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【ホロライブ】カバー株式会社の決算資料で読み解く“ホロライブの現在地”。明確になった“投げ銭ビジネス”からの脱却、「YAGOO凸待ち」に繋がる新たな施策も?

文:こひき庵

公開日時:

最終更新:

 2月12日、VTuberグループ“ホロライブプロダクション”を運営するカバー株式会社が、第3四半期(4〜12月)の決算(非連結)を発表しました。

 星街すいせいさんやさくらみこさん、宝鐘マリンさんが実施したライブや、ワールドツアーなどがいずれも好調な売り上げを記録したほか、『hololive OFFICIAL CARD GAME』などの関連商品の売り上げも好調で、売り上げは288億6300万円(前年同期比50.1%増)を記録しました。

 営業利益は55億4400万円(同58.8%増)、経常利益は56億円(同61.1%増)、最終利益は37億7700万円(同43.9%増)となっています。

 この記事では、決算資料から読み取れる内容について噛み砕いて説明しつつ、谷郷元昭CEO(YAGOOさん)のビジョンを探っていきます。
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カバー株式会社が第3四半期決算を公表


 2月12日にカバー株式会社が発表した
決算資料は2024年4月から12月までの“1年の4分の3”のデータとなります。

 第3四半期(Q3)単体(10〜12月)では、売上高117億5800万円(前年同期比+69.2%)など堅調な数字を記録し、事前に出していた2025年3月期通期業績予想も上方修正されました。

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 売り上げの内訳では各部門での成長が確認できるほか、ライブ・イベントによる売り上げが前年同期比143.8%増の23億2800万円となったほか、トレーディングカードゲームの販売がスマッシュヒットになっている関係で前年同期比101.7%増の54億4800万円を記録するなど、大幅な成長を見せています。

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 VTuber事業を展開することでの右肩上がりの成長を見せてきたカバー株式会社ですが、ビジネスの内訳には変化が見られます。

 当初は配信での収入、つまりYouTubeなどでの広告収入やスーパーチャットのような“投げ銭”、チャンネルメンバーシップで得られるお金が軸となっていました。

 このため、「VTuberは投げ銭ビジネス」などという評価もありましたが、近年はこうした構造からの転換が顕著に見られています。

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 もちろん、依然として収入の柱ではあるものの、グッズ販売やライブイベント、さらにホロライブの“キャラクターIP”を利用したタイアップによる収入などが大きく伸びています。

 よくも悪くも“タレント依存型”のビジネスだったところから、より多角的なビジネスへの変化が見られるわけです。

 一時期はスーパーチャットの金額が取り沙汰されることも多かったホロライブですが、近年は星街すいせいさんがスーパーチャットをオフにした配信を常態化しているほか、スーパーチャットをオフにした配信を増やすタレントも見られます。

 これは逆に言えば、スーパーチャットがもはや収入の絶対的な柱などではなく、これをオフにして配信するタレントがいても問題のない状況になっているということの裏返しでしょう。

 もはや“投げ銭ビジネス”ではなくなりつつあるわけです。

資料と実績から読み解くホロライブの現在地


 カバー株式会社の
決算説明資料で「前年同期比143.8%増」となったライブイベントの収入ですが、各タレントのソロライブの成功が大きなウエイトを占めたようです。

 全国3箇所を巡った星街すいせいさんのライブツアーが「全公演合わせて延べ4.5万人を超える動員」を記録。


 また、有明アリーナでのさくらみこさんのソロライブも「配信合わせて3万人の動員」を実現。


 さらに12月にKアリーナ横浜で2日間にわたって開催された宝鐘マリン船長によるソロライブも、「のべ5万人を動員」する大盛況に。


 そして、世界5都市を巡って開催された“ホロライブワールドツアー”も全会場でチケット完売。こうした海外人気の高さも、ホロライブの成長を支えている要素です。


 また、トレーディングカードゲーム『hololive OFFICIAL CARD GAME』(通称“ホロカ”)の好調も、あらためて強調されていました。


 大会開催などのイベントの仕掛けも多彩に準備されているほか、訴求力と告知力を兼ね備えるタレントの配信と連動しての施策ができるのも“ホロライブ”ならではの強みとなっています。


