スクウェア・エニックスのiOS/Android用アプリ『ドラゴンクエストウォーク(ドラクエウォーク)』が、9月12日にサービス開始から5周年を迎えました。
節目となる5周年を迎えた本作について、プロデューサーを務めるスクウェア・エニックスの柴貴正氏へインタビューを実施しました。これまでの振り返りはもちろん、“ちいさなメダル”や“ゆうべはおたのしみでしたね”といった新機能、今後の運営方針などについて語ってもらいました。
今回のインタビューは2本に分かれており、前半ではこれまでの5年間の歩みや直近1年の実装内容などを振り返っていきます。
なお、インタビューは10月初旬に実施しており、実装済みのアップデートについては、本文に一部補足説明を加えています。
スクウェア・エニックス
『ドラゴンクエストウォーク』プロデューサー
柴 貴正氏
『ドラゴンクエストウォーク』プロデューサー
柴 貴正氏
索引
『ドラクエウォーク』5周年記念特別インタビュー。柴プロデューサーが語る5周年とこの1年で実装されたコンテンツについて
5周年を迎えた『ドラクエウォーク』
――まず最初に、5周年を迎えた率直な感想をお願いできますか?
「もう5年も経ったのか」と感じています。僕が以前に担当していた『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』(※2024年1月にサービス完結)も10年間サービスさせていただきましたが、スマートフォン向けのタイトルで5年も運営させてもらうこと自体なかなかありませんから。5周年を迎えられたのは素直にうれしいです。
とはいえ、日々の連続でいつの間にか5年経っていて、歩いてきた道が気がついたら5年だったという感じです。
――この5年の間には、コロナ禍で外に出ることを推奨するのも難しかった、『ドラクエウォーク』として厳しい時期もありましたね。
サービス開始半年でコロナ禍になってしまいました。当時はつらかったですが、おもしろいもので「(今となっては)もうだいぶ前の話なんだな」と感じています。あの頃はあの頃で歩くゲームで歩けなくなって厳しい状況でしたが、ただ「歩けないなりに遊べるゲームにしよう」という想いでスタッフ一丸となりました。
そのような状況でも、「外に出るちょっとしたきっかけになるのでうれしい」という温かい声もいただきました。今となっては、あのときに開発チームが引き締まったという印象もあるんです。新型コロナウィルスは、世の中的にも強力な外敵だったじゃないですか。そういう危機的状況によって、弊社のチームだけでなく、開発会社のコロプラさんも含めて、1つに目的に向かって立ち向かうことができたのかなと思っています。
――この1年を振り返って、プレイヤー人数の変化はいかがですか?
モバイルゲームの場合、お客様は減っていくことが多いのですが、『ドラクエウォーク』の場合は減っていません。のちほどお話ししますが、本作のコンセプトは「100%すべてを遊ぶ」のではなく、「少しずつ楽しいところを見つけて遊ぶ」だと思っています。
今回の新要素の“ゆうべはおたのしみでしたね”や“ドラけし”などは、あえてライトにプレイする方でも楽しめる方向に寄せています。
――ユーザー目線で言うと、実装されたコンテンツはすべてやりたいというコンプリート欲的なものがあります。
普段はAR写真の撮影を楽しんでいるくらいの比較的ライトユーザーの方が、“ドラけし”でスーパープレイを披露していたりと、こちらの予想を超えた展開がおもしろいです。昨年実装した“宝の地図”もそうでしたが、がっつりとプレイできていない方でもすごい地図を作れたら、一躍ヒーローになれたじゃないですか。今回もそういう現象が起こっていて、みなさんの反応を楽しませていただいています。
――そこは狙い通りなんですね。
はい。とはいえ運営ものではあるので、半年後に誰も新コンテンツをプレイしていないという可能性もゼロではないですから。ユーザーさんの意見もそうですし、僕らも思っているところがあるので、どんどん改良していく必要はあると思っています。
この1年の間に実装された新要素について
――次は職業についてですが、この1年間で“守り人”、“ドラゴン”が特級職として追加されました。ユーザーの評価や使用状況はいかがですか?
