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『アストロボット』Team ASOBI代表ニコラ氏インタビュー。発売後の心境や一切妥協しないゲーム制作の原動力とは?

文:ことめぐ

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 ソニー・インタラクティブエンタテインメントよりPS5用ソフト『アストロボット』が発売中です。

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 発売前、発売後共にXでトレンド入りし、多くのゲーマーの中で話題になった本作。

 本記事では、アストロが大好きなライター“ことめぐ”が、本作の制作を務めたTeam ASOBIスタジオ代表の二コラ・ドゥセ氏にインタビューをしました。

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▲TGSで配布されたキュートなアストロくんうちわを持って撮影に応じてくださったニコラ氏。

 前回のインタビュー実施は本作の発売前6月でしたが、今回は発売後。

 発売後の手応え、そして本作をプレイして個人的にとても気になったことを聞いてみました!

元オリジナルスタッフと共に作り上げた『サルゲッチュ』ステージ。プロトタイプの時点で満場一致で「楽しい!」の声が上がっていた【アストロボットインタビュー】


ーー改めて『アストロボット』発売おめでとうございます。発売前からXでトレンド入りしていたり、アメリカでもトレンド上位に入るなど、ものすごい反響がありました。作り手として発売後の手応えはいかがですか?

ニコラ・ドゥセ氏(以下、ニコラ。敬称略) もちろんびっくりしました。ゲームを作る時、ゲームのクオリティは、作りながら、あとは最後にもう1回ゼロからプレイしたら大体分かってくるんです。でも、私達ゲームデベロッパーは問題しか見つけられない。だからユーザーのポジティブな意見はたまにちょっと想像しづらいんです。

 発売日の前日の9月5日の夜は、夜9時になった瞬間バーーーン! ゲームのレビューが出て。その時みんな一緒になって見ていて、その時に分かりました。上手くいったなと(笑)。もちろんとっても嬉しくて、信じられないですね。そんな楽しいゲームを作りました。

 あとは楽しいパーティーをして楽しい2日間でした。実はまだ、今でも信じられない感じがしてます。

▲パーティーの様子。アストロのケーキ、カワイイ〜!

ーー『アストロボット』が売っている様子を見に、ゲーム売り場へ行かれましたか?

ニコラ はい。実は発売前もみんな自分の近くにあるお店へ行って写真を撮って、チームの中でもシェアしていました。

 私は横浜に住んでいて。だからヨドバシカメラに入ったら、お客さんの目に入ったらどんな感じなのかちょっと見に行きました。あとは渋谷でもイベントがあって。

ーーすっごく大きな画面でプレイできたイベントですね!

ニコラ そう、すごく綺麗なゲーム画面で。そこにちょっと見に行ってみて。邪魔しないように(笑)。

▲こちらがイベントの様子の映像。めちゃくちゃ大きいです!(笑)
ーー歴代のPSキャラクターが出ることは存じていましたが、序盤で『サルゲッチュ』のゲーム体験をできるステージがあって本気で感激してしまいました。他作品のステージは、どのように打ち合わせをして制作していったのでしょうか?
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ニコラ 『サルゲッチュ』は元々SIEの作品なのですが、実はチームの中に『サルゲッチュ2』『3』を作ったスタッフがいまして。

 『サルゲッチュ』、他の作品も3年半作って、最初の1年でいろいろテストして。その時にヒーローステージは5個までというのを決めて、その候補を分けて、その5個はどうやって選ぶのかという話になりました。

 最近のブロックバスター、『ゴット・オブ・ウォー』等はもちろん入れていて。それらのゲームのひとつのポイントは、PlayStationの歴史のセレブレーション。
 
 『サルゲッチュ』はすごくファンがたくさんいると思いますし、ジャンプアクションのゲームにすごく似合うギミックなんです。私達もファンですし「1つのステージは頑張ろう!」という気持ちでテストして、チームメンバーの意見も聞いて。チームには『サルゲッチュ』が好きな人がいるし、作った人もいますし。

