は描画回りがけっこう見づらかったりするんですよね。たとえば一部のオブジェに“プロテクション”という特殊効果が付与され、それがほかのオブジェやキャラクターにも影響を及ぼすのですが、これがどことどこがつながっているのかなどがわかりづらかったので、ぱっと見でわかるように修正しています。ほかにも操作性で煩雑だった部分を改善したりと、いろいろと手を加えていますね。
個性的な仲間を増やしていくために選ばれた“海賊”というテーマ
──ストーリーについてお聞きしたいのですが、本作で“海賊”というものをテーマにしたのはどういった狙いがあるのでしょうか?
『ファントム・ブレイブ』は、おばけ島で暮らすマローネがパートナーのアッシュとともに、クローム(請負人)としてさまざまな依頼に挑んでいく物語ですが、ここに新しい仲間を追加するのはなかなか難しい設定なんですよね。
『ファントム・ブレイブ』は今後シリーズ化の流れを作っていきたいという思いもあり、その際にいつまでもマローネとアッシュのコンビだけというのも展開に広がりがありません。ですから、今後につながる土台、具体的にはより多くのキャラクターを出しやすくなるようなシチュエーションを本作で作っておきたくて、そうして出てきたのが“海賊”という設定です。
“海賊”というとやっぱり、広い世界を冒険していく存在ですし、人間的にクセのあるキャラクターが集まっているイメージなので、こちらの狙いに合致したわけですね。
──『ファントム・ブレイブ』のシリーズ化という話をされましたが、本作には『ファントム・ブレイブ2』のようなナンバリングがなされていません。これはどういった理由があるのでしょうか?
じつは、企画の初期段階ではナンバリングがついていました。ですが、20年ぶりの続編なのに『2』と付けてしまうと、ユーザーのみなさんに「『1』もプレイしないといけないの?」という考えを抱かせかねませんし、社内でも長期間に渡って議論があったんですよ。
最終的にはナンバリングをはずすことにして、『1』をプレイしていない方でも安心して遊べるようなストーリー、キャラクター、システムを作り上げようという覚悟を決めて制作を進めていきました。そういう理由で本作は『幽霊船団と消えた英雄』というサブタイトルを付ける形式になっています。
魅力的な新キャラクターたち。前作とのつながりもあり?
──本作の新キャラクターたちのコンセプトや見どころについて教えてください。
最初から話は脱線しますが、本作はCERO審査でAを狙っていたんですが、実際はBになりました。これは一部のキャラクターのビジュアルがセクシー過ぎたのが原因のようです。ヘンナとかメイフェアとか。キャラクターデザインの原田たけひとさんの筆が乗りすぎましたね(笑)。まあ、CERO審査は上がってしまいましたが、そのぶん魅力的なビジュアルになったので結果オーライかと。
ビジュアルもそうですが、キャラクター1人1人がクセのある、個性的な人物ばかりですね。出会い、仲間になり、一緒に冒険をしていくなかで、それまで知らなかった一面が見えてくるようなことも多く、それぞれ魅力的なキャラクターに仕上がっていると思います。
それと、どのキャラクターもデザイナーのこだわりが多分に入っており、私としても驚かされるようなことが多くて。たとえばルアンは、「獣人ってどうなのかな?」と思っていたんですが、実際に上がってきたデザインを見ると惹かれるものがありました。デザイナーのほうからも「獣人は受けがめっちゃいいんですよ!」と熱弁されたりもしましたよ(笑)。
ほかにもアプリコなどは、ストーリー上でマローネを支える相棒的な存在となりますので、とにかくかわいらしいデザインに。はじめはシナリオ上、おどおどしていることが多いのですが、話が進むごとに成長していき、その結果が戦闘面でも反映されていく形になりますので、そのあたりを楽しんでいただければと思います。
──ビジュアルでいいますと、ファントムの少年・ウルミの白い髪と肌、黒と赤で彩られた目などは、原田さんのデザインでたびたび見受けられます。『ファントム・キングダム』の預言者プラムとも同じですが、ウルミと何か関連性があったりするのでしょうか?
これははっきり言っておきますね。関連性はまったくないです(笑)。ただデザインの傾向が近いだけです。
これははっきり言っておきますね。関連性はまったくないです(笑)。ただデザインの傾向が近いだけです。
──PVではメイフェアが“覚醒の力 サイコ・バーガンディ”を使っていましたが、これは『ファントム・ブレイブ』に登場した勇者スカーレットやクロームのウォルナットの力でもありました。これにはどういった意味があるのでしょうか?
本作は『ファントム・ブレイブ』をプレイされた方にも楽しんでいただけるよう、マローネとアッシュは続投しますし、『ファントム・ブレイブ』で語られた要素もいろいろ登場する予定です。
本作は『ファントム・ブレイブ』をプレイされた方にも楽しんでいただけるよう、マローネとアッシュは続投しますし、『ファントム・ブレイブ』で語られた要素もいろいろ登場する予定です。
時間軸的には、『ファントム・ブレイブ』のストーリーが完結してから約半年後が舞台。その半年で、マローネとアッシュがどう成長したかの結果も描かれますし、“サイコ・バーガンディ”のような、ファンが耳にして「おっ?」となるようなものは各所に仕込んでおりますので、どうぞご期待ください。
豊富な汎用キャラクターとやり込み要素の数々。最低30、やり込めば100時間以上遊べる!
