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『コードギアス ロススト』2.5周年インタビュー。谷口Pが意識したゲームとアニメの違い、ルルーシュと主人公の関係性とは。サブタイトルの秘密を知ると、より物語を深く理解できる!?

文:電撃オンライン

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 EXNOAが運営するDMM GAMESとf4samuraiが手掛けるiOS/Android向けアプリ『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』(ロススト)は先日2.5周年を迎えました。

 ゲーム内では2.5周年記念イベントに加え、劇場アニメ『復活のルルーシュ』の物語を描く第3部が開始されています。

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 今回はサンライズの谷口廣次朗プロデューサーにインタビューを実施。その内容を複数記事でお届けします。PART1では『ロススト』で改めてアニメの物語を描くにあたり、ゲームでより意識した点や、主人公の見せ方について語ってくださいました。

[IMAGE]※本記事はf4samuraiの提供でお送りします。

『コードギアス』らしくもファンが喜ぶ新要素を【ロススト2.5周年インタビュー】

――谷口さんが物語を描く際に意識しているポイントはどこでしょう。

 私の立場では、プロデューサーの目線と、シナリオを執筆する上での目線のふたつで物語の作成に取り組んでいます。『反逆のルルーシュ』を改めて描くうえで、プロデューサー目線だと、TVシリーズや劇場総集編三部作をただなぞるだけですと、原作アニメをご覧いただいていたユーザーさんが飽きてしまうのではないかと考えます。

 そこで、いろいろな仕掛けをしようと思うのですが、執筆する方の目線ですと、そういったことをやり過ぎて、原作アニメから離れて過ぎても「これは違う」と受け入れてもらえないと考えます。そのように色んな目線で試行錯誤することで、新しいものを打ち出しつつも、原作アニメを壊さないようにバランスをとることを心がけています。

――『ロススト』では物語の裏側のような部分も描かれていたと思いますが、3部でもそういった箇所はあるのでしょうか。

 私としては裏側を描いているというイメ―ジではあまりなくて、裏側というよりも、原作アニメ『反逆のルルーシュ』で少しずつ語られている部分を補強しているイメージです。

 例えば、ナリタ連山に行くときに黒の騎士団のメンバーのセリフに主人公の反応を追加して会話を広げることで、どういう心境だったのかを表現したり、主人公の行動を通して、ブリタニア軍への入隊試験の様子を描いて元々あった設定を開示する、といったことです。

――なるほど。描かれてきた内容はアニメ内でも触れられていたわけですね。

 はい。例えば、原作アニメの1、2話で起こるシンジュク事変では“主人公による日本人の目線があったらどうなっていたか?”を描いています。それらが繋がって物語として見えているので、裏側と描いているように見えるのかもしれません。

 以前からいろいろな場で口にしていますが、主人公はこの世界を見るための窓の役割で、窓がそこにあるから元々あった景色が見えるようになっている。そういう立ち位置でキャラクターを配置していきました。

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 『双貌のオズ』(※)に登場するオルドリンとソキアがナナリーを助けた背景を描いたシーン。ここではアニメでは描かれていなかったナナリーがどう助かったのかを補完しつつ、別の媒体にも興味を持っていただけるきっかけになったのかと思います。

※アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』と『コードギアス 反逆のルルーシュR2』のあいだの時系列で描かれるスピンオフ作品。オルフェウスとオルドリンという2人の“オズ”を中心とした物語が展開する。[IMAGE]

物語を描くうえで苦労した点は?【ロススト2.5周年インタビュー】


――物語を描くうえで苦労した点などはありましたか。

 内容の面では、私自身が18年間『コードギアス』に携わらせていただき、どなたよりも作品に詳しいという自負があるので、描き方について困ることはなかったですね。物語を自然に受け取ってもらえるキャラクターの配置など工夫はしましたが、内容で苦労した部分はありませんでした。

――逆に言えば、理解がないと描くのが難しい部分もあるのでしょうか。

 そこはあります。谷口悟朗監督や大河内一楼さんらが作り上げてくれた『コードギアス』の世界が、ち密かつ特殊なものであるからです。例を挙げると、コードギアスの世界は、化石燃料ではなく、サクラダイトによる電気技術が発達した世界なので、我々の住む世界では当たり前にあるガソリンエンジンやガスストーブなどがほとんどなく、電動、電気式のものとなっています。一件、細かい違いに見えますが、この違いによって、その世界に住むキャラクターのお芝居も変わりますし、ビジュアル面にも影響します。

 また、これは兵器にも同じことが言えるので、戦闘シーンにも他の作品とは違いが出てきます。そういった意味で、事細かに設定を理解していないと、コードギアスの世界を描くのは難しいのだと思います。

 他にも、コードギアスはフィクションでありつつ、現実世界に限りなく近いので、実在する土地を舞台にしているのも特徴です。シンジュク事変では新宿の地図を広げつつ、主人公が代々木方面の南口から早稲田方面に逃げるために、この入口から地下に入って、という移動経路を決めたりもします。


