電撃オンライン

『バイオハザード サバイバルユニット』インタビュー。ジルやレオンをはじめ名脇役のマービンまで登場。パンデミックホラーやサバイバルの要素をストラテジーで楽しめる

文:電撃オンライン

公開日時:

 『バイオハザード』シリーズと言えば、1996年3月22日に第1作が発売されて以降、“サバイバルホラー”というジャンルを確立させたホラーゲームの金字塔とでもいうべき作品。2026年2月27日には、シリーズ最新作である『バイオハザード レクイエム』が発売予定です。

[IMAGE]※この記事はファミ通.comで2025年7月11日に掲載された記事を転載したものとなります。

 そんななか、"Anime Expo Lite 2025 Day 1"にて『バイオハザード サバイバルユニット』が発表。さらに、ゲームの詳細が2025年7月11日のオンライン発表会で配信されました。

 本作は『バイオハザード』シリーズの世界観をストラテジーゲームとして楽しめるスマートフォン向けの作品になっており、カプコン監修・協力のもと、アニプレックスとJOYCITYが共同で開発を進めています。

 ここでは開発のキーマンとなるおふたりに『バイオハザード サバイバルユニット』について気になるところをうかがってみました。

聞き手:林 克彦(ファミ通グループ代表)
 
■橋本真司⽒(『BIOHAZARD Survival Unit』エグゼクティブ・プロデューサー)

 1983年、株式会社バンダイ⼊社。1991年、のちに株式会社スクウェア⼦会社となるコンピューターゲームメーカーコブラチーム株式会社を設⽴。

 1997年、株式会社スクウェアの取締役を経て2003年、株式会社スクウェアおよび株式会社エニックス合併により『ファイナルファンタジー』シリーズ、『キングダム ハーツ』シリーズブランドマネージャーなどを歴任。

 2018年以降、株式会社スクウェア・エニックス取締役、事務取締役、株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス理事を経て、2022年、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの⼦会社である株式会社フォワードワークス取締役会⻑に就任。2024年10⽉より株式会社アニプレックスに所属。(⽂中は橋本)

■ゲ・ドンギュン⽒(『BIOHAZARD Survival Unit』ディレクター)

 株式会社NEXONを経て、2013年に株式会社JOYCITYに⼊社。

 NEXON在社時には『BnB』、『KartRider』など多くのヒット作を⼿掛け、JOYCITY社では『Rule The Sky』、『Gunship Battle︓Helicopter 3D』に加え、『Gunship Battle︓Total Warfare』などの本作と同様の4Xストラテジージャンルをグローバルでの成功に導いている。(⽂中はドンギュン)

『バイオハザード』の世界はストラテジーゲームと非常に相性がいいと感じていた


――本作のプロジェクトが立ち上がった経緯をお聞かせください。

橋本
私が前職(スクウェア・エニックス)を定年で退職するとき、お世話になった会社の皆さんへご挨拶回りをする中で、カプコンさんともお会いしていました。そこで「まだ退職するのはもったいないよね」というお話が出ました。

 若手の皆さんのフォローをすることも重要なのですが、もっと具体的なプロジェクトにトライしてほしいと、チャンスをいただけました。そんな中でアニプレックスとの出会いもあり、本作のプロジェクトが立ち上がったというわけです。

ドンギュン
以前ディズニーさんといっしょに仕事をしていて、そのあとは自分たちのオリジナルプロジェクトを長年やっていました。そのオリジナルプロジェクトが成功して、つぎのプロジェクトの企画立ち上げで悩んでいたんです。

 世界でトレンドとなっているゲームジャンル、テーマでSFやゾンビなどを候補として考えていたときに、橋本さんから『バイオハザード サバイバルユニット』のお話をうかがいました。私たちが考えていたものにもピッタリとはまるし、これは本当に縁だなと思いました。

[IMAGE]

――橋本さんが『バイオハザード』とつながりがあるという印象はなく、とても驚きました。なぜ橋本さんが『バイオハザード』のプロジェクトに携わることになったのでしょうか?

