12月21日、22日に日本最大級のお城の祭典“お城EXPO 2024”が、パシフィコ横浜ノースにて開催されました。この記事では、22日に行われた“シブサワ・コウ トークライブ”のレポートをお届けします。
登壇したのは、司会進行役の鈴木智博氏(戦国魂プロデューサー)、シブサワ・コウ氏(『信長の野望』シリーズ エグゼクティブプロデューサー)、小笠原賢一氏(『信長の野望』シリーズ ゼネラルプロデューサー)、劉迪氏(『信長の野望・新生 with パワーアップキット』開発プロデューサー)です。
索引
『信長の野望』が生まれたきっかけとは? シブサワ・コウ氏が誕生秘話を語る
はじめに、司会進行役の鈴木智博氏とシブサワ・コウ氏が登壇し、トークライブが開始されました。
1つ目のトークテーマは、“『信長の野望』が誕生するまで”について。27歳のときに家業を継いだというシブサワ氏が株式会社光栄(現在のコーエーテクモゲームス)を立ち上げ、ゲーム制作をはじめるまでのことが語られました。
ゲームを作りはじめたきっかけは、書店でたまたま見つけたパソコンの専門誌だったとのこと。パソコンに強い興味を持ったシブサワ氏は、妻である襟川恵子氏(現在のコーエーテクモホールディングス代表取締役会長)から誕生日プレゼントとしてパソコンを贈られ、それからプログラミングの勉強に熱中したのだそう。
日中は仕事として財務会計・在庫管理ソフトの開発などを行うかたわら、夜になると個人的な趣味としてゲーム制作を行っていたというエピソードが語られました。
そして、最初に開発したシミュレーションウォーゲーム『川中島の合戦』が、1981年10月26日に発売されました。こちらは、将棋のようなルールで遊ぶ作品となっています。
戦いがメインとなっていた『川中島の合戦』に、領地を経営するシミュレーション要素を加えたのが、1983年3月に発売された『信長の野望』です。
当時の戦国大名は、敵国と戦うだけでなく、街作りや開拓、治水工事、外交などさまざまな仕事をしていただろうという考えから、“戦国武将の1日をすべて表現できるようなゲームを作りたい”という思いがあり、そこから『信長の野望』が誕生したのだそう。
これには、経営者としてさまざまな業務をこなしていた、シブサワ氏自身の経験が活かされているとのこと。
また、『信長の野望』のパッケージデザインを妻の恵子氏が担当したことが語られ、“シブサワ・コウ”という名前が生まれたきっかけも明かされました。
“クリエイティブな仕事については、代表者が名前を表に出して責任をもってデザインをしていくべきだ”という恵子氏の考えから、“シブサワ・コウ”という名前が生まれたのだそう。
さらに、”シブサワ・コウ”という名前の由来が明かされました。日本の資本主義の立役者と言われる“渋沢栄一”氏に対する尊敬の思いから“シブサワ”という名字を借り、当時の社名である“光栄”の“コウ”をあわせて、“シブサワ・コウ”という名前に決めたとのこと。
ときにはクスッと笑えるようなエピソードも語られ、和やかな雰囲気でトークが繰り広げられました。
“国”を取る戦いから“城”を取る戦いに!『信長の野望』における城の進化とは?
2つ目のトークテーマは、“『信長の野望』における城の進化”について。ここからは、小笠原賢一氏と劉迪氏も登壇し、4人でのトークセッションとなりました。
籠城戦ができるようになった『信長の野望・戦国群雄伝』や、従来の“国”を取る方式から“城”を取る方式に変革された『信長の野望・覇王伝』など、『信長の野望』シリーズ全16作品における“城”に焦点を当てたトークが繰り広げられました。
さらに、内政に力を入れた『信長の野望・天下創世』や、リアルタイム制を導入しシリーズの大きな転換点となった『信長の野望・革新』など、実際のゲーム映像をまじえながらシリーズの進化についても語られました。
また、『信長の野望』シリーズの中で一番思い入れのある作品について、シブサワ氏が語る場面も。一番は初代の『信長の野望』とのことでしたが、これまで開発してきた作品の思い出をお聞きすることができました。
小笠原氏は、マップなどのリアリティを追求した『信長の野望・創造』を紹介しつつ、“リアリティのある場所にリアルなお城をたくさん置きたい”という思いから、作中に多くの城を登場させたという制作秘話を語りました。
劉氏からは、攻城戦に力を入れた『信長の野望・新生 with パワーアップキット』についてのお話がありました。劉氏は、山城と平城の攻め方の違いを説明しながら、本作の戦略性について語りました。こうしたリアルティを追求するために、現地へ行って調査をすることも多いのだそう。
アプリゲームの『信長の野望 出陣』や『信長の野望 覇道』は、出先で気軽に遊べるのが魅力ということで、シブサワ氏自身が通勤中にプレイしているというエピソードが語られました。もしかしたら、気づかぬうちに憧れのシブサワ氏と対戦していることもあるのかも……!? ちなみに横浜駅近辺の城は小笠原氏が占領していることが多いそうです!
一番好きな武将はやっぱり●●!? 武将の能力値を決める方法も明らかになった質疑応答のコーナー
次のトークテーマに移る前に、質疑応答のコーナーが設けられました。こちらは、事前に集められた質問に、登壇者が答えるというもの。
はじめの質問は“一番好きな戦国武将”について。シブサワ氏は、「『信長の野望』のタイトルどおり“織田信長”です」と回答。会社の経営者として、強いリーダーシップをもっていた織田信長に憧れていたというお話を聞くことができました。
さらに、年を取るにつれて考えが変わったとも語り、2番目に好きな武将として“武田信玄”をあげました。その理由として、周囲の人々を引っ張っていく役割を誰かに任せられるようになったという、心境の変化を語りました。
小笠原氏は“武田信玄”と回答。家紋が似ているところから縁を感じ、興味を持ったことがきっかけだったのだそう。
劉氏は、見た目の可愛らしさから“井伊直虎”と回答。あわせて、『信長の野望』のキャラクターグラフィックの良さを語りました。
また、武将たちの能力値を決める方法についてのお話がありました。
能力値については、これまでにあったものを『信長の野望・創造』でいったん見直し、整理したとのこと。その際は、まず武将たちを能力ごとに並べて順位をつけ、それをもとに能力値を決定していったのだそう。
『信長の野望・新生』では、複数人で決めようとするとどうしても意見がまとまらないことがあるため、能力値については、まず担当者の一人にまかせて、それを後でプロデューサーがチェックするという方法にしていたとのこと。
また、大河ドラマなどがきっかけで武将の認知度が上がったり、歴史研究によって武将への評価が変わったりすれば、それも能力値に反映していくというお話がありました。
『信長の野望』の野望とは? シリーズの目標を語る
最後のトークテーマは、“『信長の野望』の野望”について。これからシリーズが目指していきたい目標について、シブサワ氏が語りました。
まずは、武将の行動などをコントロールする“AIの重要性”についてのお話がありました。武将のAIに短期的な目標と長期的な目標を設定し、それをもとに武将ごとに異なる考え方や行動パターンをつくることで、さらなる個性を生み出したい、という目標を語りました。
さらに、さまざまなゲームジャンルにチャレンジしたい、という野望もあるのだそう。もしかしたら、これまでとまったく違うジャンルの『信長の野望』が誕生するかも……!? これからの『信長の野望』シリーズの進化に期待ですね!