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インタビュー:『サイレントヒル f』初回クリア時間は12~15時間で、2周目以降はUFOエンドを含むマルチエンディングへ。制作者が語る10の特徴~美と醜が入り混じる画作りや、近接に特化したアクションなど

文:Ak

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 コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)より9月25日発売予定の『SILENT HILL f(サイレントヒル f)』。そのメディア向けイベント“SILENT HILL f Tokyo Media Premiere”では、世界初の実機プレイのほか、制作チームによる作品紹介や質疑応答も行われました。

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 この記事では、『サイレントヒル』シリーズプロデューサーである岡本 基氏をはじめ、作曲家の山岡 晃氏、ストーリー担当の竜騎士07氏など、計5名の登壇者による作品紹介および質疑応答の模様をレポートしていきます。

岡本 基2019年コナミデジタルエンタテインメント入社。『サイレントヒル』シリーズ統括プロデューサーとして、『SILENT HILL 2』(2024年発売)、『SILENT HILL f』を手掛ける。

山岡 晃『サイレントヒル』シリーズの音楽制作で知られるコンポーザー(作曲家)。

竜騎士07『ひぐらしのなく頃に』『うみねこのなく頃に』で絶大な支持を集めるシナリオライター。『サイレントヒル f』のストーリーおよび謎解きの製作を担当。

Al YangNeoBards Entertainment所属。『サイレントヒル f』ゲームディレクター。

Albert LeeNeoBards Entertainment所属。『サイレントヒル f』ゲームプロデューサー。


 また、電撃オンラインchではプレイ動画も公開しているので、そちらもお楽しみください。


 なお、エビテンでは特典として本作の意匠を使ったアクリルチャームが用意されています。

制作チームが語る『サイレントヒル f』の10の特徴。UFOエンドの存在など、初出し情報も!【サイレントヒル f体験会レポート】

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 イベントでは、まず『サイレントヒル f』制作チームが作品の魅力を紹介。本作が近接戦特化のアクションゲームであることや、マルチエンディングであることなど、初公開のものを含む情報が公開されました。

 作品紹介を主に行ったのは『SILENT HILL』シリーズプロデューサーを務める岡本 基氏。その模様をレポートしていきます。

①ビジュアル:4Kで描かれる古き日本

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岡本
まず1点目ですが、日本の古き良き頃ともいえる1960年代を舞台にしていまして、それを4Kの美麗なグラフィックで再現します。自然と人々の生活が密接に絡み合った、ありきたりな故郷とはどこか違う、狭くも複雑な街並みを描いております。

 PS5を含めたハイエンドPCなどで、非常に美しいグラフィックで日本の街を体験していただければと思います。

②ビジュアル:緊張の途切れない探索エリア

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岡本
2点目は、緊張の途切れない探索エリアです。建造物という死角が非常に多いので、どこから危険がやってくるか分からないというところでドキドキ感が楽しめるようになっています。また序盤のエリアは“筋骨”と呼ばれる複雑な街並みが舞台になりまして、迷宮のような構造になっています。

③ビジュアル:美と醜が入り混じる画作り

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岡本
3点目として、“美と醜が入り混じる画作り”があります。“美しいがゆえにおぞましい。”というのをキャッチコピーにしていますが、まさにグロテスクで不気味でありながらも美しい、そんなグラフィックが特徴となっております。

 相反するような要素なんですけれども、それが渾然一体となって溶け込んでいるというところが、このゲームの魅力になっております。

④アクション・ゲームデザイン:“心”に迫る不可思議な謎解き

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岡本
4点目は、心に迫る不可思議な謎解きです。『サイレントヒル』シリーズの特徴として、やはり難しい謎解きが含まれているというところがあると思うんですけど、今回の謎解きも和風のデザインを取り入れていて、ジャパンカルチャーを体験できます。

 それに加えてやはり『サイレントヒル』らしく、登場人物の内面の描写にも踏み込んでいくような謎解きになっております。この謎解きのテキストは、全て竜騎士先生に書いていただいておりますので、竜騎士先生からもコメントをいただきたいと思います。

竜騎士07
“謎解きはキャラクターの心に関連するものでなければならない”という方針をいただいて、色々頭をひねりながら私なりに謎解きのテキストを作らせていただきました。どうかその辺りもお楽しみいただけると嬉しいです。