橋本
これまでにも話していることなのですが、コロナ禍の時期に動画配信サービスでパンデミックホラーの映画をたくさん観ていたんです。もともとパンデミックホラーの映画は好きで、その中でとくに影響を受けたのが映画『ワールド・ウォーZ』でした。

 「足が速いゾンビすげえな」とか思って、そのような要素を含むゲームにしたいなとは思っていたんです。そこでカプコンさんに僕なりの新しいジャンルの提案をしたいと伝えたところお話をお聞きしますと言っていただけたので、「こういう企画はいかがでしょう?」と。

 じつは『City Ville』にハマっていた時期がありまして。俯瞰で街を成長させながら遊びたいなと。でもシミュレーション要素だけだと、やはり途中で飽きがきてしまうんですよね。

 飽きを感じさせない展開として考えたのがバトル要素で、街づくりとバトル要素を融合させたものをやりたかったんですね。そのような話をカプコンさんとして『サバイバルユニット』が形になっていきました。

[IMAGE]

――JOYCITYさんとしても大きなチャレンジだと思うのですが、最初に『バイオハザード』というタイトル名を聞いたときは、どのように思われたのでしょうか?

ドンギュン
橋本さんにご提案をいただいたときは、正直「『バイオハザード』と橋本さんがどうやって結びついたんだろう?」と思いましたね。私たちのチームが次世代のゲーム開発のために研究していたテーマのひとつにゾンビものがあったので、ドンピシャだと思いました。

 『バイオハザード』の世界観に私たちが考えていたゾンビもののおもしろさを入れ込み調整していきましたが、どのようにして『バイオハザード』らしさをキープするのかというところがたいへんでしたね。

――なるほど。では改めて本作のコンセプトについて教えてください。『バイオハザード』を題材にストラテジー系のジャンルにした理由もお聞きしたいです。

橋本
『サバイバルユニット』は、シリーズの持つ“パンデミックホラー”や“サバイバル”という要素を、ストラテジーゲームという新たな形で体験していただくことを目指した作品です。

 私自身、いわゆる“パンデミックホラー”と呼ばれるジャンルの作品が好きで、また長年『バイオハザード』シリーズの世界観に魅了されてきましたが、限られたリソースで生き抜くというシリーズ特有の緊張感は、ストラテジーゲームと非常に相性がいいと感じていました。

 スマートフォンという新しい舞台で、世界中のプレイヤーが異なる視点から『バイオハザード』の世界を楽しめるよう、ジャンルの選定から丁寧に構築しています。

ドンギュン
JOYCITYは、これまでアクションやスポーツなど、いろいろなジャンルのゲームを開発してきましたが、ここ10年ほどはストラテジージャンルに注力しています。さまざまなプラットフォームで、常に新しいゲームデザインでストラテジーゲームを作り続けてきて、私たちだけのノウハウを培ってきました。

 『サバイバルユニット』は単なるストラテジーゲームではなく、その『バイオハザード』の世界観の中で、自分の領地を探索し成長させながらストーリーを体験できるようなゲームになっています。

[IMAGE]
――ゲーム画面の中には、ストラテジー要素やバトル要素以外に『バイオハザード』らしい探索シーンみたいなものもありますが、これが領地を探索する、というような要素なのでしょうか?
[IMAGE]
ドンギュン
そうですね。

――わかりました。続いて操作キャラクターに関してですが、レオンやクレアといった『バイオハザード』ファンならば誰もが知っているメインキャラクター以外にも、『バイオハザードRE:2』で登場したマービンのような、いわゆる脇役的なキャラクターも確認できました。登場するキャラクターはかなり多いのでしょうか?

[IMAGE][IMAGE]
橋本
最初は原作のストーリーを追うように進めていこうかなと思ったのですが、カプコンさんから「あまりその枠にはこだわらなくてもいいんじゃないか」という話をいただきました。

 それならば自分がこれまでやってきたように、皆さんが想像できるものではなく「そこまでやるんだ」という作りかたでやらせてもらおうと。そういうわけでオールスター的な感じでキャラクターが登場します。

――では運営を続けていくなかで、歴代の『バイオハザード』のあんなキャラクターやこんなキャラクターが追加される、ということもあるかもしれない、と。

橋本
そうですね。いろいろなキャラクターを増やしていく予定なのでご期待ください。

[IMAGE]
――本作のストーリーは『バイオハザードRE:2』あたりがベースになっているようですが、ショップの画面写真を見たところ『バイオハザードRE:4』の武器商人らしき人物が店員さんをやっていますね。キャラクターは原作の時間軸に関わらず登場するのでしょうか?
[IMAGE]
ドンギュン
はい、本作では『バイオハザード』シリーズのキャラクターたちが、原作の時間軸にとらわれず登場します。これは、シリーズの魅力をより広く、より自由に楽しんでいただくための構成であり、いわば“パラレルな物語”として設計しています。

