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『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』1話感想。7年ぶりにTVシリーズの『青ブタ』を楽しめる喜び。すっかり立派になった花楓の姿に胸が熱くなる(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 アニメ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』第1話“思春期は終わらない”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

TVシリーズ1期と、劇場3作を経て描かれる物語【青春ブタ野郎】


 電撃文庫で刊行中の、鴨志田一先生原作のライトノベルを原作としたアニメ『青春ブタ野郎』シリーズ。

 TVシリーズ1期『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』が2018年に放送されて以降、2019年に1作、2023年に2作の劇場アニメが公開されていますが、TVシリーズの新作は約7年ぶりとなります。

 なお、筆者はTVシリーズ及び劇場3作品はすべて見ておりますが、原作は未読なので先の展開についての知識はない……という状態です。

 放送がスタートした『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』は、TVシリーズとしては“2期”という扱いにはなるのですが、劇場3作品でもストーリーが進んでいるので、TVシリーズ1期しか見ていないという方は、間のエピソードが結構飛んでいる形になります。

 とはいえ、TVシリーズ1期と劇場3作品で描かれたのは、主人公の梓川咲太たちが高校生の頃のお話で、2期は舞台を一新した“大学生編”の始まりとなるので、話がまったく分からないということはないと思うのでご安心を。

 ただ、劇場版3作品もかなり重要なストーリーをやっていたりするので、2期を見てまた『青ブタ』熱が高まってきたという方は、劇場版もチェックすることをオススメします!(公式YouTubeで総集編も公開されています)


 冒頭の牧之原翔子との会話は、その劇場版の3作目『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』のラストでも描かれていたシーンで、翔子がこれまでに見てきたあらゆる未来に存在しなかったという“霧島透子”と呼ばれる歌手の存在が仄めかされる形で、大学生編のストーリーへと繋がるという流れになっています。

実はかなり頭が良かった卯月【青春ブタ野郎】


 そうして始まった大学生編ですが、大学に進学して変化した咲太たちの生活を描きつつ、咲太と同じ大学に入学してきた広川卯月に焦点を当てた回になっていましたね。

 卯月はTVシリーズの頃から登場していたキャラではありましたが、存在が際立ったのは劇場2作目の『おでかけシスターの夢を見ない』からで、咲太の妹の花楓に成長のきっかけを与えるような役割を果たしていました。

 ヒロイン級のビジュアルの良さ、しかも演じているのが雨宮天さんということもあって印象的な存在ではあったものの、決して出番が多いキャラクターというわけではなかったので、咲太と麻衣と同じ大学に進学していたのはちょっと意外性がありました。


 咲太たちが通っているのは、元々麻衣が目指していた大学で、咲太も同じ大学に行くために勉強をかなり頑張っていた描写があったので、偏差値も高めだと思うんですよね。

 卯月はスイートバレットとしてアイドル活動をしながら通信制高校に通っていて、全日制高校の咲太たちと現役で同じ大学に入学できているのはかなり凄いです。

 通信制高校って全日制に比べて自分でやらないといけない領域が広い分、良い大学を目指すにはかなり高い自己管理能力が求められると思いますし、それをアイドル活動をしながらやりきったと考えると、イメージに反して(?)、実はめちゃくちゃ地頭が良かったんだなと思いました。

 新キャラクターの中で印象的だったのが美東美織。

 どこか咲太にも似た雰囲気の掴みどころのない性格で、異性や恋愛に興味なさそうだけど自分がかわいくてモテるということは自覚していたり、奥底に何かを秘めていそうなキャラクターだなと。


 思春期症候群について知っていたのも気になったポイント。例として挙げていた「他人から見えなくなる」「未来を先に見る」「二人になる」はどれも実際に存在していた症例で、なかなか正確です(すべて咲太が実際に見てきたものばかりなのは、偶然の一致だとは思いますが)。

とうとうアルバイトまでできるようになった花楓【青春ブタ野郎】


 国見が消防士になっていたり、双葉は別の大学に行って咲太と同じ塾の講師になっていたりと、高校時代からいろんな変化がありましたが、なんといっても感慨深いのが、咲太の妹の花楓がアルバイトをできるようになるまで成長していたことですよね。


 個人的に花楓って『青ブタ』の裏の主人公みたいな存在でもあると思っていまして、アニメの新作が作られる度に、花楓が少しずつ成長しているのを確認するのが楽しみだったんですよね。

 『青ブタ』のキャラたちって結構皆器用というか、それぞれに悩みは抱えながらも、自分なりに折り合いをつけて生きているところがあるんですけど、花楓だけは不登校で家からも出られなくなったところから、いろんな苦労をしながら社会に復帰するための階段を一段ずつ頑張って登っていく様子が丁寧に描かれてきたので、ちょっと特別な思い入れがあります。

 その花楓がアルバイトをしていて、しかも咲太の元を離れて暮らしている(両親の実家に帰ったんだと思いますが)のを見ると、「こんなに立派になって……」という、実際に家族に対して抱くのに近い感情が自然と湧いてきて、自分の中での花楓への思い入れがめちゃくちゃ深くなっていることを改めて実感できましたね。

 そして1話を語る上で外せないのが、“空気が読めない”キャラの卯月の変化。

 超のつくマイペース人間だった卯月が、周りの空気を読んで普通に女子大生をやっているのは、成長して丸くなった……と見ることもできそうですが、付き合いの長いのどかからすると違和感が拭えないようです。

 現実でも、誰もが何かしらのペルソナを作って社会で生活していると思うんですが、それによって本来その人がもっていたはずの良さが失われてしまう……というのも分かる話です。


 あとは、のどかから咲太がどれだけ頼りにされているかが分かったのも結構印象的で、卯月を問い詰めるために教室に乗り込んできた際、気まずい空気を察して飲み物を買いに行こうとした咲太に水を押し付けて残らせたシーンには爆笑しました。

 のどかは卯月が何らかの思春期症候群に掛かっているのではないかと疑っているようですが、明らかな異常が起きていた今までの思春期症候群と比べると、本当に思春期症候群なのか、そうだとしても解決する必要があるのかとか、今までにない方向性でのテーマが描かれそうな予感がします。

 少し話題にも出ていた霧島透子がどのように物語に関わってくるのか、といった謎もあったりして、7年ぶりに毎週『青ブタ』の物語を楽しめるのが非常に楽しみです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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