 だから、サルの見た目とかカケルのキャラクターの見た目をアストロのスタイルにしたらどういうデータが必要なのかとかを色々考えて作りました。

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 そして、最初のプロトタイプを作ったらみんな同じ意見で、「もうこれは楽しい!」と。

 Team ASOBIでいつも何かを作る時は、最初に仮バージョンをシンプルな見た目でやってみて楽しかったら「進む」、楽しくなかったら1回ちょっと頑張って直して、もしそれもうまくいかなかったら「やめる」。

 『サルゲッチュ』で使うインタラクションとレーダーは最初から楽しくて。

ーー網やレーダーまで使えるとは思っていなかったので、完璧な再現度には本当に驚きました。

ニコラ ありがとうございます。もちろん、後で色々と調整しました。最初のプロトタイプのシンプルバージョン、フィジックスとかAIはちょっとシンプルなものなんですけど。

 それでステージを作る時に、じゃあステージの形が分かったら……例えばここに像があれば、周りでゲームプレイできるようになったから、そこでバーッと柵でグライディングもする、とか考えていって。もちろんその後もそのイベントは少しずつブラッシュアップしていったんですけど。

 でも良かったです、喜んでもらえて。

ーーはい、本当に感激しました! 個人的には「ベース」がとてもお気に入りです。みんなが集合してくれるのが本当に可愛くて。ボットは集めるだけかなと思っていたんですけれど、何人か集めてギミックを解いたり、用が終わっても後ろの方でトランポリンみたいにジャンプしていたり、めちゃくちゃ可愛くて癒やされました。「ベース」についての何か制作秘話的なものはありますか?

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ニコラ いちばん最初このゲームは、ボットを集めるだけのゲームでした。その後PlayStationのキャラクターを入れることになり、半分ぐらいはふつうのボット、残りの半分くらいはPlayStationのいろんな歴史のボットにしようとなりました。その時はまだ集まるだけで、ここにミュージアムがあって、あとは面白いアニメーションを見たらユーザーは喜ぶ。最初のそこまでのプランでした。

 その後、全部のゲームプロフェッションを考えたら、そのボットの数が鍵になる……次の場所へ行くために鍵になりますよね。30人になったら鍵を開けるとか、100人が必要とか。システムとしてはすごくクラッシックですけど、とても分かりやすくていいシステムなんです。

 でも鍵の解除だけだったら、本当に数字になってしまうなぁと。だからアクション、一緒になにかをみんなとする、一緒に頑張ってチームワークでなにかアクションをすることは楽しいのでそれをやりました。

 アニメーションでみんなで来る時、たまに1匹来るのが遅かったり、それをワザとたまにやったり(笑)。

 それがユーモアのチャンスになっているんです。

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 結構プリセットがあるんですけど全部ランダムなので、そのシステムが。で、実はとったボットによってコンビネーションが違います。

 だから全然違うシリーズのボットが一緒にチームワークすることは、結構ポジティブなメッセージになると思います。

 みんなPlayStationの歴史、みんなのおかげでPlayStationはPlayStationになりました。みんなのおかげでそのストーリーの次のステップへ行ける。

 ピピーッ! とアストロが指笛で呼んで、例えばブリッジをする時にもう1回ピピーッ! ってしたら、全然違うコンビネーションになります。毎回違ってたまに面白いキャラクターが隣になりますね(笑)。

 
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ーー本当に細かく作られていて「ここまでできるのか!?」と遊ぶ度に感動します。

 
ニコラ そう、実はベースの中にちょっとだけ決めたルールが入ってます。例えば……イコとヨルダ、PS2の『ICO』というゲームを覚えていますか?

ーーはい!