 武器商人のような印象的なキャラクターも、ゲームの世界観に彩りを加える存在として登場しますので、シリーズファンの皆さんにはぜひ注目していただきたいです。

――往年の『バイオハザード』ファンからすると、ケンド銃砲店や時計塔といった名所の数々が出てくるのか気になります。シリーズファン向けの要素なども散りばめられているのでしょうか?

橋本
はい、シリーズファンの皆さんに楽しんでいただけるよう、ファンの記憶に残る象徴的なロケーションや様々なモチーフが、随所に登場します。カプコンさんに協力していただきながら、懐かしさと新しさが融合した体験を目指して、細部までこだわって開発を進めています。

――楽しみです。ビジュアルに関してですが、原作をリスペクトして作られていると思うのですが、とくに表現するうえで苦労されたお話もお聞かせください。

ドンギュン
『バイオハザード』はグラフィックのクオリティーが高いことでよく知られていますが、それ以外にもプレイヤーが感じる怖さとか、“その先に何が潜んでいるのか”などの恐怖を伝達する演出がすばらしいんですね。開発スタッフたちも昔から『バイオハザード』作品をプレイしていましたが、そのときはユーザー目線でした。

 そのため近年発売された
『RE』シリーズをすべて開発スタッフ全員に渡し「今度は開発者視点としてプレイし直してほしい」とお願いしたんです。

 もちろん私もホラー作品が大好きで、家でプレイしようと持ち帰るのですが、子どもたちがいるため隠れてひとりでプレイしました(笑)。そのおかげもあって、より集中してプレイできたぶん、細かな部分の演出や対応にも気付けました。そのあたりも『サバイバルユニット』で表現できていると思います。

――ユーザー視点ではなく、開発視点でもう一度ゲームをプレイするという発想がすばらしいですね。JOYCITYさんの開発力はすごいという話はうかがっていましたが、橋本さんはJOYCITYさんとタッグを組んでみてどんな感触でしたか?

橋本
国内外のいろいろな会社を分析したのですが、その中でもJOYCITYさんは特にこのジャンルの開発ノウハウを持ってらっしゃったので選定させていただきました。最初はどのくらいの人数が開発に関わるのかわからなかったのですが、いまはものすごい人数になっています。それには非常に感謝していますね。

 また、プロジェクトを始めて2年という期間でこのクオリティのゲームを作るのは難しいと思いますが、それを実現できた。JOYCITYさんと一緒にやらせていただいて、すごくよかったと思います。

――橋本さんがユーザー視点で『サバイバルユニット』をプレイして、いいものに仕上がっていると感じますか?

橋本
もちろん。毎週ゲームの濃度が上がっていっていますね。

――ドンギュンさん的に、現在の『サバイバルユニット』の仕上がりに対する自信はどのくらいですか?

ドンギュン
運営型のゲームなので、現在の到達点としては80%の仕上がりで、そのクオリティーに関しても満足しています。これまで私たちが作ってきた運営型ゲームの要素を超えた部分もあるんですが、第三者によるテストの結果でも私たちが考えた以上のポジティブな反応がありました。

 ただ、運営型のゲームには完成というか、終わりがないんですよね。この時期になるとランディングスペックに追われていっぱいいっぱいになるのですが、今回は私たちが力を入れているシングルモードの部分などをどうしようか、などと考えられるくらい開発を楽しんでいます。

――モチベーションが高い状態で維持できている、ということですね。シングルモードの場面では心電図のような体力ゲージとともに映っていますね。主人公(指揮官)は本作オリジナルのキャラクターですが、シングルモードではシリーズキャラクターも操作できるのでしょうか?