――そんな詳細な部分まで決まっているとは知りませんでした。

 とは言っても、そこまでは皆さんは気づいてくれなかったですね(笑)。原作アニメで描かれている永田とカレンがC.C.の入ったカプセルを盗んで逃亡するシーンも、カレンのセリフで「アザブルートから地下鉄に入れる」と言っていることから、南東から新宿に向かっていると想定していたので、主人公や陽菜たちは、その想定に沿うように行動させていました。

――ユーザー目線だと、すごいこだわりに感じます。

 これは今作がアニメを原作としているからだと思います。アニメーション制作では、実際にロケハンをしたり、地図を用意して移動経路を想定したりといったことは当たり前に行われています。それがないとキャラクターの行動に違和感が生まれてしまったり、セリフに齟齬が出たりといった影響がでてしまうためです。

――我々が日々ゲームで違和感を覚えないのは、そういった製作者の方による工夫の賜物というわけですね。

 そう思っていただけると嬉しいですが、アニメを見たり、ゲームをしていて違和感がなかったのなら御の字だと思っています。


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――ゲームとアニメで変化を加えた部分はありますか。

 ゲームでは少しキャラクターのスタンスを変えている部分があります。ゲームの物語を描くうえで念頭に置くのは主人公であるマリオとマーヤなのですが、特に主人公と絡むことが多いキャラクターはあえてテレビシリーズと少し読み手の印象が変わるようにしています。

 例えばアニメのルルーシュは、17歳の男の子がギアスを使いながらがむしゃらに世界に反逆する姿を描いているので、少し子どもっぽい印象を受ける部分があったと思います。それは、ルルーシュと同じ年代の視聴者に共感を持ってもらうため、そのように描かれていました。

 ただ、『ロストストーリーズ』では、メインユーザーさんの年齢層が当時アニメを見ていた方々だと想定すると、15年以上歳を重ねていることになるので、ルルーシュも少し大人っぽく見えるように少しだけ調整しています。ルルーシュが主人公と関わる際が顕著でしょうか。主人公よりもちょっとお兄さんに見えるようにしているんです。


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――それはルルーシュの違う一面がゲームで描かれたということでしょうか。

 主人公という新しい人物が足されているので、そういった意味では新しい一面を見せているのかもしれません。ただ個人的にはメディアの違いが大きいと思っています。

 アニメは監督たちによって作られた映像というメディアなので、監督が想定したテンポ感やタイミングがそのまま伝わるのですが、ゲームはプレイする方にテンポやタイミングが委ねられます。その違いは非常に大きく、ただアニメのセリフの文字起こしだと、込められた本来の意図が伝わらない場合が多いです。

 そのため、アニメでは言葉にしなかったことをセリフやモノローグにして、キャラクターの心情を開くことがあります。その結果、ルル―シュの心情をより開くため、大人っぽく見えるのだと思います。

ルルーシュの横で主人公の存在感を出すために。そしてサブタイトルに込められた秘密とは?【ロススト2.5周年インタビュー】

――これまでの『ロススト』の物語で印象的なシーンがあれば教えてください。

 1部のルルーシュたちが神根島に飛ばされている頃の主人公関係のシーンですね。主人公は式根島に残っているのですが、そこで初めてカーリーが出てきて主人公の物語が大きく動くので、個人的に印象に残っています。
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 あとは『R2』編の冒頭です。主人公は原作アニメで言うところの『R2』の第3話以降からの合流にしようと想定していたのですが、f4samuraiさんから1話から登場させて欲しいと相談を受け、ルルーシュとの関わらせ方をとても悩みました。

 特に記憶を失ったルル―シュと記憶がそのままの主人公の関わらせ方です。他にもミレイたち記憶を改ざんされたキャラクターや新キャラにあたるロロなど、キャラクターも含めて配置の難しさがありました。

――主人公を描くうえで意識したポイントを教えてください。

 別のインタビューでもお答えさせていただいたのですが、『ロストストーリーズ』では、“原作アニメで起こった歴史を大きく変えない”というコンセプトでストーリーを構成しています。

 ただ、そこで悩んだのが、物語の根幹に関わる重要な場面での主人公の物語への関わらせ方でした。悩んだ末に出した選択肢は、ルルーシュと一緒に行動して主人公を無能にするのか、一緒に行動せずに主人公のキャラクターとしての格を保つかのふたつでした。

――具体的な例を出すとどのような場面のことでしょうか。

 例えばですけど、第二次トウキョウ決戦に主人公が参加したとします。当然、黒の騎士団の一人としてルルーシュとともにトウキョウ租界に向かうのですが、何もすることが出来ないんです。

