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ドラマ『ウイングマン』8話感想。本性を現したナァスの行動があまりにもゲスすぎた。アオイのため、初めて明確な“怒り”を見せた健太がカッコいい(ネタバレあり)。

文:米澤崇史

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 テレビ東京系にて放送中のドラマ『ウイングマン』8話の感想をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ウイングマン』8話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

健太の記憶だけは消すことができなかったアオイの人間臭さ【ウイングマン】


 7話では、かつての幼馴染で婚約者であるナァスとの再会を果たしたアオイ。しかしナァスの目的は最初からドリムノートであり、「ポドリムスを救うため」とアオイをそそのかして、ドリムノートを自らの元へと持ってこさせました。

 自分への好意だけではなく、健太へのアオイの感情まである程度見抜いて「健太のためにもなる」と理由をつけて利用しているのがナァスのとくに巧妙なところです。


 健太が気づいた時には、アオイは周囲の人々から、自分に関する記憶だけを消した上で姿を消していました。ただ、この時アオイは、健太の記憶だけは消せなかったんですよね。

 もしかしたら、ウイングマンの力である程度ディメンションパワーに対する耐性がついていた可能性もありますが、何よりも一番の理由は、アオイが「健太にだけは自分のことを覚えておいて欲しい」という心を捨てきれなかったからだと思うんです。

 健太に平和に暮らして欲しいだけなら、自分とウイングマンに関する記憶もすべて消してしまえば、アオイを探すことすら健太にはできなかったはず。それができなかったのが、アオイの人間臭さであり、理性では制御しきれない健太に対する感情の大きさなんだろうなと。

 そんな健太に助け舟を出したのが、キータクラーによく似た声帯をもつ謎のヒーロー。健太をアオイの元に行かせつつも、布沢を利用して暗躍も続けており、敵なのか味方なのか、今回も目的が謎に包まれています。

 ナァスと対峙した際には、「疑うのなら好きなだけ攻撃しろ」と言われて、一切の躊躇いなく健太が攻撃を始めた時は結構驚きました。視聴者の視点からすると、ナァスが実は悪いやつだということはもう明白なんですが、この時の健太はまだ確信を得るまでには至っていないはず。それだけアオイがいなくなって冷静さを欠いていたと思われ、健太がここまで怒りの感情を露わにするのは、今までの戦いの中でも初めてなんじゃないかと思います。


 個人的に印象深かったのが、この時のアオイと健太のやりとりで、アオイが「私達」とナァスと自身のことを指して呼んだ時、健太が「俺達だろ!」と取り乱したシーン。どちらかというと、今まではアオイ→健太の感情の描写が多かったんですけど、この一言で実は健太もアオイに負けず劣らずクソデカな感情を抱いていたことが分かります。

 その後の、武器を置いてからの健太の“告白”と言っても過言ではないシーンで、ついに健太も自分の感情に気づいた感があって、「ようやく気づいたか……」と、後方腕組みおじさんのような気持ちで二人の様子を見守っていました。

ナァスの考えたゲスすぎる設定のヒーローをちょっと見てみたい【ウイングマン】


 そんな健太の告白を受けて、大きく気持ちが揺らぐアオイ。それでもまだアオイの中では迷いが残っているように見えたんですが、思った以上に早くナァスが本性を露わにしたのは意外でした。

 このあたりは、その後のナァスのはしゃぎっぷりから推測するに、むしろ早く裏切りたくてウズウズしてたんじゃないかとすら思えます。最初から敵同士の健太に対してはともかく、幼馴染で婚約者でもあったアオイにここまで冷酷になれるのは常軌を逸しており、何がナァスをこんな存在にしてしまったのか、隠していただけでずっとこんな性格だったのかは気になるところ(どちらにせよ、父親であるラーク博士の人を見る目がなかったことだけは間違いないですが)。

 ドリムノートにエグい設定を書き足そうとするナァスの作戦は、まさにウイングマンならではの弱点になっていたのも面白い。現状のドリムノートは、“ウイングマンに関すること以外は書き込めない”と説明されていましたが、逆にいえば“ウイングマンに関連したことなら書き込める”ということで、なかなか盲点をついています。


 そのナァスが考えていた「街の人や近しい人の生体エネルギーを使って戦う」という設定、結構本当にありそうなラインをついていて、正直ちょっとそういう設定の作品を見てみたいと思ってしまいました。自分は鬼頭莫宏先生の『ぼくらの』がめちゃくちゃ好きなのもあるんですが、戦ったら近しい人が死んでいくって、自分自身が死ぬこと以上にキツい展開になりそうで、かなり濃いドラマが作れそうな気がします。

 ……と、つい妄想が広がって脱線しかかりましたが、その後の戦いでは「アオイさんはお前が好きなんだぞ!」とブチ切れながらナァスを殴り飛ばす健太は、藤岡さんの熱演も相まってめちゃくちゃ真に迫っていて、今までの戦闘シーンの中でもとくに凄みが伝わってきました。

 鎧武者っぽい姿になるナァスの変身シーンとか、戦闘スタイルはかっこよかったんですけど、最後にまたアオイに命乞いする情けなさは、100年の恋も冷めそうな掌の返しっぷり。さすがにあそこまでクズな本性を見せたあとのアレはあまりにも苦しい……! 案の定、まったくアオイには通じませんでした。

 原作のナァスは、両親を解放するためにアオイを裏切るという、ちょっと悲しい悪役の側面をもっていたので、性根から完全に腐っていたドラマ版は、大分受ける印象が変わるキャラになっていました。


 戦いの後、健太の家で改めて顔をあわせた時の二人の間で流れる空気が、告白した後に学校で顔を合わせた時のカップルみたいな雰囲気になっていて、そこから一気にキスにまで行こうとしたのはさすがに驚き。ここから美紅を交えての三角関係が盛り上がりそうなタイミングなので、ドラマ版の話数が残り少ないのが非常にもったいない……!

 さらに8話のラストには、これまでじわじわとフラグを積み立ててきたウイングマンの正体バレ展開がついにやってきました。健太たちはこの窮地をどうくぐり抜けるのか、キータクラーが何を考えてこの状況を作り出したのか、ついに本格的に動き出したリメルなど、残す9・10話も、クライマックスに相応しい怒涛の展開が待ち受けていそうです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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