──メイン以外の汎用キャラクターについては、本作でどのくらい登場するのでしょうか?
50種類以上と、かなりの数を用意しており、ユニットとしての特徴もそれぞれ違っています。たとえば技師という汎用キャラクターは“技巧”のマスタリーが高く設定されており、フィールド上に配置された大砲のガジェットで攻撃する際、ダメージがアップします。
猟師なら“コンファイン”でアイテムを素早く持ち帰れるような特性を持っており、使いどころは多いですね。いろいろなキャラクターを運用し、それぞれの特性を生かせば、戦略の幅も広がって楽しめると思います。
──PVの話ですと、ランダムダンジョンなどの育成施設の存在も明らかにされていました。やはり本作でもキャラクター育成はガッツリ楽しめるのでしょうか?
弊社タイトルはどうしても、そういったやり込み要素からは逃れられないんですよね(笑)。定番ですが億越えダメージとかも普通にたたき出せるようになります。具体的なシステムとしてはランダムダンジョンやサイドシナリオなど。あとは拠点に、キャラクターの転生や覚醒が行える施設も登場しますよ。やり込みを望むユーザーにも、十分納得いただけるような作品に仕上げていきたいと思います。
あとは難易度設定を、“やさしい”“ふつう”“難しい”のなかから選んでプレイすることもできます。ストーリーに集中したい人は“やさしい”で快適にゲームを進められますし、“難しい”なら『ディスガイア』シリーズに匹敵、いやそれ以上の手ごたえを感じるプレイを楽しむことができますよ。
──プレイのボリュームとしては、どのくらいの時間を想定されていますか?
細野:難易度“やさしい”でただストーリーを進めていく場合、クリアまでは30時間前後といったところかと。本編以外のサイドシナリオや、クリア後に遊べる後日談なども含めれば50時間以上。やり込み要素をガッツリ楽しむなら余裕で100時間は越えるでしょうね。なお、トロフィーについてはやり込み前提のものは少なく、100時間前後のプレイでコンプリートできるようにしています。
発売日までのプロモーション&発売後のDLCも充実のラインナップ
──本作から『ファントム・ブレイブ』シリーズに入るユーザーに向けた、何かしらの施策などは考えていらっしゃいますか?
もちろん考えています。ストーリーの冒頭でも、短めではありますが『ファントム・ブレイブ』のストーリーの振り返りは入れますし、発売前にあらすじのまとめ動画をYouTubeなどでアップしていくことも予定していますね。ほかにも、海外で『ファントム・ブレイブ』をリリースできていなかった地域もあり、そちらでPS5版を出す、といったことも進めています。
──DLCで追加される『BAR ステラアビス』サマヨイや『嘘つき姫と盲目王子』の姫は、後日談から登場するという認識でよろしいでしょうか?
その通りです。どちらも2Dのゲーム出身のキャラクターですが、本作では3Dモデルで登場するのでご期待ください。ちなみに後日談に登場するキャラクターは、すべてがDLCキャラというわけではありません。『ディスガイア』のラハールなどは、DLCを購入しなくても登場してくれるのでご安心ください。
DLCは発売日から1カ月後、2カ月後というふうに、ある程度の間隔を空けて配信していく予定です。ユーザーのみなさんが本作を飽きずに楽しめるようなペースで配信していきますので、末永く楽しんでいただければと思います。
──今後のロードマップも公開されましたが、具体的にはどんな動きがあるのでしょうか?
大きな動きとしては、体験版の配信がありますね。内容は、ストーリーの第3話くらいまでを遊べるものにしようかと検討中でして。配信時期は12月10日以降を予定しています。遅くとも年内には配信して、冬休みに遊んでいただければと。セーブデータは製品版にそのまま引き継げますので、発売前にガッツリプレイして損はないですよ。
ほかには岐阜限定にはなりますが、10月19・20日に“岐阜エンタメ祭り”に出展します。11月には東京での試遊イベントも開催し、VTuberの方を招いて実際にプレイしていただくといった施策も予定しています。今回の発表会には声優さんに出演してもらいましたが、私たちとしても「出演してもらってよかった」という手ごたえを感じましたので、今後もこういったことは企画していきたいですね。
──最後に、本作並びに『ファントム・ブレイブ』シリーズに期待するユーザーのみなさんに向けてひとことお願いします。
本作は前作をプレイした方にもプレイしていない方にも楽しんでもらえるように、かわいいグラフィックや感動のストーリー、かっこいい技、個性的なシステムなどいろいろ取り入れています。ですので、来年1月30日の発売日を楽しみにお待ちいただければと思います。よろしくお願いいたします!
──本日はお時間をいただき誠にありがとうございました。