 
二コラ イコとヨルダは一緒によくいる、元々ゲームでも守るゲームだったので、イコとヨルダを両方持っていたら、2人は近くにいる可能性が高いんです。

 あともういくつかあります。このキャラクターと、このキャラクターは元々仲良しだから一緒にいる可能性が高いとか。ユーザーはどこまで気付くか分からないんですけれど。

 でも写真を撮ったら「あの2人はよく一緒にいる?」となると思います(笑)。

ーー可愛さに気をとられてしまっていて、隣になっているところまで気づけてなかったです……プレイを見返してみます。個人的にもうひとつ、とても気になったことがありました。ダンジョンで、ボットが骨のような姿になって転がっていたところをたくさん見たのですが、ボットには骨があるのでしょうか?
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▲とある場所に大量の骨が。これは一体……。
ニコラ 実はそこまで考えてないんです(笑)。でもたまにスケルトンは色々ポップカルチャーの中にあります。『パイレーツ』とか『アンチャーテッド』、『インディジョーンズ』とか。

 ……でも本当に意味はないですね(笑)。

ーー(笑)。

 
ニコラ  でも面白いです(笑)。実はワザとそれにちょっとギャップがある時に、面白くなるんです。いっぱい考えたらちょっとあまりロジカルじゃないかもしれないんですけど。

ーー結構所々にゴロゴロ落ちていて……言葉が悪いのですが、ダンジョンの最後まで辿り着けずに死んじゃったのかなと思ってしまって。

 
ニコラ 基本的に、ストーリーとか、どこから来るか、中にどんな素材があるか、どんな言語を話すか、そこまで答えがないですね。
 
 毎回新しいゲームを作ったら、新しいストーリーを作るんです。それは結構大事です。このゲームは「ゲームプレイ」が遊び方のメイン、一番大事な部分なので。

 だから、バックラウンドストーリーもあまり重くない。重くしない方がいいと思いました。たぶんゲームデザイナーさんはそこまでの骨のことを考えていないと思います。「ここは危ないところなのでここに入れましょう」みたいな感じで置いているのかなと。
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人間としての“アソビ”の意味を忘れないように。“Team ASOBI”に込められた“アソビ”への想い【アストロボットインタビュー】


ーー本作を遊んで、Team ASOBIのゲームへの本気、愛を強く感じ、感激しました。ニコラさん、みなさんにとって、ゲーム制作の原動力は何ですか?

ニコラ まずは“おもちゃ”として、ゲームを考えていてます。それはすごく大事ですね。

 ゲームはコントローラーに触ったらすぐコントロールできるし、あとはインタラクションはファンクションだけではなくて、インタラクションしたらなにかちょっと面白いリアクションがアウトプットがあれば、なにか幸せになれたり満足できる。

 その満足さは、本当に本当に毎秒毎秒毎秒毎秒入れたら、子供の時におもちゃと遊ぶ感じをつかめると思います。

 そのベースをなぜそんなに大事にしているか。

 実は5歳の子ども、大人、ゲーマー、年上の方も恐らくみんなそれを楽しめると思います。それは変わらないと思います。

 ギャグとかそういう小さい面白さで満足できる。インプットして、アウトプットしたら嬉しくなることは、本当にTeam ASOBIのフィロソフィだと思います。

 その上に、その後のゲームの目標とかを作れるんです。あとはどこまで行くか。

 例えば、ここまでにやったら難しいチャレンジを作れると思うんですけど、その基本はゲームの楽しさとインタラクション。
 
 ゲームのポイントは、映画より、音楽よりインタラクティビティですね。だからインタラクティビティにする時に、すぐユーザーは幸せにならないといけない。

 それを守ったらジャンプアクションゲームでもいいし、スポーツゲームでいいし、アクションゲームでもいい。いつもそういう楽しさがあると思います。

 なので“Team ASOBI”の名前はそこから来てます。

 “ASOBI”、その遊びはゲームだけじゃなくて、もっとピュアな意味で、本当に人間としての遊びをどういう意味かを忘れないようにと、“Team ASOBI”という名前にしました。

ーーTeam ASOBI、ニコラさんにとって「ゲーム」とは、「アソビ」とは何か改めて教えてください。

ニコラ もちろん、ゲーマーとしてたくさんのゲームが好きです。格闘ゲームとかソウルライクなゲームも大好きですし、だから色々プレイの意味があると思うんですけど、“Team ASOBI”の場合は、おもちゃの感情がすごく大事だと思います。

 ……質問いいですか? プレイとか遊びを考える時にどんな言葉が出て、どんな感情がありますか?