どの層の反応を切り取るかということで変わると思いますが、やり込んでいる中級者以上のユーザーさんについては、満遍なくどの特級職も使っているなというのが正直な感想です。プレイヤーのみなさんならわかると思いますが、そのときのメガモンスターによって特徴はさまざまです。その特徴にあわせた職業選びを毎回楽しんでもらえています。
“守り人”の“におうだち”が強くても、今度はそれだけでは防げない攻撃をしてくる敵が出てきました。“ドラゴン”は“ドラゴン”なりの強さがしっかり用意されていますし、敵の単体攻撃が強力な場合は“ゴッドハンド”が有利になるでしょう。そのように環境が変化していきますから、その環境に合わせて使用率は変わってきます。
――しっかりそのときのイベントや敵に合わせた有利な職業を使っているということですね。
“ウォーカーズスキル”だけを使いたい場合もありますが、パーティを変えると効果が消えてしまうので、それもうまく考えながら編成しなければダメというのもあります。いわゆる“捨て職業”はないと思っています。
レベルも75まで上げると、装備できるこころの総コストも増えますから。1職業目のパーティはだいたいみなさん同じでも、転職させて2職目、3職目をどう育てていくかは、ユーザーさんの好みによって変わってきます。全職業をカンストしているようなコアユーザーさんは、どんな場面にも対応できてしまいますけど(笑)。
――私はまだ1職業も75まで育てていないんです。満遍なく上げたくなるのと、75になってしまうと経験値が入らなくなるので、その職業のレベリングをやめてしまうんですよね。
わかります。ですが、レベル75にすると組めるこころセットや、レベル70でのこころ道の解放もあるので悩みますね。
――カンストしたあとのあふれた経験値が、何かしらになるという要素は今後もないのでしょうか?
それはないようにしたいなと思っています。消費アイテムなどではそんなに嬉しくなかったりすると思いますし、価値のあるものにしてしまうと、カンスト後に経験値を貯めることが大前提になってしまいますから。
――メタルのほこらと週1メタルクエストの超上級は実装を考えていますか? そろそろもらえる経験値が増えないかなと……。
経験値周りは少しずつ緩和しているので、ご期待いただければと思います。
――先ほど“ウォーカーズスキル”の話が出ましたが、“守り人”と“ドラゴン”のものは活用されていますか?
“守り人”の“守護者のつばさ”を使ったルーラ登録はかなり便利です。移動をしない日などは、家からほこらやメガモンスターをルーラ登録することでプレイできますから。ほかでは、“ニンジャ”の“五感澄明”が“ちいさなメダル”集めで便利なので、最近はよく使用されています。
“宝の地図”が実装されて何が変わった?
――“宝の地図”も実装されて1年経ちますが、ユーザーさんはどう遊ばれているのでしょうか。
そもそも“宝の地図”は『ドラクエIX』で実装されていたもので、その体験を『ドラクエウォーク』に落とし込むというコンセプトで実装しました。
そして、そこまでやり込めていない方や途中からプレイを始めた方々向けの機能でもあります。つまり、獲得できていないこころや取り逃してしまったこころの入手先を用意するというところです。宝の地図によって欲しいこころを集めやすくなりましたし、コアユーザーのみなさんも効率よく戦力の拡充ができますから、そういう目的でうまく遊ばれています。僕もどちらかというと中級者ぐらいなので、こころ集めに重宝しています。
――この1年は、トップクラスのユーザーと初心者・中級者の戦力差を縮めるようなアップデートや施策がいくつかあったという印象です。夏の“ReWALK”イベントでたくさんのメタルキングコインが配られたのも、その一環でしょうか?