 戦いに参加しているスザクらナイトオブラウンズなどにはそれぞれ物語の役目があるので、おいそれとは戦えない。戦闘のスケジュールや段取りに影響してしまうからです。それにここで主人公が大活躍してしまうと、ルルーシュをピンチにすることも難しくなり、その後に登場するカレンの紅蓮聖天八極式の印象も薄くなってしまいます。それは、カレンの活躍の場を奪うことであり、原作アニメの良さをなくしてしまうことでもあります。

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 では、逆に主人公の活躍の場がないとなると、ただそこに居るだけになってしまい、ユーザーさんには不満しか残らないでしょう。このように『R2』の後半になるに従って、物語の根幹に関わる重要な出来事が増えてきます。仮に第二次トウキョウ決戦で上手く活躍できたとしても、その後の展開に大きな影響が出るので、結果的に「何もせずにその場にいるだけ」にせざるを得なくなり、主人公の格をさげることになってしまいます。

 ただ、こうなることはサービス開始前から想定していたので、主人公には主人公自身の物語を用意し、宿敵のカーリーとの戦いやクラリスとの交流といった要素を描くようにしました。


――ルルーシュが重要な場面では、主人公も自身の重要な場面を展開していたということでしょうか?

 はい。実は、主人公とルルーシュに起こる重要なイベントが対比になるように構成して描いています。

 ルルーシュがCの世界でマリアンヌと決別している際には、主人公はクラリスという母親を失った事実を知ってしまう。ルルーシュの秘密が明かされる際には、主人公側も秘密が明らかになる。といった感じで2人には似た出来事だったり、対比になる出来事が起きるようにしています。


――それは気がつきませんでした。他にも何か気づかれていない要素はあるのでしょうか。

 あとは、サブタイトルをダブルミーニングになるようにしていたりでしょうか。“闇あばく罪の光”はフレイヤのことを示しつつ、カーリーの秘密の暴露に関連しています。“集う力”はルルーシュの元に黒の騎士団が集結する一方、スザクもラウンズたちと合流して力が集まっている内容を示唆しています。他にもいろいろと重なる意味を込めたサブタイトルをつけています。

――ルルーシュは黒の騎士団からブリタニアと立場が大きく変わりますが、それに主人公も自然に同行できていました。主人公とルルーシュの立場も意識されていたのでしょうか。

 はい。最初から最後まで主人公がルルーシュと同じ方向を向くというのは、当初から決めていました。ですので、主人公は、ブリタニアに復讐するというスタンスはブレませんし、目的が一緒なので、ルルーシュと敵対することもない。ルルーシュに対する気持ちが変わらないので、物理的な距離が離れていても、友人としてずっと同じ方向を向いていられる。なので、ルルーシュの立場が、仮面の反逆者からブリタニアの皇帝に変わったとしても、主人公は自然にルルーシュとともに歩めたのだと考えています。

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――それが神根島での主人公とラウンズの戦いに関わってくるわけですね。

 本来、原作アニメでの谷口監督らの意図は、「ルルーシュたった一人の戦い」だとは理解していたのですが、この『ロストストーリーズ』のコンセプトのひとつであるルルーシュとともに歩む物語のために、あえてあそこではルルーシュと合流して、一緒に戦うことにしました。

 結果的に、原作では登場していないモニカのナイトメアフレームのフローレンスの活躍をお見せ出来たり、ルルーシュがシャルルと対峙していた時のビスマルクの行動などもご覧いただけることになりました。

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――『ロススト』を語るうえでカーリーの存在は欠かせません。彼女のコンセプトを教えてください。

 カーリーは、ある意味において主人公の人物像を表現するために用意しました。ストーリー内でも語られていますが、主人公とカーリーは似た者同士です。強い意志とそれを実行できる行動力。そして、倫理観の欠如を自覚している点。この自覚を否定しているか肯定しているかの一点が、主人公とカーリーの差だと私は考えています。主人公はこれに否定的な想いがありますが、カーリーは肯定しています。他人から見ると歪んだ愛情だとしても愛情には変わりはない。尊いものだという認識があり、倫理観の欠如は自覚しつつも、それが悪いことだとは思っていないんです。

 カーリーの持っている歪な愛情においても、愛情表現に歯止めが効かなくなっているだけで、その本質は我々とそう変わらないとではと思っています。例えば、猫に対して撫でれば愛情表現できるところを、甘噛みしたり、口に含んだりされる方もいますよね。あれも表現しきれないような愛情が、ああいった行動で発露されているのではないでしょうか。仮にその発露の歯止めが利かなくなって、「自分の中に取り込んで、その愛情を満たしたい」といった人がいたらどうなるでしょう。カーリーはそういった歯止めが、立場的にも能力的にも、倫理観的にも利かなくなった人間なのだと思います。

 カーリーをそういった人間だと表現することで、似た者である主人公がどのように感じ、どんな答えを出す人間なのかを表現したいと考え、設定しました。


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※インタビューPART2は近日公開予定です。



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