[IMAGE]
ドンギュン
はい、シングルモードでは主に指揮官キャラクターを操作します。体力ゲージなどのUIはシリーズの世界観を大切にしつつ、緊張感あるサバイバル体験を演出するために考案したものです。序盤ではクレアを操作するシングルモードもあります。クレアは物語で重要な役割を担うことになります。

――話は変わりますが、本作ではイラストレーターの天野喜孝氏をゲストデザイナーとして起用されることにも驚きました。起用された理由や、天野氏がデザインしたキャラクターが、どのような役割を果たすのかをお聞きしたいです。

橋本
先ほども少し話しましたが、皆さんが想像できる『バイオハザード』のスマホ版を作るつもりはなくて、“驚き”を与えたいと思っています。天野先生は前職からとても仲よくさせていただいています。

 今回は天野先生がやったことのない仕事、完全に悪役としてのクリーチャーを描いてほしいとお願いしたところ、天野先生もぜひやってみたいということで実現しました。

――天野氏がデザインされたキャラクターを見たときの橋本さんの感想はいかがでしたか?

橋本
「いやー、やってくれたな」と。インパクトがすごかったですね。そのデザインをJOYCITYさんがゲーム中で使うCGに落とし込むんですけど、天野先生は「ゲームに登場させるために必要な編集は自由にやってください」というスタンスなんです。逆にそれがプレッシャーになっちゃいました(苦笑)。

 でもJOYCITYさんがグラフィッククオリティに対してのこだわりが強いので安心はしていました。

 で、完成したグラフィックを見させていただいたところ、これは大丈夫だなと。天野先生にもお見せしたら「カッコいいね」と言っていただけました。

 ちなみに天野先生がデザインされたクリーチャーは、かなりの強敵となっています。現在はまだ言えませんが、来年以降も皆さんが驚くようなコラボを準備しているので、楽しみにしていただければと思います。

――天野氏がデザインされたキャラクターをCGにして動かす、というのはなかなかできない経験なので、プレッシャーを感じつつも楽しかったんじゃないですか?

ドンギュン
天野先生は私がゲーム開発に携わる前から好きだったアーティストなので、『サバイバルユニット』に登場するキャラクターをデザインいただけるという話を聞いたときは光栄に思いました。天野先生のキャラクターをいただいたときにはアートチーム全員が集まり「これは誰が担当するんだ!?」と騒ぎになり……(笑)。

 全員で話し合っていちばん実力のある担当を決め、その担当には天野先生のキャラクターをグラフィックに落とし込む作業のみに集中してもらいましたが、最後まで楽しくやっていましたね。

――とてもいい開発環境ですね。プレイするのがとても楽しみになりました。最後に、ゲームファンに向けてそれぞれメッセージをいただければと思います。

ドンギュン
『バイオハザード』ファンの方たちの中では、初めての試みとなる本格的なストラテジーゲームとなった『バイオハザード』に期待されている方がいると思いますし、ストラテジーゲームファンには「このIPでストラテジーが遊べるんだ」、という期待をされる方も多いと思います。

 私たちもストラテジーゲームとしてのシステムの中に『バイオハザード』を入れる、という程度の作品にはしたくありませんでした。

 『バイオハザード』の重厚な世界観を、どれだけストラテジーゲームのシステムの中に入れることができるのか、開発チームの威信にかけて取り組みました。『バイオハザード』オリジナルの世界観を十分感じられる作品になりましたので、ぜひ事前登録をしていただき、サービス開始を楽しみにお待ちください!

橋本
ゲーム業界は昔のような華々しい時代ではなく、完成にいたらず開発が中止してしまうタイトルも出てくるような時代になっています。その中でゲームの広がり、継続して遊び続けてもらえるものをもう1回提案させてもらえたらいいな、というところから開発が始まりました。

 皆さんが持っているスマートフォンという機器で遊べるように、少しバージョンが古い機種でも遊べるように設計しています。

 今回は『バイオハザード』ということで大量のクリーチャーが出てくるわけですけど、クリーチャーを倒し続けるだけでなく、各国の皆さんがグループを作ってGvG(チームどうしの対戦)でプレイヤーどうしの競争をしてもらっても構いません。

 また、サービス開始以降も新たなキャラクターを追加していくなかで、世界中の皆さんが思い思いに遊んでいただけるようなゲームにしたいと思っています。これまでにない『バイオハザード』の世界をお届けしますので、ご期待ください。

ゲーム画像は発表会の映像をキャプチャーしたものです。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります