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『メダリスト』11話感想。“追いつかれる側”としての苦悩…理凰への感情移入度が爆上がり。友達でありながらライバルでもある、いのりとミケの関係性もエモい(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 放送中のTVアニメ『メダリスト』第11話“夜を踊れ”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『メダリスト』11話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

シャンプーハットがバレるのを恥ずかしがる理凰のかわいさ【メダリスト】

 ルクス東山FSCの夏合宿の様子が描かれることになった第11話。前回の10話では、司を巡っていのりが激しく感情を露わにして、理凰との口論に発展していましたが、2人のバチバチな関係は依然として健在の様子。

 いのりがここまで他人に対して敵意のようなものを向けるのって今までに一度もなかったので、めちゃくちゃ新鮮でした。

 最初に会った時、いのりは理凰に対してビビリ倒していたことを考えると、この2人の関係性の変化もなかなか激しくて面白いです。


 名港杯で競い合った、グラビティ桜通FSCのミケと那智も久しぶりに登場。ミケはさっそく理凰と喧嘩をはじめてしまい、那智から諌められる一幕もありましたが、今回に関しては理凰が先に喧嘩を売りに行ってしまいましたし、

 あと、髪型が猫耳っぽいのは自ら意図したスタイルとしていたのにはちょっとビックリ。そのあとの風呂上がりのシーンでは、その猫耳っぽい髪型の部分が濡れてなくなっていて、最初誰なのか認識するのに時間がかかりました(笑)。新鮮ですね。

 司提案の生徒たちへの指導シーンでは、3人の中では一番現役が近かったのもあるのだと思いつつ、司の体力オバケっぷりが顕著に。

 那智と瞳で司への認識がバッサリと違っていて、司のキャラクターなら、普通は那智のいうような常に前向きな熱血キャラになりがちなところ、実は内面はそうではない……というのが司の面白いところなんですよね。

 蛇崩が短時間で司の本質を見抜いた回もありましたが、アイスダンスの相方だった瞳も、司の理解者の一人なんだな~と改めて実感。11話でも断片的に描かれてはいますが、司と瞳の信頼関係が構築されるまでの過去のエピソードとか、すごく気になります。

 その後、司と理凰がお風呂場で遭遇するシーンからの一連の流れは、個人的に11話でもとく印象に残ったシーンでした。

 まず周囲にシャンプーハットを使っているのがバレるのが恥ずかしくて、時間をズラして風呂に来る理凰はがめちゃくちゃかわいい! それに対し、まったく気づかずにそれを指摘してしまう司のノンデリっぷりが対照的です。

 司は、シャンプーハットが恥ずかしいとか気にしたことがなかったんでしょうね。

 さらにそこから、司に嫌味を言うためにあえてバッジの級数を聞いたのに、いざ答えを聞かされると動揺して、直前まで言おうとしていたことが言えなくなってその場から去るのも(「いのりががっかりする」なんて、絶対最初言うつもりはなかったと思います)、理凰も根は決して悪い子じゃないというのが視聴者には分かるようになっているのが上手いなと。

 ブチ切れていた司もまた新鮮で、子どもたちへのメンタルケアみたいな部分は完璧に見える司も、やっぱり嫌味を言われるとストレスを溜める人間なんだということが分かって良かったですね。

 コーチの仕事を受けるのを渋っていたのも、選手としてシングルの経験がないことがコンプレックスになっているのも、これまでの司の行動を踏まえての納得感がありました。

 『メダリスト』のキャラクターって、結構司の凄さや人の良さを知っていて、好意的に接する人が多いので(夜鷹純ですら当時の滑りを記憶していたくらいですし)、理凰みたいにキツくあたってくる存在は結構珍しいです。

 ただそれだけイライラしながらも、心の中の声ですら「理凰さん」とさん付けを崩さなかったり、自分の中の怒りを目標の“3回転+2回転を飛ばせる”という、ポジティブなエネルギーに変換するあたり、相変わらずの司らしさも詰まっていて面白かったです。

育った環境は正反対なのに、司と理凰はちょっと似ている?【メダリスト】

 Bパートでは、ダブルアクセル+トリプルサルコウという目標を一気に達成していくいのりの成長を描きつつ、それを目の当たりにして心が折れかける理凰という構図が非常に秀逸で、どんどん理凰に感情移入していました。

 理凰は光よりも先にスケートを初めていて、最初は自分の方が上だったのを超スピードで追い抜かれることを一度経験しているわけですが、直前まで自分が上だと思っていたいのりに、先に3回転を飛ばれるというのは、かなりショックだったと想像できます。

 これまで『メダリスト』って、ずっと遅れてスケートを始めた”追いかける側”の視点で物語が進んできたわけですが、対して理凰は“追いかけられる側”の人間で、遺伝・環境・経済力とあらゆる面で恵まれている、いのりや司の対極にいる存在でもあります。

 でもそれだけ恵まれているからこそ、ほかの人に追い抜かれた時の言い訳が一切できないわけで、先に始めたから立場からの苦しみをしっかりと描いているのが非常に良かったです。こういう“追い抜かれる恐怖”って、仕事でも趣味でも、多くの人が大なり小なり誰もが経験したことがあるであろう感情で、理凰の気持ちもすごく共感しやすいんですよね。

 心配してやってきた司に言った言葉が「あいつ(いのり)のそばにいてあげた方がいい」なのも、いのりの才能を認めたからこそで(自分のことは放っておいて欲しい気持ちもあるでしょうけど)で、なまじこれまで理凰自身も頑張ってきたからこそ、光やいのりの凄さをより理解できてしまうのがまた残酷だなと。

 その理凰も決して才能がないわけではないと思うのですが、圧倒的な自己肯定感の低さは司と通じる部分が結構あって、まったく正反対の環境で育った2人の本質が似ているという現象も面白い。「そんなにスキルが高いのになんでそんなに悲観的なの?」という司の指摘は、そのまま本人にブーメランが返ってきそうです。

 かなり嫌悪している夜鷹純とスタイルが似ていることを指摘された時は、あまりの激しい発狂っぷりに笑いました。

 あれだけ嫌っているということは、さすがに現役時代の夜鷹の滑りをビデオで見て参考にしていたりはしてなさそうですが、その指導を受けている光の演技はかなり近くで見てきているはず。なので、光を通して影響を受けているという線は結構ありそうです。

 総じて、理凰の好感度が爆上がりして一気に好きになった回だったのですが、途中で少し描かれたいのりとミケの関係性も印象的でした。

 夜中に布団の中でミケがいのりの頭を撫でるシーンでは、これまでキッズ感の強かったミケの新しい一面も垣間見える一方で、いのりがダブルアクセルを飛んだ時には、負けられないと対抗心を燃やしています。このあたり、友だちであると同時にライバルでもあるという、2人の独特の関係性が感じられて非常にエモかったです。

 まだ司の実力を知らない理凰が、その滑りを目の当たりにして何を感じるのか。2人の関係性がどのように変化していくのか、次回以降も注目していきたいです。


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米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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