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『メダリスト』12話感想。「見なよ…オレの司を…」司に向けられるあらゆる愛の重さを感じた回。いのりと理凰のライバル関係も最高(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 放送中のTVアニメ『メダリスト』第12話“白猫のレッスン”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『メダリスト』12話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

いきなり「オレの司」呼びするいのりの破壊力が高すぎ!?【メダリスト】

 3回転+2回転に苦戦する理凰に見本を見せるため、自分の滑りを披露することを決めた司。司が滑りを披露する場面は今までにもあったものの、1プログラム分ガッツリとというのはなかったので、ある意味視聴者にとっても、司の本当の実力を知ることができる回となりました。

 しかしなんといっても、今回すごかったのが冒頭でいのりの名言(迷言?)「見なよ……オレの司を……」の破壊力の高さ。“オレ”という一人称を使って司を呼び捨てにしつつ、これまでにないほどのドヤ顔を浮かべるいのりに、冒頭から腹筋が破壊されました。

 とくにアニメでは、米津玄師さんが歌う主題歌“BOW AND ARROW”で、「今に見なよ」というフレーズが歌詞に使われているのもあって印象的で、回を増すごとにいのりの面白さがどんどん増していっている気がします。


 そしてそのあとの司の滑りの美しいこと。今までにもいろいろな人物の滑りが披露されましたが、中でも司がフォームの綺麗さや動きのしなやかさに秀でているのがはっきりと感じられるのがすごかったです。

 作中の人物たちも驚いていましたが、父親や夜鷹純といったメダリストたちや、光という天才を間近で見てきたであろう理凰まで強い衝撃を受けているんですよね。

 司と動きが似ていることにすぐ気づけるくらい、夜鷹純の滑りを何度も見ているであろう理凰が「スケーティングだけなら夜鷹純より上手いかも」と感じているあたり、いかに司の技術が優れているかが分かります。


 個人的にグッと来たのが、全日本で司のパートナーだった瞳が司のことを誇らしげに語っていたこと。考えてみれば、瞳は一番近くで司の滑りを見てきた人間なわけですから、そのすごさも誰よりも深く理解しているんですよね。

 また、この時に理凰に対して、「才能がないと諦めなかった」と司の過去を伝えたのもナイスでした。瞳は知らないはずですが、この時の理凰は、光という天才を間近で見続けたことで心が折れ掛かっていた状態だったので、結果的にこの言葉はめちゃくちゃ刺さったのではないかなと。

 理凰の司への印象はここから一気に変わり、朝一でやってきて、頭を下げながら自分の目標を改めて伝えるシーンも非常に良かった。

 プリントを渡すだけなら普段通りの時間で来ても問題ないにも関わらず、一時間も前に来ていたのは、周りの生徒の目がない時間が良かったというのも少なからずあったと思いますが、一刻も早く今までの失礼な態度に頭を下げたかった……という理由が大きかったんじゃないかとも思います。

司を巡っていのりと理凰の微笑ましいライバル関係に【メダリスト】

 Bパートからは、主に新キャラクターである白根琥珀が登場し、フィギュアスケートとは動きの共通点が多い競技であるバレエについてのエピソードが描かれていました。

 パンクした軽トラでやってくるという、なかなか破天荒な登場の仕方をしていた白根でしたが、ミケに少し否定されただけで心が折れかけるくらい、実はメンタルが弱いというギャップが面白い。それを一言だけですぐに立ち直らせるあたり、司のメンタルコーチ力は大人にも通用する説、あると思います。

 そのあとの展開ではは、いのりと平行してミケの成長という面を描いているのも非常に熱かった。もしバレエを真面目にやっていたら、あの大会での着地をミスらなかったかもしれないという後悔にミケが飲まれそうになる一方で、今までやっていなかったことを自分の伸びしろとして捉えるいのりは対照的です。

 むしろ昔はネガティブの塊のようだったいのりが、ここまで前向きになったのかと成長を感じますし、いのり・理凰・ミケの3人が互いに触発される形でレベルアップしていくのは、まさにスポーツものの王道展開といった流れでした。

 個人的に笑ったのは、前回まではまったく認めていなかった司を、理凰が「オレの司先生」とまで呼ぶようになっていたこと。司の指導のおかげで3回転+2回転が飛べるようになったとはいえ、前回からの落差が半端ないです。

 今度は司を奪い合う(?)という形で、いのりと見ていて微笑ましいライバル関係に落ち着くというのは面白かったですね(“オレの司”というパワーワードもトレンド入りを果たしていた様子)。


 いのりって誰と接する時もすごく良い子で、フランクに接する友だちがあまりいない印象だったので、遠慮なく言い合える理凰とのやり取りはどれも新鮮で、思わず笑みが溢れます。

 競い合える相手がいなかった理凰にとってもいい刺激になっているでしょうし、このコンビは今までのキャラクター達の中でも、1、2を争うくらい好きな関係性になったかもしれません。


 ラストのいのりと司のやり取りも印象深く、“自分を変えたい”というモチベーションに支えられてきたいのり自身にも、自分が十分に変わったと自覚できるようになったのは感慨深い。

 同時に、嫌いだった自分がいたからこそ頑張れたというのも分かる話で、もし司やいのりがもっと早くスケートを始めていたらと仮定しても、今よりすごい選手になっていたかどうかって、結局分からないんですよね。

 二人が抱えているものってどちらもコンプレックスに近いものだと思いますが、コンプレックスって往々にしてネガティブなものとして扱われがちな中、必ずしもそうではないのかもしれないと考えさせられたりもしたエピソードでした。

 アニメ『メダリスト』も、残すはついに最終回のみ。これまで、アニメでも様々なドラマを見せてくれた『メダリスト』が、最後にはどんな感動を味わせてくれるのか、期待が高まります。


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米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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