⑤アクション・ゲームデザイン:近接に特化したアクション

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岡本
5点目は、近接に特化したアクションです。本作のアクションは全て近接武器になっておりまして、近距離武器を使ったゲームというところに力点を置いております。

 敵の動きを慎重に見極める回避、そして攻撃、強攻撃などを使い分け、臨機応変な対応が求められます。これに関してはディレクターのAlさんからもコメントをいただきたいと思います。

Al Yang
今回の戦闘においては全て近距離の攻撃になるんですが、近距離における戦闘であっても全てが自然に感じられるように調整をしています。

 決して大味な戦闘体験にはならないように丁寧に制作しておりますので、是非、今回の戦闘を存分にお楽しみください。

⑥アクション・ゲームデザイン:窮地をしのぐ攻防一体の技

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岡本
6点目は、窮地をしのぐ攻防一体の技です。戦闘についての補足なんですけれども、化け物との戦闘は窮地に追い込まれることも度々ありますが、“見切り”というコマンドを使うことによって活路を見出すことができます。

 成功すると持久力を瞬時に回復して体勢を立て直したり、追撃などの次の一手につなげることができます。画面にあるように“見切り回避”や“見切り反撃”といった技が使えます。

Al Yang
本作の戦闘がなるべく自然なものと感じられるように調整をしていますが、特にこの“見切り回避”という機能については、確かにアクション重視の雰囲気になるかと思います。

 しかし、単にアクションに偏るだけでなく、本作の世界観の雰囲気にマッチするように仕様を考えております。特に“見切り回避”などの場合は、非常に追い詰められ、緊張感が高まった状況下でアドレナリンが噴出している状態を、キャラクターの心理として反映する形で実装しております。

⑦アクション・ゲームデザイン:生死が交錯する戦闘

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岡本
7点目は、生死が交錯する戦闘です。このゲームはホラーでもあるので、リソース管理というものが非常に重要になります。体力だけじゃなくて持久力、精神力、武器の耐久度など、様々なリソースの消費を考えながら戦っていくことで、駆け引きとか戦略性が生まれます。

⑧アクション・ゲームデザイン:束の間の休息と成長要素

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岡本
8点目は、束の間の休息と成長要素です。本作のセーブポイントは“祠(ほこら)”になっていまして、その祠でお供え物をすることによって“功徳(くどく)”というポイントを貯めることができます。

 その功徳を貯めることで様々な恩恵を得られ、ステータスの強化や、特殊効果がつく“お守り”を入手することができます。これらの強化要素は周回プレイの時に引き継がれますので、何度となく周回するプレイで徐々に強くなっていくことができます。

⑨マルチエンド:マルチエンディング

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岡本
9点目はマルチエンディングです。今作には、UFOエンドを含めて全部で5つのエンディングが存在します。1周目のゲームプレイでの結末は同じなんですけれども、2周目以降でエンディングが様々に分岐していきます。

 2周目以降は主人公の行動や選択によって物語が変化して、最後に出てくるボスであったり、展開が異なるエンディングに向かうことになります。マルチエンディングに関して、竜騎士先生からコメントをいただきたいと思います。

竜騎士07
単なるグッドエンド、バッドエンドではなく、エンディングはどれも主人公がたどり着いた人生の選択における一つの結末を示しているだけで、どのエンディングがグッドで、どのエンディングがバッドかという区別をつけて作ったつもりはありません。

 ですので、プレイヤーの皆さんの解釈によっては、「このエンディングよりもこっちのエンディングの方がよりふさわしいものだった」もしくは「こっちのエンディングの方が幸せそうに見えた」というように解釈が変わるかもしれません。ですので、どのエンディングにも解釈のし甲斐のある楽しみ方があると思います。

⑩サウンド:感性を刺激するサウンド

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岡本
10点目は、感性を刺激するサウンドです。物陰や背後の様々な小さな音まで感じさせる3D音響がプレイヤーを取り囲み、高い臨場感を与えます。サウンドと言えば、やはり山岡さんからコメントをいただきたいと思います。

山岡
『サイレントヒル』をずっとやってて何年も経つんですけど、この作品は和風を舞台にしながらも1960年代という、今の日本とはちょっと違う舞台です。

 すごくオールドスクールにならず、この作品ならではのものをサウンドとして表現しようかなと思っています。この作品じゃないと体験できないもを、サウンドを通して描いたつもりです。これが新しい『サイレントヒル』として皆さんに評価いただけると信じています。

1960年代の日本を舞台にした理由や制作チームの考える『サイレントヒル』らしさとは?【サイレントヒル f体験会レポート】

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――まずは『サイレントヒル f』というタイトルについてお伺いしたいのですが、この“f” に込めた意味について教えていただけますか?

岡本
“f”に関しては、複数の意味を込めています。みなさんもいろいろと考察してくださっているかと思いますが、あまり明かしすぎると面白みがなくなってしまうので、詳細は控えさせていただきます。ただ、記号的な意味だけでなく、物語やテーマにも密接に関わる重要な文字です。

――『サイレントヒル f』は、原点回帰となる作品なのでしょうか? それともシリーズの再出発の契機に?

岡本
『サイレントヒル 2』がシリーズの中で最も重要な影響源ではありますが、『サイレントヒル f』はまったく新しい物語です。ただ、精神的・心理的恐怖という核を守る限り、これは『サイレントヒル』であり続けると考えています。

――本作のホラー表現において、“日本的な恐怖”をどのように表現されていますか? また、それは作品にどう落とし込まれているのでしょうか。

竜騎士07
日本のホラー、いわゆるJホラーには大きく2つの方向性があると考えています。ひとつは命の危険が迫る“本能的な恐怖”。そしてもうひとつは、“分からないことによる不安”。この後者が、Jホラーの真髄だと思っています。

 何が起きているか分からない、現状が安全なのか危険なのかすら判断できないという“違和感のある状況”が続く中で、人は深い不安を覚える。それを暗闇の中に目を凝らして必死に何かを探ろうとする――そういう形の恐怖を大事にしています。

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――本作ではアクション要素も取り入れられているとのことですが、『サイレントヒル』シリーズといえば静かで内省的なホラーの印象があります。アクション性を高めた理由は?

岡本
ご指摘の通り、従来の『サイレントヒル』はアクション性を全面に出すシリーズではありませんでした。ですが、若いプレイヤー層を中心に、“歯ごたえのあるアクション”を求める声も増えています。

 今回の制作パートナーであるNeoBards Entertainmentさんは、アクションゲームに非常に強みのあるスタジオです。彼らと一緒に“恐怖の中にも満足感のあるアクションを”という新しい方向性に挑戦しました。ただし、あくまでホラーとのバランスには細心の注意を払っています。

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――キャラクターに物語由来のダメージ表現が見られました。戦闘によるものではないようですが、どういった意図があるのでしょうか?

Albert Lee
物語の展開に沿って、主人公が深く傷つくシーンがあり、その象徴として表現されているものあり、ストーリーにおいて重要な意味を持っています。物語を進めていくうちに、その背景や意図が理解できるようになるはずです。

――本作の戦闘はやや難しく感じました。調整にあたって、どのような工夫がありましたか?

Albert Lee
戦闘においては、テンポや距離感を重視しています。遠距離武器をあえて排除することで、敵との距離が常に近い状態になるため、戦闘に高い緊張感が生まれていますね。さらに近距離での対処手段や攻撃のバリエーションを増やし、戦略性を保つようにしています。

 例えば、避けたり、反撃したり、リソースを管理しながら動くことで、単なるアクションではなく、恐怖と達成感を両立させています。

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――舞台として、なぜ1960年代の日本を選んだのでしょう?

竜騎士07
現代と、妖怪や化け物がいたファンタジーの時代──その“境目”のように感じたのが1960年代でした。今の日本と過去の日本、リアルと幻想が交錯する時代です。

――時代設定や背景のリアリティに関して、何か具体的に参考にした出来事や資料はありますか?

竜騎士07
1960年代という時代を選んだのは、描きたいテーマに合致していたからです。もちろん、その時代に実際にあった出来事や空気感も参考にしており、当時の文献を何十冊も調べ、資料収集にも力を入れました。

 また、トレーラー制作に関わってくれた白組さん(※映画『ALWAYS 三丁目の夕日』などで知られる映像制作会社)も非常に精緻なリサーチをしてくれました。日本チーム、NeoBards Entertainment、白組の三者が協力し合ったことで、今回の世界観のリアリティが実現できたと思っています。

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――世界観を表現するうえで、音楽にはどんな工夫が?

山岡
『サイレントヒル』シリーズはもともと日本の感性が根底にあります。今回は特に“和”を強く意識しました。ただ、和楽器を多用するというよりも、日本の情緒や湿度感、旋律のセンスを活かす形でサウンドを設計しています。

――プレイ時間についても教えてください。1周目のクリアにかかる時間と、周回プレイによる変化などはありますか?

岡本
プレイ時間はプレイヤーのスタイルによって大きく変わります。アクションに慣れている方なら8時間ほどで終わることもありますし、探索やストーリーをじっくり楽しむ方なら12~15時間以上かかることもあるでしょう。

 また、周回プレイでは、1周目で得た知見が反映されるような設計になっています。繰り返しプレイすることで見えてくる要素や、新たな展開も用意しています。

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――クリーチャーのデザインがこれまでと大きく異なる印象を受けました。どのようなコンセプトで制作されたのでしょうか?

岡本
クリーチャーデザインはイラストレーターのkeraさんが1体1体、非常に丁寧に描いてくれました。『サイレントヒル』らしく、キャラクターのトラウマや内面を投影した存在として表現しています。

 コンセプトの初期段階から、“花”と“内臓”といった、美しさとグロテスクさが共存するようなモチーフを取り入れており、大きなクリーチャーにはその要素が色濃く反映されています。

――みなさんにとって『サイレントヒル』らしさとは何ですか?

Al Yang
人によって答えが違うと思いますが、私にとっては“心理的ホラー”です。人間の心の奥底に潜む罪悪感や葛藤を、街が映し出すような感覚ですね。

岡本
私にとっては“空気感”です。街そのものが一つの感情であるかのように、全体に覆う霧と静けさ、その中に潜むものに怯える感覚。雰囲気を楽しむホラーです。

竜騎士07
私は『サイレントヒル』を“料理”のように捉えています。ホラーや霧という“パイ生地”の中に、様々なテーマや葛藤を隠している。その中身をプレイヤーが噛みしめて、味わいながら恐怖を体験する。それが『サイレントヒル』らしさだと思います。

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――最後に、本作を楽しみにしているプレイヤーへメッセージをお願いします。

岡本
『サイレントヒル f』は、シリーズの伝統を大事にしつつも、新しいチャレンジを詰め込んだ意欲作です。アクションとサイコロジカル(心理)ホラー、昭和の日本という舞台、それらすべてが融合した新しい体験を、ぜひ楽しみにしていてください。

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会場内にはバケモノの精巧な展示品も! お土産の出来も秀逸【サイレントヒル f体験会レポート】


 会場内には、作中に登場するバケモノの精巧な展示品もありました。フォトレポート形式で紹介していきます。

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▲主人公の友人である“咲子”らしい言動をする謎のバケモノ。手に持った棘の生えた祭器やグロテスクな口の内部まで再現されています。このバケモノとの戦いは別途レビュー記事でも紹介!
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▲カカシの謎解きなどで登場するバケモノ“アヤカカシ”。無機質な感じで怖いです。どこか面影が主人公の雛子に似ているような……?

 イベント終了後は参加者を招いたパーティも実施。そこでは『サイレントヒル f』らしい特製のフードもふるまわれました。

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▲パーティ会場でもアヤカカシがお出迎え。
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▲特製ピザ! ……ちょっと『サイレントヒル 2』のエディを思い出しちゃうかも?
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▲『サイレントヒル f』のスペシャルドリンク。ノンアルコールで、さっぱりしていて飲みやすかったです。

 イベント参加者にはTシャツなどのグッズセットのお土産も用意されていました。美麗な風呂敷に包まれた薬箱の中には、Tシャツやアクリルスタンド、お守りなどが。こういった雰囲気のゲームだけに、お守りでアフターケアがされているのは、ちょっとうれしかったです。
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▲余談ですが、イベント中にトイレ(化粧室)の場所を聞こうとしたら人間じゃなくてアヤカカシで、危うく変な声が出そうになりました。

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