 また東京駅に設けられた“hololive production official shop in Tokyo Station”での施策や、“みっころね神社 ゆく年くる年”など新たなチャレンジも見られました。


 資料では「2023年にデビューした国内外のタレントもそれぞれの活躍機会を活かして成長」も強調されました。

 実際、儒烏風亭らでんさんがYouTubeでの100万人登録を早くも達成したほか、ホロライブENからデビューしたフワワ・アビスガードさんとモココ・アビスガードさんの双子の姉妹で1つのチャンネルを運用する“フワモコ”も100万人登録を達成。

 2023年以降にデビューしたメンバーの人気と認知度、そしてグループの中での存在感も大きく高まっているのは明らかでしょう。

“YAGOO逆凸”など新たなスタンスと施策


 一方、収入の構造がどう変わったところで、ホロライブの事業が“タレントありき”である点は動かないところでしょう。

 タレントのサポート部門については「国内外で影響力のあるグローバルインフルエンサーのマネジメント組織を統括していた人物を新たに責任者として採用」したことも明らかにしているほか、「経営陣とタレントの対話頻度を強化し、事業展開に対してよりタレントの声を反映しやすい形に変更」したことも明示しています。

 資料で例として挙げられていた内の一つは“獅白杯2nd”ですが、タレントの仕掛けを会社がサポートする形はより強化されていく方向のようです。


 大空スバルさんや“フワモコ”の2人が配信で「YAGOO逆凸お茶会(出入り自由のティーパーティー)があった」ことを明かしていますが、これも従来より経営者とタレントとの直接対話を増やしていく施策の一環なのでしょう。

 会社の施設の一室で「座っているYAGOOさん(カバー株式会社・谷郷元昭CEOの愛称)がいて、誰でも気軽に入って話していい」(フワワさん)状態で、星街すいせいさんなどさまざまなホロメンが立ち寄ったようです。

 このお茶会についてスバルさんが面白おかしく「常闇トワさんと2人で突撃した」ことを語っているのに対し、“フワモコ”の2人が「光栄な機会」に身震いして臨んだことを話しているのは非常に好対照で面白かったです。

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 ホロライブ2期生のスバルさんがデビューした2018年夏の時点でカバーの従業員は3人。

 「会社のドアを開けると、そこにYAGOOさんが座っていた」なんて話もあるような小さな会社であり、当時はタレントの採用面接もYAGOOさんが自ら行っていました。

 その距離感をスバルさんは「親戚のおじさんみたい」だとも話すほどです。

 また、宝鐘マリン船長も「社長と会った」ことを、「w」付きのこんなテンションで語っています。

 一方、古株のタレントとは異なり、2023年に採用された“フワモコ”はYAGOOさんのことを新進の上場企業を創業した経営者という「偉大な人物」と認識しており、遠い存在になっていることもうかがえます。

 そうした認識の差から思わぬ溝が生じることもあるでしょうし、企業の規模が拡大していく中で現場と経営でギャップが生じるのもよくある話です。

 “タレントありき”の事業であるのは間違いないですから、対話の機会をCEO自ら率先して設けるのは意味がありそうですね。

登録者総数1億人も間近

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 YouTubeのチャンネル登録者総数は9600万人を数え、1億人も目前となってきました。

 さらに今後の展開としては、ホロライブのキャラクターを活かしたゲームでの展開も新たに見られます。

 2月27日に発売予定の猫又おかゆさんを起用した『おかゆにゅ~~む』は、その体験版での“体験”も話題を呼んでいます。


 儒烏風亭らでんさんを起用した『儒烏風亭らでんがご案内!ピクセルミュージアム』も今年発売予定です。


 2月13日には白上フブキさんのソロライブが開催されるほか、2月27日には森カリオペさんによるロサンゼルスでのソロライブも開催されます。

 さらに3月にはホロライブにとって最大のイベントである“hololive SUPER EXPO 2025”および“hololive 6th fes.”の開催も控えており、ホロライブ全体のさらなる盛り上がりが期待できそうです。

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