ーー“気持ちいい”ですね。

ニコラ その気持ちよさは、ストーリーから? インタラクション?

ーー音とインタラクションですね。……上手く答えられないですが。

ニコラ うん、すごく難しいトピックですね。なにかプレイしたらみんなの意見一緒です、「楽しい」。

 でもなぜ楽しいのか、実はすごく説明をしづらいですね。テンポとか、コンビネーション。それは実は料理と一緒。美味しいものは、みんな「美味しい美味しい」と言う。

 でもなぜ美味しいですか? それはテクスチャー? 味? バランス? 色? いろいろありますね。そしてそれは“ゲームの魔法”ですね。ちゃんとそのバランスがピッタリだとマジカルになります。

ーー今後またアストロが登場するゲームを作るとしたら、どんなモノを作りたいですか?構想(妄想)はありますか?

ニコラ アストロは今回3タイトル目です。なぜ今回『アストロボット』だけというシンプルなタイトルにしたかというと、これからが新しいシリーズになります。

 今回うまくいってるみたいなので、次やる別のゲームをこれからも作れると思いますけど、一つ大事なところは、ユーザーの同じ体験、全く同じ体験をコピペをしない。それはとっても大事にしたい。なので次のゲームは新しいイノベーションがとても必要です。

 ジャンプアクションゲームだったら、ジャンプアクションゲームで見たことない、感じたことないこと。それはとっても大事にしてまして。

 あとはお客さんのボイスも聞かないといけない。ジャンプアクションをもっと、別のタイプのゲームのタイプが欲しいとか。ちょっとそれを考えないといけないですね。

 でも、さっきもお話しましたが、ルール、あまりバックグラウンドストーリーとかをそんなに強くしていないすごくフレキシブルなシリーズになりますので、これからどこでも行けると思います。

ーーありがとうございます。9月25日(水)に放送された「State of Play」で今秋の無料アップデートが発表されました。こちらについて詳しく教えてください。

▲無料アップデートの内容PV(※英語版)
ニコラ まずは「スピードラン」。ポイントは、オンラインでランキングもあって、友達とコンペティションできます。

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▲前作『PLAY ROOM』にもあったスピードラン。いわゆるタイムアタックゲームだ。

 レースする時に鳥2匹がいてレースがスタートします。1羽はすごく遅い、もう1羽は速い。鳥に勝ったら、最後に2人残って待っててもらいます。その時にAIレーシングがあります。

 それが終わったら、その後オンラインで本当に人間とレースをできます。『PLAY ROOM』の時もあって結構人気があったので色々コメントがありました。「スピードランがまた欲しい」と。だから今回作りました。

ーースペシャルボットもたくさん追加されますね。

ニコラ はい、いっぱい登場します。『ステラーブレイド』と『ヘルダイバー』、他のもビデオの中にはいるんですけど、ボカシてある(笑)。よ〜く見れば分かると思います(笑)。

ーーありがとうございました!

 
 素晴らしいゲームを作るニコラさん、Team ASOBIさんの想いを知ることが出来、大変有意義なインタビューとなりました。

 無料アップデートも決まり、アストロの活躍がまだまだ見られそうでいちファンとしても非常に楽しみ。

 まだプレイされていない方はぜひアストロの世界を冒険してみてください!

 最後に、今年のTGSで見かけたアストロくんを写真で振り返りたいと思います。(※一部です)

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▲グッズは大人気で売り切れ続出。欲しかったぬいぐるみ、ゲットならずでした(泣)。
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▲PSブースではアストロボット巨大ガチャも。ゲーム内のガチャっぽくて良き! ガチャを回すとなんとTシャツが出てくるという、スペシャルすぎるガチャでした。

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