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『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』2話感想。“空気が読める”ようになったのは、やはり良いことばかりではなく…。“友達の友達”くらいの咲太と卯月の絶妙な距離感でのやり取りが面白い(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 アニメ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』2話“空気の味は何の味?”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』2話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

眼鏡姿の麻衣があまりに包容力に溢れすぎていた【青春ブタ野郎】


 TVアニメ2期として、いよいよ“大学生編”がスタートした『青春ブタ野郎』シリーズ。第2話では、1話に引き続いて、空気が読めるように変わってしまった広川卯月のエピソードが描かれていました。

 1話で咲太と合コンで出会った美東美織も早速再登場しましたが、いつの間にか麻衣さんと仲良しに。咲太も友達が少ないことに触れていましたが、麻衣って咲太以外は、仲良くなる相手が花楓とかのどかとか、身内の人間が多かったので、一般的な学校での友人関係が描かれるのは確かに珍しいです。

 その後麻衣も言っていた通り、美織もどこか掴み所がないというか、一歩引いて物事を見ているという咲太との共通点みたいなのを感じたのも、二人が仲良くなった要因なのかなと。

 その3人のやりとりの中で出てきた、大学生の服装についての話も興味深い話題でした。

 自分は職業柄スーツとか制服には縁がなかったので、今はその感覚が薄れているのですが、確かに大学生になった頃は、毎日着る服を自分で決めないといけないのに戸惑った記憶があります。

 季節にあわせて買い替えたり、純粋にバリエーションも必要になるのでお金もかかりますし、確かに制服の方が良かったと思っていた頃もあったなと。

 あと、眼鏡姿の麻衣が個人的にめちゃくちゃ癖でした。麻衣がもつ包容力みたいなのが更に高まっていて、TVシリーズ1期で、バニースーツを着ていた人と同一人物とは思えないくらいの落ち着きを感じます。


 そして大学生になっても、相変わらず咲太から思春期症候群の相談をされる双葉。

 双葉は、『青ブタ』における安楽椅子探偵とも言えるキャラクターでもあるので、登場すると安心感があります。

 前回は、卯月が思春期症候群に掛かっているんじゃ……という推測も出ていましたが、そうではなく周りの大学生全体が思春期症候群に掛かっていて、卯月はそれに巻き込まれてしまった……という仮説は今までになかったパターンです。


 美織が話していた制服の話とも繋がりますが、大学生になると思春期症候群が「周りと同じでいたい」という、高校時代までと正反対の方向に変わるのが面白いなと。

 大学生になってより個性に磨きをかける人もいますけど、自分の周囲でも社会に適応してどんどん丸くなっていった人たちの方が多かった気がします。

気づかない方がいいことの幸せについて考えさせられる展開【青春ブタ野郎】


 一方の卯月本人はというと、なかなか複雑な状況に置かれていました。

 一応本人は、空気が読めるようになったことを肯定的に捉えているようではあるんですが、今まで自分がどう見られていたのか気付いた時の表情はあまりに痛々しい。今までの卯月であれば、こんな表情は絶対にしなかったんだろうなと思います。


 小説『アルジャーノンに花束を』で、手術で頭が良くなった主人公のチャーリィが今まで認識できなかった他人の悪意に気づいてしまう流れを思い出したりもして、社会性がつくことが当人にとって必ずしも良いことなのか、いろいろ考えてしまいますよね。

 ただ、笑われていたと感じた卯月の認識自体はおそらく正しくはなくて、その後に古賀が言っていた感覚の方が自分はしっくりと来ました。

 実際、町中でパフォーマンスしている人たちを見たりした時、内心ではかなり気になっているにも関わらず、まったく見ていないようなフリをして通り過ぎるみたいな経験は何回もしていたので、すごくリアルな感覚だなと。

 あとは、卯月を見つけて電車を降りずに三崎口までいってしまう咲太を見て、平日にふらっと授業サボって遊びに行ったりしていた大学生の頃を思い出して、めちゃくちゃ懐かしい気持ちに。

 あんなに自由な生活ができたのって後にも先にも大学生の頃くらいで、もし人生の好きな時期にタイムスリップして戻れるなら、迷わず大学時代を選ぶと思います。

 個人的にちょっと面白かったのが、咲太と卯月の絶妙な距離感。

 咲太と卯月って、一応大学の同級生で、入学前からの知り合いでもあるのに、呼び名が「(花楓の)お兄さん」のままなんですよね。“友達”ではなく、“友達の友達”くらいの関係性というか。

 自転車に乗りながらの二人のやり取りも、軽い雰囲気で会話をしながらも、お互いにどこまで踏み込むのかを探り合っているような雰囲気がありました。


 ただ、そんなに関係性が近くない相手だからこそ話せることがあるのも確かで、今の卯月にとっては普段そこまで接点がない咲太だからこそ、本音を明かせたところもあったのかなと。

 あと、作中では「意外と近いぞ」と言われてましたが、調べてみると三崎口から日本武道館って2時間弱は掛かるので(実際着く頃には日が暮れています)、いうほど近くはないんですよね。卯月のためにそこまで付き合うのも、なかなかできることではないです。

 卯月にどちらの自分が良いか聞かれた時に「どっちも」と答えたのもそうですが、一見投げやりっぽい態度に見せかけて、誰に対しても真剣に向き合っている面倒見の良さが、咲太がこれだけ周りから頼られる要因なんだろうと思いました。


 あとは細かいシーンで、花楓が仲良しのどかではなく、卯月推しだったことが判明していたのに思わず爆笑しつつ、同時に納得もしました。

 学校のイジメが原因で不登校になった花楓にとって、周囲の目をあまり気にしてない卯月って、人間的にも憧れる面があると思いますし、進路を自分の意思で決断するきっかけをくれた存在でもありますからね。そりゃあ卯月の方のファンになるだろうなと。

 一応、卯月の中で一定の気持ちの整理はついたように見えますが、今回の思春期症候群を解消するのかしないのかの答えはまだ見えないまま。

 今回は今までの思春期症候群よりも現実的な問題だけに、どういったところに着地するのかが気になります。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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