「こんなに配布しても大丈夫!?」と個人的には思っていましたが、開発側は問題ないという認識でしたので実施しました。特級職もレベル50くらいまで育成すれば十分戦力になりますから。最近だと、特級職レベル65推奨の“宝の地図”を一撃で倒して経験値をサクサク稼いだり、新しい“錬金百式(悪魔編)”も経験値が1戦4万に増えたりと、だいぶレベルが上げやすくなっていると思います。しかも、今は“あまぐもの杖”がだいぶ接待……強力ですから!
――夏のイベントでメタルキングコインが大量入手できたときに感じたのですが、「今は使いたくないな」と思っているタイミングでも、常にメタルキングが画面に出てしまいますよね。非表示にする設定の導入などは予定されているのでしょうか?
そういう声があるのはもちろん認識していますが、レベル上げが進んでいないユーザーさんへの施策でもあり、基本的にはもらったらすぐに使うことを前提にしています。
新しい職業が実装されそうだから、それをいきなりカンストさせるために貯めておく、というものではありません。貯めておきたいという気持ちはすごくわかるのですが、今のところは表示のオン・オフは考えていないです。
――新しい“魔王の地図”というのはどういうものなんでしょうか。(※10月17日に実装)
いわゆる『ドラクエIX』に出てきた“魔王の地図”にイメージとしては近いです。各作品の魔王と戦えて、倒すごとに魔王のレベルが上がっていく仕組みとなっています。どれだけ強いレベルの魔王に勝てるかという、コアユーザー向けのやり込みコンテンツです。そのため、始めたばかりの人や、中級者にはかなり厳しい難度設定にはなってしまいます。
――今回のアップデートで、さらに戦力強化もやりやすくなりそうです。恒常メガモンスターの覚醒宝珠のドロップが厳しかった印象がありますが、新しい入手方法が追加されるんですね。
“魔王の地図”で魔王を倒したときに手に入る交換用アイテムを集めれば、覚醒宝珠を選んで交換できるようになります。ただ、個数に限りがあるのでこころ1つぶんの宝珠しか交換できません。覚醒を2つ以上したい場合は、引き続き地図を周回してドロップを狙ってください。
――その覚醒用の宝珠ですが、地図のランクによって同じボスモンスターでもドロップ率は変わりますか?
ランクは関係ありません。地図のボスによって落とす宝珠のドロップ率が決まっています。
メタルキングのこころもSに! 第2回“スペシャルウォークDAY”
――“スペシャルウォークDAY”の第2回が11月(※11月9日~11日)に開催されることが発表されました。第1回の8月から3カ月後となりましたが、この期間はある程度想定されていたものですか?
初回開催にかんして、ユーザーのみなさまからいろいろとご意見をいただき、課題がだいぶ出てきたので、そういった部分を改善してもう1回実施することにしました。開催時期については5周年の新しい機能などが一通り落ち着いた11月がタイミング的にちょうどよいと思い、決定しました。
前回について言うと、僕も事情があって参加できなかったイベントなので、僕が一番次の開催を待っていたかもしれません(笑)。
――前回、おまつリッカのこころを取り逃した人もいると思いますが、第2回での再入手チャンスは?
もちろん、準備しています。また、メタルキングのこころもグレードAが2つ入手できる予定なので、これでグレードSが1つ作れるようになります。
過去に実装されたあのシステムはどうなる?
――『ドラゴンクエストモンスターズ』コラボでこころの配合システムがありました。あのシステムは再調整してゲーム内で実装されるという話がありましたが、そのあたりの動きはありますか?
もちろん実装予定ではあるものの、まだ具体的にこのタイミングでという段階ではありません。実装する場合でも、次も期間限定とする可能性が高いです。
――ではまだ、グレードAのこころがなかなか捨てられないという状況が続くんですね(苦笑)。
はい。僕もAが捨てられなくて困っています。
インタビューの2本目では、“ちいさなメダル”や“ゆうべはおたのしみでしたね”など、5周年で実装された新機能などについてお聞きしますので、お楽しみに!